オールドデジカメの凱旋

パナソニックLUMIX DMC-G1(2008年)

いま、マイクロフォーサーズ初号機を振り返る

 この連載は前回が「コニカミノルタDiMAGE A200」(2004年)で、その前が「リコーCaplio GX100」(2007年)と、2カ月ばかりコンパクトデジカメが続いた。また、今年に入って取り上げたカメラを見ると“コンパクト4:一眼レフ1”という割合。だから「今回はレンズ交換式の一眼レフを選びたいナァ」とか思いながら、行きつけの中古カメラ店に向かった。

 そして店内の商品をじっくりチェックして、一眼レフではないが、Aランクで価格が1万2,600円と手頃な「パナソニックLUMIX DMC-G1」のボディを見つけた。元箱はないものの付属品は揃っている。

 ご存じのとおり、このカメラは“マイクロフォーサーズ規格準拠の第一号モデル”である。まあ、個人的にも「マイクロフォーサーズって割と新しい規格だよね」という印象があるけど、気がつけばこの第一号モデル「LUMIX DMC-G1」が登場して早5年。その間、オリンパス製品も含めると、かなりの数のマイクロフォーサーズ機が登場してるよね。……ということで、もうイイだろう、この規格のカメラを「オールドデジカメの凱旋」で取り上げても(笑)。

DMC-G1のカラーバリエーションは、コンフォートブラック、コンフォートレッド、コンフォートブルーの3色。実は、コンフォートブラックの中古品もあったが(同じような価格で)、何となく今回は“コンフォートブルーの気分”だった(笑)。いちおう「Aランク」の中古品だが、底部近くの角あたりに幾つかの小さなキズが見られる。

 交換レンズに関しては、ボディと同じパナソニック製の電動式標準ズームレンズ「LUMIX G X VARIO PZ 14-42mm F3.5-5.6 ASPH. POWER O.I.S.」が1万7,000円台で数本並んでいたが、注目したボディよりも高いレンズというのも何だか面白くない(笑)。ということで、Aランクで8,400円の値段が付いていたオリンパスの標準ズーム「M.ZUIKO DIGITAL 14-42mm F3.5-5.6 II R(シルバー)」を選択。G1ボディと14-42mm標準ズームで計2万1,000円也。まあ、このあたりのレンズならイイ組み合わせになると思うよ。

 M.ZUIKO DIGITAL 14-42mm F3.5-5.6 II Rは、35mm判換算28-84mm相当。非球面レンズ3枚を含む7群8枚構成で、AF方式はハイスピードイメージャAF(MSC)。最短撮影距離は0.25m〜0.3m。最大撮影倍率は0.19倍(35mm換算0.38倍)。フィルター径は37mm。最大径×長さは56.5mm×50mm。重さは113g……といった仕様である。

現行製品でもあるオリンパスの標準ズーム「M.ZUIKO DIGITAL 14-42mm F3.5-5.6 II R」。鏡筒は、ズームリングの「UNLOCK」ボタンをスライドさせて収納する。左が広角端、右が望遠端
広角端14mm(28mm相当)
望遠端42mm(84mm相当)

 2008年8月5日、経団連のビルで開催されたフォーサーズ新規格(マイクロフォーサーズ)の発表会に、ボクは取材で訪れていた。従来のフォーサーズ規格の撮像サイズを維持しながら、フランジバックを約50%も短縮し(約20mmに)、レンズマウント外径も縮小。また、マウントの電気接点の数を9点から11点に増加。こういった変更&進化により、ボディやレンズの小型軽量化が可能になり、動画撮影機能の搭載なども視野に入ってくるらしい、というものだった。

 でも、その時には具体的な製品(カメラ)はアナウンスされなかたので、「新規格って言われても、何だかピンとこないよなぁ」と思ったのを覚えている。……だが、この発表会の約1カ月後に、初のマイクロフォーサーズ機としてDMC-G1が発表された。

