新製品レビュー

キヤノンEOS M10(外観・機能編)

誰にもやさしい軽快ミラーレス

ミラーレスカメラに対して腰が重いと言われてきたキヤノンだが、このところ精力的だ。本年3月にそれまでのMシリーズを一新する「EOS M3」を、そしてつい先だってビギナーやエントリーユーザーをメインターゲットとする「EOS M10」をリリースし、同社ミラーレスは初めて2ライン体勢となった。これらはミラーレスカメラへのやる気の現れと受けとってよいものだろう。

実勢価格は、ボディ単体が税込4万2,980円前後、「EF-M15-45mm F3.5-6.3 IS STM」の付属するレンズキットが同5万5,940円前後、レンズキットに「EF-M55-200mm F4.5-6.3 IS STM」を加えたダブルズームキットが同7万9,700円前後だ。

スマートで無駄のない外観

グリップを省略し「EOS M」および「EOS M2」とよく似たボディシェイプを持つEOS M10だが、よりスマートで無駄のないシンプルな印象だ。カメラとして必要な操作部材を搭載しながら、外観をプレーンかつ美しく見せるのはメーカーのデザイン部門の腕の見せどころといえるが、本モデルは上手く成功しているように思える。

六面写真を見ていただければ分かるとおり、液晶モニターのタッチ操作が可能なこともあり、特にカメラ背面の操作部材を必要最小限としているのが特徴的だ。

ボディカラーは写真のホワイトのほか、グレーとブラックから選ぶことができる。別売のオプションとして様々な彩りのフェイスジャケットやグリップが用意されているが(キヤノンオンラインショップ限定)、コーディネートを楽しみたいのであればボディカラーはホワイトもしくはグレーを選ぶのが賢明だろう。

EOS M10に装着しているのはフェイスジャケット。カラーは全部で7色を用意する。キヤノンオンラインショップ限定となる。右はボディジャケットで通常のカメラショップで購入が可能。ブラウンのほかベージュも選ぶことができる。
グリップを装着したところ。スマートな印象はややスポイルされるものの、いうまでもなくEOS M10をより確実にホールドできる。カラーはブラウンとベージュをラインナップする。キヤノンオンラインショップ限定のアイテムだ。

なお、EOS M10のボディサイズと質量は約108×66.6×35mm・301g(バッテリー、メモリーカード含む)。EOS M3の約110.9×68×44.4mm・366g(同)と比べると、ボディの厚み(グリップの厚みも含む)を除けばサイズ的にはさほど違いはないが、より軽量に仕上がっていることが分かる。

ほどよく配置された操作部

操作感は同社ミラーレスやコンパクトデジタルカメラと大きくは変わらない。前述したように液晶モニターのタッチ操作も可能としているが、十字コントローラーも省略した「PowerShot G9 X」ほど大胆な変更もしていないので、従来からのデジタル一眼レフユーザーなども操作に迷うことはないはずだ。

シャッターボタンまわりはシンプル。電源ボタンの周囲はモードスイッチとなるが、その突起部が電源のランプやON/OFの文字と近く、起動や終了の際に誤って触ってしまうことも。ポップアップストロボを内蔵したかわりに、ホットシューは非搭載。
カメラ背面部の操作部。十字キーを中心に上下ひとつずつボタンが備わるだけで、こちらも上面同様シンプルな印象だ。
カメラ背面の右手親指がかかる部分は突起が設けられ、より安定したホールディングが可能。その部分に貼られたラバーの指触りもよい。

特徴的な、シャッターボタンと同軸の電子ダイヤルも使い勝手はよい。エントリーユーザーもカメラの操作に慣れ始めると積極的に露出設定を操作して撮影したくなることと思うが、その時にも操作しやすく感じるはずだ。また、十字コントローラーを囲むように配置されるホイールはEOS M3などと異なり省略されたものの、カメラの性格を考えると納得しうる部分といえる。

ポップアップ式のストロボを内蔵する。ガイドナンバーは約5(ISO100・m)。新しい標準ズームレンズEF-M 15-45mmの広角24mm相当をカバーする。

撮影モードの位置付けに特徴あり

ユニークなのが撮影モードの考え方だ。モード選択をメニュー内で行うことはエントリーモデルとして違和感がないが、絞り優先やプログラムなどの応用撮影モードだけでなく、「ポートレート」や「風景」といったかんたん撮影モードも、「トイカメラ風」や「ジオラマ風」などのクリエイティブフィルターも、すべて一括して並んでいる。

