ニュース

【CES】説明会で聞いた「FUJIFILM X100S」「FUJIFILM X20」詳報

 既報の通り、富士フイルムは2013 International CESの開幕にあわせ、「FUJIFILM X100S」と「FUJIFILM X20」の発売を発表した。2機種に関する説明会が現地であったので、そこで得られた情報をお伝えする。

左からFUJIFILM X100S、FUJIFILM X20

 説明は、富士フイルム電子映像事業部商品部担当課長の河原洋氏。

※使用画像に「Highly Confidential」の文字がありますが、説明会当日はすべて公開情報となっているものであり、掲載には問題がないことを確認しています。

見た目は変わらないが中身は強化

 FUJIFILM X-Pro1を頂点にラインナップを広げたXシリーズだが、各モデルにおける購入者層は幾分異なる。特に今回の2機種の前モデルにあたる「FUJIFILM X100」と「FUJIFILM X10」は、カメラ好きのマニア層より、どちらかというとライト層に受け入れられた面があるという。

 例えば同社のインターネット調査によると、X-Pro1購入者で約50%を占めるのが「趣味としてのカメラ/写真撮影を楽しんでいる」「機器や撮影技法などにこだわりを持っている」「写真撮影のために出かけている」というユーザー。レンズ交換式で硬派な見た目を持つX-Pro1なら、妥当なところだろう。

 一方X100では、上記のユーザー層が18%、X10では24%にとどまっており、代わりに「機器や撮影技法はよくわからない」「スナップ」「記録用」と答えた人が、X100で71%、X10で63%と多くなる。

 また、女性の購入者はX100が38%、X10が28%と比較的高い割合を占めているという。購入理由についても特徴的で、デザインや長く使うことができそうな点を評価する声が、4割以上にものぼるという。

 こうした面から富士フイルムでは、今回の新製品については「デザインは変えない(守る)」「操作性はユーザーの声を反映して変える」「進化するデジタル技術は取り入れる」といった要素を重視したという。

 つまり、定評ある外観と光学系は前モデルをほぼ踏襲しつつ、センサー、画像処理エンジンにまつわる新しい技術を投入。さらに操作性向上の工夫を取り入れた。

 まず、2機種に新搭載されたX-Trans CMOS IIは、既存のX-Trans CMOSに対し、像面位相差センサーを内蔵。X100の弱点だったAFスピードを0.22秒から0.08秒に短縮した。X20についても0.16秒から0.06秒となり、どちらもクラス最速としている。

X100S、X20の2機種とも、像面位相差AFに対応。特に、APS-CセンサーでコントラストAFのみだった、X100のAF速度改善がうれしい

 この像面位相差AFは、動画撮影にも効果的だという。動画については、X100SはフルHD化、X20は30fpsから60fpsへと進化しているのもポイントになる。

 もちろん、光学ローパスフィルターを搭載しない、既存のX-Trans CMOSの特徴は継承。X100、X10ともに一般的なベイヤーフィルターのセンサーだったため、X-Trans CMOS IIを採用した新機種の解像力向上には期待がかかる。特にX10は描写特性が幾分ソフトだったこともあり、X-Trans CMOS IIの導入で性格がどう変わるか見物だ。

左から1/2型EXR CMOS II、2/3型X-Trancs CMOS II、APS-C X-Trans CMOS II

 起動時間や連写性能といった、AF以外のレスポンス面も向上している。これらは新規の画像処理エンジン「EXR Processor II」の力によるもので、X100とX100Sを比べると、起動時間は2秒から0.5秒に、連写速度は5コマ/秒から6コマ秒に、撮影間隔は0.9秒から0.5秒といった具合だ。

 またEXR Processor IIでは、ノイズ処理も強化された。X100S、X20ともに約1段分のノイズ低減を実現したという。

 EXR Processor IIから導入された新技術としては、「点像復元技術」(Lens Modulation Optimizer)がユニークだ。河原氏も「上手いネーミングができなくて」と苦笑する固い響きの言葉だが、これは小絞りによる回折現象をデジタル処理で補正するもの。本来シャープで細かな被写体(点像)を、信号処理技術で元に戻す(復元)のがコンセプトとなっている。同社がX-Pro1で打ち出した光学ローパスフィルターレスに続く、さらなる高画質技術に位置づけたいとする。

今回の目玉の一つが「点像復元技術」。回折現象は画素数が増えるにつれて起きやすくなるので、今後の展開にも注目したい
点像復元技術の詳細。絞りによる影響を点像情報を用いて元に戻す

 点像復元は、X100SだとF16、X20だとF8が最も効果が大きくなる。また、JPEGにしか効果は現れず、RAWデータには適用されない。

X100は「デジタルスプリットイメージ」を搭載

 以上のX100S、X20共通の進化点に加え、X100Sでは下記の変更が加えられている。

FUJIFILM X100S

 まず、ハイブリッドビューファインダーにおける電子ビューファインダーの液晶が、144万ドットから236万ドットになった。光学ファインダーへの切替機構は継承する。

電子ビューファインダーのドット数が236万にアップした

 ちなみにファインダーはゴミの入りにくい構造になるとともに、防汚コートが新たに施された。「他人がカメラに触るとファインダーに指紋をつけられやすい(笑)」(河原氏)という、X100ユーザーならではの不満に応えたものだ。

