特別企画

山田久美夫氏が語る「今年印象に残ったデジタルカメラ」2013年版

新製品・業界ネタを振り返る

デジタルカメラの新製品発表会でおなじみなのが、写真家・山田久美夫氏だ。カメラ専門誌の執筆でも知られており、ほぼすべての新製品をテスト。カメラグランプリ2013の特別選考委員やデジタルカメラグランプリの審査委員長も務めている。メーカー関係者との親交も厚く、業界きっての事情通として知られる。

そんな山田氏に、カメラメーカー各社における2013年の印象を振り返ってもらった。

なお、将来に関する内容は、メーカー発表の公式情報でないことを留意いただきたい。

――メーカー名あいうえお順で振り返ってみましょう。まずはオリンパスについて。フォーサーズとマイクロフォーサーズの統合についてはいかがでしょうか。

正直意外でした。あういう形で統合したのは残念。みんなが期待していたレギュラーフォーサーズの後継機って、やっぱりEVFではなく、光学ファインダーだと思うんです。ただし、真面目なオリンパスが光学ファインダー付きの防塵防滴フラッグシップ機を作ると、E-5などのような巨大なものになってしまう。なので落としどころとしてはありだったのでは、という感じはします。

OLYMPUS OM-D E-M1(10月11日発売)

もうひとつ、いまだにマイクロフォーサーズは、本格的な仕事に使うとなると、レギュラーフォーサーズのレンズを併用したいことがあります。マイクロフォーサーズだけでは、ラインナップがなりたっていない。揃ってきているといっても、「これすごいぜ」というのは実は少くないんです。

――そういう意味では、新しく出たM.ZUIKO DIGITAL ED 12-40mm F2.8 PROはどうですか。

玉としてはすごくいいと思いますよ。パナソニックのLUMIX G X VARIO 12-35mm F2.8 ASPH. POWER O.I.S.も結構使ってて、あれはあれでいいんですが、40mm(換算80mm相当)まであるともっと使えるのがわかりました。ボディとのバランスについても、E-M1の標準ズームとしてギリギリ許容できる範囲。良くできたレンズです。

M.ZUIKO DIGITAL ED 12-40mm F2.8 PRO(E-M1とのセットで10月19日に発売。単品での発売は11月29日)

オリンパスに限らず、全体的に今年はレンズの年でした。ボディの方があるところまできた。それを使えるようにしたのが今年だったのではと思います。フォトキナの年にボディが出て、次の年にレンズが充実する。そういうサイクルが出来上がりつつあるように思います。

――E-M1でフォーサーズレンズを使ってみていかがです?

AFスピードは問題ありませんね。でもボディとのバランスはいまひとつ。大口径で辰野クオリティの良いレンズほど、手持ちで使う上でE-M1とのバランスの悪さはしようがないです。でもE-M5やPENにないしっかりしたグリップがついて、何とか取り回せるようになった。グリップも妥協点のひとつだったのでしょう。

――OM-Dが新しいラインを形成した今、PENシリーズの役割はどうなるんでしょう。

正直言うと、OLYMPUS PEN E-P5はポジション的に微妙かもしれません。あのポジションの機種が欲しかった人は、OLYMPUS OM-D E-M5をすでに購入していたかもしれません。。EVFが外付けでつくといっても、もともとEVFが欲しかった人は、内蔵タイプを選ぶでしょうし。

OLYMPUS PEN E-P5(6月28日発売)

PENにはもうひとつ矛盾があって、それは本体サイズです。やはりミラーレスやフォーサーズの魅力は小型軽量さだと思うんですけど、いま思うと初代E-P1のサイズは巨大でした。E-P5もそれを引き継いでいる。今となっては「なぜこのサイズを持ち歩くの?」という腑に落ちないことになっています。かっこいいんですけどね。マイクロフォーサーズ全体にいえますが、同じセンサー、同じ処理回路で上から下まで通した結果、「じゃあ上の機種の意義は何?」ということになっています。

――今まではそれが内蔵EVFの有無でしたね。でもこれからはOM-Dの中で上位と下位が存在するという……

E-M1が出てきて、「OM-Dって何?」という部分がちょっと明確ではなくなってきた気がします。オリンパスがいうには「OM-Dは防塵防滴、PENは防塵防滴ではない」。でも防塵防滴を必要とする人は少なく、ぱっと見ではEVF一体型がOM-D、そうでないのがPENになります。OM-Dが1機種ならそれがマイクロフォーサーズのフラッグシップですが、2機種になったから話がややこしくなりました。E-M5の下にもう1機種加えれば、OM-Dだけでラインナップが見えてきてすっきりすると思います。仮にその下が入ってくると、「防塵防滴はいらないけど、あのスタイルは欲しい」という人にアピールできる。防塵防滴を外すともっと小さく、軽く、安くなりますし。

