【新製品レビュー】ニコンCOOLPIX S80

〜有機ELタッチパネル搭載のスリムコンパクト
Reported by 清宮信志

 ニコンが10月に発売した「COOLPIX S80」は、本体背面に3.5型タッチパネル式有機ELディスプレイを搭載したコンパクトデジタルカメラだ。昨年発売された「COOLPIX S70」の後継モデルであり、今回からデザインを一新、より高解像度の有機ELパネルを採用するなど機能強化が図られている。

 実勢価格は3万円前後で、ボディカラーは「カーディナルレッド」、「プラウドブラック」の2色が用意される。


外観は大きくイメージチェンジ

 背面に大型の有機ELディスプレイを搭載するなど前モデルのイメージを踏襲しながらも、大幅にデザインが変更された。電源スイッチを兼ねたレンズカバーは左右方向へスライドする大型のものに変更。全体的なイメージは、より丸みを帯びたデザインとなっている。本体の厚みは従来モデルの約20mmから約16.5mmへと薄型化された。

 本機では電源のオン/オフ、シャッター操作以外はタッチパネルで操作することになる。そのためボタンと呼べるものはシャッターボタンくらいしかなく、フラットなデザインとスリムなボディにより、外観はとてもシンプルで、スリムだ。

 背面の3.5型タッチパネル式有機ELは16:9のワイドタイプを引き続き採用。パネルサイズは同じながら、従来の約29万ドットから約82万ドットに解像度が向上した。視野角は約180度で、真横からでも違和感なく被写体の状態を確認できる。屋外撮影でも特に困ることも無く、視認性は良好だった。

 タッチパネルは静電式で、新型ICの採用により従来よりも反応速度が向上した。パネルへのワンタッチでピントと露出を合わせて撮影してくれる「タッチシャッター」機能や、画像再生時に2本指で拡大・縮小するなどの機能も引き続き搭載する。

 動画は最大で1,280×720ピクセルの撮影に対応。新たにHDMI端子を本体に搭載した点も大きい。

 撮像素子は1/2.3型CCDで、有効画素数は1,410万画素。最大記録画素数は、アスペクト比4:3の4,320×3,240ピクセルだ。ただし、デフォルトでは16:9の800万画素(3,968×2,332ピクセル)が標準となっている。つまり、4:3比率の画像の上下を切り取った状態だ。そのため有効画素数をフルに活かす場合は4:3の設定に変更する必要があるが、個人的にはあえて16:9のままで扱ったほうが本機の個性を楽しめると思う。

 レンズは35mm判換算で35〜175mm相当、開放F3.6-4.8の光学5倍ズーム。手ブレ補正機構も備えている。撮影可能距離は、広角時が約30cm〜無限遠、望遠時が約50cm〜無限遠、マクロモード時が約7cm〜無限遠(広角時)。画像処理エンジンは「EXPEED C2」。

 本体サイズは約98.8×62.6×16.5mm。重量は約133g(撮影時)。バッテリーはリチウムイオンバッテリ「EN-EL10」で、撮影可能枚数は約150枚。充電時間は約3時間でUSB充電に対応する。SDHC/SDメモリーカードに加えて、早くもSDXCメモリーカードでの使用をサポート。さらに本体にも約79MBのメモリを内蔵している。

タッチパネル機ということもあり、操作ボタンはシャッターボタンだけとシンプルだ本体にHDMI端子を搭載。三脚穴は金属製
記録メディアはSDXC/SDHC/SDメモリーカード。約79MBの内蔵メモリーも利用できる付属充電池の撮影可能枚数は約150枚と少なめ。USB充電にも対応する

初めてでもわかりやすい操作性

 撮影機能としては、「ポートレート」、「風景」、「夜景ポートレート」、「夜景」、「クローズアップ」、「逆光」の6つの撮影モードを自動的に判別してくれる「らくらくオート撮影」を搭載。カメラを扱うのが苦手な人に撮影を頼む時などにはこのモードを使えば大抵のシーンはカバーできるだろう。

 もちろん、上級者向けとして、露出やISO感度などを手動で設定できる「オート撮影モード」や、夕焼けや夜景、雪景色などの撮影シチュエーションを選んで撮影可能な「シーンモード」も備える。