マウント部

 まずは、LUMIX DMC-G1の主なスペック紹介を。撮像素子は有効1,210万画素の4/3型Live MOSセンサー。超音波式のゴミ取り機能も搭載。露出モードは、P/A/S/Mの基本4モードに加えて、ダイヤル上にカメラまかせのインテリジェントオートモード、登録しておいた設定で撮影するカスタムモード、5種類のシーンモード、5種類のアドバンスシーンモード(人物、風景、スポーツ、クローズアップ、夜景&人物。それぞれ複数バリエーションあり)、効果を確認しながら色や明るさが調整できるマイカラーモード……など多彩。

 シャッター速度は60秒~1/4,000秒、B(バルブ 最長約4分)。感度はISO100-3200(1/3EVステップに変更可能)。ファインダーは視野率100%の約1.4倍(35mm判カメラ換算約0.7倍)・約144万ドット相当のEVF。液晶モニターは3型・約46万ドットのTFT液晶で、フリーアングル方式を採用している。記録媒体はSDHCメモリーカードに対応し、RAWとJPEGの同時記録も可能。動画機能は非搭載だ。ボディの大きさと重さは、約124×83.6×45.2mm、約385g(本体のみ)。

記録媒体は、SDHCメモリーカードとSDメモリーカード。あと、最近は使う人は少ないと思うが、MMCにも対応。使用電バッテリーは「DMW-BLB13」。撮影可能枚数はCIPA準拠で約330枚(EVF撮影時は約350枚)。
カーソルボタンの中央にある「MENU/SETボタン」を押した際に表示される設定機能(の一部)。上から、撮影メニュー、カスタムメニュー、セットアップメニュー、マイメニュー、再生メニュー、とタブ分けされている。なお、このカメラの「マイメニュー」は最近使用した項目を最大5つまで記録しておく、というモノである。

 このパナソニックLUMIX DMC-G1で思い出されるのが、このカメラに合わせて結成された、女優の樋口可南子氏を筆頭にした「女流一眼隊」。あのネーミングは衝撃的だった(笑)。……その印象が強かったせいかもしれないが、勝手に「マイクロフォーサーズは自分の嗜好とは違うカメラかもね」という印象を持ったりした。何となくだけど。

 なお、その当時(2008年の秋頃)ボクが主に使っていたカメラは、キヤノンEOS 5DとEOS 40D、ニコンD300などである。ちなみに、ボクがマイクロフォーサーズ機を初めて購入したのは、本流(?)のGシリーズではなく、2010年12月に発売されたLUMIX DMC-GF2のシェルホワイトであった。……って、こっちの方がよっぽど女流っぽいわ!(笑)

 今、このDMC-G1を手にして感じるのは、最近の本流Gシリーズ(G5やG6など)のテイストとそう変わらないナァ、ということ。基本的な仕組みやスタイルは同じだからね。内蔵ファインダーを省いて小型軽量化を推し進め、シンプルで上質なデザインを追求したGFシリーズのような“女流っぽさ”は感じないんだよナァ~。まあ、現在ではいろんなメーカーから小振りで可愛らしい(しかもカラーバリエーションも派手めな)ミラーレスカメラが発売されていて、それをボクのような中年男性が使う事も珍しくないからねぇ。

ポップアップ式の内蔵フラッシュを搭載。ガイドナンバーは11相当(ISO100・m)。フラッシュ同調速度は1/160秒以下。
グリップと反対側の側面のカバー内には、HDMI端子とDIGITAL/V.OUT端子を装備。

 ご存じのとおり、フォーサーズとマイクロフォーサーズの撮像素子(4/3型)は、APS-Cサイズよりも撮像面積が狭い。そして、多くのフォーサーズ機は、光学ファインダーの視野の狭さ(小ささ)が気になるポイントだった。……しかし、マイクロフォーサーズの第一号モデル「LUMIX DMC-G1」の電子ビューファインダーは予想以上に視野が広くて、しかも驚くほど高精細な表示品質が得られる。そう、従来の“電子ビューファインダー搭載のコンパクトデジカメ”とは比べ物にならないくらいに……。今回、あらためてそう感じた。

