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【特別企画】α100で撮る「沖縄カラー」


沖縄本島北中部、辺野古は沖縄カラーを代表する町である。かつて街全体が一大歓楽街として栄えた街は、今ではひっそりとした褪色の街に変わっている。元バーだった店の外壁は色褪せ、中南米のローカルタウンに彷徨い込んだようでもある。35mm F1.4 Gがコクとキレのある壁画のような褪色世界を描きだした
35mm F1.4 G / プログラムAE / F3.2 / 1/80秒 / 0EV / ISO100 / 35mm

※画像をクリックすると等倍(3,872×2,592ピクセル)の画像を別ウィンドウで開きます。縦位置の画像はあえて回転しておりません。
※すべてα100 / JPEG・FINE / オートホワイトバランスで撮影しています。
※画像下のデータはレンズ/露出モード/絞り/シャッター速度/露出補正値/感度/実焦点距離です。


α100とDT 18-70mm F3.5-5.6
 11月下旬、東京は朝夕の寒さが増し、日に日に冬の気配を強めていたが、沖縄に入ってみると、最低気温15度、最高気温26度と眩い陽射しがあふれていた。汗ばむような那覇の街では半袖の姿の若者も歩いていて、晩夏の空気が漂っていた。

 今回の沖縄撮影で思い描いてきたのは、私が感じる沖縄らしい色彩である。一般には、沖縄の色と言った時に思い浮かべるのは、青い海に青い空、白い雲に色とりどりの原色の花と言った鮮やか系の色だろう。しかし、私にとって最も沖縄らしさを感じる色はその正反対、色褪せてくすみの入った褪色カラーである。

 なぜ眩いトロピカルな島でくすんだ色を? と思われるかもしれないが、それにはわけがある。まず沖縄は台風の襲来が多く、激しい雨風にさらされることが多い。天気が良くなると、今度は太陽の紫外線が強烈に降り注ぐわけで、建物の外壁、道路標識、車やモニュメントにいたるまで、あらゆるものの表層が異常なスピードで色褪せてしまう島なのである。塗料メーカーも沖縄の野外で、ペンキの耐久テストを繰り返している。そんな激しい気象が産み出した色彩こそ、沖縄ならではの褪色カラー。私の好きな沖縄カラーである。

 今回の沖縄撮影に同行してくれたカメラは、ソニーのデジタル一眼レフカメラ「α100」と、標準ズームレンズ「DT 18-70mm F3.5-5.6」である。多くの撮影では、主に街の建物やたたずまいをフットワークよくスナップしていくことになるが、4日の間、ボディのグリップ感は非情に心地よいものだった。撮影は旅のリズムに集中できるようオート、JPEG撮影を中心にしつつも、時には被写体の質感を見極めながら露出補正や感度を変えたりもした。同クラスでは一歩先んじた有効1,020画素の描写力は、再現が難しい淡い色調の建物や町並みを自然に写しとめてくれた。





 撮影初日は、沖縄本島の南端にある糸満の町に行った。糸満の真ん中にある円周交差点。日本ではあまり見かけない糸満ロータリーを中心に街歩きをしだした。

 そのロータリーからわずか数m行ったところに、ビルにへばりつくように巨大な墓があった。亀の甲羅のような沖縄特有の亀甲墓である。軟らかな曲線はコンクリートで覆われていて、風雨と陽射しに洗われた表面は、味わい深いグレイに変わってしまっている。褪色した色彩としては地味だが、コンクリートやブロックが建築ベースになっている沖縄では、グレイのバリエーションも実に美しい。


亀甲墓を抜けて街中に戻ると古くて小さな床屋が目に止まった。ペンキが剥げかけ褪色した壁面が、曲がった路に寄添うように湾曲している。パステル調の褪色ペンキの色彩は肉眼で感じたものに近い描写になっている。ちょっとした色転びで印象が変わってしまうデリケートな淡い色調が忠実にとらえられていた
DT 18-70mm F3.5-5.6/ シャッター速度優先AE / F5 / 1/250秒 / -0.3EV / ISO100 / 20mm

