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特別企画:いまどきのEVFを比較する

オリンパス、パナソニック、リコー、サムスンの計6製品をチェック
Reported by 本誌:折本幸治

 マイクロフォーサーズシステム規格に準拠した、いわゆる「ミラーレス」タイプのレンズ交換式デジタルカメラが人気だ。そこで注目されるのがEVF(エレクトロニックビューファインダー)。光学ファインダーがないマイクロフォーサーズ機にとってEVFは、「ファインダーをのぞいて撮りたい」という、カメラユーザーにいまだ根強いニーズを満たすことから、購入者によっては重要な選択要素になっている。

 EVFのメリットとデメリットについては各所で語り尽くされている感があるが、ここでも簡単に触れておこう。

 メリットは、撮像素子の映像をほぼそのままスルー画で見ることができること。視野率100%は当たり前だし、露出やホワイトバランスの変化を撮影前に知ることができる(画像処理エンジンを通すためか、実際には撮影した写真とかなり違うこともあるが)。また、表示そのものは電気的に生成した画像のため、撮影情報をはじめ、多彩な情報をファインダー像にオーバーレイ表示できる。その延長上にあるのが、ピントを合わせたい箇所を拡大できる機能。

 要するに従来の背面モニターと同じ表示をEVF内で表示できるわけで、さらに光学ファインダーと同様、明るい日中でも視認性が変化しないのも利点。ブレの抑制にも役立つ点も光学ファインダーの性質に近い。光学ファインダーと背面モニターの良さを併せ持ったシステムがEVFといえる。

 一方EVFのデメリットは、精細感・階調・色再現性などがデバイスの表示品質に依存する点にあり、現状での品質は、良くできた光学ファインダーに比べるべくもない。加えて、電気的なタイムラグが必ず生じる点も問題だ。さらに表示方式によっては視線を動かすと色ズレ(カラーブレーキング)が目につくなど、光学ファインダーにはない問題も存在する。そもそも背面モニターで用が足りるため、EVFの必要性を感じない人もいるだろう。

 しかしコンパクトデジカメより付加価値が高く、価格競争が比較的緩いレンズ交換式デジタルカメラの世界では、EVFにも高級なデバイスが使用できるようになった。そのためマイクロフォーサーズの登場に合わせ、EVFも新しい世代に突入。従来の性能を大きく超えるEVFが現れている。

 2008年10月、パナソニックは世界初のマイクロフォーサーズ機「LUMIX DMC-G1」に、144万ドット相当のEVFを内蔵した。業務用ビデオカメラのEVFをベースにしたといわれ、このEVFのクオリティとコントラストAFの実用的な速度が話題になったのは記憶に新しい。DMC-G1のEVFはその後、LUMIX DMC-GH1(2009年4月)、LUMIX DMC-G2(2010年4月)に引き継がれている。EVFを外付けとした小型軽量機LUMIX DMC-GF1(2009年9月)では、別途「DMW-LVF1」という外付けEVFを用意。「必要に応じて外付けEVFを使う」というスタイルを提案した。

 一方オリンパスは、EVF非搭載のE-P1(2009年7月)をまず投入。次いで上位機種のE-P2(2009年12月)では、外付タイプのEVF「VF-2」をオプションとして用意した。VF-2は従来のEVFの概念を覆すほどの高画質を達成しており、最新機種の「E-PL1」(2010年3月)でも使用できる。いまのところ、オリンパスにEVF内蔵タイプのボディはない。

 外付けタイプのEVFといえば、リコーが以前から積極的だった。2009年12月に同社が発売したGXRでは、専用の外付けEVF「VF-2」を用意。Caplio GX100時代から現役で存在する外付けEVF「VF-1」の流れを汲むもので、やはりVF-1から大きく性能がアップしている。


ファインダー倍率を比較

 これらの新世代EVFがたまたま手許に集まったので、簡単に比較してみることにした。まずは各EVFの内部をコンパクトデジタルカメラで撮影した画像を掲載する。いずれも最もシンプルな表示状態にした。

 撮影に使ったのはIXY DIGITAL 930 IS。撮影時の焦点距離は9mmに統一してあるが、アイポイントや視度補正の関係で、必ずしもファインダー倍率を正確に反映しているとはいえないことに留意いただきたい。また、GXRとNX10は撮像素子のアスペクトに合わせて3:2表示としたため、ファインダーの広さとしては不利になっている。

 また、フィールドシーケンシャルカラー式のDMC-G1のEVFがニュートラルな色味で撮影できなかったので、ある程度色補正を行なっている。さらに全機種とも露出も意図して暗めにした。そのため、実際より明るさとコントラストが下がっている。

パナソニックLUMIX DMC-G1 オリンパスVF-2(ボディはE-PL1)
サムスンNX10 リコーVF-2(ボディユニットはGXR)
パナソニックDMW-LVF1(ボディはDMC-GF1) リコーVF-1(ボディはGX200)