 さらに、人物撮影をアシストする「ベストフェイス」機能として、最大12人までの人の顔を認識してピント合わせをしてくれる「顔認識AF2.0」や、笑顔に合わせてシャッターを切ってくれる「笑顔自動シャッター」、シミやしわ、肌のくすみなどを自動的に補正してなめらかな表現にする「美肌効果」、撮影対象が目を閉じていた場合に警告を出して知らせてくれる「目つぶり検出」、撮影時の赤目を自動的に補正してくれる「アドバンスト赤目軽減」などにも対応する。

 そのほか、撮影した画像のコントラストや色彩などを調整できる「簡単レタッチ」や、手書きで文字やスタンプを貼り付けることができる「ペイント機能」、ミニチュア効果や魚眼効果などが楽しめる6種類のフィルター効果など、さまざまな画像加工機能も備えている。

「らくらくオート撮影」の選択画面。細かい設定を気にすることなく撮影できる「シーンモード」の選択画面。撮影時のシチュエーションを17種類のシーンから選んで撮影する
やや上級者向けの「オート撮影」「オート撮影」時のメニュー画面。基本的な撮影項目を設定できる
ISO感度設定のメニュー画面。ISO3200以上では画面比率が4:3固定となる画像モードのメニュー画面。標準では16:9の800万画素モードになっている
露出補正画面。筆者の指には少々スライダーが小さすぎ、操作に若干手間取った。「+」「-」のボタンも左右にあったほうが操作しやすいだろう画像再生モードでは、指で画面をドラッグすることで前後の画像を表示できる
撮影した画像に文字などを書き込める「ペイント機能」気に入った画像にはレーティングの設定も可能

まとめ

 COOLPIX S80は、シンプルなデザインと操作性、スリムなボディにより、ポケットに入れて気軽に持ち歩けるカメラだ。3.5型と比較的大型の有機ELディスプレイは、撮影したその場で写真を見せるのにも有効だし、HDMI端子を搭載したことで、自宅の大型液晶テレビなどに接続して、家族みんなで写真を楽しむこともできる。タッチパネルの操作も直感的で、指先でAFエリアを選択できるのはとても便利だ。

 ただ、ワイド画面ということで逆に残念だったのが、レンズの焦点距離が35mm判換算で35mm相当から始まる5倍ズームということだ。近年は屈曲光学系のズームレンズを採用する機種でも、28mm相当からのモデルが見られる。従来モデルも28-140mmと、より広角側にふった5倍ズームであっただけに、個人的にもこの点は少々残念だ。

  • 作例のサムネイルをクリックすると、リサイズなし・補正なしの撮影画像をダウンロード後、別ウィンドウで800×600ピクセル前後の縮小画像を表示します。その後、クリックした箇所をピクセル等倍で表示します。

・画角

広角端
COOLPIX S80 / 約1.9MB / 3,968×2,232 / 1/72秒 / F3.6 / 0.0EV / ISO80 / WB:曇天 / 6.3mm
望遠端
COOLPIX S80 / 約1.8MB / 3,968×2,232 / 1/45秒 / F4.8 / 0.0EV / ISO80 / WB:曇天 / 31.5mm

・歪曲収差
広角端(4:3)
COOLPIX S80 / 約5.9MB / 4,320×3,240 / 1/53秒 / F3.6 / 0.0EV / ISO80 / WB:オート / 6.3mm
望遠端(4:3)
COOLPIX S80 / 約5.7MB / 4,320×3,240 / 1/44秒 / F4.8 / 0.0EV / ISO80 / WB:オート / 31.5mm
広角端(16:9)
COOLPIX S80 / 約1.7MB / 3,968×2,232 / 1/54秒 / F3.6 / 0.0EV / ISO80 / WB:オート / 6.3mm
望遠端(16:9)COOLPIX S80 / 約1.8MB / 3,968×2,232 / 1/41秒 / F4.8 / 0.0EV / ISO80 / WB:オート / 31.5mm

・アスペクト比
4:3
COOLPIX S80 / 約4.6MB / 4,320×3,240 / 1/457秒 / F8.1 / -1.0EV / ISO80 / WB:オート / 6.3mm
16:9
COOLPIX S80 / 約1.9MB / 3,968×2,232 / 1/450秒 / F8.1 / -1.0EV / ISO80 / WB:オート / 6.3mm