しかも、その項目は撮影メニュー1番目のページトップにあり、速やかな選択を可能にしている。エントリーユーザーなどカメラに対する知識の少ないユーザーにとっては、撮影モードをカテゴリー別に細かく分けないこのスタイルのほうが、かえって分かりやすいように思う。

撮影モードの選択画面。かんたん撮影モード、クリエイティブフィルター、応用撮影モードが一括して並ぶ。細かくモードで分けられているよりも、直感的に選択でき使いやすく思える。

さらに思い切ったと思えるのが、AEB(露出ブラケット)機能を省略していることだろう。キヤノンにしては珍しいと感じた。考え方としては潔いが、カメラの腕が上達してくると、ユーザーによっては不満に思うことがあるかもしれない。

メニュー画面は他のEOSシリーズとほぼ同じデザインとレイアウト。EOSデジタルのユーザーならば初見でも戸惑うことはないだろう。上より撮影メニュー、機能設定メニュー、カスタム機能。

自分撮り対応モニターを搭載

液晶モニターは3型104万ドット。EOS M3と同じものと思われる。ただし、EOS M3が上下チルト式なのに対し、EOS M10は上方向チルトのみ。そのため液晶モニターを下方向にチルトしたいハイアングル撮影ではいささか不便なこともあるかもしれない。

かわりに上方向へのチルト可動は最大180度なので、自分撮りが容易に楽しめる。ちなみに、撮影メニューに「鏡像表示」というのがあるが、これは液晶モニターを上180度にチルトしたとき、表示画像が鏡に映ったときと同じように左右反転する機能である。

液晶モニターは上方向に180度までチルトする。鏡像表示が可能なので、自分撮りの際のアングルも決めやすい。液晶モニターは3型104万ドット。タッチ操作にも対応する。

なお、EVFの装着はホットシュー自体が省略されているため対応しておらず、このあたりも割り切ったものとしている。

ライブビュー画面のレイアウトはEOS M3とほぼ同じ。写真はグリッドを表示させている。
撮影機能画面もEOS M3とほぼ同じ。この画面から各機能の設定が可能なので、憶えておきたい表示だ。

不足のない基本仕様。AFも初代EOS Mから劇的進化

キーデバイスを見てみよう。イメージセンサーには、APS-Cサイズの有効1,800万画素CMOSを採用。恐らくEOS Kiss X7などに搭載されたものと同じか、それに準じたセンサーと思われるが、映像エンジンがより高画質化、高速処理化されたといわれるDIGIC 6なので、描写的にはより進化していると思って間違いはないだろう。

有効1,800万画素CMOSセンサーを搭載する。感度はISO100からISO12800まで。拡張設定によりISO25600相当の撮影も可能とする。映像エンジンには最新のDIGIC 6を採用。

感度の設定範囲はISO100からISO12800まで。拡張設定により最高ISO25600相当での撮影も楽しめる。高感度特性も含めた描写については、次回の実写編でご確認頂きたい。

連写速度は4.6コマ/秒を実現。もう少し速いとよりキビキビとした撮影が可能に思えるが、それは今後に期待したいところである。

同社のミラーレスカメラは初代EOS Mのイメージが強く、まだAFが遅いという印象を持たれることが少なくないと感じる。しかし、それ以降のEOS MシリーズのAFスピードは不足のないもので、ライバルに決して引けを取らないものである。EOS M2と同じハイブリッドCMOS AF IIを搭載する本モデルにしても同様で、通常使用に不足のないものだ。

実際使用した印象は、筆者の所有するEOS M3(ハイブリッドCMOS AF IIIを搭載)と際立った違いは感じられず、ストレスのない撮影が楽しめたことを報告しておこう。ちなみに、ハイブリッドCMOS AF IIについては、像面位相差検出方式とコントラスト検出方式を組み合わせたハイブリッドのAFシステムで、コントラストAFのみに比べて素早い測距ができるとともに、広いAFエリアを誇る。

