写真展

福岡耕造写真展「島の美容室」

(ギャラリー冬青)

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400人が暮らす沖縄の離島。この島には長い間美容室がなく、島民はわざわざ船に乗り、那覇まで髪を切りに行っていた。六年前、一人の男が島を訪れ、数日間滞在していった。二ヶ月後、男は島に戻ってきた。男は美容師だった。彼は島に美容室をつくり、毎月10日間ほど島に来て島民の髪を切るようになった。人々はもう那覇まで行く必要がなくなった。やがてその美容室は島民の憩いの場となっていった。この島に初めて来たとき、島の景勝が妙にしっくりきた。食堂のおばちゃんの髪型が洒落ていたのでどこでカットしているのか尋ねると、内地から来ている美容師さんに切ってもらっているという。その美容室は、集落の古民家にあった。中をのぞいてみると、パーマをかける90歳のおばあ、ヘミングウエイ似の漁師、数ヶ月後には島を離れる中学生達が所狭しと集っていた。僕はその美容師、そこに来る人々に魅了され撮影を始めた。

始めの頃は、お年寄りにカメラを向けると”こんなおばあ撮ってどうするのさ~”と顔を隠し逃げていった。次第にその美容師さんを通じ、島民とも親しくなり、”またきたの~”とい表情を見せてくれるようになった。同時に、島に通う度に見えてくる沖縄、離島が抱える問題を感じざるをえなかった。かつて千人いた島の人口は半分以下になり、三割以上が高年齢者だ。白砂が美しい隣の島では米軍の射撃練習が行われ、蝉の声がかき消される。そんな現実を感じながらも、魅力溢れる島の人々や自然を追った。

2012~13年撮影~取材。作家自身によるカラープリント約40点展示。ブローニー・ネガカラー・フィルム使用。会場では同時に撮影したドキュメント映像も随時上映。

(写真展情報より)

  • ギャラリー冬青
  • 住所:東京都中野区中央5-18-20
  • 会期:2013年8月2日(金)~2013年8月25日(土)
  • 時間:11時~19時
  • 休館:日、月、祝日、8月14日~8月19日

(本誌:武石修)