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キヤノン、グローバルシャッター搭載のCMOSセンサーを開発

全画素同時露光でローリングシャッター歪みを解消

新開発のCMOSセンサー

キヤノンは8月31日、全画素を同時に露光するグローバルシャッター機能を搭載するCMOSセンサーを新開発したと発表した。具体的な製品化の見通しはまだ明らかになっていない。

一般的なCMOSセンサーは画素行ごとに順次露光するローリングシャッター方式のため、画面内で信号読み出しに時間差が起こり、高速で動く被写体が歪んで写るなどの現象が発生することがある。

新開発CMOSセンサーでは、全画素を同時に露光するグローバルシャッター機能を搭載したため、回転するプロペラや高速移動する電車なども正確な形状を撮像できる。CMOSセンサーの画素内にメモリーを設けることで実現した。

加えて、信号電荷のメモリー蓄積時に新駆動方式を用いたことにより、飽和信号量が拡大し、広ダイナミックレンジも実現。各画素内の配置最適化により集光効率を高め、高感度化とノイズ低減も可能になったという。

同社では、グローバルシャッター搭載CMOSを検査用カメラなど産業用途への応用や、映像分野への展開も検討していくとしている。

グローバルシャッターで何が便利になるか?

CMOSセンサーのローリングシャッター歪みは、被写体がグニャグニャと歪んで見えることから"コンニャク"とも呼ばれ、動画撮影時にカメラを振った際などに顕著に現れる。デジタルカメラにおけるグローバルシャッターは、メカシャッターで歪みを抑えられない動画撮影での恩恵が特に大きいだろう。

かつてデジタルカメラに多く採用されていたCCDセンサーは全画素同時露光だったが、駆動に高電圧が必要で消費電力も大きかったため、センサーからの読み出しを長時間続ける動画記録やライブビュー機能の実現において、低消費電力で高速化しやすいCMOSセンサーとトレードオフの関係にあった。

ローリングシャッター歪みを打開する先行例として、ソニーが積層型CMOSセンサー「Exmor RS」でDRAMメモリーを一体化し、画面内の読み出し時間差を短縮。従来比約5倍という読み出し速度で、走る電車などをメカシャッターを使わずに撮影しても形状の歪みが感じられないほどになった。

今後の可能性としては、利便性を落とさずにメカシャッターを省いてカメラ構造を簡素化したり、シャッター振動のない緻密な撮影が行えたり、より高速なフラッシュ同調や、フィルム面ギリギリに後玉が来るオールドレンズで安全な撮影を楽しむなど、実用性・趣味性の両面で夢が広がる。