――それはSTYLUS 1では(笑)

STYLUS 1、気にいって使ってますよ。でも僕の場合は、期待値より少ししただったかな。画質は妥当なレベルだと思う。でも気になったのは、AF、オートホワイトバランス、AEといったところ。特に気になったのは、撮影してから液晶に表示されるまでが長いことです。僕の中の最近の課題は、取材用のカメラをパナソニックのLUMIX DMC-FZ200から何に変えるかということ。候補として、全焦点域でF2.8という条件で、STYLUS 1があり、ソニーのサイバーショットDSC-RX10があるんだけど、両方とも何かが違うんです。RX10のように大きなサイズのセンサーを積んだ高倍率機が出てきましたが、既存の高倍率機に比べると巨大だし、ズーム倍率が低く、かといっていまのところ、画質も飛び抜けて良いわけではないですね。1/2.3型なら40倍、50倍は当たり前だし、FZ200のように、F2.8通しであの大きさができる。最近は1/2.3型でも画質も良いですしね。

OLYMPUS STYLUS 1(11月29日発売)

――E-PM系がなくなり、E-PL系が残っています。E-PM1系はエントリーの役割を終えたのでしょうか。

僕はE-PM系の方が好きでした。マイクロフォーサーズって何?ミラーレスって何?という質問に対する回答になっている。とにかく小さく作る。ある意味高画質・高機能はラインナップにあるわけですから、それとは違う魅力を持った機種が必要です。それはE-PLではなく、E-PMだったと思います。

――バリアングル液晶モニターの優先順位が高かったということでしょうか。次はカシオをお願いします。

EXILIM EX-TR15は、使うとすごく面白いカメラです。頭の体操をしているようなカメラ。いままでとは違うスタイルのカメラなので、新しい撮り方に挑戦できる。「こういうのも撮れるよね」という楽しさがあります。続けて欲しいカメラです。独特なユーザーインターフェイスも楽しい。欠点は、お店にほとんどおいてないこと(笑)。

カシオEXILIM EX-TR15(7月19日発売)

EXILIM EX-10は使うとすごく面白いんだけど、ちょっとマニアックなところにカシオがハマってきているような気がします。もっと色んなものが撮れるならいいですが、基本的にはブラケット。それがわかる人じゃないと使えないですよね。タッチパネルじゃないのも残念です。9枚あって、それを選ばなければならない。そんなとき、タッチならなあと思うわけです。画面も大きいわけですし。わかりやすい形で見せないと、魅力が伝わりにくいですね.器用貧乏という感じですね。

カシオEXILIM EX-10(11月29日発売)

正直に言うとカシオは、レンズ交換式を一回やった方がいいと思ってます。彼らが拒否するのもわかるんですが、そっちの世界を一度やった方が、コンパクトの良さもまたわかると思うんです。

――ではキヤノンです。目立ったのはEOS 70D、EOS Kiss X7、EOS M2といったところですね。

今年のキヤノンはちょっと先を見過ぎたのかと思います。レンズ交換式カメラで動画を撮るという趣味が、もっと下まで降りてくると見誤ったのでは。それがEOS 70DのデュアルピクセルCMOSに反映されています。EOS 70Dはすごくいいカメラだと思います。基本性能でいったら、もうEOS 7Dに近い。しかも値段が安い。急に上がったり下がったりしますが(笑)

キヤノンEOS 70D(8月29日発売)

一眼レフの魅力って、デジタル的なところもあるけど、まずはメカですよね。メカと光学がしっかりしてないと、一眼レフはなりたたないし、メカが良くないと使っていて気持ちよくない。それが象徴的に出たのがEOS 70Dなのかなと思います。使うと切れも良いし、値段以上の高級機という気がします。さすがです。

なのにキヤノンが最前面に謳ったのが、動画機能でした。デュアルピクセルCMOS AFをアピールするなら、「ライブビューで静止画を」といってくれればいいのに、「動画」が割と前面に出てしまった。まだ早かったと思います。本当にデュアルピクセルCMOS AFをアピールするなら、外付けのEVFユニットをオプションで用意するくらいすれば、ずいぶん変わったと思います。

