イベントレポート
いすみ鉄道「カメラ女子のためのSNS映え撮影講座」
ローカル鉄道を撮影して写真をもっと楽しもう!
2019年11月22日 07:00
2019年11月4日、いすみ鉄道株式会社主催の「カメラ女子のためのSNS映え撮影講座」が開催されました。本イベントは、講師に鉄道写真家の遠藤真人さんを招き、列車を上手に撮るコツやSNSを活用する楽しみ方、沿線での撮影マナーや注意事項を学ぶというもの。参加対象は女性ですが、同伴の男性も参加できます。女性18名、男性2名の20名が集まり、のどかな田園風景の中を走る車両の撮影を楽しみました。
いすみ鉄道はJR外房線大原駅から乗り換え、大原駅から上総中野までの房総半島の中腹をのんびり走るローカル線。東京駅からは、特急「わかしお」号に乗り、約1時間15分でいすみ鉄道の始発駅となる大原駅にアクセスできます。春になると沿線のあちらこちらに菜の花と桜が咲いて、美しい車窓が楽しめることでも有名です。
ツアーは、いすみ鉄道唯一の有人駅である大多喜駅からはじまりました。今回の女性を対象にした撮影ツアーは、いすみ鉄道株式会社の代表取締役、古竹孝一氏が発案したそうです。企画した意図を伺いました。
「スマートフォンでSNSを楽しむ方が増えたことで、鉄道の写真は“撮り鉄”と呼ばれる鉄道ファンの方だけでなく一般の方もたくさん増えました。女性が発信することで世の中の流行やブームはできていることが多いです。多くの一般の人に鉄道のマナーを知ってもらうには、女性に発信していただくことがが、効果的でスマートだと思いました」
鉄道撮影を安全に楽しむためにマナーを知ろう
今回は、初心者や普段から撮影を楽しんでいる人を対象とし、参加者全員にニコンのデジタル一眼レフカメラ「D5600」が貸し出されました。
参加者20名のうち、デジタル一眼レフカメラを普段から愛用している人が約半分、そのうち鉄道写真を楽しんでいる方が5名ほどでした。
最初に遠藤さんからカメラの構え方や設定方法など基本的な使い方から学びました。
その後、鉄道写真における撮影マナーを教えていただきました。
遠藤さんいわく、
「最初からマナーを破って撮影しよう! という人はほとんどいません。マナーを守れない人が出てしまうのは、マナーを知らないからです。ですので、今日はみなさんに鉄道写真の撮影マナーを知ってもらいます。みなさんが安全に楽しく写真を撮っていただくことが、正しいマナーを多くの人に知ってもらうことにつながると思っています」
「鉄道は、あらゆる行動の“安全”の上でなりたっています。最初に安全に撮影するための基本ルールをご紹介します」
「鉄道を撮影するときの基本ポイントは3つ。①ご自身の安全の確保、②安全な運行の確保、③周囲への配慮です。撮影者が“自分は大丈夫”と思っていても、周りの人が危ないと感じたら、そこから事故につながります。まずは、自分の安全を最優先にすることが大切です」
運転席からの見え方を体験
座学の講義のあとは、大多喜駅の検修庫で車両を撮るグループと、運転席乗車体験のグループに分かれます。
撮影グループは、遠藤さんに撮影のポイントを教えていただきました。
「一眼レフカメラは普通に構えると横位置写真になります。列車は横に長いので風景と一緒に横位置で撮ることが多くなると思います。でも、ズームを積極的に使って縦位置でも撮ってみましょう。インパクトのある写真になりますよ」
「停まっている列車を撮る時は、目線の高さを低くして撮ってみるのがオススメです。今日使っているD5600は、液晶モニターの角度が変えられるので、ライブビューを使うと撮影がしやすくなりますよ」
「今のデジタル一眼レフカメラは高画素なので、大きく印刷した場合は少しのブレでも目立ちます。僕の場合、いすみ鉄道が走っている時は1/1,250秒、走り始めでも1/640秒を目安にシャッター速度を決めています」
「高速シャッターを切るためにISO感度をかなり上げることがあります。ノイズを心配する方もいますが、明るい状態ならISO感度を上げてもカラーノイズはそれほど目立ちませんし、画像処理で目立たなくすることができます。SNSに投稿するとリサイズされるので、印刷媒体ほどシビアにならなくても大丈夫です」
「反射を利用するのもオススメです。ローカル線の場合、ワンマン運転なので運転席の所にミラーが付いています。そのミラーに運転士が写っている、あるいは自分が写っているなど、撮りたいものをミラーに入れてみましょう」
遠藤さんの鉄道愛にあふれた話もたくさん聴けました。
「ツートンカラーの車両はレトロ仕様で作られています。鉄道好きには、窓枠がゴムの色がグレーなのが最高ですね。今の車両は黒いんですよ。昔の車両がグレーだったので、こちらのいすみ鉄道はあえてグレーにしています。この窓枠の色で、沿線に鉄道ファンが来るか来ないかが変わってきますね(笑) 文字も国鉄書体といってかなり忠実に再現しています」
運転士の目線で撮影マナーを学ぶ
運転席乗車体験では、現役運転士である渡辺さんから、撮影者に気をつけて欲しい点を教えていただきました。
