写真展PICK UP

あしたのひかり 日本の新進作家vol.17

東京都写真美術館で9月22日まで

岩根愛《Tenshochi, Kitakami, Iwate》〈あたらしい川〉より 2020年 作家蔵

東京都写真美術館で、新進作家を紹介する展覧会「あしたのひかり 日本の新進作家vol.17」が開催されている。会期は7月28日から9月22日まで。

2002年より開催されている「日本の新進作家」展の17回目となる展覧会。「象徴としての光」と「いまここを超えていく力」をテーマに、複数の作家とその作品が紹介されている。

同展開催にあたり、展覧会の概要では「本展の出品作家たちは、「光」を重要な要素としているだけではなく、自身を取り巻く世界の在りようについて独自のヴィジョンを持ち、それを視覚作品として私たちに提示してくれます。これらの作品は、ただ現実を鏡のように写し出すだけではなく、いまここにあり刻々と変貌していく世界をどのように感じ取るのかという世界観を表しています。それらは見る人の心に様々に共鳴し、未来への洞察や生きる力を呼び覚ましてくれるかもしれません。」と案内しており、今回のテーマによせて、「光に満ちつつも不確かでもあるこの世界からその向こう側にある未来へと、いまここを超えていく力を感じ取っていただければ」と訴えかけている。

出展作家と作品

本展の出展作家は、2019年に第44回木村伊兵衛写真賞と第44回伊奈信男賞をダブルで受賞した岩根愛さんをはじめ、赤鹿麻耶さん(第34回写真新世紀グランプリ受賞)、菱田雄介さん(2008年および2010年に写真新世紀展佳作入選)、原久路さんと林ナツミさん(写真家ユニット、SNSを中心に〈世界を見つめる〉シリーズを発表)、鈴木麻弓さん(2017年Photobooxグランプリ受賞)の5組6名。

赤鹿麻耶〈氷の国をつくる〉より 2020年 作家蔵
菱田雄介〈border〉より 2013年 作家蔵
原久路&林ナツミ《三つ子ごっこ(めいは、よつば、さくら)》〈世界を見つめる〉より 2019年 作家蔵
鈴木麻弓〈The Restoration Will〉より 2017年 作家蔵

概要

会場

東京都写真美術館
東京都目黒区三田1-13-3 恵比寿ガーデンプレイス内

会期

2020年7月28日(火)~9月22日(火・祝)

開館時間

10時00分~18時00分
※木・金曜の夜間開館は休止。
※入館は閉館時間の30分前まで

休館日

毎週月曜日
※ただし8月10日、9月21日は開館、8月11日は休館

料金

一般700円、学生560円、中高生・65歳以上350円(ほか、各種割引あり)

出展作家プロフィール(引用)

岩根愛さん

1975年、東京都生まれ。1991年米ペトロリアハイスクール留学。帰国後96年に独立。2006年以降ハワイにおける日系文化に注視する。13年福島県三春町に拠点。移民を通じたハワイと福島の関わりをテーマに制作を続ける。18年写真集『KIPUKA』(青幻舎)を出版。19年第44回木村伊兵衛写真賞、第44回伊奈信男賞をダブル受賞。ドキュメンタリー映画『盆唄』(中江裕司監督作品、2019年)のアソシエイト・プロデューサーも務める。本展では、13年以上にわたって継続する代表作〈KIPUKA〉に加えて、初公開の新作シリーズを展示する。

赤鹿麻耶さん

1985年、大阪府生まれ。2008年関西大学卒業。10年ビジュアルアーツ大阪写真学科卒業。11年作品〈風を食べる〉で第34回写真新世紀グランプリ受賞。大阪を拠点に海外を含む各地で個展、グループ展を開催。夢について語られた言葉、写真、絵や音など多様なイメージを共感覚的に行き来しながら、現実とファンタジーが混交する独自の物語世界を紡ぐ。本展では、子供の時の心のときめきや時空を超えた感覚を追い求める旅を描いた新作シリーズ〈氷の国をつくる〉を初公開する。

菱田雄介さん

1972年、東京都生まれ。写真家・映像ディレクターとしてボーダー(境界線)が日常生活にどのような影響を与えるかをテーマに、国境や紛争地域を取材したドキュメンタリー写真を手がける。2008年および10年写真新世紀展佳作入選。17年に南北朝鮮の人々をとらえた写真集『border|korea』(リブロアルテ)を発表、コンセプチュアルで象徴的な表現によって大きな評価を得た。本展では、マスメディアの情報からこぼれ落ちる何気ない人物の姿に焦点をあてた映像作品シリーズ〈30sec〉他、作家が世界各地で撮影したポートレイトを中心に展示する。

原久路さん・林ナツミさん

2013年結成。原久路(1964年、東京都生まれ)と林ナツミ(1982年、埼玉県生まれ)による写真家ユニット。2011年以降〈本日の浮遊〉の共同制作を経て、14年東京から九州へ移住、大分県別府市を拠点に活動。コラボレーション作品を制作、発表する。SNSを中心に発表される〈世界を見つめる〉は、子供から大人へと成長する過程にある無名の少女たちを被写体として、彼女らの自由な行動や発想から生まれるポートレイトと地元・別府の都市風景からなる作品シリーズである。

鈴木麻弓さん

1977年、宮城県生まれ。出品作品〈The Restoration Will〉は「復元の意志」の意。ここでは2011年の東日本大震災による津波で被災した故郷・女川町の風景が、写真館を営んでいた実父の遺品レンズを通して写し出される。自身の幼少期の家族アルバムからの傷ついた写真が効果的に挿入されるなど巧みな編集によって作品は強靭なメッセージ性を持っている。17年Photobooxグランプリ受賞(イタリア)、18年PHOTO ESPANA International Photography Book of the Year受賞(スペイン)など欧州の写真アワードで大きく評価された注目シリーズを展示する。