エプソン「P-7000」のライブビュー撮影機能を試す
既報の通り、エプソンは16日、フォトストレージビューワー「P-7000」および「P-6000」の最新ファームウェアを公開した。適用することで、対応カメラとUSB接続した際にライブビュー撮影が可能になるほか、撮影画像がビューワー内蔵のHDDにも同時に保存されるようになる。
ここでは、新たに追加されたライブビュー機能を中心に、ファームウェアをアップデートしたP-7000の使い心地をレポートする。
■フォトストレージビューワーのライブビュー撮影機能
D700と接続したP-7000 | AFターゲットを中心に最大まで拡大したところ。ビューワーの操作ボタンは右側に集約されている |
P-7000とカメラを接続し、ビューワーの「★」ボタンを押すと、ライブビュー撮影が可能になる。対応機種はニコンD3X、D3、D700、D300、D90。
このモードでは、カメラの絞り、シャッター速度、ホワイトバランス、レリーズモード(単写、連写、ブラケット)が設定可能。メニューボタンで設定したい項目を選択し、値を選ぶことで設定できる。なお、選べる設定値は接続したカメラと装着レンズに準ずる。
また、このときカメラ側では操作を受け付けなくなるので、ISO感度や各種補正機能などはあらかじめ設定を済ませておく必要がある。
カメラと接続した直後。この時点ならカメラ側で撮影設定を行なえる | Menuボタンを押すと、カメラ設定画面に移行する |
設定できる絞りはカメラの装着レンズに依存する | シャッタースピードはカメラボディ依存。バルブには設定できない |
注意点としては、AFモードをAF-Cに合わせ、レンズ側でもスイッチをAFに切り替えておくこと。AF-Sに設定していると、AF合焦後に再度 AFが作動してしまうことがあり、D90の顔認識AFを有効にしていると、ビューワー側でのターゲット操作を受け付けなくなる。
AFターゲットの移動は十字キーで行なう。ズーミングも、ビューワーの十字キー上に位置する+ボタンと-ボタンで行なう。この操作は、画像を見るときと変わらない。
ライブビュー状態のときに★ボタンを押すと合焦が始まる。スピードは、ライブビューモードを「三脚撮影」に設定した時と同じくらい。ホイールキーを回すことで、ピントの微調整を行なうことも可能。OKボタンを押すとレリーズしたことになる。エプソンでは、(現時点では)カメラの液晶モニター(3型)より大きなフォトストレージビューワーの4型液晶ディスプレイで被写体を見ることにより、ピント合わせでの優位性を強調している。
「レリーズモード」で設定したレリーズ回数で撮影する | ビューワーの表示の明るさも設定できる |
一連の動作で気になったことは、操作結果が表示されるまでの時間差だ。AFターゲットの移動やホイールによるピントの微調整では、体感にして 0.5秒くらい遅れて表示が更新される。十字キーを押しっぱなしにすると、AFターゲットが飛び飛びに表示されるくらいレスポンスはよくない。画面表示の更新速度が遅いので、動体の撮影には向かず、また、手持ちでの撮影にもやや無理があるように思う。三脚でカメラを固定した状態で、動きの少ない被写体を撮影するときに使用するのがもっとも無難だろう。
ただし、ビューワー自体を操作する時はレスポンスが良く、操作自体はまったくストレスなく行なえた。撮影では絞りやシャッター速度を頻繁に変えるので、この点は大変ありがたい。
とはいえ、カメラのコマンドダイヤルで露出設定をするのに慣れている身としては、メニューボタンを押して設定したい項目を選び、さらに設定値を選択するというステップはストレスになった。仮にホイールボタンを活用するにしても、片手でボタンを押しつつホイールを回すには適さないボタン配置である。ライブビュー撮影の実装にあたっては、このあたりの操作系にもうひと工夫欲しかったところだ。
■固定式の液晶モニター搭載機種で威力を発揮
P-7000を使ったライブビュー撮影機能が最も活きるのは、撮影者がファインダーを覗くことができないアングルで撮影する場面だろう。対象となるニコンの5機種は液晶モニターが固定式であるため、ハイアングルやローアングルなどの極端な条件下で撮影する場合、ライブビューを使用していてもフレーミングの微調整が難しい。
実際にローアングルで撮影してみたが、ピントの確認から微調整まで、操作のレスポンスを除けば、快適に行なうことができた。エプソンではカメラに付属するUSBケーブルの使用を推奨しているが、より長いUSBケーブルを使用して、活用の幅を拡げることも可能だ。ただし、使用は自己責任となる。
ライブビュー撮影機能についての感想としては、三脚での撮影が前提となるものの、固定式の液晶モニター搭載機種であってもアングルの制限を受けずに撮影できる点に大きな魅力を感じた。
ファインダーを覗けないようなアングルでも、被写体の見え方を確認できる | ローアングル撮影を行なっているところ |
■データの二重化による信頼性の向上
もうひとつの追加要素であるHDD同時保存機能は、バックアップによるデータの二重化を目的としたものだ。対応機種はキヤノンEOS-1Ds Mark III、EOS-1D Mark III、EOS 5D Mark II、EOS 50D、EOS 40D、ニコンD3X、D3、D700、D300、D90。
撮影データはデジタルカメラに挿入したメディアに記録された後、ビューワーに保存される。また、このとき、カメラに記録メディアが入っていない場合でもビューワーへの保存は実行される。
新たに撮影した画像の命名規則は、カメラにメディアが入っている状態ではカメラの設定に準ずる(画像ではDSC_****.jpg)が、途中でメディアを排出した場合には、そこから別の命名規則が適用される(画像ではIMG_****.jpg)。
撮影したデータを直接HDDに保存するようになったことで、バックアップとしての信頼性がより向上した点は歓迎したい。
P-7000側でバックアップデータを参照した。メディアを排出して撮影したタイミングで、命名規則が切り替わった | PCと接続して、エクスプローラー上から参照したところ |
■まとめ
HDDへの同時保存機能でフォトストレージとしての性能を向上しつつ、「カメラと接続して使用するフォトビューワ」という特徴を活かしたライブビュー撮影機能を実装した今回のアップデートは、フォトストレージビューワーの新たな可能性を感じさせるものだった。現在は特定のメーカーのカメラと組み合わせて使用した場合に限り恩恵を受けることができるが、今後は他メーカー製カメラへの対応にも期待したい。
2009/7/29 00:00