写真展

田沼武能写真展「戦後を生きた子供たち」

(ライカギャラリー京都)

© Takeyoshi Tanuma

私がライカの性能のすばらしさに目覚めたのは、木村伊兵衛の助手を務めるようになってからである。
敗戦後間もない頃の木村は、バルナックライカのボデー4台に、ヘクトール200ミリから21ミリのワイドレンズに至るあらゆるレンズを細長い特注のトランクに入れ持っていた。カメラは他人には触らせない。掃除も自分で行い、シャッターを押しながら調子を調べると同時に、自分の手に馴染ませていた。木村がライカを使いこなす姿を見て、私もライカが欲しくなり、喫茶店に入り、コーヒーを飲むこともビールを飲むことも止め、もっぱら勤倹貯蓄を始めた。
おかげで師匠の木村から「タヌマは趣味キンケンチョチク」とあだ名を付けられたが、1年かけてライカIIICのズマリット50ミリ付きを入手した。私は、嬉しくて嬉しくて、そのカメラを吊り下げて休みになると生まれ故郷の浅草を撮影しに出かけた。それは自分の心象風景であり下町っ子たちの暮らしであった。
何時売れるか分からない写真を一生懸命撮り続けたのが今回展示した作品群であった。
写真の基本は記録であり今となっては撮ることのできない昭和20、30年代の子どもたちの情景である。

写真家 田沼武能

(写真展情報より)

会場・スケジュールなど

  • ・会場:ライカギャラリー京都
  • ・住所:京都市東山区祇園町南側570-120
  • ・会期:2015年7月10日金曜日~2015年10月11日日曜日
  • ・時間:11時~19時
  • ・休館:月曜日
  • ・入場:無料

(本誌:鈴木誠)