写真を巡る、今日の読書

第110回:被写体を深く知る。写真の説得力を高める「リサーチ」のための3冊

写真家 大和田良が、写真にまつわる書籍を紹介する本連載。写真集、小説、エッセイ、写真論から、一見写真と関係が無さそうな雑学系まで、隔週で3冊ずつピックアップします。

撮りたいものをよく知るために

撮るべきもの・撮りたいものがあるからこそ、写真を続けているという方も多いでしょう。人物や風景、文化、街、動物、植物、鉄道、静物など、その対象は実にさまざまです。

大学で指導している学生たちも、レンズを向けるモチーフはそれぞれ大きく異なります。私は彼らと写真について話すとき、基本的には被写体の意味や内容、そしてなぜそのように撮ったのかを尋ねます。露出や構図、プリントの質といった技術的な指摘を行うこともありますが、作品の内容について話す時間の方が長くなることが多いと感じています。

学生たちは、その被写体についてよく知っているほど多くを語り、取り組み方もよりユニークになります。逆に、なんとなく撮っていて被写体をよく理解していない場合、うまく言葉が出てこないことが少なくありません。そのようなときには、まず被写体を知るために、先行研究や資料、雑誌、書籍などにあたることを勧めます。また私自身も、学生が撮影している対象に関する本を読むことで、どのようにすれば写真によってその被写体をより深く語ることができるのかを探るようにしています。

今日は、そのようなリサーチの一環として、最近読んだいくつかの本を紹介したいと思います。

『意外と知らない鳥の生活』piro piro piccolo 著(KADOKAWA/2024年)

1冊目は『意外と知らない鳥の生活』です。鳥類のコンパクトな図鑑はこれまでもよく手に取ってきましたが、本書は漫画形式で身近な鳥の多様な生態を解説してくれます。鳴き声や餌のとり方、飛び方などのポイントを漫画から読み取ることで、日常の観察体験と結び付けながら理解を深めることができます。文字だけの専門書が苦手な方にとって、入門編として非常に有用な1冊です。

続編の『まだまだ!意外と知らない鳥の生活』も刊行されており、いずれも身近な鳥を取り上げているため、近所の河原や公園でのバードウォッチングや撮影を、より豊かなものにしてくれるでしょう。

 ◇

『発光生物のはなし ホタル,きのこ,深海魚……世界は光る生き物でイッパイだ』大場 裕一 編(朝倉書店/2024年)

2冊目は『発光生物のはなし ホタル,きのこ,深海魚……世界は光る生き物でイッパイだ』です。自ら光を放つ「発光生物」についてまとめた本で、発光の仕組みや役割にはじまり、陸や海に生息する多様な発光生物が紹介されています。

きのこやホタル、クラゲ、ホタルイカなど、日本でも身近な生物が多く取り上げられており、なぜ光るのか、どのようにして光っているのかを改めて学ぶことができます。そのメカニズムや機能を知ることで、生物の姿をこれまでとは異なる視点から眺めることが可能になり、撮影方法や表現の方向性にも新たな発想をもたらしてくれるでしょう。

また、本書に掲載されたQRコードからは、発光生物を撮影した動画にもアクセスでき、動きや光り方をより具体的に観察することができます。

 ◇

『「地震」と「火山」の国に暮らすあなたに贈る 大人のための地学の教室』鎌田浩毅 著(ダイヤモンド社/2025年)

最後に紹介するのは『「地震」と「火山」の国に暮らすあなたに贈る 大人のための地学の教室』です。本書は、日本列島を形づくるプレート運動や火山活動を、日常的な言葉でわかりやすく説明する地学入門書です。

山並みや海岸線、断層崖や温泉地形が、単なる「フォトジェニックな風景」ではなく、地震や噴火を繰り返してきた結果であることを教えてくれる点で、写真家にとっては「風景を見るための教養書」としてきわめて重要です。

東日本大震災以後、日本が千年ぶりの大地変動期にあると位置づけ、南海トラフ巨大地震や富士山噴火の可能性を科学的根拠とともに示す本書は、防災のための知識にとどまらず、「豊かな土壌をもたらす地震や火山」という視点を同時に提示します。

風景を地球史的スケールの上に置き直すこの視点は、写真家にとってロケーションの選定や作品コンセプトの構成を考える精度を上げるための、有効な手がかりとなるでしょう。

大和田良

(おおわだりょう):1978年仙台市生まれ、東京在住。東京工芸大学芸術学部写真学科卒業、同大学院メディアアート専攻修了。2005年、スイスエリゼ美術館による「ReGeneration.50Photographers of Tomorrow」に選出され、以降国内外で作品を多数発表。2011年日本写真協会新人賞受賞。著書に『prism』(2007年/青幻舎)、『五百羅漢』(2020年/天恩山五百羅漢寺)、『宣言下日誌』(2021年/kesa publishing)、『写真制作者のための写真技術の基礎と実践』(2022年/インプレス)等。最新刊に『Behind the Mask』(2023年/スローガン)。東京工芸大学芸術学部准教授。