中井精也のエンジョイ鉄道ライフ「ジョイテツ!」

また訪ねたい海外の思い出「ジョイテツ! in the World」vol.02 台湾編

ソニーα7R II FE 16-35mm F4 ZA OSS(16mm) 絞り優先オート(F4、1/80秒)ISO 1000 WB:日陰 スタンダード

新型コロナウイルス感染症による緊急事態宣言が延長されてしまいましたが、今は我慢のとき。感染拡大が収束したときに再び訪ねたい、想い出に残る海外の撮影地を、撮影エピソードとともにご紹介しています。

今回は台湾です! 写真は台湾で活躍しているディーゼルカーの車内。いかにも台湾らしい車内風景ですが、実はコレ、日本製の車両。もしかしたら日本人のほうが、台湾らしさを素直に表現できるのかもしれませんね。

※文中には中国漢字にて記載すべきところがありますが、文字化けを避けるため日本漢字に変更しています。

1.お手軽だけどいちばん台湾らしいオススメ路線・平渓線

平渓線は、台北にほど近い三貂嶺(さんちょうれい)駅から菁桐駅に至る12.9kmのローカル線。こんなに台北から近いのに、ある意味いちばん台湾らしい雰囲気が味わえる貴重な路線です。僕は勝手に「台湾の小湊鐵道」と呼んでいます(笑)。

ソニーα6300 FE 70-300mm F4.5-5.6 G OSS(141mm) 絞り優先オート(F10、1/125秒)ISO 400 WB:太陽光 風景

写真は十分駅付近。線路から天燈を飛ばす光景は、鉄道ファンじゃなくても知っている人は多いんじゃないでしょうか?線路の両側には店が並んでおり、いわゆるアジアらしい風景が広がっています。台湾の鉄道シーンはここで撮った写真が使われることが多いので、タイやミャンマーのように線路上に露天が並ぶ光景が台湾じゅうにたくさんあるような印象を受けますが、僕が知るかぎりこんなにアジアらしい市場の風景が見られるのは、意外にもこの十分駅付近だけです。それだけに、台湾に行ったらぜひ訪ねてほしいポイントなのです。

ソニーα7R II 70-400mm F4-5.6 G SSM II(125mm) 絞り優先オート(F5.0、1/320秒)ISO 800 WB:日陰 風景

こちらが十分名物、線路上からの天燈上げ。この天燈には墨でメッセージや願い事を書くのですが、よく見るとメッセージが日本語。さらによく見ると「いつもモテモテでありますように!」というのがスゴい。おじさん元気だなぁ。内容はともかく、いつまでもモテモテでありますように。

ソニーα7R  FE 70-400mm F2.8 GM(67mm) 絞り優先オート(F6.3、1/320秒)ISO 200 WB:日陰(A+2) ニュートラル

平渓駅もとても素敵な駅です。駅周辺には、台湾らしい古い街並みが残っていて、とてもフォトジェニック。こちらは街を見下ろす寺院「八仙洞」から俯瞰撮影したもの。平渓線はとても雰囲気がいい場所を走るのですが、車両が新しく、ラッピングが施された車両も多いのが残念なところ。まぁコレも観光促進のため仕方ないのですが。

ソニーα7R II FE 28mm F2+Fisheye Converter(16mm相当) 絞り優先オート(F6.3、1/125秒)ISO 200 WB:日陰(A+7) ニュートラル

こちらは平渓駅付近でオススメのポイント。「お年寄りを大切にしましょう」的な村の標語がレトロな雰囲気で残っているのですが、それに魚眼レンズでグッと寄って撮影しました。ホントは人がいない状態で撮りたかったのですが、休日の平渓線は大人気で、こんな路地にも観光客があふれているのが驚きです。

ソニーα6300 FE 24-70mm F2.8 GM(66mm) 絞り優先オート(F8、1/800秒)ISO 400 WB:太陽光 風景

いかにも台湾の「老街」らしい風景です。ステンレスの列車が目立たない撮影ポイントなのですが、このときばかりはラッピング車両で目立ったのがラッキーでした。写真だけ見ると涼しげな風景ですが、気温は35度オーバーでサウナのようでした。いつ列車が来るかわからない難しいシャッターチャンスですが、なんとかうまく撮れました。

