新製品レビュー

キヤノンEOS M10(実写編)

侮れない実力のカジュアルミラーレス

先般、外観・機能編をお伝えしたキヤノン「EOS M10」。位置付け的には「EOS M3」の下位モデルとなるが、高い基本性能を誇り、その実力は思いのほか侮れない。

加えてスマートなボディシェイプとし、ボディジャケットだけでなくフェイスジャケットや後付けタイプのグリップなど、オプションも豊富に用意される。「いっしょに出かけたくなる、おしゃれなデザイン。」は同社ホームページに掲載される本モデルの謳い文句のひとつであるが、まさにその言葉通りのカメラに仕上がる。

前回の外観機能編に続き、今回は実写編としキヤノンミラーレスの新機軸である本モデルと、同時に発売されキットレンズにもなっている「EF-M 15-45mm F3.5-6.3 IS STM」の描写を見ていくことにする。

キットレンズの描写チェック

撮影時の絞り値はワイド端・テレ端ともにF8とし、ピクチャースタイルはデフォルトの「スタンダード」に、オートライティングオプティマイザは「標準」、ホワイトバランスはオートとしている。なお、撮影時の天候は晴れ、大気中の水蒸気は比較的少ないほうであった。

広角端
望遠端
広角端
望遠端

まず、階調再現性については、ハイライト部およびシャドー部ともよく粘り、概ね良好な結果。グラデーションも美しく不自然さのようなものをまったく感じさせない。他のEOSデジタル同様に、広い階調再現性とメリハリある描写を誇るといってよい。

絵づくりとしてのシャープネスについては、カリカリとした感じはないものの、それなりにエッジが立ちキレのある描写。WBについても色の偏りなどなく、ナチュラルな仕上がりである。

EF-M15-45mm F3.5-6.3 IS STMの描写特性については、やや不満の残る結果。特に画面周辺の描写は、絞りF8としているもののワイド端、テレ端とも甘く感じられる。画面中央部はキレもよく上々な結果が得られているだけに惜しいところといえる。もっとも可搬性にも重きを置いたズームレンズであり、クラスを考えると割り切りの必要なレンズなのだろう。

また、同レンズの逆光耐性もチェックしてみた。方法については本誌「交換レンズレビュー」と同じで、太陽が画面内に入った場合と、画面のすぐ外とした場合である。焦点距離は35mmとしている。

画面内に太陽
画面外に太陽

結果については、どちらも文句ないものといえるだろう。特にゴーストの発生は作例を見るかぎり見当たらず、スッキリとしたものである。フレアも光源の周囲にわずかに見られるものの、画面全体を覆うような醜いものではない。焦点距離や光源の強さなど撮影条件によってはゴースト、フレアの発生はあるかも知れないが、今回の作例を見るかぎりでは、本レンズは優秀といって差し支えないものといえる。

感度

EOS M10の通常感度はISO100からISO12800まで。拡張によりISO25600相当にも設定できる。掲載したISO感度の比較作例は、ベース感度から拡張感度まで撮影を行っている。高感度ノイズリダクションの設定については、デフォルトの「標準」としている。

以下のサムネイルは青枠部分の等倍切り出しです
ISO100
ISO200
ISO400
ISO800
ISO1600
ISO3200
ISO6400
ISO12800
ISO25600(拡張)

作例をチェックするかぎり、ISO3200までなら常用できるレベルといえる。もちろん等倍まで拡大してじっくりと見ていけば、カラーノイズの発生や解像感の低下など見受けられるが、A4サイズ程度のプリントやパソコンの画面に画像全体が収まるようなサイズで閲覧する場合など気になるようなことはないはずだ。

ISO6400になるとノイズが急激に発生しはじめ、解像感の低下も明らかになってくる。パソコンの画面をさほど拡大表示しなくても見極められるほどだ。さらに常用の最高感度であるISO12800になると、ノイズ、解像感の低下とも顕著に。色乗りもベタッとして階調性も大きく低下する。さらに色のにじみも強い。拡張感度であるISO25600相当の描写については、あらためて述べるまでもないだろう。

