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齊藤小弥太写真展「永遠の園」
(大阪ニコンサロン)
(2013/6/6 00:00)
抜けるような青空の下、教会の賛美歌が聞こえ、アラビア海からの優しい風が旅人を包み込む。白い砂浜が水平線の向こうまで続き、エメラルド色のバックウォーターが町を流れる。南インドを旅した人は喧噪や混沌といった、おおよそイメージする「インド」とは思えない光景を目にすることだろう。作者も初めて南インドの町、コーチンを訪れたときに、北インドとの違いに驚いた覚えがあると言う。なにより、北インドでは嫌になるほど聞いた「バクシーシ!(施しを!)」という言葉を、南インドでは全くといっていいほど聞かなかった。
それもそのはずで、ここコーチンではキリスト教徒が全体の8割を占めており、カースト制度や貧困から逃れるために、キリスト教共産主義の思想が人々の中に根強く浸透している。そのため、弱者救済のコミュニティや終末ケアのコミュニティが数多く点在していた。作者が撮影した施設もそのひとつだった。
空港からオート三輪に揺られること約40分、閑静な住宅街の一角にその施設は建っていた。
「Good Hope -死を待つ家-」
その庭には南国らしい色鮮やかな花々が敷き詰められ、外界と隔離された静かな空間が広がっていた。この場所で彼らは日々を過ごし、そして最期の瞬間を迎える。
過去への後悔、現状への嘆き、未来への悲観。この終末ケアの施設にも確かに様々な苦悩や悲しみは存在していた。しかし彼らは言う。「今が一番いいときだよ。食べ物もベッドもある。これで満足だよ」と。
貧困や病気、DVや事故、様々な事情からここに辿り着いた彼らにとって、この場所は唯一の安住の地なのだろうか。アラビア海の優しい風と色鮮やかな花々に抱かれて、今日も彼らは静かに眠る。まるで彼らを守るかのように咲いている花々。その中で静かに流れるように過ぎてゆく日々。その苦悩や悲しみ、生きる姿を見つめ、カメラを向けた。そして作者は、彼らを守るあの園が永遠であることを願う。モノクロ30点。
(写真展情報より)
齊藤小弥太写真展「永遠の園」
- 会場:大阪ニコンサロン
- 住所:大阪市北区梅田2-2-2 ヒルトンプラザウエスト・オフィスタワー13階
- 開催日:2013年6月20日(木)~2013年6月26日(水)
- 時間:10時30分~18時30分(最終日は15時まで)
- 休館:会期中無休