ソニーα6300 FE 70-300mm F4.5-5.6 G OSS(114mm) 絞り優先オート(F8、1/1,000秒)ISO 400 WB:太陽光 風景

嶺脚〜望古の道路沿いから撮影した渓谷風景。手前の木々が伸びましたが、まだなんとか川を入れて撮影できます。こうして見ると、わたらせ渓谷鐵道や山陰本線のようにも見えますね。台湾の鉄道のほとんどの区間は、日本が敷設したものが多いので、国は違えど日本の鉄道と同じ雰囲気になります。このときはツアーだったので、撮影の予定をオープンにしていたのですが、なんと台湾の鉄道ファンの学生が、台北からはるばる原付で会いに来てくれました。ここで撮るなんてさすがに書いていないのに、よく見つけたなぁ。日本とつながりの多い台湾の鉄道と同じように、鉄道ファンとしても交流できて嬉しかったです。

2.「海線」を撮れる絶景ポイント「好望角」

ソニーα6300 FE 24-70mm F2.8 GM(88mm相当) マニュアル(F6.3、1/3,200秒)ISO 400 WB:太陽光 風景

台湾で鉄道を撮影するなら、絶対オススメの絶景ポイント。風力発電用の風車と青い海、長大編成も余裕で入る線形が魅力の撮影ポイントです。日本だったら絶対に鉄道写真のお立ち台になる場所ですね。台湾の鉄道は島をぐるりと一周していますが、こちらのポイントは西側の西部幹線。西部幹線は竹南駅で「海線」と「山線」に別れますが、ここは海線と呼ばれる海岸線の撮影ポイントです。新線区間が多い山線と違い、海岸線をのんびりと走る風景が魅力です。

ソニーα6300 FE 24-70mm F2.8 GM(78mm相当) 絞り優先オート(F8、1/1,000秒)ISO 400 WB:太陽光 風景

どちらを向いても絶景なのがこの撮影地のすごいところ。超大編成の貨物列車と風車の組み合わせが異国情緒を感じさせてくれます。ここは「好望角」と呼ばれる観光地として有名で、屋台などもたくさん出店していて多くの観光客が訪れていました。海線の龍港駅から歩いても30分くらいの距離で、線路に沿って進んで階段で登ることも可能です。龍港駅は台北から列車で約3時間くらいです。

3.台湾新幹線を食事しながら撮影できる「Cafe銀河の鉄道」

最後はちょっと変わり種。台湾新幹線の台中と彰化駅の中間付近の線路脇にあるカフェレストラン「銀河の鉄道」を紹介しましょう! ここの魅力はなんと言っても、テラスから台湾新幹線が眺められることです! ここを訪ねた鉄ちゃんは皆同じだと思いますが、撮影に夢中で何を食べたかよく覚えていません(笑)。洋・中両方のメニューが楽しめ、お料理の味はいたってフツーだった記憶がありますが、撮影地としてはもう最高のシチュエーションでした。

ソニーα7R II FE 70-300mm F4.5-5.6 G OSS(107mm) 絞り優先オート(F5、1/125秒)ISO 100 WB:太陽光 風景
ソニーα7R II FE 16-35mm F4 ZA OSS(18mm) 絞り優先オート(F16、1/30秒)ISO 160 WB:日陰(A+7) 風景

1枚目のカットはそのテラスの様子。新幹線が来るたびに、お客さんは大盛り上がり。また高い位置から平野を見下ろすため、列車の背景も最高で、2枚目はテラスでマンゴーアイスを食べながら流し撮り。スイーツと鉄分がイッキに補充できて、もう気分は最高です。日本の新幹線でも、こういう施設を作ればいいのになぁ。アクセスは員林駅からタクシーで「銀河鉄道望景餐廳」と言えば約15分ほどで到着。だいたい300元くらいです。

中井精也

1967年、東京生まれ。鉄道の車両だけにこだわらず、鉄道にかかわるすべてのものを被写体として独自の視点で鉄道を撮影し、「1日1鉄!」や「ゆる鉄」など新しい鉄道写真のジャンルを生み出した。2004年春から毎日1枚必ず鉄道写真を撮影するブログ「1日1鉄!」を継続中。広告、雑誌写真の撮影のほか、講演やテレビ出演など幅広く活動している。株式会社フォート・ナカイ代表。2015年、講談社出版文化賞・写真賞、日本写真協会賞新人賞受賞。著書・写真集に「デジタル一眼レフカメラと写真の教科書」「DREAM TRAIN」(インプレス・ジャパン)、「ゆる鉄」(クレオ)、「都電荒川線フォトさんぽ」(玄光社)などがある。2018年5月、東京都荒川区に鉄道写真ギャラリー&ショップ「ゆる鉄画廊」をオープンした。甘党。https://ameblo.jp/seiya-nakai/

■TVレギュラー:「中井精也のてつたび」/NHK BSプレミアム、「ヒルナンデス!沿線フォトさんぽ」/日本テレビ、「ひるまえほっと てくてく散歩」/NHK総合、中井精也の「にっぽん鉄道写真の旅」/BS-TBS、カメラと旅する鉄道風景/CS各局