山岸伸の「写真のキモチ」

第27回:僕がロケを好きな理由

沖縄ロケの話

ハウススタジオ伊計島。モデル竹内茉音

グラビアの撮影が多いため、ロケの多い山岸さんですが、最近はコロナ禍の影響もあり、国内ロケがメインとなっています。そんなロケ先の中でも特にお気に入りの場所が、沖縄とのこと。今回は撮影した作品と一緒に沖縄でのロケの話をしていただきました。(聞き手・文:rinco)

20年くらい前から沖縄が好きになり、3カ月に1回は行く

昔から自然光が大好きで、月に1、2回はロケに行かないと気が済まない性分でした。それは今でもそう。撮影の内容はグラビアが多いので、南の島が多く、昔はグアム、サイパン、ハワイが多かったです。特に、サイパンは自分では庭のように思ってましたね。でもグラビアの数も減ってきて、またここ3年はコロナの影響で海外へも行けなくなりました。その分、沖縄に行くことが増えました。

コンテナハウス屋上で撮影

グアム、サイパンに行っていた頃はあまり沖縄には行きませんでしたが、20年くらい前からは沖縄が好きになり、3カ月に1回は行くようにしてました。

理由は、光が安定していることと安全であること。最初の方はコーディネーターにお願いして古民家を借りたり、海での許可を取ってもらったりしてましたが、いつの間にか自分たちだけでもできるようになりました。

ただ、僕の仕事柄、衣装に水着が多く最近は外で撮影することも難しいので実際にビーチに出て撮影することは滅多にありません。常にどこか自然の中にあるスタジオやハウスを借りて撮影しています。

撮影中にリラックスができるスタジオのひとつ

ここ2、3年、気に入ってよく行っているこのスタジオは、私のアシスタントOBに聞いて直接電話したのが最初。コンテナハウスと僕らは言ってますが、正式な名前は、Sundowners Studioです。

光も計算されていて、雨が降っても風が吹いても、自然光が入る。それと風が通ります。すごく気持ちの良い風が通るんです。

スタジオのオーナーと初めて挨拶をしたときに、「実は私、東京でグラフィックデザイナーをやっていた時に、山岸さんの写真集を2冊デザインしました」と。それからますます気持ちが近くなって、必ず借りています。

向こうに見えるのは沖縄の今帰仁

撮影中にストレスが溜まると屋上に行って、ここの気持ちの良い空気を吸うの。すごくリフレッシュできるんですよ。

最高の環境だと思います。最近見つけた、撮影中にリラックスができるスタジオのひとつ。僕は海が好きです、風が好きです、それと光が好きです。この3つがここにはあります。

昼ごはんが、またうまいんだ。昼ごはんをみんなでワイワイ食べるのが楽しいですね。目の前を定期船が通ってゆき、それを見ているだけでも心が洗われるんです。

古宇利島の橋。ここを渡るたびに、毎回ワクワクするんです。この橋を渡って、僕らのいうコンテナハウスに到着するほんの5分くらいが、撮影するぞ! って自分を奮起させる場面なんです。

なにか撮りたくなる場所

僕の宿泊はいつも那覇なのですが、コンテナハウスは那覇から車で2時間弱かかるところにあります。

以前、ロケハンを兼ねて行ったことがあったんです。そのとき、まりんちゃんを連れて撮影をしていたので、コンテナハウスの真下のさとうきび畑で撮影したんです。撮影のために行ったわけではなかったのですが、なにか撮りたくなる場所でした。

その時は、まさかその上に、このハウスがあるとは思いもしてなかったんです。全然目にも入らなかったの。

ロケハンに行った時のカフェでコーヒータイム。モデル竹内茉音

古宇利島で撮影。モデル秦瑞穂

撮影中。スイカの差し入れを食べる、モデル秦瑞穂さん

古宇利島は素晴らしい島。今、沖縄で1番人気の島だと思います

ハウススタジオ伊計島

このスタジオは僕がSNSで見つけたんです。4年くらい前かな、それから通ってます。場所は伊計島。ここも沖縄に行ったら、必ずお借りするスタジオです。

昔はたくさんの古民家を使わせていただいていたのですが、借りられるところが数少なくなりました。オーナーの島根さんは快く貸してくださいますし、喉が乾いたらビールなども出てきたり(笑)。友達のような感覚で通うようになりました。

オーナー島根さんと

撮影後に写真確認をする、歩りえこさん

こんな感じでいつも撮影しています。待機する場所があると、ものすごく楽です。人物を撮るのに、大きな場所はいらないです。

このハウススタジオから歩いて5分弱のところに、小さなビーチがあります。気分が乗ったら必ずビーチにゆきます。みんなで歩きながら行くことも、ロケには大切なコミュニケーションの場と考えてます。天候次第で海の色や表情がその時その時で変わるので、楽しい瞬間です。

