オリンパス「M.ZUIKO DIGITAL ED 14-150mm F4-5.6」の動画性能を試す

Reported by上田晃司

E-P2に装着した「M.ZUIKO DIGITAL ED 14-150mm F4-5.6」

 6月8日掲載の「交換レンズ実写ギャラリー」に続き、オリンパスの新レンズ「M.ZUIKO DIGITAL ED 14-150mm F4-5.6」(25日発売、9万2,400円)が実際どの程度ムービー撮影に対応できるか試すことにした。

 本レンズは、マイクロフォーサーズ専用の高倍率ズームレンズで28~300mm相当をカバーする10.7倍の高倍率ズームレンズだ。広角から望遠域まで幅広くカバーするため使いやすく、1本でさまざまな被写体を撮影できる。日常のスナップから荷物の限られる旅行などには最適のレンズだ。

 現在、オリンパスのマイクロフォーサーズレンズで超広角ズームレンズの「M.ZUIKO DIGITAL ED 9-18mm F4-5.6」除けば、ズームレンズは広角から中望遠までカバーする「M.ZUIKO DIGITAL ED 14-42mm F3.5-5.6」しかない。望遠で撮影したい場合は、パナソニックのマイクロフォーサーズ用レンズや、フォーサーズレンズアダプターを使用して既存のフォーサーズレンズなどを使用する必要があった。今回、このレンズの登場により、オリンパス純正のマイクロフォーサーズレンズで広角から望遠までを1本でカバーできるようになった。

小型軽量を実現

 さらに、このレンズの驚くべきは大きさだ。サイズは63.5×83mmと非常にコンパクトで、重量も単焦点レンズ並みの280gと軽量。手ブレ補正機構搭載によりズッシリと重い高倍率ズームレンズが最近多い中、このサイズは革命的だ。

 実際に、マイクロフォーサーズ用高倍率ズームレンズのパナソニック「LUMIX G VARIO HD 14-140mm F4-5.8 ASPH. MEGA O.I.S.」と比べても、差が大きいのがわかる。

LUMIX G VARIO HD 14-140mm F4-5.8 ASPH. MEGA O.I.S.(左)との比較

 M.ZUIKO DIGITAL ED 14-150mm F4-5.6はズームを望遠端にするとほぼ倍の長さになり、LUMIX G VARIO HD 14-140mm F4-5.8 ASPH. MEGA O.I.S.とほとんど変わらない。とはいえ、鏡筒自体が軽いためバランスは良く、ワイド端の時とほとんど変わらない印象だ。ムービー撮影する時は、ズーミングしてもあまりバランスの変わらないレンズは操作しやすいので助かる。特に正面から見ると大きさの差がわかりやすいだろう。

 フィルター径は58mmだ。オリンパス純正のプロテクトフィルター「PRF-D58 PRO」も装着できるが、ムービーの場合はシャッター速度調整のためにNDフィルター(ND2、ND4、ND8)を頻繁に使用するのでフィルター枠は必要不可欠だ。

広角端時(左)と望遠端時(右)
付属の花形フードを装着したところフィルター径は58mm

 さらに、本レンズは、レンズの直径が細いため、ビデオ用三脚に取り付けるためのカメラプレートに装着してもレンズ鏡胴がぶつかることはない。しかし、E-P2でLUMIX G VARIO HD 14-140mm F4-5.8 ASPH. MEGA O.I.S.を使用した場合、レンズが少し大きめなのでカメラプレートにはボディしか乗せることができない。「LUMIX DMC-GF1」でも同様になるため、パナソニックではDMC-GF1用の三脚アダプター(スペーサー)「DMW-TA1」を用意しているほどだ。なお、大きな問題ではないが、カメラプレートにE-P2を乗せると三脚穴が若干中央からずれている。

ビデオ用雲台のカメラプレートに載せてもレンズはぶつからないLUMIX G VARIO HD 14-140mm F4-5.8 ASPH. MEGA O.I.S.とE-P2の組み合わせだと、レンズがぶつかるため前方に装着することになる
E-P2は三脚穴とマウントの中心がずれているため、レンズはやや右側にくる

