岡嶋和幸の「あとで買う」

703点目:人気広告写真家によるハウツー&エッセイ本

瀧本幹也『写真前夜』

ネットショップのカートの中にある「あとで買う」には、様子見をしているなど気になるアイテムがたくさん入っています。この連載では、フォトライフに関連する製品を中心にその中身をお届けします。どのような物に興味を持ち、どのような視点で選んでいるのかなど、日々の物欲をお楽しみください。

瀧本幹也『写真前夜』

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瀧本幹也さんは好きな写真家の1人。写真や映像などコマーシャルの分野で長年活躍されていてとても眩しい存在です。その活動に注目し続けているのですが、3月30日に発売されたばかりの本書は初のエッセイ本ということで、瀧本ファンにとってうれしい1冊といえるでしょう。販売価格は2,750円です。

目次を見て最初に開いたページは「カメラと写真の関係」。トヨビュー、ジナー、リンホフテヒニカ、ディアドルフといった大判カメラが並んだ写真が掲載されています。それら愛機との出合いや思い出なども綴られていて、その見開きページだけで大満足です。ページをめくると、今度は35mm判や中判カメラなどが並べられた写真が登場します。その大半がフィルムカメラで、デジタルカメラ全盛の現在でも大切に使われています。

これまで撮影を担当した広告写真や映像作品の制作の裏側が語られているなど興味深い内容になっています。どのビジュアルもどこかで目にしたことがあるものばかり。「映像作品と写真」「いつも自分の写真を撮るには」など見応え、読み応えのあるページがたくさんあります。

瀧本さんのことを知らない人にもお勧めの本です。セレクトについてのコラム「自分の写真を守る」「届けるべき人に届ける」、プリントについてのコラム「表現を助ける技術」、最後の「写真の見せ方/展覧会のすすめ」はぜひ読んでいただきたいです。写真好き、カメラ好きを問わず楽しめ、いろいろ勉強になると思います。

1967年、福岡県生まれ。東京写真専門学校卒業。スタジオアシスタント、写真家助手を経てフリーランスとなる。作品発表のほか、セミナー講師やフォトコンテスト審査員など活動の範囲は多岐にわたる。写真集「風と土」(インプレス)など、著書多数。主な写真展に「ディングルの光と風」(富士フイルムフォトサロン)、「潮彩」(ペンタックスフォーラム)、「学校へ行こう! ミャンマー・インレー湖の子どもたち」(キヤノンギャラリー)、「九十九里」(エプソンイメージングギャラリー エプサイト)、「風と土」(ソニーイメージングギャラリー)、「海のほとり」(エプサイトギャラリー)などがある。