あまり知られていないのですが、EOS 70Dは連写中の動体追尾AFができません。1枚目でAFが固定になります。その割りに「AFがすごい」というイメージがついてしまい、店頭では光学ファインダーだけを覗いている人がいる。それで「やっぱりデュアルピクセルはいいんだ」っていわれても……大いなる誤解が良い方に回ったということでしょう(笑)

――そのデュアルピクセルCMOS AFが、EOS M2に入りませんでした。

そう、本当は初代のEOS Mに入ってても良かったんですよ。それがEOS M2になっても入ってない。キヤノンはもともと真面目な会社なので、EOS MのときはファームウェアでAF速度を上げるなど、対処はしてきた。その順当な進化がEOS M2という感じはしますね。

EOS M2(12月20日発売)

――レンズが3本しかなく、EVF付きモデルがないなど、まだ発展途上に見えますね。

最大限に良い解釈をすると、「EVFはなく、ボディも小さいから望遠、マクロ、大口径レンズは必要ありませんね。広角、標準でお使いください」という提案にも見えます。もちろん、11-22mmや22mm F2のような「こんなに小さくて良いレンズができるんだ」という例はしっかりあるので、小さなボディに合わせたレンズラインナップを構築したのかと思います。単純なエントリークラスというより、一眼レフを含めたEOSシステムの中で、「この部分はEOS Mで」、という住み分けをしているんですよ。もちろん、EOS Mだけでは、写真の楽しさの一部しか体験できませんけどね。

――EOS Kiss X7はどうでしょう。

ある意味、名機だと思います。キヤノンが一番苦手なのは小型軽量化です。なぜかというと一番お金がかかるから。そこをしっかりやってきたというのは、キヤノンにとって大英断だったろうし、それ用のデバイスをちゃんとつくりました。本当に真面目な1台だと思います。

キヤノンEOS Kiss X7 WHITE(11月28日発売。ブラックの発売日は4月24日)

――高級コンパクトのPowerShot S120、PowerShot G16もありました。

「大人の部活」というプロモーションが良かったです。高級コンパクトって、実用性だけを追ってては間違えると思うんです。普段の趣味の中に入っていけるのがコンパクトの強みで、カメラが自己主張せず、クラブ活動の中に入る、一緒に楽しむというコンセプトは、すごく正しいと思います。

キヤノンPowerShot S120(9月12日発売)

“写真が趣味”(写真がメインの趣味)の人ではなく、“写真は趣味”(写真は色々な趣味のうちのひとつ)の人がターゲット。写真が第一ではなく、他の趣味の中で写真を活用していく人たち。そういった層をはっきりターゲットに謳ったカメラは、あんまりなかったと思います。今後のコンパクトカメラは、ここに行くしかないでしょう。カメラメーカーとしては「自分は主役じゃない」と認めるのはなかなか辛いことだと思います。でもそういう趣味世界を構築する仲間の一員として見れば、いけると思います。

――お固いキヤノンが、PowerShot Nを送り出したのも印象深かったです。

いい意味で違うものを作ろうという意識が、久しぶりに前面に出たカメラです。キヤノンはストレスを晴らすためなのか、たまに奇抜なものを開発しています(笑)。そのときの技術が次の世代に活かされているんですよ。製品化しないとわからないことってたくさんあるので、こういうチャレンジは素晴らしいと思います。

キヤノンPowerShot N(4月25日発売)

特徴であるエフェクトもきちんとやってきた。スマートフォンで後処理で遊ぶ人とは違うターゲットであるのを明示できたし、何種類も見せるという手法もいいです。写真って撮る楽しみもありますけど、選ぶ楽しさもありますよね。PowerShot Nを使って思ったのは、「一生このフレーミングでは撮らないよな」という写真が得られること。あれは面白かったなあ。

――次はソニーです。

今年一番がんばったメーカーは? と聞かれたら、ソニーと答えるしかないです。ソニーがデジタルカメラに本気になったというのが明確になった一年です。もともとポテンシャルのあるメーカーだし、実権を握っている人たちがカメラ世代。しかも「俺たちがやればここまでできる」というのを、デバイスからつくれちゃうところがすごい。要は、最高の環境で作れているというのが、一番いいんでしょうね。

