自分の色を表現する。私のColor PENcil

シンプルに表現できる写真の世界に惹かれて〜鈴木さや香さん

色づかいへのこだわりに応えてくれる“カラープロファイルコントロール”

黒い犬の生活を、犬だけではなくその主人の暮らしも分かるように切り取った。後から見返しても、いまもその景色が続いているだろうと思えるような写真が撮りたい。
オリンパス PEN-F / M.ZUIKO DIGITAL 45mm F1.8 / 45mm(90mm相当) / 絞り優先AE(F1.8、1/320秒、-0.3EV) / ISO 200

「Cafe」と描かれたかわいらしい看板の周りを囲む蔦のオブジェ。まるでその続きのようなグネグネと曲がった木が後ろにあって、看板だけで完結しない面白さがあった
オリンパス PEN-F / M.ZUIKO DIGITAL 45mm F1.8 / 45mm(90mm相当) / 絞り優先AE(F1.8、1/2,000秒、+0.3EV) / ISO 200

夕方、日が暮れはじめて表情を見せた椿。その輝きは日中とは違い、艶やかな葉は金属のような冷たい光を反射していた。その無機質な感じが気になった
オリンパス PEN-F / M.ZUIKO DIGITAL 45mm F1.8 / 45mm(90mm相当) / 絞り優先AE(F1.8、1/50秒、-2.3EV) / ISO 200

いま人気のミラーレスカメラ「OLYMPUS PEN-F」。クラシカルなフォルムに最新機能をこれでもか!と詰め込んだ意欲的なカメラです。そんなPEN-Fと新進気鋭の若手写真家が出会ったとき、いったいどんな作品が生まれるのでしょうか。この連載では、若手写真家の撮り下ろし作品を交えながら、PEN-Fの印象や写真への想いなどを語ってもらいます。

記念すべき第1回目は、広告写真の世界で活躍する鈴木さや香さん。カメラ雑誌やイベントでも人気の写真家です。さて、鈴木さや香さんの「Color PENcil」は、一体どんな色なのでしょう。(編集部)

写真・キャプション:鈴木さや香
イラスト:ナカムラエコ

鈴木さや香:東京造形大学建築造形学部デザイン学科卒業。CM映像制作会社でAD、APとして勤務。演出家葉方丹に師事。映像制作、編集を学び、その後写真家山岸伸に師事。2012年2月独立。現在、CDジャケット、広告写真などを中心に活動中

OLYMPUS PEN-F

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現在、どのような写真関連の仕事をされていますか?

主な仕事は商業写真の撮影です。企業の広告用や商品パッケージやパンフレット、アーティストのCDジャケット、宣材などです。その一方で作家としても写真展などで作品も発表しているため、カメラメーカーからの仕事を受けたり、写真雑誌に寄稿したりしています。最近はワークショップの講師なども増えて来ました。

写真を撮るようになったきっかけは?

祖父が8mmフィルムをいつも回していて、お正月には親戚を集めてスクリーンでの上映会を開いていました。父もカメラが好きで身近に色んなカメラがたくさんありました。ただ、小さなころの私は現実を切り取るよりも、ファンタジーな世界が好みだったので、絵本や水彩画で頭の中の世界を描くことに夢中でした。写真という現実の肯定を楽しく感じられるようになったのは、社会人になってからでした。

喫茶店の窓に映る景色。コーヒーカップのオブジェ、通りすがりの男性の影、店内のうっすらとした明かりとランプシェード。すべてをガラスに写すことで異空間を作った。
オリンパス PEN-F / M.ZUIKO DIGITAL 45mm F1.8 / 45mm(90mm相当) / 絞り優先AE(F1.8、1/640秒、-0.3EV) / ISO 200

影響を受けた写真家、写真集、メディアは?

父の本棚には画集がたくさんありました。ワシリー・カンディンスキーやフリーデンスライヒ・フンデルトヴァッサー、パウル・クレーは、色使いやデフォルメの仕方が大好きでした。

写真集では、藤原新也さんの『メメント・モリ』です。知り合いのカメラマンからプレゼントされて。その時、私はテレビやCMといった映像の仕事をしていた時だったので、写真と文字で綴るという、映像とは違いシンプルな魅力にとても魅かれました。音楽も、編集も、整音も何もいらなくて、時間と自分の気持ちで成り立つ世界があると知り、写真の道に入りました。他にも好きな写真家はたくさんいます。

その影響は自分の作品のどんなところに現れていると思いますか?

