稲田智代写真展「パレード」(銀座ニコンサロン)


作者が『詠人知らず』という言葉を知り、強く惹かれたのは中学の頃だった。
その言葉に作者は、茫洋と揺れながら光る野原を見た。あらゆるものが出逢い別れ、なにもとどまることが出来ない場所。それはまるで、いのちの営みそのものではないかと、今になって思う。
2005年から、いくつかの近しいいのちを見送ってきた。そして今、作者は病院の病棟で働きながら写真を創っている。
いのちに寄り添い続ける日々のなかで、ほんとうにかけがえのないものは、ありふれた日常にこそ厳然とある。私達はあらゆるものと繋がり、溶け合いながら、同時にくっきりと『ひとり』だ、自分自身を生きるしかないのだと、痛いくらいに感じている。そしてその痛みは、透明で凜とした夜明けの光のように、作者の奥底を照らす。
いのちは出逢いも別れも、光も影も、生も死も等しく抱きながら続いていく。まるでパレードのように。
本展は、『詠人知らず』の物語をと祈り、紡いだ写真群である。モノクロ50点。
(写真展情報より)

  • 名称:稲田智代写真展「パレード」
  • 会場:銀座ニコンサロン
  • 住所:東京都中央区銀座7-10-1 STRATA GINZA(ストラータ ギンザ)1・2階
  • 開催日:2011年11月23日~2011年12月6日
  • 時間:10時30分~18時30分(最終日は15時まで)
  • 休館:会期中無休

(本誌:武石修)

2011/11/8 00:00