 掲載順は倍率が大きいものから。こうして並べると差がはっきりするが、実際の見やすさや使い勝手は倍率だけでは決まらない。以下、個別の特徴を紹介したい。


 EVFは外付けタイプと内蔵タイプに分類できる。まずは外付けタイプから紹介してみたい。比較のため、旧世代の代表としてリコーの「VF-1」もとりあげてみた。


オリンパス「VF-2」(E-P2/E-PL1用)

 E-P1の発売から約半年後、上位機種として登場したE-P2の目玉のひとつがブラックボディのラインナップだった。もうひとつの目玉が、E-P1になかった外付けEVFのVF-2だ。接続はアクセサリーシューとその下のコネクター(アクセサリーポート)を使用する。E-P1にはアクセサリーポートがなく、VF-2は装着できない。

 従来の外付けEVFからすると違和感を覚えるほど巨大で、装着時の取り回しは良くない。その代わり接眼レンズやアイピースの直径が大きく、今回試用した外付けEVFでは最も目が当てやすかった。上方向90度のチルト機構も備えており、固定式液晶モニターを採用するE-P2およびE-PL1が苦手な、ローアングルでの撮影が容易になる。チルト操作の固さと滑らかさは適度なものに感じた。ボディに合わせて、ブラックとシルバーを選べる点も面白い。

 表示画質は素晴らしいの一言。今回試した中でもトップクラスで、精細感、コントラスト、表示の滑らかさなど、どれをとってもこれまでの常識を打ち破っている。表示デバイスはエプソン製の144万ドットHTPSユニットといわれており、 EVFの新時代を感じさせる美しさだ。近〜中距離の被写体ならピントの山もある程度つかめる。

 とはいえ、実際より高コントラストに見える点や、表示の遅延、輪郭のじらつき、色再現性の低さなど、光学ファインダーにはまだまだ適わない印象。ピントの山の掴みやすさも、光学ファインダーには比べるべくもない。しかし、他のEVFに比べるとその品質ダントツに良く、EVF否定派であっても一度は体験してほしいクオリティだ。実勢価格が2万5,000円前後と、今回紹介する外付けEVFの中で最も高価だが、「のぞいて撮る」ことを重視する人には、それだけの価値はあると思う。

 難点は大きさに加え、EVFと背面液晶モニターの切替に難儀すること。EVF/背面液晶モニターの表示切替は、接眼部斜め下のボタンを押すことで可能だが、アイセンサーにより目を近づけると自動的に表示が切り替るDMC-G1などに比べると、使い勝手が良いとは言いがたい。ボタンそのものは押しやすい位置にあり好印象だ。

 なおE-P2、E-PL1とも、4月22日公開の新ファームウェアVer.1.1を適用すると、再生モードおよびメニュー画面は大きな背面液晶モニターで、撮影モードはEVF、といった具合に表示を自動的に切り替えるようになる。それまではいちいち手動で切り替えていたわけで、EVF派にとって歓迎したいアップデートだ。というより、最初から考慮してほしかった。

・表示例


パナソニック「DMW-LVF1」(LUMIX DMC-GF1用)

 オリンパスのVF-2よりは小振りで、従来のコンパクトデジカメ用外付けEVFと同じサイズ感の製品。チルト機構、視度補正、ストラップに取付けられるケースなど、他社の外付けEVFにあるものは一通り揃っている。実勢価格は2万円弱程度。

 ただし、ドット数が約20.2万相当で、倍率も約0.52倍(35mm判換算)と物足りない。オリンパスのVF-2と比べると旧態依然とした内容であり、価格差を考えるともう少し頑張ってほしかったところ。また、アイポイントが短く、しっかり目を近づけないと視野がけられる。視度調整幅が広いのは良心的だ。

 DMC-GF1の液晶モニターの視認性は高く、EVFを必要とするケースはオリンパス機より少ないかもしれない。とはいえEVFを使ってみると、背面モニターでは味わえないカメラとの一体感が感じられて楽しかった。コンパクトなボディとのマッチングも良く、ローアングルやウエストレベルでの撮影が容易になるなどのメリットもある。価格になっとくできれば、導入するのも悪くないだろう。

【2010年4月28日】「DMC-GF1の背面液晶モニターはフリーアングル」という記述をしましたが、正しくは固定式になります。特別仕様のDMC-GF1を試した訳ではありません。お詫びして訂正いたします。

・画面例


リコー「VF-2」(GXR用)

 GXRのオプションとしてリコーが用意するのが「VF-2」。奇しくもオリンパスのVF-2と名称が同じだが、こちらは既存のリコー製品「VF-1」の上位製品という位置付け。オリンパスは光学ファインダーで「VF-1」という製品があり、VF-2はそのバリエーションという意味での名称になる。

 大きさはオリンパスのVF-2よりは小さいものの、旧来のリコーVF-1よりは格段に場所を撮る。もっとも、GXR自体が GX100やGX200より大柄なので、見た目のバランスは良い。なお、この製品も上90度のチルト機構を装備している。間接部には細かな溝が設けられ、微妙な角度でもしっかり止まる仕組みだ。本来は溝なしで任意のポジションに固定できれば良く、溝によりカリカリという音がするのは少々安っぽいと感じる。

