【新製品レビュー】キヤノン「IXY 31S」

~タッチパネル装備の広角スタイリッシュモデル
Reported by 本誌:武石修

 キヤノン「IXY」シリーズの新モデル「IXY 31S」が3月に発売された。どのような進化を遂げたのか見ていきたい。実勢価格は3万3,100円前後。

IXY 31S

 前モデルの「IXY 30S」は、広角端でF2の明るいレンズを搭載したことが話題になった。新モデルでもその点はしっかり継承し、かつ広角端を28mm相当から24mm相当(いずれも35mm判換算)に広げた。望遠端も105mm相当を維持している。

 また、今回のトピックは新たに液晶モニターがタッチパネルになったことだろう。大きさと解像度も約23万ドットの3型から約46.1万ドットの3.2型になった。やはり46万ドットクラスになると23万ドットに比べて格段に表示は綺麗になる。

新たにタッチパネルを採用。すぐに動画撮影ができるアイコンも装備モード選択画面

 撮像素子は1/2.3型裏面照射型CMOSセンサーという部分は共通で、有効画素数が1,000万から1,210万に増加している。またフルHD動画に対応したのも大きい。

 ボディーカラーはソリッドな原色系をラインナップしていた前モデルから一変し、落ち着いたカラーリングで揃えられている。ブラウン、ピンク、シルバー、ゴールドの4種類がある。形は、スーパーカーをイメージしたという前モデルを踏襲しておりスタイリッシュだ。背面に溝が設けてあり、ホールド性は良い。厚さは25mm。今では薄型とまでは言えないが、明るいレンズを考えると十分納得できる。

開放F2の描写を活かす

 画質については実写サンプルをご覧いただきたいが、レンズの四隅は前モデル同様流れがほとんど気にならないレベルだ。24mm相当に広角化していることを考えると優秀といえそうだ。やはり24mm相当は風景などを撮っても迫力があるし、引きがない室内でのスナップにも重宝する。

広角24mm相当でF2からのズームレンズを新採用

 開放F2は広角側に限られるしセンサーサイズも小さいので、被写体がカメラから離れてしまうと背景のボケは期待できなくなる。だが、3cmというマクロモードの最短撮影距離を活かし被写体に近づいて撮ることでかなり背景をぼかすことができる。料理の写真などで活用してみたい。なお、光学式手ブレ補正は3段分から4段分に向上している。アスパラガスが写っている料理のサンプルは1/15秒の手持ちだが、ブレなかった。

 画像処理エンジンはDIGIC4で、前モデルと同じ。画素数が増えているものの、高感度画質でIXY 30Sから特段悪くなっているようには見えない。細かいディテールの喪失にある程度目をつむればISO800までは実用域だろう。大きく引き伸ばさないならISO1600でも十分ということもできそう。ISO3200になると一気にノイズ感が高まるので、できれば常用はISO1600までに抑えたいところだ。いずれの感度でも彩度の低下はほとんど無く、カラーバランスの崩れもあまりない。画素数は上がっているので解像力も向上してはいるが、一般的な出力で前モデルとの差を実感できるほどではないかもしれない。

ズームレバーはシャッターと同軸のリングで操作しやすい

 慣れると使いやすいのがタッチパネル。「ボタンカスタマイズ」でアイコンを好みに入れ替えておくとさらに使いやすくなる。タッチパネルとしてのレスポンスは昨今のスマートフォンに比べるとやや劣るが、デジタルカメラのタッチパネルとしては標準的だ。

約46万ドットの3.2型タッチパネルを装備。基本的には指で操作できるが、スタイラス付のストラップが付属する。
露出補正(左)や絞りの変更(右)も指で行なえる
タッチパネルならではの「ボタンカスタマイズ」も可能
デフォルトの状態(左)に対して、よく使うアイコンを画面左右の空きスペースに移動(右)できる

1日の記録が動画になる新機能

 ところで、本機には「ムービーダイジェスト」という機能が加わった。同モードで静止画を撮影すると、撮影の前後4秒間を動画でも記録してくれる。その日1日に撮影した4秒の動画は自動的に繋がって1つの動画ファイル(VGA)になる。つまり、静止画を取る感覚で自動的に動画も残せるわけだ。

一日の撮影をショートムービー風に振り返ることができる

 もちろん、動画は動画記録のモードで自由に撮れるわけだが、旅行などで静止画の後に動画ボタンを押して撮るのが面倒なこともある。それに動画モードだとつい長々と回してしまって後で見てつまらなかったり、また編集をするにしてもやはり面倒だったりする。1カット4秒というのは短いように思ったが、できあがった動画を見るとなかなか軽快でおもしろい。旅行の思い出を振り返るのにも適したものだろう。