 また、ファインダー接眼部に「アイセンサー」を装備しているので、ファインダーに顔を近づけるとファインダー内表示になり、ファインダーから顔を離すと液晶モニター表示に切り換わる(まあ、コンパクトデジカメの中にもその機能を搭載するモデルはあったけど)。そういった使い勝手の良さが実感でき、「最初のマイクロフォーサーズ機、あなどりがたし!」という印象を持ったね。

AFモードとAFエリアの切り替えは、フォーカスモードダイヤルがAFSかAFCの状態で十字キー左を押して、オートフォーカスモードを選択する(カーソルの横で選択して、下で確定)。ここでは「1点」のモードを選んでいるが、そのAFエリアは前ダイヤルの操作で大きさを変更できる。そして、上下左右のカーソルボタンでAFエリアの位置を移動させる(画面端には移動できない)。
撮影する画像の色調・彩度・コントラストなどの設定は「フィルムモード」の選択で行なう。ボディ上面に専用の「FILM MODEボタン」が設置されている。
一部の設定メニューが簡単に呼び出せる「クイックメニュー」の機能も当然搭載している。Q.MENUボタンは、FILM MODEボタンと並べて配置されている。
光の色(色合い)、明るさ、鮮やかさ(色の濃さ)の効果が、液晶モニターやファインダーで手軽に確認しながら撮影できる「マイカラーモード」。デジタルカメラを使い慣れた人だとあまり必要性は感じないが、そうでない人には便利な撮影モード。

 もちろん、現行モデルと比べると、物足りなさや「まだ、こなれてないな」と感じる部分もいくつかある。たとえば、グリップ部の前ダイヤルの位置や角度がいまいちで自然に操作ができないとか、連写速度が「約3コマ/秒」と遅めなのでオートブラケット撮影が“まったり”してしまうとか、今回一緒に購入したM.ZUIKO DIGITAL 14-42mm F3.5-5.6 II Rのようなレンズだと、画像の自動回転表示が行なわれないとか(EXIFには方向が記録されていた)。あと、オートフォーカスモードが1点の時に移動させたAFエリアを「DISPLAYボタン」を押して中央に戻す機能がないのも結構不便なんだよねぇ……。

液晶モニターの表示は、DISPLAYボタンを押すたびに、標準→表示なし→LCD撮影情報画面→消灯……と切り換わる。
画像再生時の画面は、DISPLAYボタンを押すごとに、表示→詳細情報表示→ヒストグラム→ハイライト表示(セットアップメニューで「ハイライト表示」をONに設定している場合)→表示なし、と切り換わる。
画像再生中に前ダイヤルを右側に回していくと、1倍→2倍→4倍→8倍→16倍と、拡大倍率が変わる。そして、前ダイヤルを押し込むと“画像送り操作”に切り換わる。この状態で左右のカーソルボタンを操作すれば、拡大倍率と拡大部分を維持したまま表示画像を切り換えることができるのだ。

 このDMC-G1の発売以降、マイクロフォーサーズ規格のLUMIXは、動画撮影機能に力を入れたGHシリーズ、ファインダーを省略して小型化したGFシリーズ、高品位ボディと高機能をウリにするGXシリーズと、その製品バリエーションを拡充していく。そういう経緯もあり、正直なところ現在の“Gシリーズの存在感”は少々微妙。動画も含め本格的な撮影ならGHシリーズだろうし、快適な操作性と高機能を両立したいならGXシリーズが適している。また、女性を含めて軽快に撮影を楽しみたいならGFシリーズだろう。

右の写真はフリーアングルモニターで撮影。チルト可動方式(上下に可動)のモニターもそれなりに便利だが、このようなフリーアングル式のモニターなら、カメラを縦に構えた際のポジションやアングルも自由自在!