 ドット数は約92.2万相当。倍率がオリンパスのVF-2より一回り小さいこともあり、精細感はなかなかのものだ。GR LENS A12 50mm F2.5 MACROならピントの山も掴めないことはない。フィールドシーケンシャルカラー方式を採用したのか、人によっては視線を動かすと色ズレが見えることがあるのが残念。

 実勢価格は2万円強。GXRのカメラユニットのひとつ、GR LENS A12 50mm F2.5 MACROはAFでのピントが合いづらく、ピント位置の拡大表示は中央のみだ。いきおい100%表示のままMFで合わせるケースが多く、屋外ではVF-2が活躍する。ただし、背面モニター/EVFの切替ボタンの位置が左手側にあり、EVFのすぐ側にあり押しづらい。撮影モード=EVF、再生モード=背面モニターの自動切り替えは設定可能だ。

・画面例


リコー「VF-1」(GX200/Caplio GX100用)

 今回紹介するEVFの中で最も歴史が古く、ボディとのキットは2007年4月、単体では2008年2月に市場に登場した。実勢価格は2万円前後。単焦点レンズのGR DIGIALシリーズが光学ファインダーなら、撮像素子のスルー画を100%で見せるEVFは、ズームレンズ装備のGXらしいアイテムといえる。

 解像度は約20.1万相当と、今となっては取り立てて騒ぐほどのスペックではない。像が小さく、周辺部ににじみが感じられるなど、パナソニックのDMW-LVF1とほぼ同レベルのクオリティに感じた。細身のシルエットはGX200によく似合う。

 背面モニター/EVFの切替ボタンが右手側にあり、とっさに押しやすいのはうれしい配慮。普段は背面モニターで、順光やローアングルでのみEVFで、というパターンで使いやすいだろう。

・画面例


 続いて、内蔵タイプも見てみよう。


パナソニック「LUMIX DMC-G1」

 144万ドット相当という高精細な表示。さらに約0.7倍(35mm判換算)の倍率を持つEVF。像の大きさだけを見れば、下手な一眼レフカメラが裸足で逃げ出しそうな倍率だ。リアルSVGA(144万ドット)のオリンパスVF-2よりも精細感は劣るものの、従来のEVFからすると段違いのクオリティといえる。2008年秋、初めて屋外で見たときには軽いショックを受けた。

 アイセンサーを搭載しているので、接眼するとEVFが作動、眼を離すと背面液晶モニターが付く設定が可能だ。一度これに慣れると、ほかのEVFが物足りなくなる。アイピースは比較的大きく、目を近づけても怖くないし、アイポイントも長くいので、眼鏡をかけていても視野がけられにくい。

 欠点は、視線を動かすと色ズレが見える点と、暗所ではカラーノイズが目立つ点。オリンパスVF-2を見てしまうと完成度の点で物足りないものの、十分実用的で、追加投資が要らない点もうれしい。

・画面例


サムスン「NX10」

 有機ELを採用するなど背面モニターにこだわっている印象のNX10だが、一眼レフカメラライクな操作感を持たせようしているのか、しっかりしたEVFを搭載した点が興味深い。

 EVFの主要スペックは約92.1万ドット相当、倍率約0.43倍(35mm判換算)。ファインダー像は大きくないものの、アイポイントが約20.2mmと長くて見やすい。精細感もあり、拡大表示も美しい。ただし階調性が悪く、中間色でトーンジャンプが見えたり、色調によっては見た目以上に濁って見えるなど、気になる点もあった。それらを差し引いても、新世代EVFの一画を占めるクオリティといってよいだろう。

 反応の良いアイセンサーの搭載により、DMC-G1と同様、接眼するとEVF→眼を離すと背面モニターへと、自動で表示が切り替る。視度調整範囲が広いなど、実地での使い勝手への配慮も見られる。

・画面例

 


 以上、6種類のEVFをざっくりと見比べてみた。

 精細感、明るさ、倍率など、多くの点でオリンパスVF-2が他製品を凌駕している。カラーブレーキングが見られない点も素晴らしく、ミラーレス機の明るい将来を感じさせる。ただし大きさも図抜けており、価格も高い。パナソニックの内蔵タイプとリコーVF-2も、従来のEVFからすると圧倒的に品質が良い。サムスンNX10の内蔵EVFも健闘しており、このあたりまでが新世代のEVFと行ってよいだろう。

 ミラーレスタイプのレンズ交換式デジタルカメラが普及するにつれ、EVFに対するニーズも多様化すると思われる。「外付けにすることで高性能・高コストの製品を狙う」、「あるいはおまけと割り切って廉価なオプションに徹する」、「従来の光学ファインダーの延長として、内蔵タイプにこそ高性能を追求する」など、いくかの方向性が考えられる。この分野のさらなる進化に期待したい。






本誌:折本幸治

2010/4/27 19:21