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和田悟志写真展「すべてそこにある」

(ニコンサロンbis大阪)

作者の地元は福島第一原発から約65キロメートル離れているのだが、高い放射線の線量が計測されており、いわゆるホットエリアが点在している。また、地震の被害も大きかった。

作者は東日本大震災・原発事故をきっかけに、自分自身の出自を強く意識するようになった。そして、“故郷がいつか失われるかもしれない”という寂寥感に駆られ、以前にも増して、しっかりと故郷と向き合って写真に収めようと努めた。

一方、震災以前より『vanishing』というこの世の無常観をイメージ化、つまり“永遠不変のものはない”という現実を示唆する風景写真のシリーズを制作中だった。それらは野焼きや火山、霧などがモチーフとなっているのだが、いつしか作者は、『vanishing』の作品群と故郷の景色とを重ねて見るようになっていた。今回展示するのは、故郷の写真と『vanishing』とを掛け合わせたものである。

とはいえ、この作品は大きな矛盾をはらんでいる。それは、地元で写真を撮り続けているうちに、『vanishing』の主題(現実)と作者の感情に乖離が生じてきたからだ。

作者は、地元の風景が以前から何ら変わることがない、という錯覚にとらわれるようになっていった。もちろん、実際には、あらゆる変化が起きているのだが…。これらの作品は、こうした作者の感情と現実とをすり合わせることにも意義がある。

このように考えると、あくまでも震災や原発事故は、今回の作品のきっかけに過ぎず、それよりも、無意識のうちに、時間の経過が作者に与えていた影響のほうが大きかった。

今回、1つの形にまとめはしたが、これは完結ではなく、これからも続けていく作品だという。「すべてそこにある」というタイトルの“すべて”には、作者自身の安堵感も不安感もがないまぜになっていて、相反する様々な要素をも含んでいる。カラー約30点。

(写真展情報より)

  • ニコンサロンbis大阪
  • 住所:大阪府大阪市北区梅田2-2-2ヒルトンプラザウエスト・オフィスタワー13階
  • 会期:2013年7月25日(木)〜2013年7月31日(水)
  • 時間:10時30分〜18時30分(最終日は15時まで)
  • 休館:会期中無休

(本誌:折本幸治)