写真展
レポート:石川直樹写真展「Makalu」
(IMA CONCEPT STORE)
Reported by市井康延(2014/8/22 06:00)
石川直樹さんの新作写真展「Makalu」が昨日2014年8月20日より東京・六本木のIMA GALLERY(IMA CONCEPT STORE内)で開催されている。チョモランマ、ローツェ、マナスルに続く、ヒマラヤシリーズ第4弾だ。会期は10月5日まで。
ギャラリーの入口には、マカルー山頂から撮った1点が飾られている(上の写真)。中央の右に聳える山がエベレスト(チョモランマ)で、その左にローツェが連なる。どちらも登頂した山で、双子のように寄り添っていることは知っていたが、実際にその二つの頂が並ぶ姿を眼にするのは初めてだったそうだ。「今回撮影した中で、最も印象深い写真」として選んだ。
- ・会場:IMA CONCEPT STORE
- ・住所:東京都港区六本木5-17-1 AXISビル3F
- ・会期:2014年8月20日水曜日〜2014年10月5日日曜日
- ・時間:11時〜22時
過酷な自然の中で出会った風景
石川さんは2011年に、10年ぶりのエベレストに挑み、以来、ヒマラヤの最高峰を次々と制覇してきた。今回のマカルーは昨年10月に約1ヵ月間、下見を行ない、今年3月31日に日本を発ち、5月25日に登頂を果たしている。約1ヵ月間はベースキャンプと上部キャンプを往復して身体を順応させながら、好天のチャンスを狙った。
ベースキャンプの目の前には大きな氷河が屹立していた。そこでは日々、小さな落石があり、時に、大きな地響きとともに氷河の塊が崩れる。
「マカルーは岩肌が露出し、ブラックマウンテンの異名を持つ。火山活動でプレートが移動し、ぶつかりあい、何千年前にできた地層が露出しています」
そんな黒い山にも長くいると、雪が積もり、辺りを白く覆うときもある。人間を簡単には寄せ付けない超絶的な大地の有り様に、石川さんは惹かれ、その時、シャッターを押す。
「写真で何を伝えたいのかとよく問われることがあります。僕の想いは単純で、ただここでこんな凄いものを見た。それを見せたいだけなんです」
山に登ること、そこで写真を撮ること。それは石川さんにとって、ただただ楽しいことなのだ。写真を撮ることで、自らの中に新たな視座が与えられ、風景がより深く見えてくる。
そのために重たい中判カメラ数台と、嵩の張るフィルムを50〜60本、荷物に加える。今回も頂上を狙った時も首にマミヤ7を掛け、ポケットには動画撮影用に小さなコンパクトデジカメを忍ばせた。
「僕が山頂まで持っていくことができる一番力のあるカメラがフィルムの中判カメラなんです。デジタルカメラもいいんですが、バッテリーが寒さに弱く、フィルムカメラの方がこの場所では現実的です」
そのカメラやフィルムも途中で凍結してしまうので、それをなんとか温めて、使える状態に戻す。フィルムを交換する時は三重にしている手袋を外して、素手で作業を行なう。
8,000m級の世界を残す
マカルーの標高は8,463mで、世界第5位だが、切り立った峰と、エベレストのように登山路が開拓されていないため、こちらの方が難易度は高い。頂上へのアタックは夜中に登り始めるが、8,000mを超す山に覆う雪は、コンクリートのように硬く、人の歩みを撥ね付ける。尾根は吹きさらしで、頼るものはなく、ただバランスを崩さず、一歩ずつ足を踏み出していくしかない。
「凄い光景を眼にしながら、写真を撮るような状況ではない時も多い。眼に焼きつき、思い出す風景もたくさんあります」
8,000mを超す山の写真資料は数少なく、そのアーカイブを残したい。そんな思いもあって、今年から写真集としてまとめてきた。今回の展示の惹句では「石川直樹のヒマラヤ最終章」と謳われている。
「何度も行ける場所ではないので、これで最後にしようと思っていたのですが、来年、もう一つ登りたい山ができてしまって、それを最終章にすることにしました」
8,000mを超す山行では、信頼できるチームで行くことが不可欠であり、その誘いがあったということだ。目指す山は標高8,611m、世界第二の高さを持つK2。それで5部作が完結する。
銀座では「国東半島」がスタート
なお9月10日〜23日には、銀座ニコンサロンで石川直樹写真展「国東半島」も行なわれる。9月10日の18時半〜20時には伊藤俊治さん(東京芸術大学教授)を招いてのトークショーも開く。入場無料。予約不要。