 なお動画機能は、今回から1,920×1,080、24fpsのフルHD記録が可能になった。この点も大きな進化ポイントだ。

 静止画では、新たに「トイカメラ風」も加わった。独特の色調と周辺光量の低下を実現できるもので、味わい深い。暖色、標準、寒色の3種類から色調を選べる。かなりはっきりとトンネル効果が出るのがおもしろい。

新たに加わった「トイカメラ風」
従来からのジオラマやハイスピード動画にも対応

まとめ

 F2のレンズといえばキヤノンには「PowerShot S95」もある。こちらは撮像素子のサイズが大きい画質優先のモデルだが、登場してから時間が経っていることもあってか、IXY 31Sとの価格差は5,500円ほどになっていた。広角端が28mm相当からだったりフルHD動画に対応していないといった部分はあるが、タッチパネルでなくとも良いのであれば、こちらを選ぶ手もある。

 一方、IXY 30Sは絞り優先AEなども搭載しているが、どちらかといえばオートを主体に使うタイプだろう。難しい操作無しに綺麗な写真が撮りたいユーザーはこちらが向いていると思う。

 最近は、1/2.3型で1,600万画素クラスのセンサーがトレンドになりつつある。その点本機は、画素を抑えているぶん高感度画質に余裕があるように感じた。一概には言えないが、一般ユーザーなら高感度画質が綺麗な方がメリットが大きいのではないか。加えて、広角24mm相当対応機を探しているユーザーは本機も検討してみると良いと思う。

側面にHDMI端子を備える
バッテリーとメモリーカードスロット付属の充電器とバッテリー

実写サンプル

※作例のサムネイルをクリックすると、リサイズなし・補正なしの撮影画像をダウンロード後、800×600ピクセル前後の縮小画像を表示します。その後、クリックした箇所をピクセル等倍で表示します。縦位置の画像は非破壊で回転させています。

※動画作例のサムネイルをクリックすると撮影動画をダウンロードします。再生についてのお問い合わせは受けかねます。ご了承ください。

画角

広角端(24mm相当)
IXY 31S / 4,000×3,000 / 1/640秒 / F2.8 / 0EV / ISO100 / プログラム / WB:オート / 4.3mm
望遠端(105mm相当)
IXY 31S / 4,000×3,000 / 1/640秒 / F5.8 / 0EV / ISO100 / プログラム / WB:オート / 18.8mm

歪曲収差

広角端(24mm相当)
IXY 31S / 4,000×3,000 / 1/800秒 / F2.8 / 0EV / ISO100 / プログラム / WB:オート / 4.3mm
望遠端(105mm相当)
IXY 31S / 4,000×3,000 / 1/200秒 / F5.8 / 0EV / ISO100 / プログラム / WB:オート / 18.8mm

ISO感度

※共通設定:IXY 31S / 4,000×3,000 / F8 / 0EV / プログラム / WB:オート / 18.8mm

ISO100ISO200ISO400
ISO800ISO1600ISO3200

絞り開放

IXY 31S / 4,000×3,000 / 1/25秒 / F2 / -0.7EV / ISO100 / 絞り優先AE / WB:カスタム / 4.3mmIXY 31S / 4,000×3,000 / 1/1,600秒 / F2 / 0EV / ISO100 / 絞り優先AE / WB:オート / 4.3mm

トイカメラ風

標準
IXY 31S / 4,000×3,000 / 1/1250秒 / F2.8 / 0EV / ISO100 / トイフォト風 / WB:オート / 4.3mm
暖色
IXY 31S / 4,000×3,000 / 1/1,000秒 / F3.2 / 0EV / ISO100 / トイフォト風 / WB:オート / 4.3mm
寒色
IXY 31S / 4,000×3,000 / 1/1,000秒 / F2.8 / 0EV / ISO100 / トイフォト風 / WB:オート / 4.3mm

ムービーダイジェスト

H.264(.mov) / 640×480ピクセル / 30fps / 153MB

・ムービーダイジェスト時に撮影した静止画の一部

フルHD動画

H.264(.mov) / 1,920×1,080ピクセル / 24fps / 62MB

ジオラマ風動画

5倍速 / H.264(.mov) / 640×480ピクセル / 24fps / 8MB10倍速 / H.264(.mov) / 640×480ピクセル / 24fps / 9.2MB20倍速 / H.264(.mov) / 640×480ピクセル / 24fps / 9.1MB

ハイスピード動画

H.264(.mov) / 320×240ピクセル / 240fps / 19MB





本誌:武石修

2011/4/8 00:00