ニコン、「COOLPIX」の2010年春モデル発表会を開催
手にしているのはCOOLPIX S8000(左)と同S6000(右) |
ニコンは23日、コンパクトデジタルカメラ「COOLPIX」シリーズの2010年春モデル新製品を発表。都内で記者発表会を行なった。
今回発表になったのは、光学7倍ズームレンズ搭載の薄型モデル「COOLPIX S6000」、タッチパネルを搭載する「COOLPIX S4000」、5色のカラーバリエーションを用意した「COOLPIX S3000」、フルHD動画対応の高倍率機「COOLPIX P100」の4機種。それぞれの機種に関する詳細は、既報の記事を参照されたい。
■失敗をなくすためのテクノロジー
執行役員 映像カンパニー開発本部長の風見一之氏 |
同社執行役員 映像カンパニー開発本部長の風見一之氏は、2009年のCIPA統計による総出荷台数が前年比で13%減のところ、ニコンでは8%増。数量シェアも9.6%から11.8%に増加したと説明した。
ニコンでは失敗なく写真を撮れるようテクノロジーを追求し、2010年は暗所画質を向上した「夜撮りキレイテクノロジー」で訴求するという。
夜撮りキレイテクノロジーは、レンズシフトによる補正効果が約3段分という「手ブレ補正」(VR)に加え、暗所でも自然に撮れるストロボ制御や高感度シンクロ撮影を行なう「新フラッシュ制御」、新開発の画像処理エンジンによる「高感度低ノイズ」、夜景や望遠写真のブレを防ぐ「モーション検知」の4つの技術からなる。厳しい条件での撮影に不満をもつユーザーや、普段は携帯電話の内蔵カメラで撮影するが、いざという時にちゃんと撮りたい層に訴求する。
■スタイリッシュ高倍率機への需要
映像カンパニー第一マーケティング部第二マーケティング課マネジャーの楠本滋氏 | 2010年春モデルのポジショニングマップ |
同社映像カンパニー第一マーケティング部第二マーケティング課マネジャーの楠本滋氏は、今回発表になる4機種も含め、2010年春モデルの紹介を行なった。
新製品のトピックスは、光学7~10倍のズームレンズを搭載する高倍率スタイリッシュモデルの導入と、暗所画質の強化。また、春モデル全8機種中5機種がHD動画記録に対応し、市場のトレンドに追従する。
発売済みのCOOLPIX S8000 |
加えて、発売済みの「COOLPIX S8000」が搭載する3型92万ドットなど、モニターの高精細化も特徴。高いコストパフォーマンスも実現したという。カラーバリエーションなどの充実による女性層へのアプローチも推進する。
同社の調べによると、近年の市場では7倍を超えるズームレンズ搭載機のシェアが上昇しているという。しかし5~7倍のズームレンズを搭載する機種のユーザーのうち7割は、ボディの厚さが増すことに対して抵抗を感じており、スタイリッシュな高倍率機に対する需要が今回の新機種のテーマとなっている。
また、デジタルカメラのユーザーを対象にしたアンケートにおいて、暗い場所での画質、撮影画像のブレ、シャッタータイムラグに対する不満が多く、そのニーズに応えるべく導入するのが、COOLPIX S8000から搭載の「夜撮りキレイテクノロジー」だという。
今回発表の「COOLPIX S6000」は、2010年春モデルのメインとなる機種。ズームレンズを従来モデル「COOLPIX S640」の5倍から7倍に高倍率化し、7倍クラスで世界最薄のボディを実現した。暗所画質や画素数の向上も行なった。
COOLPIX S6000 | 背面 |
側面。光学7倍のズームレンズを望遠端まで伸ばしたところ |
「COOLPIX S4000」は、タッチ式液晶モニターを搭載。20~30代の女性をターゲットとする。従来機種「COOLPIX S230」との違いは、タッチシャッター機能の新搭載、光学4倍ズームへの高倍率化、有効1,200万画素への画素数向上、液晶モニターの高精細化(46万ドット)。タッチパネルで画像の装飾を行なえる「ペイント」機能も備える。店頭予想価格は2万5,000円前後の見込み。