画家たちの影響は色使いのこだわりとして出ていると思います。大胆で繊細な彼らの絵には遠く及びませんが、画集を見ると無性に写真を撮りたくなります。

また、例えば自分は作り手であるけれども、それは人間の為だけでなく自然と共に在るべきだという生き方に、強く影響されていると思います。『メメント・モリ』からは、シンプルなものは強いという信念は今も変わらず、当時に心つかまれたままです。

前ボケになった赤い花ごしに植物を透かして見える、水を張った甕を見つけた。大きくボケてしまった赤い花の植物の形は、水面に映っている。
オリンパス PEN-F / M.ZUIKO DIGITAL 45mm F1.8 / 45mm(90mm相当) / 絞り優先AE(F1.8、1/640秒、-0.3EV) / ISO 200

PEN-Fのカラープロファイルコントロールについて。

繊細な部分をわかってくれるカメラだなと思いました。私は被写体を見つけたら「絶対にこうやって撮る」というイメージが先行するタイプなのです。それは、モチベーションやテンションに直結します。だから、頭で描いた通りに撮れると、その次はもっともっと高揚した状態で物事(被写体)を見られるのです。

思い描いた頭の中を出すのに大切な要素のひとつは、やはりカラーとコントラストです。後でどうにかするのではなく、撮影したときの高揚をその場できちんと表現できることは、私にとってはとても幸せなことです。幸せな気分は、絶対的に写真に現れます。

勢いよく若葉の伸びるアイビー。その艶やかな光の反射にカメラを向けて、たくさんの玉ボケを手に入れた。レトロな建物を入れることで、空間を濃いものにする。
オリンパス PEN-F / M.ZUIKO DIGITAL 45mm F1.8 / 45mm(90mm相当) / 絞り優先AE(F1.8、1/2,500秒、-1.3EV) / ISO 200

写真封筒はどのようなきっかけで生まれたのですか?

写真封筒を作り始めたのは3年くらい前の事です。お仕事を頂いた会社に請求書を郵送する手段として、茶封筒ではなく、自分の写真で作った封筒で送ってみたのです。せっかく写真の仕事をしているんだから文章ではなく、何か写真で感謝を……と閃いたのでした。

思いのほか反応がよく、喜んでもらいました。「写真はなかなか買えないけど封筒なら買えるね」って言われて。商品化してみようと思いました。写真を買うことというのは、写真集やポストカードを買うのとは違って、とても敷居が高いなと思います。きっと日本人のほとんどの人々がそうなのでは? と感じていますが、加工することによって、身近なアートとしてまた違う魅力で写真と向き合える気がしています。

今後取り組みたいシリーズやテーマは?

とても心が動く町があって、そこの変化を撮っていきたいです。これまでは人物や物など個々の被写体の変化に興味がありましたが、今は被写体の集合体である町の流れや熱気、劣化などに興味があり、私の目線で撮っていきたいと思っています。

古いガラス越しに見えた植物は、外に出たいかのように少し窮屈そうに見えた。ねじるように茂る様子を愉快にしてしまうガラスの模様が印象的だった。オリンパス PEN-F / M.ZUIKO DIGITAL 45mm F1.8 / 45mm(90mm相当) / 絞り優先AE(F2.8、1/640秒、-0.7EV) / ISO 200

写真展の開催や写真集の発売など、告知があればぜひ!

飯能市役所による勉強会

講師として登壇、「町と写真」についてお話します。

  • ・日時:2016年6月12日(日)15時〜17時
  • ・会場:飯能市役所 本庁舎別館 2階会議室
  • ・参加費:200円
  • ・申し込み:メールにて担当者(白須)まで。omusubikorokoro.0902@nifty.com

女性写真家4人による写真展示・販売「fotomar」

  • ・日時:2016年7月22日(金)・23日(土)・24日(日)
  • ・会場:下北沢ギャラリーおばあちゃん家
        https://www.facebook.com/fotomarobaachanchi
  • ・参加写真家:植田修子、金森玲奈、コムロミホ、鈴木さや香

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デジタルカメラマガジン2016年6月号では、鈴木さや香さんがあみだしたOLYMPUS PEN-F「カラープロファイルコントロール」テクニックが掲載されています。あわせてごらんください!

協力:オリンパス株式会社

デジカメWatch編集部