――話題のα7はどうでしょう。APS-CでスタートしたEマウントで、フルサイズのカメラができてしまいました。

α7R(11月15日発売)

できたというか、一応Eマウント立ち上げのときからフルサイズを考えていたんですか? って聞いたんですよ。するとYesという答え。最初からフルサイズにするために、あのマウントを作っていたのです。でもフルサイズは高価じゃないですか。NEXがスタートしたとき、いきなり高いものを出しても受け入れられない。コンシューマー向けのシステムとして考えて、さっきの話だけど「写真が趣味」の人で、ソニーを選ぶ人はまだ少ないと思います。逆にいうと、他の分野をやっているソニーは「写真は趣味」の層に強い。

――α7Rとα7の違いはどうでしょう。その意義は?

カメラのベクトルは、高感度、高精細、高速の3要素だと思います。α7Rとα7に当てはめると、高精細はα7R、高速はちょっと疑問符はあるけどα7。それぞれユーザー層は違うので、ある意味では説得力のあるラインナップだと思います。あとはシステムの登場時ということもあり、「こんなことできるんですよ」と見せるためもあったでしょう。ローパスフィルターのありなしだけではなく、画素数、AF、シャッターが違う2台を、目的に合わせて造っている。2台だしたことから「俺たちは本気だ」というアピールもできましたし、買う側としても「一発屋ではないな」という安心感があると思います。

2台を見て思ったのは、2013年内にソニーが何としても出さないといけないという、ソニーとしての強迫観念じゃないけど「やりきらないと俺たち生き残れない」という想いを感じました。今年ソニーが出した代表的な製品を挙げると、ハイレゾのブラビアと、もうひとつはα7シリーズになるでしょう。

――α7のスタイリングについてはどう思います?

かっこわるいよね(笑)。見慣れましたが。でも22万円のカメラとしてはどうかと思います。しかもFEレンズをちゃんと揃えるなると……。α7Rだと、最初は22万円だけど、それで終わらないでしょう。フォトキナ辺りまでにはカールツァイスの3本が出て、それが安くともそれぞれ10万円以上といわれると、ちょっと考えてしまいますね。

でも正直言うと、最近α7Rはよく使ってます(笑)。28-70mmはボケがいまひとつですが、55mmは素晴らしいです。あの雰囲気でツァイスの24-70mmが出てきたら最高ですね。ただ、FEレンズの望遠ズームはF4でも大きめだし、ロードマップにある、マクロも、超広角も、大口径も、フォトキナ辺りまで待たなきゃいけない。これらが揃って、初めて一本立ちできるシステムカメラになる感じですね。

――旧NEX系はどうなるのでしょう。

NEX-7のフルサイズ化はあるかもしれません。例えばフルサイズであの大きさにまとめてくるとか。マウントが一緒だから、できないことなはいでしょう。

ソニーNEX-5T(9月13日発売)

α7系が一眼レフっぽい形状になっているのは、海外市場を見据えてのこと。海外のディーラーは、頭がフラットなカメラを認めないそうです。コンパクトだと思われるからだそうで、真ん中が出っ張っているというのが、いいカメラの条件。オリンパスの場合、PENではなく、OM-Dが売れたのもそれです。

ですから、NEX-3/5/6/7系の後継は、名称はわかりませんが、今後も継続すると思います。でも、個人的には、Eマウントのカメラは、NEXブランドで今後も展開して欲しかったですね。

――RX系はいかがでしょう。サイバーショットDSC-RX1Rには触れない方がいいですか?

いや、行きましょう(笑)。サイバーショットDSC-RX1は2012年の自分への誕生プレゼントとして、去年の暮れに買いました。自分にとってはとても想いのあるカメラです。それがR1Rになって「その想いを壊すなよ」と(笑)。でもRX1Rを借りて使って思ったのは、「これって違うカメラなんだ」ということです。操作感は同じだけど、絵が全然違う。負け惜しみではなく、常用機として考えるとRX1の描写の方があのカメラのキャラクターに似合うと思います。RX1Rは、水平解像度を測るとD800、D800Eと同等クラスで、2,400万画素ではトップクラスです。あの切れ味はすごいし、レスポンスもいい。ただ、そういう目的で撮るカメラではないのではと思います。三脚に固定してじっくり撮るスタイルのカメラではないし、手ブレ補正もないし。

ソニーサイバーショットDSC-RX1R(7月5日発売)