人が居ないので、非常に撮影しやすい場所です

モデル イ・リン

食べるのが最高

僕が必ずと言って良いくらい食べに行くお店。海沿いにある中村というお店で、みんなで食べに寄ります。ソーキそばです。決して安いわけではないですよ。

沖縄のカンカンに暑い時に、店の外のベンチでオリオンビールを飲みながら、ジューシーという沖縄の混ぜご飯を取って食べるのが最高なんです。

僕はあまり肉が好きではないのですが那覇に帰ると行くのは、ジャッキーステーキ。ただ、いつも混んでいて、並びます。毎回、肉といえばジャッキーにゆきます。

僕の好きな場所

草野綾さんの写真集の時は、雨でした。雨の中でも撮影はします。ここはアメリカ軍キャンプが目の前にある金武という異国情緒あふれる街です。ここでは長時間のロケはしませんが、軽く街並みや雰囲気を撮り、写真集やDVDにそのカットを挿入します。いつかこの街をしっかり撮って、僕の好きな場所として紹介したいです。

モデル 草野綾

僕はロケ地を大切にしているつもりです。人一倍大切にしているつもりです。意外と他のロケ隊が行かないようなところにゆくのも得意なカメラマンです。そういう意味では一度行ったところに、何度もゆき作品を生んでます。

ここは斎藤工さんの撮影でも行ったところです。写真はまりんちゃん。

モデル竹内茉音

1年のうちに、いつもここの滝に水があるわけではありません。干上がって水が少ない時もありますし、大雨で水が深くて行けない時もあります。しかし、もうここには行けなくなってしまいました。なぜかというと、向かって右側に工場ができたのと、道がなくなりました。雑草がすごくクルマが4WDでも、もう走れません。今は、撮れなくなった滝です。

昔、僕のアシスタントOGの古澤が、ここに停めた車をインロックしてしまい……。携帯が通じない地区で参りました。その時は針金を探して、こじ開けてなんとか難をしのげましたが、そういった意味では危機感がある場所。今時携帯が繋がらないところで、ロケをするのも問題かもしれません。

沖縄で知り合いが何人ができた

沖縄に住んでいるフォトグラファーのJohn H.Tienさん。ハセオさん主催のリアポ(イベント)でJohn H.Tienさんの作品を講評したのがきっかけで、お付き合いするようになりました。この時、彼のアトリエに寄らせてもらって、秦瑞穂さんを撮影したものです。

沖縄で知り合いは、何人かできたんです。大学の先生と、沖縄在住の日本写真科学協会副会長の写真家 湊和雄さんと、この彼です。

ロケに行ったら必ず寄る場所

山の中腹にある、さとうきび畑です。ここは海を見下ろせて、とても良いところのですが、季節を間違うとサトウキビも無くなっているので、気をつけています。モデルは、イ・リンちゃんです。

ロケに行ったら必ず、寄る波の上ビーチです。那覇の真ん中にあるので、飛行場から直接ここにきて、近くのスーパーで買い物して、ホテルのチェックインまでの時間によくここに来ます。

波の上ビーチで撮影。モデル竹内茉音

またすぐ近くに、波の上神社があり、そこの宮司様は瞬間の顔でも撮影させてもらい、なんとなく守っていただいているような気がして、僕が好きなところです。

若狭海浜公園で撮影。モデル 竹内茉音

竹内茉音DVD「End of summer」(竹書房)2018年。ハウススタジオ伊計島で撮影

秦瑞穂DVD「Deep breath」(竹書房)2020年。ハウススタジオ伊計島で撮影

イ・リンDVD「ふたり旅」(マイロール)2022年。SUNDOWNERS INN STUDIO(コンテナハウス)で撮影

ここ1年、沖縄で撮った写真集

同じ場所で撮ってますが、人が違えば同じように見えない。個性的なものを外せば、応用が利きます。

草野綾 写真集「あめ色の空に」(光文社)2021年

歩りえこ 写真集「SPHERE」(講談社)2022年

ロケにゆく時に、常に考えていること

沖縄ロケは昔は那覇近郊でも撮る場所がたくさんあったのですが、それもどんどん無くなり、今は端の方で撮影してます。

沖縄在住の助手OBがいるので、彼に頼めば色々と探してはくれると思うのですが、
僕としてはあまり人に迷惑かけてまでロケするのはよくないと考えていて、自分なりに探して毎回撮影をしに行っています。

国際通りで撮影。モデル竹内茉音

ロケにゆく時に、常に考えていることは、女性を連れてゆくということ。まずはトイレ。それと水。それから雨よけ、風除け。それに電源。あとは少し綺麗なところであればOK。最低限、必ず考えることです。

(やまぎし しん) タレント、アイドル、俳優、女優などのポートレート撮影を中心に活躍。出版された写真集は400冊を超える。ここ10年ほどは、ばんえい競馬、賀茂別雷神社(上賀茂神社)、球体関節人形などにも撮影対象を広げる。企業人、政治家、スポーツ選手などを捉えた『瞬間の顔』シリーズでは、15年をかけて総撮影人数1,000人を達成。また、近年は台湾の龍山寺や台湾賓館などを継続的に撮影している。公益社団法人日本写真家協会会員、公益社団法人日本広告写真家協会会員。