オリンパス、第三者委員会の調査報告書を公開

~東証はオリンパス株を「管理銘柄(審査中)」に追加指定

 オリンパスは6日、同社の損失先送り問題を調査していた第三者委員会の調査報告書を受領し公開した。

 この中で、損失処理策の存在を知っていたのは実行者である森久志前副社長、山田秀雄前常勤監査役のほか、菊川剛前社長、下山敏郎氏元社長、岸本正寿元社長、太田稔元経理部長だったとした。

 オリンパスは、1985年以降の円高による営業利益減少を受けて財テクに積極的に乗り出した。しかし1990年にバブルが崩壊すると運用による損失が増大し、それを取り返すためにハイリスク・ハイリターン商品に手を出したことから運用損は飛躍的に膨れあがり、1990年代後半には1,000億円近くの含み損となった。その後も先送り策を持って含み損に対応していた。

 その後2000年4月に開始した新会計基準に合わせるため、抱える運用損を簿外に分離する「飛ばし」と呼ばれる損失処理スキームを考案。オリンパスの連結決算から外れるファンドなどを利用して含み損を抱える金融資産を簿価で売却した。このようにして飛ばした受け皿ファンドの金融資産はほとんど無価値であり、いずれ解消が必要だったことから、M&Aを利用して通常より遙かに高額な買収代金やフィナンシャル・アドバイザー報酬の支払いを装って資金を捻出。受け皿ファンドに流し込みこのような金融資産を解消したという。こうした買収代金を会計上の連結貸借対照表上の「のれん」に計上し10~20年で償却するものだったとした。

 損失処理策は、第三者委員会が「ヨーロッパ・ルート」、「シンガポール・ルート」、「国内ルート」と呼ぶ3つのルートを使用。それぞれの投入額は約650億円、約600億円、約300億円で、計1,550億円を損失分離スキームに投入していた。

 第三者委員会ではこれらの行為を「金融商品取引法や会社法に違反する行為で、投資家に正しい情報を提供すべき上場企業としてあってはならないこと」だとした。同委員会では、辞任した役員以外も不正経理に多少なりとも荷担したり、監査法人からの指摘を受けつつも対応しなかった監査役など旧経営陣は一新するべきだとした。加えて、「不法行為に荷担した関係者は、その法的責任を追及されるべきことを指摘せざるを得ない」ともしている。

 一方で、「オリンパスはもともとまじめな従業員と高い技術力を有する健全な企業で、企業ぐるみの不祥事が行なわれたわけではない」とし、「旧経営陣を中心とする病巣を剔抉し、人心を一新して再生を目指すべきである」と締めくくった。

 なお東京証券取引所は同日、東証一部上場のオリンパス株について新たに「管理銘柄(調査中)」に追加指定した。オリンパスが過去の有価証券報告書を今後訂正をすることから、訂正内容の審査によっては上場廃止基準に該当すると判断したため。

 オリンパス株は中間期決算の提出が遅れていることから、現在「管理銘柄(確認中)」にも指定されている。東証では引き続き、提出期限である12月14日までに四半期報告書の提出がない場合、オリンパス株が上場廃止になるとしている。

 オリンパスは、2007年~2011年に提出した有価証券報告書の訂正報告書を提出する予定。また、12月14日までの2012年3月期第2四半期決算提出を目指すとしている。

※岸本正寿氏の「寿」は環境によって表示されないため別の字で代用しています。





(本誌:武石修)

2011/12/6 18:28