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下瀬信雄写真展「つきをゆびさす」

(銀座ニコンサロン)

指(し)月(がつ)は仏教用語で、仏教の教えを指にたとえ、法(教え)を月にたとえていう。月を指し示すのに、その指先しか見ないと月を失う。という故事に由来する。

作者の育った萩には指(し)月(づき)公園という城跡があり、子供の頃からよく遊びに行った。その重箱読みの名前の由来を知ったのはずいぶん後のことだ。

萩城は別名「指(し)月(づき)山(やま)城」とも呼ばれ、倒幕後、その地には志(し)都(づ)岐(き)山(やま)神社が建立され、城跡は公園になった。「指月山」も「志都岐山」も当て字だが、もちろん歴史と意味がある。

写真はその場の現実しか写せない。事実である分リアリティーがあり、インパクトもあるが、指し示す「真実」とはほど遠い。

作者は言う。自分に「指し示す真実が見えるか」と言うと、そんなことはなく、写す対象も小さな出来事だけである。

写真一枚一枚に思い入れがあり、物語があり、当て字のような仕掛けがあろうとも、真実の方向を向いているのかも疑わしい。そもそも、その物語でさえごく個人的なことばかりである。でも小さな虫達への興味も、雑事の合間の人々との触れ合いも、光りの中に浮かび上がる風景も、多分等価に真の何かを指し示しているように思うという。

これらは脈絡がないように見えて、一つのもの、日常を集めて浮かび上がるエッセイのようなもの。そして写真でしか表せない表現。作者はそれらを集めて一望してみようと思った。なぜなら、なによりそんな写真を作っていく行為が、作者自身を形作ってきてくれて、考え方や生き方と無縁ではありえないように思うからだ。モノクロ50点。

(写真展情報より)

銀座ニコンサロン

  • 住所:東京都中央区銀座7-10-1 STRATA GINZA(ストラータ ギンザ)1・2階
  • 開催日:2013年7月17日(水)~2013年7月30日(火)
  • 時間:10時30分~18時30分(最終日は15時まで)
  • 休館:会期中無休

大阪ニコンサロン

  • 住所:大阪府大阪市北区梅田2-2-2ヒルトンプラザウエスト・オフィスタワー13階
  • 会期:2013年8月8日(木)〜2012年8月21日
  • 時間:10時30分〜18時30分(最終日は15時まで)
  • 休館:会期中無休

(本誌:鈴木誠)