中井精也のエンジョイ鉄道ライフ「ジョイテツ!」

ゆる鉄探訪 第21回「埼玉県の鉄道」

開催中の写真展「埼玉鉄道写真絵巻」からご紹介!

上長瀞駅〜親鼻駅間に位置する荒川橋りょうは、秩父鉄道を代表する撮影地。私鉄では今や貴重な存在となった貨物列車をシルエットにして撮影しました。こういう撮影では、列車の足回りまでしっかりと影絵になっていることが大切。鉄橋の撮影では、どうしても鉄橋下から見上げたくなりますが、それだと列車の車輪が鉄橋と同化してしまい美しいシルエットになりません。ここではあえて鉄橋から離れて望遠レンズで狙うことで、車両の隅々まで精緻に影絵にすることができました。シルエット撮影は列車の色や質感を表現できませんが、影絵にすることで、かえってフォルムの美しさが強調されるから不思議ですね
ソニーα7R III/FE 100-400mm F4.5-5.6 GM OSS/マニュアル露出(146mm相当・F9・1/1,000秒)/ISO 200/WB:日陰 [Google Maps]

僕のオススメの鉄道撮影地をご紹介する「ゆる鉄探訪」。今回は埼玉県は西川口にあるレオフォトショールームにて現在絶賛開催中の写真展、「埼玉鉄道写真絵巻」に展示している作品をご覧いただきましょう。

僕は東京都で生まれ育ちましたが、マイホームの購入をきっかけに家内の実家に近い埼玉県越谷に引っ越してから20年以上が経過し、今や立派な埼玉県人になれました(笑)。そんな僕が真剣に撮影した埼玉県の鉄道情景をまとめたのが、今回の写真展です。絶景からユーモラスな作品まで、バラエティーに富んだ作品は、まるで総天然色の絵巻のよう。ぜひ会場でご覧くださいね。

今回の写真展のキービジュアルにもなったこの作品は、秩父名物の「長瀞舟下り」の船上で撮影したもの。実はテレビ番組のロケで、電車のタイミングに合わせて鉄橋をくぐってもらうというシーンだったんですが、みごとにタイミングが合い、ドヤ顔の船頭さんの表情が最高です。それにしてもまさに完璧なタイミングの船のコントロールは、さすがプロですね。タイトル文字は、のんびりとした埼玉県の雰囲気に合わせて、少し可愛い感じのフォントを選びました。

ソニーα7S II/Vario-Tessar T* FE 16-35mm F4 ZA OSS/絞り優先オート(19mm・F4・1/1,250秒)/ISO 200/WB:太陽光

ソニーα9/FE 100-400mm F4.5-5.6 GM OSS + 2X Teleconvertor./マニュアル露出(1,200mm相当・F14・1/16,000秒)/ISO 100/WB:日陰

僕の大好きな東武日光線の栗橋駅と新古河駅の間にある築堤。北海道でもこんなに広々とした風景はないんじゃないかという恵まれた撮影地で、高い築堤の上を列車が走るため、背景の空の光を生かして、列車の足回りまでしっかりとシルエットにできます。

この日はきれいな夕陽だったので、真っ赤な太陽をバックにした撮影にトライ! 列車は窓が大きな観光列車のスカイツリートレインだったので、車内の人のシルエットも写ると判断。というわけで4両編成の列車が太陽と重なっているあいだ、とにかく連写しまくりました。撮影後、パソコンで画像を確認して、このドラマチックな瞬間が写っていたときは、鳥肌が立つほど感動。肉眼でも動画でも捉えられない瞬間を写真として後世に残せる、スチール写真の魅力を再認識しました。

ちなみにこういう撮影のときは、AEのまま撮影すると、列車が背後の太陽に重なった瞬間に露出がオーバーになってしまいますので、マニュアルで列車が来る前の空の明るさに固定しておく必要があります。


ニコンD500/AF-S NIKKOR 80-400mm f/4.5-5.6G ED VR/絞り優先オート(600mm相当・F5.6・1/180秒)/ISO 1600/WB:電球

まるで早朝のホームで撮ったようなドラマチックなシーンですが、実はこれ大宮にある鉄道博物館で撮影したもの。あえてホワイトバランスを電球モードにすることで、早朝の雰囲気を演出してみました。鉄道博物館はただ車両を飾るだけでなく、駅の情景なども含めた展示にしているからこそ、こういう臨場感のあるシーンが生まれるのです。

