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ソニーとQDレーザが網膜投影カメラキットを寄贈…全国の盲学校と視覚障がい者施設・団体に

ソニーイメージングギャラリー 銀座ではロービジョン者による写真展も

東京都立八王子盲学校で行われたカメラの寄贈式にて。後列左がソニー株式会社イメージングエンタテインメント事業部・大島正昭事業部長、後列右が株式会社QDレーザ・宮内洋宜事業推進室室長、前列は八王子盲学校の生徒2名

ソニー株式会社と株式会社QDレーザは4月24日(水)、全国の盲学校と視覚障がい者施設・団体に向けて、約200台の網膜投影カメラキット「DSC-HX99 RNV kit」を寄贈したと発表。同日、東京都立八王子盲学校にてカメラの寄贈式を行った。

DSC-HX99 RNV kitは、ソニーのデジタルカメラ「サイバーショットDSC-HX99」と、QDレーザが開発したレーザ網膜投影方式ビューファインダー「RETISSA NEOVIEWER」を組み合わせたカメラキット。網膜にレーザ(ファインダー像)を直接投影するため、眼のピント調節能力の影響を受けにくく、従来のビューファインダーや画面では見えづらいロービジョン者でも撮影が楽しめるという製品だ。

DSC-HX99 RNV kit

ソニーによると、ロービジョン者の定義は「何らかの原因により視覚に障がいがあり、メガネやコンタクトレンズを装着しても『見えにくい』『まぶしい』『見える範囲が狭くて歩きにくい』など日常生活での不自由さをきたしている状態」のこと。世界で2億5,000万人、日本国内では145万人と推定されているという。

5月10日(金)~5月16日(木)の期間、ソニーイメージングギャラリー 銀座では、ロービジョン者がDSC-HX99 RNV kitで撮影した写真の作品展も開催する。

八王子盲学校でカメラの寄贈式が開催

4月24日(水)に行われたカメラの寄贈式には、ソニー株式会社イメージングエンタテインメント事業部の大島正昭事業部長と、株式会社QDレーザ 事業推進室の宮内洋宜室長が出席。八王子盲学校からは生徒3名(高校3年生1名、小学3年生2名)が参加した。

カメラを受け取った生徒たちは、さっそく校内にて試し撮り。夢中でファインダーをのぞいた。高校3年生の南乃綾さんは、普段であればぼやけてしまうぬいぐるみの顔をはっきりと見ることが出来たという。「このカメラを使ったら、これから世界が広がりそうだなと思いました」と感想を話してくれた。

八王子盲学校の田島由紀子校長は、子どもたちの自立と社会参加のためには、積極的に外に出たい、外で豊かな経験をしたいという気持ちが大切という。「学びには、驚きだったり、知る楽しみがとても大事なので、(カメラキットを)そういうところに生かしたい」とコメントした。

「マイナスをゼロにするのではなく、プラスの価値を生活に提供する」というのが、QDレーザの立ち上げた“With My Eyes”プロジェクトのコンセプト。これまで見えにくかったものを見えやすくする、というのもひとつの目的だが、写真を撮ること、カメラを持って撮影に出かけるということ、撮った写真を共有してコミュニケーションをとること、そういった機会の創出を目指して製品開発を進めてきたのだと宮内洋宜氏(QDレーザ)は語る。

友達同士での撮りあいっこも楽しんだ

同製品は2023年3月に発売。発売以降、カメラを使用したロービジョン者の多くから、撮影することやそれを他者と共有できることについての喜びの声が届けられているという。大島正昭事業部長(ソニー)は、「今回の寄贈を通して、誰しもが自分の個性を伸ばしたり、自己表現が楽しめる、そして感動を分かち合える機会を作っていきたい」とコメントした。

α向けモデルのプロトタイプ。製品化は未定だが、使用者の選択肢を増やしていく考えだ
本誌:宮本義朗