――RX1もある意味そうだったんだでしょうけど、RX1Rでさらにピーキーな部分が目立ってますね。

そう。スカイラインと同じで、GTとGT-R、Rがつくかつかないかで全然違います。普段撮りは絶対GTですよね。ただ、最近またRX1Rを見直してます。α7Rに35mmのレンズをつけるより、レンズの素性からいって、RX1Rの方が画質がいいんですよ。35mmだけで持ち歩くなら、RX1Rでいいと思います。

――RX10はどうでしょう。

今使ってますが、何とも微妙なカメラです(笑)。というのも、最近持ち歩いているカメラの中で、実は一番巨大です。でも撮れた絵を見ると、結局は1インチの画質。確かにレンズはF2.8通しで明るいのですが、高感度の弱さをそこで補わなければならないので、限界は低い。例えばF2.8-4でもう少し小さくするとかすれば、良かったかもしれません。ちょっと力が入り過ぎたかなという印象です。ただし、将来RX10「Mark II」がでて、そのとき4Kの動画が撮れたら素晴らしいと思います。メインのカメラは別にあり、4K動画はこれで撮る。そういうとき強いカメラでしょう。

ソニーサイバーショットDSC-RX10(11月15日)

――次はQXです。カメラ好きのスマホユーザーにとって、夢のような製品でしたが……

でも使うと悪夢のようなカメラ(笑)。まずは写真を撮ろうと思ったときに、スマートフォンに装着するという体験が新鮮でした。しかし、やっぱり面倒だし、iPhoneだとWi-Fiの接続も面倒。なぜ撮るまでに1分近くかかるんだろうと。でもこういう世界はアリだと思います。このスタイルが正しいかどうかはまだわかりませんが、新しい使い方を提示しているところを評価したいです。

ソニーサイバーショットDSC-QX100(10月25日発売)

――ソニーのレンズで印象に残った製品はありますか。

Eマウント用のVario-Tessar T* E 16-70mm F4 ZA OSS。これが出てきてからNEX-7をよく使うようになりました。NEX-7を使わなくなったのは、ちょうどいいズームがないから。3倍ズーム、あるいはタムロンの17-200mmのどちらかになってしまう。そう考えると16-70mmの焦点域はちょうど良く、2,400万画素の解像がちゃんとでるほど画質も良い。すごくバランスいいんですよ。形もとにかくかっこいいです。

Vario-Tessar T* E 16-70mm F4 ZA OSS(9月13日発売)

Planar T* 50mm F1.4 ZA SSMもいいレンズです。あれが出てきてからα99をまた使うようになりました。

Planar T* 50mm F1.4 ZA SSM(7月26日発売)

もうひとつ挙げるとすると70-400mm F4-5.6 G SSM II。前のタイプも良かったけど、今度のも素晴らしいです。α7Rに使ったとしても、三脚に使えば問題ないし。風景を撮る人にはオススメです。

70-400mm F4-5.6 G SSM II

――次はシグマです。

SIGMA DP3 Merrillは久しぶりに感動しました。こんなに切れ味のいい写りをするカメラはないですから。DP1、DP2よりレンズはいいです。ある条件では厳しいけど……。ここまですごい絵が出るとはと思った意味では、久しぶりに感動しました。Foveonセンサーのすごさを体感できます。

SIGMA DP3 Merrill(2月22日発売)

あと、18-35mm F1.8 DC HSM。APS-C用ですけど、この明るさはすごい。しかも、画質だって開放から使えるし、ボケも結構いい。ただ、APS-Cの一眼レフカメラで、このレンズとペアになるクラスのカメラが意外にないのが問題。まだ試してませんけど、D7100あたりと組み合わせて使ってみたいですね。

SIGMA 18-35mm F1.8 DC HSM(キヤノン用が6月28日、シグマ用が8月23日、ニコン用が10月11日に発売。ソニー用、ペンタックス用の発売日は未定)

――次はニコン。ニコンといえばDfですね。

Dfは自分への今年の誕生日プレゼントとして買いました。アイツはそばにいてくれればいいんですよ。そういうカメラ。見ていると落ち着きます。そして触ると面白くなって「いつか一緒に遊びに行こうね」と話しかけたくなるカメラ。確かにまだ未成熟なところもありますが、それも含めて肩の荷が下りている自分がいるんですよ。

ニコンDf(11月28日発売)