まずは構図を作って、見学者が来るのをずっと待ちましたが、運良く車両を覗き込む人が、最高の位置に来てくれたのはラッキーでした。


ソニーRX100 VII/絞り優先オート(35mm相当・F5・1/4,000秒)/ISO 800/WB:オート

こちらはまさに自宅の近所にある綾瀬川の堤防で撮影したカット。どこかから飛んできたコブハクチョウが川にいるとの噂を聞きつけて訪ねてみると、コブハクチョウはすっかり地元住民のアイドルになっていました。おじさんとコブハクチョウと見つめ合っているシーンがとってもゆるかったので、パチり。なんてことのない日常風景だけど、激動の今の時代、こういう何気ない幸せな光景が愛おしく感じられます。


ソニーα9/FE 24mm F1.4 GM/絞り優先オート(24mm・F11・1/8秒)/ISO 80/WB:曇天

デビュー時にその斬新なデザインでみんなの度肝を抜いた西武特急ラビュー。2019年のデビューから5年近くが経ちますが、まだまだインパクトありますね。

僕は車両を見たときに、どういうシーンで撮ったらいいかをイメージするようにしていますが、この都会的な車両が秩父の自然に溶け込むシーンが撮りたいと感じました。そこで見つけたのが森の向こうを西武秩父線が走るこちらのポイント。1/8秒という低速シャッターで流し撮りすることで、ダイナミックな1枚になりました。


ソニーα9/Vario-Tessar T* FE 24-70mm F4 ZA OSS/絞り優先オート(33mm・F22・2秒)/ISO 200/WB:太陽光

何か撮るものないかと近所をウロウロしていると、とってもきれいな青空だったので、その青を主役にしようと判断。日中なのに2秒間露光することで、列車を色の線にして、デザイン的な面白さを狙ってみました。


ニコンD90/AF-S NIKKOR 14-24mm f/2.8G ED/絞り優先オート(21mm相当・F11・1/250秒)/ISO 800/WB:曇天

越谷貨物ターミナルに廃車になった寝台車両がいるという情報を聞きつけ、見に行ったら陸送のためにクレーンでトレーラーに載せているシーンに出くわしました。クレーン車が重そうだったので、手を伸ばしてちょっと手伝ってあげました(笑)。2009年に撮影したカットですが、今は高い柵ができてしまい、こんなふうに見学できなくなってしまいました。

絞りこむことでパンフォーカスにするというシンプルでありきたりなテクニックですが、使い方によってはまだまだ面白い作品が生み出せるので、ちょいちょい使っています。


Nikon 1 V2/1 NIKKOR 10mm f/2.8/絞り優先オート(27mm相当・F11・1/1,000秒)/ISO 800/WB:太陽光

というわけでこの3枚もパンフォーカス作品。あまりにお腹がすいちゃったので、武蔵野線を食べてしまいました(笑)。説明は不要かと思いますが、1枚目だけ本物の電車で、あとは鉄道模型です。ゴリゴリして美味しくなかったです(笑)。

写真展は30日まで開催しておりますので、ぜひご覧ください。27日から29日までは、ずっと在廊いたします。

中井精也からのお知らせ

写真展「埼玉鉄道写真絵巻」開催中

・期間:2023年10月5日(木)~10月30日(月)
10時00分~18時00分(最終日は16時00分まで)
※火曜・水曜定休
※入場無料

・会場:レオフォトショールーム
埼玉県川口市西川口3-33-29 NWビル2階

◯ゆる鉄画廊NOMAD埼玉川口
写真展「埼玉鉄道写真絵巻」の開催を記念して、ゆる鉄画廊NOMAD埼玉川口を10月27日〜29日の3日間開催します。NOMAD期間中は毎日、中井精也が在廊いたします。ぜひお越しください!

詳細はコチラ↓
https://ameblo.jp/seiya-nakai/entry-12821912062.html

中井精也

1967年、東京生まれ。鉄道の車両だけにこだわらず、鉄道にかかわるすべてのものを被写体として独自の視点で鉄道を撮影し、「1日1鉄!」や「ゆる鉄」など新しい鉄道写真のジャンルを生み出した。2004年春から毎日1枚必ず鉄道写真を撮影するブログ「1日1鉄!」を継続中。広告、雑誌写真の撮影のほか、講演やテレビ出演など幅広く活動している。全国を旅しながら自身の作品を販売する「ゆる鉄画廊NOMAD」を展開中。テレビレギュラー番組に「中井精也のてつたび!/NHK BSプレミアム」、「ヒルナンデス!/日本テレビ系列」、「にっぽん鉄道写真の旅/BS-TBS」などがある。https://ameblo.jp/seiya-nakai/