「運転席から他の撮影グループの人たちを見ください。撮影していると安全だと思っていても、運転席から見ていただくと、かなり近くて怖いと感じると思います」
「鉄道用地は基本的に立ち入り禁止です。砂利のある辺りは入ってはいけません。運転士としては、撮影者が仮に貧血で倒れたとしても列車に接触することがない、安全な位置から撮って欲しいというのが本音です。有名撮影地にはたくさんの人が集まっています。そのような場所でギリギリまで多くの人が押し寄せると、もし押しあいで人が線路側に倒れてきたら怖いなと思っています」
危ないと感じたら、距離が遠くても警笛を鳴らすそうです。
「よく勘違いをされるのですが、危ない時は短急汽笛といって短い間隔で汽笛を鳴らします。でも、それを知らない方は“運転士さんが歓迎の挨拶をしてくれている”と思う方もいるそうです。短い汽笛を鳴らされた時は、自分はアウトだと思ってください」
「脚立を持って撮影する方も多いですが、列車の風圧などで脚立が倒れる可能性があります。脚立の撮影も危険ですので、運転士としては怖い行為ですね。安全な場所で、安全な方法で撮影いただけることがありがたいです」
「最近ではスマートフォンのライトが気になります。とくに夜、急にライトが当たると、目の前が5秒くらい真っ白になります。スマートフォンで撮影する方は、とくに気をつけていただきたいですね」
「運転席に座ることはなかなかないと思います。今日は運転士が実際にかぶっている帽子も用意しているので、ぜひ記念撮影もしてみてください」
レトロな上総中野駅でモデルを入れた鉄道撮影
いすみ鉄道では、土曜・日曜・祝日に大原駅で駅弁が購入できます。この日のお昼ごはんは、いすみの食材をたっぷりと詰め込んだ「いすみの宝石弁当」が用意されていました。菜の花カラーのいすみ鉄道をモチーフにしたパッケージで、中もカラフルなものばかり。味が美味しいことはもちろん、写真欲もそそられます。
お昼ご飯を食べた後、大多喜駅からいすみ鉄道に乗り、車内撮影をしながら終点の上総中野駅に向かいました。
上総中野駅は無人駅で、いすみ鉄道と小湊鐵道の共同駅です。中山駅では、運転士の渡辺さんと、いすみ鉄道の菜の花支店長ほちあまやかさんをモデルに、駅舎や列車の撮影を楽しみました。
遠藤さんが持参した撮影小道具を使い、渡辺さんやほちあさんに演出をしていきます。
約1時間の自由撮影を終えて、上総中野駅から大多喜駅に向かいます。レトロな駅舎で参加者同士を撮り合ったり、列車やモデルを撮影したりと、みなさん大満足の様子でした。
帰りの列車では、帽子と記念プレートが貸し出され、記念撮影をすることもできました。
大多喜駅に戻った後は、イベントで撮影した画像をInstagramにアップして、その画像で講評会をしました。
「講評会は善し悪しを評価するものではありません。みんなで同じ行動をしても撮影する写真がぜんぜん違うことに気づくと思います。みんながどんな場所を撮っていたのか、楽しみながら発表していただけたらと思います」(遠藤さん)
当日撮影した画像は、「#いすみ鉄道カメラ女子」「#いすみ鉄道」「#撮影マナー」「#大多喜町」「#千葉観光」というハッシュタグで見ることができます。
ツアーに参加したみなさんに感想を伺いました。
「撮影する際のマナーを運転士さんからも教えていただけて、今後撮影する時は気を付けようと思いました」
「運転手さんや可愛いモデルさんにポーズをとってもらったので、とてもフォトジェニックな写真が撮れて楽しかったです」
「机上の講座だけでなく、実際に現場で先生がすぐそばにいる環境でおすすめの撮影方法や写真コンテストでの審査のポイントなどを教えてもらえて、とても勉強になりました」
「マナーについてとてもわかりやすく説明いただきよく理解できました。今後は、自分だけでなく撮影場所で周りの方ともコミュニケーションをとりながら、しっかり守っていきたいと思います」
最後に、いすみ鉄道の助役鈴木さんに、いすみ鉄道のオススメシーズンと撮影スポットを教えていただきました。
「紅葉が染まる時期はその年によって変わりますが、11月末から12月中旬頃見ることができます。間違いないのが12月1日前後ですね。上総中野駅を降りて、粟又の滝がオススメです。粟又の滝は養老渓谷の源流になります。沿線の紅葉は大多喜駅から上総中野駅の間が比較的山を走りますので楽しむことができます。特に総元駅周辺から上総中野駅から見る紅葉はきれいです」
「いすみ鉄道のベストシーズンは春の菜の花と桜が咲く時期です。3月中旬〜4月中旬にかけて沿線を彩る黄色い菜の花とピンクの桜のコントラストは本当に美しいので、ぜひ来ていただきたいですね。また、6月は小谷松駅のアジサイもきれいで、撮影のお客さんが多くいます」
東京駅から特急列車、品川駅から高速バスが出ており、アクセスが良いいすみ鉄道。日帰りでのどかな田園風景が楽しめるので、ショートトリップにピッタリです。
また、いすみ鉄道は旅行会社と連携して、季節に応じた観光列車も運行しています。11月・12月の毎週土曜日に運行する観光列車は「おとなのピクニック」で、地元の食材を使った食事が楽しめるグルメ列車だそうです。
秋の行楽シーズンに訪れてみてはいかがでしょうか。