僕はDfはすごいカメラだと思ってます。Dfは初めて、「カメラや写真が趣味」という人に向けて真面目に作られたデジタル一眼レフカメラ。デジタルカメラというのは常に機能の進化を求められてて、それがいつの間にか、プロや「写真が趣味」というアマチュアに特化してしまった部分があるんですよ。でも「写真が趣味」の人も、いつも100%の力で写真を撮るわけではない。普通の人はなおさらそう。そういう人は、撮った結果が最高でなくても、撮ってるその時間を楽しく過ごしたい。趣味としての時間を有意義に過ごしたいという人。そうしたニーズにちょうど良いものは何かと考えると、Dfは本当に良くできていると思います。

――これをお固いイメージのニコンが出しました。

逆に言うと、ニコンしか出せないでしょう。他のメーカーだと説得力がないんですよ。後藤さん(ニコンフェロー 映像カンパニー 後藤研究室長の後藤哲郎氏)でないと作れないカメラ。後藤さんはずっとハイエンドのカメラを担当されていた。その後藤さんのジレンマは、自分が作ったものを自分が使うという感覚が持てなかったことだそうです。道具として最高のものを作ったのに、自分が本当に欲しいものはどこか違う。Dfはそれを現実化したプロジェクトでもあるんですよ。自分が欲しいカメラを作るなんて夢じゃないですか。それをニコンがOKを出したというのも、奇跡なんです。「Dfが売れているから、あんな感じのカメラを作ろう」という考えで他社が作っても、無理でしょう。

――ニコンのレンズといえば、58mm F1.4 Gが話題です。

あれはものすごいじゃじゃ馬です。世間的にはとにかく良いレンズというイメージをもたれていますが、全群繰り出しで後ボケを重視しているので、近距離で球面収差が出るのは仕方がない。良いときはすごく良いし、雰囲気は出るレンズですが、近距離の開放ではかなりソフトだし、周辺部のボケもちょっとクセがあって、苦手なシーンもある。つまり、最近の高性能レンズみたいに、いつでも、どこでも、どんな条件でも、バリバリに良く写るわけじゃない。このレンズを愛せる人は本当のレンズ好きでしょう。いいレンズという話だけが広まってしまうと、他のことがいえなくなる。本当は「難しいレンズだよ」といってあげるのが重要だと思います。

ニコンAF-S NIKKOR 58mm f/1.4 G(10月31日発売)

――Nikon 1 AW1も衝撃的でした。

AW1は「こういう隠し球があったのか」という感想です。その人が使っているフィールドで、評価が180度変わるカメラ。レンズまで一体で作ってきたというのがすごくいいです。真面目なカメラです。Nikon 1のVやAWは、ミラーレスの可能性を表明するという意味では、すごく面白いと思います。V2は連写やAFに強い。ミラーレスを作る意味を一眼レフに強いニコンが真面目に考えて、取り組んだシステムだと思います。

Nikon 1 AW1(10月10日発売)

――COOLPIX Aにも言及いただけますか。

真面目なニコンが真面目に作ったカメラ。遊びがない。でも道具としては良くできてます。操作性も一眼レフの中上級機譲りですから、ニコンの一眼レフを普段使っている人には、最高のサブ機だと思います。

COOLPIX A(3月21日発売)

――次はパナソニックです。

LUMIX DMC-GF5が出た時は、小型軽量に挑戦したカメラだと思って気に入ってたので、LUMIX DMC-GF6がでたときはちょっとがっかりしたんです。そのときはGMが出るとは思ってませんでしたから、GFが高機能路線になるの? って思ったんですね。バリアングル液晶を搭載したり。今思えばLUMIX DMC-GM1との住み分けだったのでしょうけど。

LUMIX DMC-GF6(4月24日発売)

――秋にはLUMIX DMC-GX7が出ましたね。

これがでたとき、「あ、本気だったんだ」と思いました。パナソニックの高級路線といえば、デジタル版ライカM型の延長的なモデルが昔からあったんですが、それがレンズ交換式になってから途切れました。上面フラットでファインダーがあるタイプです。満を持して出たと思ったLUMIX DMC-GX1はEVFがなかった。その不満を解消してくれたのがGX7です。画質も良くなっています。ただ、マイクロフォーサーズなのに、NEX-7とサイズは同じで、EVFも最新のデバイスとはいえないところにひっかかりを感じてました。

LUMIX DMC-GX7(9月12日発売)