 また、フォーカスリングの操作性が向上したという。レンズ内部のリフレクター(電子フォーカスリングを作動させるため、センサーが読み取るために設けられたパターン)のピッチを狭めることで、マニュアルフォーカス時によりリアルな反応が得られるようになった。フォーカスピーキングの表示も高コントラスト部の輝度をアップさせるなど、使いやすさを向上させたという。

フォーカスリングの分解能を高めたことで、操作性の向上を図った

「デジタルスプリットイメージ」も、マニュアルフォーカスにまつわる新機能。本来、AF用に利用される位相差画素だが、そこから得られた画像を利用している。位相差画素エリア内のみ4分割されたモノクロ画像となり、合焦していない場合は左右にずれた状態となり、合焦すればずれがなく表示されるというもの。銀塩カメラのファインダーにおけるスプリットイメージを思わせる機能で、マニュアルフォーカス時の合焦精度は通常より高くなるという。

同社が「新しいマニュアルフォーカス方式」と呼ぶ、デジタルスプリットイメージ
デジタルスプリットイメージを使うと合焦精度が高まるというデータ

 前述の通り、外観には大きな変更はない。ただし、操作性に関連する部分など、細かい変更点がいくつかある。

 例えば、フィルム一眼レフカメラのセルフタイマーレバーを意識してたボディ前面のファインダー切り替えレバーが、指掛かりの良い形状になった。

ファインダー切替レバーの形状が今風になった

 また「ダイヤル類が勝手に回ることがある」との声には、シャッタースピードダイヤルと露出補正ダイヤルをそれぞれ0.2ニュートンcmだけ重くして対処した。露出補正ダイヤルのトルクは、「親指1本で回せる限界の重さ」に仕上げたそうだ。

 加えてシャッタースピードダイヤルは、Aポジションと1/4,000秒の間を拡大。さらに0.2ニュートンcmのトルクの重みを加えることで、誤作動を防いでいる。

ダイヤル類は勝手に回らないようギリギリの重さに調整。シャッタースピードダイヤルのAと4000の間も従来より開いている

 ボディ側面のフォーカススイッチにも手が加えられた。フォーカスモードの並び順「MF/AF.S/AF.C」を「MF/AF.C/AF.S」(ともに上から)に変更。最も使うと思われるAF.Sを中央から一番下に変更することで、誤作動を防止する考えだ。

 背面では、DRIVEとAFの位置を入れ替えた他、MENU/OKボタンのアールを9.7mmから23mmに変更。ボディからとびでる高さが0.47mmから0.77mmになったことで、操作性が向上したという。逆に、RAWボタンの代わりに新設されたQボタンは、アールを6mmから0mmに、高さを0.59mmから0.10mmに抑えてフラット化。予期せず押してしまうミスを軽減する。

 ストラップ穴の内側にはステンレス素材を入れた。これにより強度がアップしているとのこと。

 その他、装着性を高めるため、ホットシューのテーパー形状を変更。レンズ前面のフロントリングは着脱しやすくなるように、厚みを0.3mm増したという。

28mm相当になる専用ワイドコンバージョンレンズや、ボディケースを装着した状態。X100ユーザーのボディケース装着率は、およそ50%程度にものぼるという

ファインダーに撮影情報が表示されるようになったX20

 X20については、撮像素子にX-Trans CMOS IIを迎えたことに加え、光学ファインダー内にデジタルトランス液晶を導入したのが最大のポイント。これにより、フォーカスポイント、シャッター速度、絞り値などの撮影情報がファインダー内に表示されるようになった。

FUJIFILM X20
ファインダー光路に薄膜のデジタルトランス液晶を装備。ファインダー内に撮影情報が表示されるようになった

 操作性の向上については、上位機種で導入済みのQボタンを搭載した。設定項目を一覧表示し、ダイレクトに変更できるQメニューを呼び出すボタン。また、フォーカスピーキングも今回からとなる。

Qボタンを搭載。Qメニューを呼び出せる

 X100S同様、外観に大きな手は加えられていない。ただし、X10になかったシルバーボディを投入したのが大きい。これは市場の声を取り入れたもので、X10から続くブラックモデル同様、外装にはマグネシウム合金を採用。ぱっと見は「小さなX100S」といった趣きで、ブラックモデルとは違った印象を受けた。X100は女性からの支持が厚いモデルだが、ボディサイズが小さいX20は、シルバーモデルを迎えたことで、さらに女性受けする可能性を秘めているのではないだろうか。

 その他細かい点としては、X100Sと同様、ストラップ穴の内側にステンレス素材を追加して強度をアップ。また、レンズ鏡筒からのゴミ侵入を防ぐよう改善したという。

要望の高かったシルバーボディを追加。細かな変更点も見られる

(本誌:折本幸治)