新テクノロジー「MSC」を搭載

動画撮影中の液晶モニター表示

 本レンズは高速AF、静音駆動を実現した新技術「MSC」(Movie and Still Compatible)機構を搭載している。インナーフォーカスを採用しており、2枚のレンズを動かしてピント合わせを行なっているため作動音も最小限に抑えられている。事実、MSCが搭載される前のオリンパス製マイクロフォーサーズレンズに比べると、ピント合わせが大幅にスムーズになり、M.ZUIKO DIGITAL ED 14-42mm F3.5-5.6などで気になっていたやや大きめのAF駆動音もほとんど気にならなくなった印象だ。また以前のレンズは、ピント合わせの時にレンズの往復動作によりピントが大きくずれて気になることがあったが、このレンズではピント合わがスムーズで、ストレスをほとんど感じない上、思い通りの位置にピントを合わせることができた。

 実際にさまざまなシーンでコンティニュアスAFを試してみた。遠景をワイドで撮影する場合は、非常にスムーズに被写体にピント合わせをしてくれる。大きくピント位置を見失うことはない。AFの性能が試されるのはやはり近接撮影や望遠での撮影だろう。通常近接撮影では、ピントの動く範囲が大きいのでAFでのピント合わせは大変なのだが、作例の動画を見てもわかるように非常に正確にピントを合わせてくれる。パンやティルトをしても正確にピントをフォローしてくれる。

 ただし、細かいことを言えばピント合わせのタイミングがやや早く、実際にAF速度も速いため、少し焦って合わせているようなイメージになってしまう。とはいえ、望遠での近接撮影なども難なくこなすことができた。日常での利用であればまったく不満を感じないだろう。

 また、動画撮影では頻繁に使うズーミングをLUMIX G VARIO HD 14-140mm F4-5.8 ASPH. MEGA O.I.S.と比較してみた。その結果、筆者の場合はLUMIX G VARIO HD 14-140mm F4-5.8 ASPH. MEGA O.I.S.の方がズーミングはしやすい印象。ズームリングが大きくスムーズだったためだ。オリンパスの方は、若干固めの印象を受けた。

 また、ズーミング中のピント合わせに関しては、何度かテストしたが、パナソニックは最初から最後までピントをフォローしたが、オリンパスの方は望遠側で大きく一度ピントがずれてしまった。しかし、広角端でのフォーカスの動きはオリンパスの方が小さい印象だ。
 MFに関しては、フォーカスリングにある程度の重さがあるので非常にピント合わせがしやすい。ただし、レンズの距離指標が無いので液晶モニターまたは、EVFを見ながらピント合わせをする必要がある。筆者の場合、E-P2でMFでピント合わせをする場合は、液晶モニターではなくEVF(VF-2、別売)のほうが液晶モニターの解像力があるためピントの山を掴みやすかった。

 AF駆動音に関してだが、環境音がほとんどしない室内では当然のことながらAF音を拾ってしまう。環境音の無い条件下では、LUMIX G VARIO HD 14-140mm F4-5.8 ASPH. MEGA O.I.S.の方が若干AF作動音が小さい印象だった。

ボケも素直で画質は良好

 今回は別売のE-P2用外付けマイク「SEMA-1」(1万1,235円)を使用した。ビューファインダーの付くアクセサリーポートに装着できる便利なステレオマイクだ。マイクは取り外し可能で、延長コードを使用すればカメラから離して使用できる。SEMA-1をカメラに直接取り付けた場合も、LUMIX G VARIO HD 14-140mm F4-5.8 ASPH. MEGA O.I.S.に比べ、M.ZUIKO DIGITAL ED 14-150mm F4-5.6のほうがAF音を拾っているように感じるが、マイクを延長コードを使用して離した場合はどちらのレンズもほとんどAF音を拾わなくなる。

外部マイクSEMA-1E-P2に装着したところ
付属の延長コードで、マイク部分を離して使用できる

 屋外で使用した場合は、室内に比べほとんどAF作動音が気にならない。気にすればAF音が聞こえるがほとんど気にならないレベルだ。AF作動音のほとんどが環境音にかき消されるようだ。また、SEMA-1を使用する前は高音が目立っていたが、外部マイクを使用することにより音に立体感がでた。立体感のある音声は映像を楽しむ上で重要だろう。ただし、どのマイクにも言えることだが、風の音には弱いので気になるユーザーは、ウインドジャーマーなどを自作するなど工夫が必要だろう。