 ……だが、こういうバリエーション展開の基礎になったGシリーズ第一号機の存在感(存在意義)は大きい。それは単に“マイクロフォーサーズ規格の第一号機”という史実的な意味合いだけでなく、実際に手にして使ってみると、現在に続くGシリーズの魅力を垣間見ることができるからだ。高速化実現を謳ったコントラストAFは、今でも多くの撮影ではあまり不満は感じない。また、アイセンサーを搭載した大きくて高精細なEVFの快適さや、フリーアングル式モニターによるカメラポジションやアングルの自由度の拡大など、現在でも十分通用する魅力を備えている……そう感じられた。

実写サンプル

  • ・作例のサムネイルをクリックすると、リサイズなし・補正なしの撮影画像をダウンロード後、800×600ピクセル前後の縮小画像を表示します。その後、クリックした箇所をピクセル等倍で表示します。
  • ・縦位置で撮影した写真のみ、無劣化での回転処理を施しています。

・感度

ISO100
ISO200
ISO400
ISO800
ISO1600
ISO3200

・フィルムモード

スタンダード
ダイナミック
ネイチャー
スムーズ
ノスタルジック
バイブラント
スタンダードB&W
ダイナミックB&W
スムーズB&W

・作例

DMC-G1 / M.ZUIKO DIGITAL 14-42mm F3.5-5.6 II R / 4,000×3,000 / ISO100 / F8 / 1/125秒 / 14mm(28mm相当)
DMC-G1 / M.ZUIKO DIGITAL 14-42mm F3.5-5.6 II R / 3,000×4,000 / ISO100 / F8 / 1/200秒 / 14mm(28mm相当)
DMC-G1 / M.ZUIKO DIGITAL 14-42mm F3.5-5.6 II R / 3,000×4,000 / ISO100 / F8 / 1/80秒 / 17mm(34mm相当)
DMC-G1 / M.ZUIKO DIGITAL 14-42mm F3.5-5.6 II R / 4,000×3,000 / ISO100 / F8 / 1/100秒 / 14mm(28mm相当)
DMC-G1 / M.ZUIKO DIGITAL 14-42mm F3.5-5.6 II R / 4,000×3,000 / ISO100 / F5.6 / 1/160秒 / 42mm(84mm相当)
DMC-G1 / M.ZUIKO DIGITAL 14-42mm F3.5-5.6 II R / 4,000×3,000 / ISO100 / F8 / 1/40秒 / 22mm(44mm相当)
DMC-G1 / M.ZUIKO DIGITAL 14-42mm F3.5-5.6 II R / 4,000×3,000 / ISO100 / F8 / 1/125秒 / 16mm(32mm相当)
DMC-G1 / M.ZUIKO DIGITAL 14-42mm F3.5-5.6 II R / 4,000×3,000 / ISO100 / F8 / 1/100秒 / 14mm(28mm相当)
DMC-G1 / M.ZUIKO DIGITAL 14-42mm F3.5-5.6 II R / 4,000×3,000 / ISO100 / F8 / 1/80秒 / 14mm(28mm相当)
DMC-G1 / M.ZUIKO DIGITAL 14-42mm F3.5-5.6 II R / 3,000×4,000 / ISO100 / F8 / 1/200秒 / 14mm(28mm相当)
DMC-G1 / M.ZUIKO DIGITAL 14-42mm F3.5-5.6 II R / 4,000×3,000 / ISO100 / F5.6 / 1/160秒 / 42mm(84mm相当)
DMC-G1 / M.ZUIKO DIGITAL 14-42mm F3.5-5.6 II R / 4,000×3,000 / ISO320 / F5.6 / 1/30秒 / 14mm(28mm相当)
DMC-G1 / M.ZUIKO DIGITAL 14-42mm F3.5-5.6 II R / 3,000×4,000 / ISO250 / F5.6 / 1/30秒 / 23mm(46mm相当)
DMC-G1 / M.ZUIKO DIGITAL 14-42mm F3.5-5.6 II R / 4,000×3,000 / ISO100 / F5.6 / 1/320秒 / 42mm(84mm相当)
DMC-G1 / M.ZUIKO DIGITAL 14-42mm F3.5-5.6 II R / 3,000×4,000 / ISO100 / F8 / 1/100秒 / 14mm(28mm相当)
DMC-G1 / M.ZUIKO DIGITAL 14-42mm F3.5-5.6 II R / 4,000×3,000 / ISO100 / F8 / 1/1,000秒 / 31mm(62mm相当)

吉森信哉