クリエイティブフィルター

様々な仕上がりの楽しめるクリエイティブフィルターには、7種類の効果が搭載される。内訳は、油彩風/水彩風/トイカメラ風/ラフモノクローム/ソフトフォーカス/魚眼風/ジオラマ風。効果によっては、度合いも選ぶことができる。

ラフモノクローム
絵画風
水彩風
トイカメラ風

さらに撮影後のフィルター処理も行えるほか、フィルター効果を重ねてかけることも可能にしているなど、同機能の活用するユーザーにとっては至れり尽くせりといったところである。

掲載した作例では、ラフモノクローム/絵画風/水彩風/トイカメラ風で撮影しているが、それぞれ効果のほども上々だ。クリエイティブフィルターには属さないが、HDR(ハイダイナミックレンジ)による作例も掲載するので、確認してもらえればと思う。

HDR
HDR

まとめ

ミラーレスカメラへの本気を見せ始めてきたキヤノン。EOS M10はそれを知るに十分なカメラである。上位モデルのEOS M3とくらべれば物足りない部分が多々あるのは正直なところだが、カメラとしての位置付けやターゲットとするユーザー層を考えると、納得できるものである。

また、外観も気をてらったところはなく、シンプルでスマート。オプションして用意されるカラフルなフェイスジャケットなども含め、女性をはじめ多くのユーザーに受け入れられるように思える。

ひとつ提案するなら、15-45mmの標準ズームレンズに加えて「EF-M 22mm F2 STM」が付属するダブルレンズキットを選ぶと、このカメラを一層楽しめるだろう。キットのズームレンズよりもさらにコンパクトで、そのうえAPS-Cサイズ有効1,800万画素CMOSセンサーの実力を余さず引き出せる描写特性を持つからだ。

同社ミラーレスの入門機として位置付けされる今回のEOS M10の登場によって、そのフラッグシップとなるモデルの登場も気になるところ。EOS M3の上位モデルとして、35mmフルサイズフォーマットという淡い期待をついつい抱いてしまうのは、私ばかりではあるまい。

作品集

ピントの合った部分はエッジが立ち立体感のある描写である。階調再現性も良好で、パリっとした鮮明でリアル感ある描写といってよいだろう。

ISO100 / F3.5 / 1/1,000秒 / -1EV / 15mm

質感描写も文句ないものである。細かな部分も鮮明に再現し、色調も含め生っぽい仕上がりである。掲載した作例では-2/3EV露出補正しているが、あと-1/3EVほど補正すれば、より質感の高い描写となったはずだ。

ISO100 / F8 / 1/200秒 / -0.7EV / 24mm

選択したピクチャースタイルはデフォルトの「スタンダード」。煌びやかさを適度に抑えながらも、メリハリのある仕上がりが得られた。使用したレンズは、画面周辺部の描写をもう少し頑張ってほしいところ。

ISO100 / F5.6 / 1/1,600秒 / ±0EV / 15mm

上方向にチルトする液晶モニターは、ローアングル撮影時とても重宝する。ズームレンズをワイド端にセットし、低い位置から被写体にぐっと寄ると、迫力ある描写が得られる。

ISO100 / F5.6 / 1/50秒 / ±0EV / 18mm

ピントの合った部分はエッジの効いたキレのよい描写である。なお、コントラストが高く視認性の高い液晶モニターを搭載するが、作例のような明るい屋外ではやはりツラいこともあった。

ISO100 / F5.6 / 1/320秒 / -0.3EV / 21mm

ハイライト部、シャドー部ともよく粘る。すでに一世代前のイメージが強い1800万画素CMOSセンサーだが、階調再現性では最新のものに引けを取らない。なお、F11まで絞るとこのレンズの描写はぐっと向上するようだ。

ISO100 / F11 / 1/200秒 / -0.3EV / 42mm

大浦タケシ

(おおうら・たけし)1965年宮崎県生まれ。日本大学芸術学部写真学科卒業後、二輪雑誌編集部、デザイン企画会社を経てフリーに。コマーシャル撮影の現場でデジタルカメラに接した経験を活かし主に写真雑誌等の記事を執筆する。プライベートでは写真を見ることも好きでギャラリー巡りは大切な日課となっている。カメラグランプリ選考委員。