 動画おける画質に関して両レンズとも不満はない。猫の細い毛や葉の葉脈などもきっちりと解像している。今回さまざまな被写体を撮影したが、気になるような偽色の発生なども確認できなかった。また、円形絞りを採用しているためボケもなだらかで綺麗だ。このレンズは、近接撮影にも強く最短撮影距離は50cm、最大撮影倍率は35mm判換算で0.48倍相当と簡易マクロ撮影が可能だ。レンズ先端からだと33cmまで被写体に近づくことができため作例動画のようにに花も大きく撮影することができる。マクロ撮影時の大きなボケはとても美しい。

E-P2+SEMA-1+M.ZUIKO DIGITAL ED 14-150mm F4-5.6(左)とE-P2+SEMA-1+LUMIX G VARIO HD 14-140mm F4-5.8 ASPH. MEGA O.I.S.(右)

まとめ

 広角から望遠まで色々な画角で撮影できるので、高倍率ならではの自由な構図で撮影できるのは何を撮影するにも重宝する。ズームと組み合わせれば静止画とは違ったムービーの面白さを味わうことができそうだ。

 今回は、動画に重点をおいてこのレンズを使用したが、非常に使いやすく一般的な動画撮影には十分使用できる印象を受けた。コンティニュアスAFを信用して使えることによりムービー撮影を初めて行うユーザーの方もピントを気にせず撮影できるので間違いなく撮影用途は広がることだろう。このレンズ1本あれば日常のスナップ、家族旅行から運動会などのイベントも静止画だけでなくムービーで撮影して十分楽しめるに違いない。写真愛好家のサブレンズや動画専用のレンズとしても十分満足して使えるだろう。

実写サンプル

※サムネイルをクリックするとオリジナル動画(AVI形式)のダウンロードを開始します。

近接撮影

E-P2 / M.ZUIKO DIGITAL ED 14-150mm F4-5.6 / 52MB

外部マイク比較

内蔵マイク
E-P2 / M.ZUIKO DIGITAL ED 14-150mm F4-5.6 / 86MB
外部マイク(SEMA-1)使用
E-P2 / M.ZUIKO DIGITAL ED 14-150mm F4-5.6 / 65MB

一般サンプル

E-P2 / M.ZUIKO DIGITAL ED 14-150mm F4-5.6 / 76MBE-P2 / M.ZUIKO DIGITAL ED 14-150mm F4-5.6 / 67MB
E-P2 / M.ZUIKO DIGITAL ED 14-150mm F4-5.6 / 77MBE-P2 / M.ZUIKO DIGITAL ED 14-150mm F4-5.6 / 80MB
E-P2 / M.ZUIKO DIGITAL ED 14-150mm F4-5.6 / 75MBE-P2 / M.ZUIKO DIGITAL ED 14-150mm F4-5.6 / 117MB

パン比較

E-P2 / M.ZUIKO DIGITAL ED 14-150mm F4-5.6 / 76MBE-P2 / LUMIX G VARIO HD 14-140mm F4-5.8 ASPH. MEGA O.I.S. / 80MB

ズーム比較

E-P2 / M.ZUIKO DIGITAL ED 14-150mm F4-5.6 / 70MBE-P2 / LUMIX G VARIO HD 14-140mm F4-5.8 ASPH. MEGA O.I.S. / 82MB

フォーカス音比較

・内蔵マイク

E-P2 / M.ZUIKO DIGITAL ED 14-150mm F4-5.6 / 59MBE-P2 / LUMIX G VARIO HD 14-140mm F4-5.8 ASPH. MEGA O.I.S. / 62MB

・SEMA-1(外部マイク)使用

E-P2 / M.ZUIKO DIGITAL ED 14-150mm F4-5.6 / 63MBE-P2 / LUMIX G VARIO HD 14-140mm F4-5.8 ASPH. MEGA O.I.S. / 62MB





(うえだこうじ)1982年広島県呉市生まれ。米国サンフランシスコに留学し、写真と映像の勉強しながらテレビ番組、CM、ショートフィルムなどを制作。帰国後、写真家塙真一氏のアシスタントを経て、フリーランスのフォトグラファーとして活動開始。人物を中心に撮影し、ライフワークとして世界中の街や風景を撮影している。現在は、カメラ誌やWebに寄稿している。
ブログ:http://www.koji-ueda.com/

2010/6/21 00:00