 糸満から北上して那覇を過ぎると浦添の町に入る。路地のある坂を上っていくと小さな歓楽地に出た。真っ昼間の飲み屋街にはどこか空虚なのどかさが漂っていた。

 沖縄市、かつてのコザ市を歩いているうちに日が暮れてしまった。抜け道のように細い路地に入っていくと、モルタルの壁面に手描きされた床屋のサインがいい具合に古ぼけていた。沖縄の看板には、壁に直に描かれた絵や文字がある。その大胆さが好きで、たいがいはペンキで描かれていることもあり、時間とともに絵文字も褪色していくことになる。

 ほとんど暮れてしまった路地に床屋のサイン画。すでに理髪店は廃業してしまったようだが、看板絵だけが残されていた。


飲み屋の壁色の薄さには、どこか軽やかな竜宮イメージに繋がる感もあり、ひょっとしたらスナックの中に乙姫がいたりして……。そんなことを考えていると突然店の戸が開いて、熟年ママに手を引かれたじいさんが出てきた。そのじいさんは千鳥足で昼下がりの街に消えていった
DT 18-70mm F3.5-5.6 / プログラムAE / F7.1 / 1/60秒 / 0EV / ISO100 / 28mm
近くの街灯の灯りと背景の路地の暗がり、空の暗がりのバランスが難しかった。夜景では露出の補正をしながら何枚もの撮影が必要になってくる。何枚も撮影した中から、現場のイメージに近いこのショットを選んだ。さすがに暗すぎたので三脚を使用した
DT 18-70mm F3.5-5.6 / 絞り優先AE / F4 / 0.6秒 / -0.7EV / ISO400 / 18mm

 2日目は本島中部の名護市辺野古を訪れた。今回のトップに掲載した写真も辺野古のものだが、今までにも褪色した沖縄カラーに会うためにこの町には何度も来ていた。バーやスナックなど派手な外壁意匠が多かったエリアだけに、おいてけぼり感漂う今、静かに褪色の町をさまようことができる。

 すっかり日が暮れて夜の町を走っていると、V字の道に挟まれたビルが目に飛び込んできた。金武(きん)の町だった。


米軍の人たちで賑わった名残りが、スナックの壁に色褪せた星条旗として残っていた
DT 18-70mm F3.5-5.6 / プログラムAE / F9 / 1/80秒 / 0EV / ISO100 / 18mm

日が暮れた辺野古の通りを、35mmレンズのF1.4開放で撮影。難しい撮影条件だったが、暗い中にも建物の質感や色彩が出ていて、手前から奥までのボケ具合も気持よく、ほぼ肉眼での印象に近い自然な描写が得られた
35mm F1.4 G / シャッター速度優先AE / F1.4 / 1/50秒 / 0EV / ISO400 / 35mm

閉じられたバーの屋上でヤシと猫が同居していた。どこか悲しくてのどかなヘノコショット
DT 18-70mm F3.5-5.6 / プログラムAE / F5.6 / 1/60秒 / 0EV / ISO125 / 35mm
夜なのでビルの色は鮮明に見えないが、街灯や車のヘッドライトに照らされたビルが、息をしているようにも、古びたコンクリートの色彩は、生き物の皮膚ようにも感じられた。三脚使用
DT 18-70mm F3.5-5.6 / プログラムAE / F3.5 / 4/10秒 / 1EV / ISO800 / 18mm

 3日目は、那覇から北西に車で1時間ほどの勝連半島を目指した。勝連の町が近づくにつれて、道沿いがだんだん白っぽくなってきた。店の外壁が白いペンキで塗られている光景が増えたせいなのかもしれない。ところどころ、白壁に塗ってあった色の痕跡が目に止まりだした。この風景はどこかメキシコやコスタリカなど、中米の匂いがしてくる。ただ、辺野古よりは乾いている。いずれにしても、沖縄と中米の光や湿度は限りなく似ているのかも知れないと思った。