Wi-Fi/NFCのイマドキ装備も

今やデジタルカメラの定番機能となったWi-Fiだが、EOS M10では専用のアプリ「Camera Connect」をインストールしたスマートフォンやタブレットでの画像閲覧や、リモート撮影が可能。カメラ同士でデータを交換したり、Wi-Fi対応のプリンターで直接プリントすることも楽しめる。

押すだけであらかじめ登録されたスマートフォンと通信を開始するワンタッチスマホボタンを装備。カメラ右手側面にあるネジ穴は、グリップ装着用。

接続はカメラ右手側面にあるワンタッチスマホボタンを押すだけで、あらかじめ登録したスマートフォンとの接続を可能にする。さらにNFC機能も搭載しており、同じくNFC対応のAndroid端末などとタッチするだけで通信を開始する。Camera Connectアプリの操作感も上々で、積極的に活用してほしい機能である。もちろん、同社のフォトストレージであるコネクトステーション「CS100」との連携も手軽に楽しめる。

広角24mm対応の新標準ズーム

EOS M10とともに、新しいEF-M標準ズームレンズもリリースされたので、ここで紹介しておこう。「EF-M 15-45mm F3.5-6.3 IS STM」は35mmフルサイズに換算して24mmから72mm相当の画角を持つ。以前からある標準ズームの「EF-M 18-55mm F3.5-5.6 IS STM」が同じく28.8mmから88mm相当だったので、ワイド側に重きを置いたレンズであることが分かる。

EOS M10と同時に発売の開始されたEF-M15-45mmF3.5-6.3 IS STM。沈胴タイプなので、使用しないときはよりコンパクトとなる。

自分撮りのときや、ちょっとした記念写真のときなどには画角が広いほうが便利なことが多いので、うれしい配慮といえるだろう。さらに沈胴タイプなので、収納時はコンパクトに収まり可搬性も良好だ。こちらも描写については次回の実写編で確認していただければと思う。

左上より時計まわりに、EF-M 15-45mm F3.5-6.3 IS STMを沈胴したところ、ワイド端15mm、準標準域28mm、テレ端45mmとした状態。

EOS M10はビギナーやエントリーユーザーのみならず、写真愛好家全般にもうれしい配慮のなされたカメラである。さらに冒頭に記したように比較的手に入れやすい価格も魅力。カタログなどのイメージから若い女性ユーザーをターゲットにしていることが伝わるが、それだけではもったいない気がしてならない。むしろ、家族全員で使えるミラーレスカメラとして、広く注目してもらいたい1台である。

次回は実写編として、その画質について作例を交えて紹介する。

バッテリーはEOS M、EOS M2と同じくLP-E12を使用。CIPA規格準拠の撮影可能枚数は約255枚とする。実際に使用した印象としては、バッテリーの持ちはさほどよいほうではない。
光軸上に三脚ネジ穴を配置する。高級コンパクトのPowerShot G9 Xもそうだったが、カメラメーカーのこだわりと感じられるところである。
メモリーカードスロットはカメラ左手側の側面に置かれる。このクラスのカメラの場合、バッテリーボックス内にカードスロットがあることが多いので、珍しいといえるだろう。

おまけ:EOS M3と並べてみた

EOS M3と並べてみた。ボディの大きさはグリップ部を除けばほとんど変わらないように見受けられる。
EOS M3の液晶モニターは上下方向に可動するが、EOS M10は上方向のみ可動する。どちらも3型104万ドット。
操作部材の違いは大きい。EOS M3の十字コントローラー外周にはコントローラーホイールがあるが、EOS M10では省略されている。
EOS M10とEOS M3の外観上の大きな違いは、やはりグリップの有無となるだろう。EOS M10はグリップを省略したことで軽快でスマートな印象としている。

大浦タケシ

(おおうら・たけし)1965年宮崎県生まれ。日本大学芸術学部写真学科卒業後、二輪雑誌編集部、デザイン企画会社を経てフリーに。コマーシャル撮影の現場でデジタルカメラに接した経験を活かし主に写真雑誌等の記事を執筆する。プライベートでは写真を見ることも好きでギャラリー巡りは大切な日課となっている。カメラグランプリ選考委員。