そういってると突如GM1がでました。GM1はある意味、僕にとって夢のカメラでした。ミラーレスが登場して5年がたちますが、高機能化には力を入れてきました。でもミラーレスの本質的なところ、つまりさらなるコンパクト化という本分が手薄でした。GF5も小さかったですが、何が不満かというと安っぽいんですよ。小さいものほどしっかりしてないと、安物になってしまうんです。GM1はそこにも隙がない。小さな高級機というイメージですね。

LUMIX DMC-GM1(11月21日発売)

――コンパクトデジタルカメラではいかがでしょう。

コンパクトデジタルカメラでは、LUMIX DMC-LF1を気に入って使ってます。1/1.7型ですけど、28-200mm相当で、ワイド端はF2と明るく、このサイズでEVFがついて、ダイヤルなどの操作性もいい。USB充電も使えますから、常時携帯にも便利。あと、地味だけどLUMIX DMC-FZ70もいいですよ。

LUMIX DMC-LF1(6月20日発売)

――富士フイルムからはFUJIFILM X-E2が出ました。

普段結構使うカメラが、X-E1とX-E2なんです。X-Pro1も使っていたのですが、いまはX-E2に変わりました。レスポンスがいいですね。X-E1のときにあったほんのちょっとの待たされ感がなくなりました。ある意味通のカメラです。解像感が高いけど、輪郭は自然で、遠近感がある。超高感度性能もAPS機で最高レベルで、階調もいい。さらに、レンズも良いです。最近使うのは14mm、23mm、60mm。60mmは神懸かり的に良い(笑)

FUJIFILM XE-2(11月9日発売)

――Xマウント機としては、ラインナップが下に広がった一年でもあります。

FUJIFILM X-M1はいま安くなってますので、画質コストパフォーマンスは最強でしょう。

FUJIFILM X-M1(7月27日発売。ブラウンのレンズキットと各色ボディのみは9月12日)

FUJIFILM X-A1はいい意味で、ベイヤーセンサーの最良の絵なんですよ。Xレンズのすごさがわかる。

FUJIFILM X-A1(11月23日発売)

Xマウント機でいうと、僕自身はEVFがセンターにあるタイプが欲しいです。望遠を使うので。あとは海外市場を含めて、Xシリーズが認められるにはラインナップに必要だと思います。あとはフルサイズにいくよりは、中判に近いフォーマットを採用する可能性もあるのではないでしょうか。写真館などのルートでは、縦位置・横位置の関係ない4×4cmなどのフォーマットも考えられます。スタジオ用でレンズ交換式、山岳写真向けに軽量な一体型などどうでしょう。

――リコーイメージングはいかがでしょうか。

K-3はすごく真面目なカメラ。自分たちが欲しいものをそのまま包んでいるカメラです。もちろんフルモデルチェンジというわけではないんですが、合併のタイミングを考えると、逆に言うと良く出せたなと思います。「あそこまでSRをしゃぶり尽くすかという」すごさもありますね。K-3のローパスセレクターもそうですが、今までのアストロトレーサーとか、自動水平補正とか。これからも期待したいです。

K-3(11月1日発売)

PENTAX Q7も結構使ってます。直焦点でBORGにつけて、月面の写真を撮っているだけですが。PENTAX Q10に比べるととても良くなっていますね。特殊用とですけど、小型センサーでレンズ交換ができるカメラには、まだまだ可能性があると思います。

PENTAX Q7(7月5日発売)

GRはいい意味で我が道を行く感じで、背伸びせずAPS-Cで良く作ったなと思います。APS-Cになって失ったものはあまりない。実質的にはすごくバランスの取れたカメラになっています。その代わり、次に何をやるかが難しい。

リコーGR(5月24日発売)

RICOH THEATAは大好き。久々に面白い! と思ったカメラですね。もともとパノラマ好きですので。すごいのはプリントできないカメラが認められたこと。これを面白いと思う人がたくさん出てきた。ある意味時代にのったカメラ。これからも動向に期待したいです。

RICOH THETA(11月8日発売)

――ライカからはXバリオが今年出ています。

実はXバリオが大好きです。賛否両論あるみたいですけど、すごくレンズが良かったです。普通に撮っただけで、すごく立体感がある。狐につままれたような良さです。広角も望遠も文句なし。これは使ってみないとわからないですね。高価だし、万能じゃありませんけど、ライカらしさを気軽に楽しめるモデルに仕上がっていると思います。

ライカXバリオ(6月20日発売)

(本誌:折本幸治)