35mm F1.4 Gの描写力で、光の当たった壁の褪色塗料を実に自然なグラデーションの中に表現している
35mm F1.4 G / プログラムAE / F11 / 1/250秒 / 0.7EV / ISO100 / 35mm

きめ細かなモルタルの壁面に、半分剥げかけた女性が女神のように浮かんでいる。細かな壁絵のディテール再現が美しい
35mm F1.4 G / プログラムAE / F5.6 / 1/320秒 / 0EV / ISO100 / 35mm
今の沖縄では消えかけていっているが、外壁に直に描かれた絵や文字の看板は、大胆でおおらかで南島の陽射しによく似合っている。かつて店だった緑の壁に、同系色のドリンクの絵が埋もれるようにペイントされていた
DT 18-70mm F3.5-5.6 / シャッター速度優先AE / F9 / 1/125秒 / -0.7EV / ISO100 / 35mm

 勝連の町を出るとふたたび沖縄市を目指した。再開発の波の激しい那覇に比べると、沖縄の古いたたずまいを強くとどめている。もちろん、色褪せた建物が起伏のある路地づたいに密集していて、まさにアジアの町の匂いが充満していた。


貸衣装屋のショーウインドーに花嫁衣装がディスプレーされていたのだが、飾りっぱなしのせいで、かつては濃いピンクの色が白っぽい褪色ピンクになっていた
35mm F1.4 G / プログラムAE / F2.8 / 1/125秒 / 0EV / ISO100 / 35mm

コンクリートの地色のように見えるが、よく見るとかつて塗られたピンクぽい色彩痕がうっすらと見て取れる
35mm F1.4 G / プログラムAE / F10 / 1/125秒 / 0EV / ISO100 / 35mm

 最終日は那覇の町を巡った。その中でも、かつて最も栄えた歓楽街である桜坂に行った。古ぼけた飲み屋がいくつも残っていて、ほっとできる場所である。ただ、再開発の波はすぐ近くまで押し寄せてきていて、大きなビルが作られ始めていたが、路地をぐるぐる回っているうちに、肩の力がぬけていくのがわかった。

 桜坂にほど近い所に牧志公設市場がある。食料、雑貨、衣料にいたるまで、ありとあらゆる品物が店先にあふれている。その雑貨と雑踏に紛れて歩くのはなかなか気持がいい。ウコンを買ったり、大衆食堂に入ったり、路地裏の猫と戯れていると、すっかり日が暮れていた。


スナックの波板トタンの桃色が、桜坂の名前と妙に合う。何も起りそうにない昼下がりの空気につつまれ、ぬーっとした街灯とその影が延びている
DT 18-70mm F3.5-5.6 / シャッター速度優先AE / F8 / 1/640秒 / 0EV / ISO100 / 20mm

昼間の陽射しを浴びる桜坂褪色スナック街。乾いた街の空気の質感をかっちり捉えている
DT 18-70mm F3.5-5.6 / シャッター速度優先AE / F14 / 1/125秒 / -0.3EV / ISO100 / 18mm


URL
  ソニー α100 関連記事リンク集
  http://dc.watch.impress.co.jp/cda/dslr/2006/06/07/3950.html



中里 和人
(なかざと かつひと)1956年三重県生まれ。法政大学卒業後、1984年よりフリーランスカメラマン。会場探し、会場作りを自ら手掛け、町工場跡や市場、洞穴などでのユニークな写真展を精力的に開催。写真集「湾岸原野」(六興出版)、「小屋の肖像」(メディアファクトリー)、第15回写真の会賞受賞作「キリコの街」(ワイズ出版)、「逢魔が時」、「長屋迷路」(ピエブックス・文/中野純)、相模原写真新人賞受賞作「路地」(清流出版)、最新刊「夜旅」(河出書房新社・文/中野純)他

2007/02/06 01:47
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