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京都大学岡山天文台に、キヤノンの超高感度CMOSを使った新観測システム「TriCCS」。複数波長を同時撮像

「TriCCS」が搭載されたせいめい望遠鏡(京都大学岡山天文台)

キヤノン株式会社は5月12日、同社の超高感度CMOSセンサーを採用した新観測システム「TriCCS」(トリックス)が、京都大学岡山天文台(岡山県浅口市)で8月2日に本格稼働を開始すると発表した。

京都大学岡山天文台は2018年に開設。可視光から近赤外領域を観測する「せいめい望遠鏡」を2019年2月から稼働している。新観測システムTriCCSはこの望遠鏡に搭載。高速で複数の波長の光を検出できる特徴により、遠く離れた宇宙空間で発生した暗い天体や、光度が急激に変化する天体の観測を目的としている。

近傍星形成銀河M82(京都大学岡山天文台/東京大学)
近傍銀河M51(京都大学岡山天文台/東京大学)
惑星状星雲M97(京都大学岡山天文台/東京大学)
球状星団M13(京都大学岡山天文台/東京大学)

TriCCS(Tricolor CMOS Camera and Spectrographの略)には、同社の超高感度CMOSセンサー「LI3030SAM」(2020年10月発売)などを採用。超高感度を実現しつつ、最大98fpsで撮影できる点、800nm付近にも高い感度を持つ点が採用のポイントとなった。同じくキヤノンの超高感度センサーを採用する東京大学木曽観測所の観測システム「トモエゴゼン」との連携で、発見された超新星に対して数日以内に追及観測を行うこともできるという。

光度を検出する仕組みは、入射光をダイクロイックミラーやフィルターで波長ごとに分光し、3台のカメラに送り、それぞれの波長の光で見た画像を、高速で同時に取得するというもの。これにより天体の微弱かつ短時間の光度変化を検出できるようになったとしている。

「TriCCS」内部の仕組み
本誌:鈴木誠