・感度
ISO80
COOLPIX S80 / 約2.0MB / 3,968×2,232 / 1/6秒 / F3.6 / -1.0EV / WB:晴天 / 6.3mm
ISO100
COOLPIX S80 / 約1.8MB / 3,968×2,232 / 1/8秒 / F3.6 / -1.0EV / WB:晴天 / 6.3mm
ISO200
COOLPIX S80 / 約1.9MB / 3,968×2,232 / 1/15秒 / F3.6 / -1.0EV / WB:晴天 / 6.3mm
ISO400
COOLPIX S80 / 約1.8MB / 3,968×2,232 / 1/32秒 / F3.6 / -1.0EV / WB:晴天 / 6.3mm
ISO800
COOLPIX S80 / 約1.9MB / 3,968×2,232 / 1/64秒 / F3.6 / -1.0EV / WB:晴天 / 6.3mm
ISO1600
COOLPIX S80 / 約1.8MB / 3,968×2,232 / 1/123秒 / F3.6 / -1.0EV / WB:晴天 / 6.3mm
ISO3200
COOLPIX S80 / 約719K / 2,048×1,536 / 1/260秒 / F3.6 / -1.0EV / WB:晴天 / 6.3mm
ISO6400
COOLPIX S80 / 約715K / 2,048×1,536 / 1/493秒 / F3.6 / -1.0EV / WB:晴天 / 6.3mm

・シーンモード
シーンモード:風景
COOLPIX S80 / 約1.9MB / 3,968×2,232 / 1/108秒 / F4.2 / 0.0EV / ISO80 / WB:オート / 20.5mm
シーンモード:風景
COOLPIX S80 / 約1.9MB / 3,968×2,232 / 1/55秒 / F4.1 / 0.0EV / ISO80 / WB:オート / 16.8mm
シーンモード:風景
COOLPIX S80 / 約1.9MB / 3,968×2,232 / 1/56秒 / F4.1 / 0.0EV / ISO80 / WB:オート / 16.8mm
シーンモード:クローズアップ
COOLPIX S80 / 約1.9MB / 3,968×2,232 / 1/416秒 / F3.6 / 0.0EV / ISO80 / WB:オート / 6.3mm
シーンモード:クローズアップ
COOLPIX S80 / 約1.8MB / 3,968×2,232 / 1/399秒 / F3.6 / -0.3EV / ISO80 / WB:オート / 6.3mm
シーンモード:クローズアップ
COOLPIX S80 / 約2.0MB / 3,968×2,232 / 1/37秒 / F4 / 0.0EV / ISO80 / WB:オート / 12.6mm
シーンモード:クローズアップ
COOLPIX S80 / 約2.0MB / 3,968×2,232 / 1/93秒 / F4.8 / 0.0EV / ISO80 / WB:オート / 31.5mm
シーンモード:夕焼け
COOLPIX S80 / 約1.9MB / 3,968×2,232 / 1/8秒 / F4 / 0.0EV / ISO352 / WB:オート / 14.4mm
シーンモード:夜景
COOLPIX S80 / 約1.7MB / 3,968×2,232 / 1/2秒 / F4 / -0.7EV / ISO400 / WB:オート / 12.6mm

・作例
COOLPIX S80 / 約2.0MB / 3,968×2,232 / 1.0秒 / F3.6 / -0.7EV / ISO80 / WB:晴天 / 6.3mmCOOLPIX S80 / 約1.9MB / 3,968×2,232 / 1.0秒 / F3.7 / -0.7EV / ISO80 / WB:晴天 / 7.1mm
COOLPIX S80 / 約1.9MB / 3,968×2,232 / 1/4秒 / F3.6 / -0.7EV / ISO80 / WB:晴天 / 6.3mmCOOLPIX S80 / 約1.9MB / 3,968×2,232 / 1/5秒 / F4.1 / -0.7EV / ISO80 / WB:晴天 / 16.8mm
COOLPIX S80 / 約1.9MB / 3,968×2,232 / 1.0秒 / F3.6 / -0.7EV / ISO80 / WB:晴天 / 6.3mmCOOLPIX S80 / 約1.9MB / 3,968×2,232 / 1/2.8秒 / F3.6 / -0.7EV / ISO80 / WB:晴天 / 6.3mm
COOLPIX S80 / 約1.9MB / 3,968×2,232 / 1/1.6秒 / F4.8 / -0.7EV / ISO80 / WB:晴天 / 31.5mmCOOLPIX S80 / 約1.9MB / 3,968×2,232 / 1/3秒 / F3.6 / -0.7EV / ISO80 / WB:晴天 / 6.3mm

・動画
28.8MB / 1,280×720ピクセル / 30fps




清宮信志

2010/12/6 12:33