「COOLPIX S3000」は、COOLPIX S4000に同じく20~30代の女性をターゲットとし、5色のカラーバリエーションを特徴とする。従来機種「COOLPIX S220」からの変更点は、液晶モニターの大型化(2.7型)、高画素化(有効1,200万画素)、ズームレンズの高倍率化(光学4倍)、ボタンの大型化。店頭予想価格は2万円前後の見込み。
COOLPIX S4000 | COOLPIX S3000 |
「COOLPIX P100」は、“ニコンらしい商品”と評価されているという「COOLPIX P80」、「同90」の後継機種。光学26倍ズームレンズとフルHD動画(H.264)撮影機能を特徴とする。店頭予想価格は5万円前後の見込み。
同社のデジタルカメラで初採用となる裏面照射型CMOSセンサーを搭載し、10コマ/秒の連写や、画像の連写合成による撮影機能を利用できる。シーンモード「夜景」は連写合成によりブレやノイズを抑え、シーンモード「逆光補正HDR」は、露出の異なる画像の合成により白飛びや黒つぶれを抑える。
COOLPIX P100 | 背面 |
側面。液晶モニターをチルトさせたところ | 上面にステレオマイクを装備 |
なお、今回はCOOLPIX P100のみとなる裏面照射型CMOSセンサー採用機種の展開については、今後ユーザーの反応を見ながら検討するという。
■「830万台の市場があることが大事」
ニコンイメージングジャパン取締役社長西岡隆男氏 |
ニコンイメージングジャパン取締役社長西岡隆男氏は、デジタルカメラの市場概況と同社の2010年の取り組みについて説明した。
リーマンショック以降、コンパクトデジタルカメラの市場は対前年同月を割っていたが、2009年の夏より回復基調にあると説明。CIPA統計における2009年のレンズ一体型総出荷台数の830万台を挙げ、「830万台の市場があることが大事」と話した。同社の年間シェアは8.1%で、2009年秋より上昇傾向にあるという。2010年春モデルで発売済みのCOOLPIX S8000も市場で高い評価を得ていると話した。
同社における2009年の秋は、日本初の有機ELモニターを採用した「COOLPIX S70」や、世界初のプロジェクター内蔵デジタルカメラ「COOLPIX S1000pj」など、“個性派揃いの商品ラインナップ”だったと振り返る。
2010年春のイメージキャラクターは、引き続き幅広い人気の木村拓哉さんを起用。COOLPIX S6000では“暗いシーンも、一度で決める。”がキャッチコピーのテレビCM「犬と夜景編」を3月11日より放映する。2009年はテレビCMの投入量増加やイメージの刷新も行ない、デジタル一眼レフカメラ「D5000」および「COOLPIX S640」のCMが高い評価を得たという。
デジタル一眼レフカメラの市場は2009年末から回復の兆しがあり、まだ潜在的需要があると考えているという。同社は年末年始におけるシェアで数量ベース・金額ベースともに首位に立った。
そのほかの取り組みとして、写真文化活動の推進を挙げた。「ニコン塾」から発展・拡大した「ニコンカレッジ」は、4月に新たな常設校として「横浜ランドマークタワー校」を開設すると発表した。
また、顧客満足向上のため3月より「アフターサービスの一律料金制」、「預かり修理品の送料無料」(ニコンサービス機関へ持ち込みおよび送付のものに限る)、「修理品納期短縮」(D5000、D3000、キットレンズ、COOLPIX全般の翌日出荷開始)を行なうことも発表した。
なお、同社は3月11日よりパシフィコ横浜で開催する「CP+」において“選ぶ・学ぶ・発表する”をテーマに、昨年(PIE2009)比1.5倍の広さを持つブースで出展する。会場ではCOOLPIX S6000の貸し出しなども実施するという
■“次世代コンセプト”のカメラを研究開発中
PMA 2010で新たにソニーが開発発表したミラーレス機に関する質疑応答で、同社は「ニコン、キヤノンなど伝統的な一眼レフだけでなく新しいものが出てくるのは市場全体の活性化として良い。市場は広がると思っている」と回答。
同社でも新しい「次世代コンセプト」のカメラについて研究開発を進めているが、現段階では具体的な内容や時期を話すことはできないとしていた。今後も市場の動向を見ながら検討を続けるという。
2010/2/23 18:42