新製品レビュー

キヤノンPowerShot G9 X(外観・機能編)

ひときわ小さなボディの1型センサー機

スマートフォンが低価格コンパクトカメラの立場を奪って久しい。いまや、手軽に写真を撮るといえばスマートフォンの出番である。一方コンパクトデジタルカメラはというと、高倍率のズームレンズを搭載するなど、これまで以上に個性的な顔ぶれとなり、スマートフォンとの差別化をより鮮明に打ち出してきている。

そうした流れのひとつに、より高画質を意識して大きなサイズのイメージセンサーを搭載したり、作画の幅を広げる大口径のズームレンズを搭載するものがいくつか見受けられる。今回ピックアップする「PowerShot G9 X」もそのような1台である。1型センサーを搭載しながら、ボディサイズは1/1.7型モデル並みに仕上がるポケットカメラだ。

発売は10月22日。掲載時点の実勢価格は税込6万2,290円前後。

1型センサーなのに1/1.7型センサー並みのサイズに

PowerShot G9 X(以下G9 X)のサイズ感は、発売済みの1型モデルPowerShot G7 X(同G7 X)から更に小さくなり、 1/1.7型センサーを搭載するPowerShot S120(同S120)に迫る。

具体的にはG9 Xが98×57.9×30.8mm(幅×高さ×奥行き)で、S120の100.2×59×29mmよりも幅と高さがわずかにコンパクトだ。撮影時の重量も8g軽い209gに仕上がる。ちなみにG7 Xは103×60.4×40.4mm、304gなので、その差は大きい。

そんなG9 Xは、ポケットに入れてもさほど気になることのない大きさ・重さである。1型センサーは面積比で1/1.7型センサーの3倍近い大きさであるが、それでこのボディサイズを実現したことは立派といってよいものである。なお、ボディカラーはブラックのほか、革を模したブラウンカラーのグリップ部分としたシルバーも用意される。

十字ボタンを省略。リング操作は継承

操作系に関しての注目ポイントは、いわゆる十字キー(十字コントローラー)を省略し、液晶モニターのタッチ操作をメインとしたことだ。ただし、完全にタッチ操作のみとした訳ではなく、メニュー画面の呼び出しや、設定の確定などは背面右手側に配置されたボタン操作によるものとしている。

カメラ背面の操作部材は縦に4つ並んだボタンのみで、馴染みのある十字キー(十字コントローラー)は省略され、すっきりとしている。

撮影した画像の再生にしても、画像送りはフリック操作で、拡大縮小は2本指のピンチ操作を使えるが、再生モードに移るにはカメラ上部に配置された再生ボタンを押す。物理的な操作と液晶モニターへのタッチ操作による、いわばハイブリッド方式である。

筆者が5日ほど試用した印象では、十字キーに慣れすぎているせいか戸惑うことも少なくなかったが、これまでデジタルカメラを所有していなかったユーザーや、普段あまりカメラに触れないユーザーなどは、むしろタッチ操作は自然なのではないかと思う。

メニュー画面。タッチ操作でタブや項目を選べる。

PowerShot S90以来、高級コンパクトに定着したとも言えるコントローラーリングはこれまで通り継承する。クリックの感触は従来どおり良好なもので、機能の割り当てにも大きな変更は無い。好みで機能をカスタマイズすることができるのもこれまでどおりだ。

レンズの根元にコントローラーリングを備える。直感的な操作を可能とするほか、ダイヤルのクリック感も上々。

トップカバーのモードダイヤルについても、使い勝手に関して従来から目立った変更はない。コントローラーリング、モードダイヤルとも、ダイヤル外周は細かな切削加工によるローレット処理が施されており、指がかりがよいのも特徴である。筆者の好みで欲をいえば、モードダイヤルにロック機能が備わっていると不用意な回転が抑えられ、より一層操作感が向上したように思える。

トップカバーもシンプル。撮影モードダイヤルは適度な大きさで操作感もよい。再生ボタンもここに備わる。
ポップアップ式の内蔵ストロボを搭載。

スペックを抑えたレンズでポケッタブルに

イメージセンサーはG7 Xと同様、1型で有効2,020万画素の裏面照射型CMOSセンサーだ。感度設定範囲はISO125からISO12800まで。具体的な画質は、後日掲載の「実写編」で確認していただきたい。

G7 Xとの大きな違いが見られるのはレンズ部分だ。G7 Xでは35mm判換算24-100mm相当F1.8-2.8であったのが、G9 Xでは同28-84mm相当F2-4.9になっている。レンズのスペックが控えめになっていることも、1/1.7型並みのコンパクト化を実現できた大きな理由のひとつだろう。最短撮影距離はワイド端5cm、テレ端35cm。9枚羽根絞りの採用で、円形絞りに近い柔らかいボケ味が得られるのも特徴である。

35mm判換算28-84mm相当の3倍ズームレンズを搭載。開放F値も含めG7 Xからスペックダウンし、軽量・コンパクトを優先したといえる。

撮影に関する新しい機能として「オートND」がある。明るい屋外などで少しでも絞りを開きたいときや、可能な限り遅いシャッター速度で撮影を行いたいときには3段分の減光を行う内蔵NDフィルターが重宝だが、これまではメニューに入って手動でON/OFFする必要があった。G9 Xはカメラの判断による自動ON/OFFが可能になり、設定の手間がかからず便利に思える。

AFは31点。G7 Xと同じある。コマ速は6コマ/秒を実現。液晶モニターは3型104万ドット。チルト式やバリアングル式ではないが、視野角は広いほうなので、極端なアングルでないかぎり何とかカバーできそうに思える。

Wi-Fi機能も継承する。今やデジタルカメラではマストといえる機能なので、当然のこととなるだろう。専用アプリ「Camera Connect」によるリモート撮影も可能で、各撮影モードのほか、ズーム、ストロボ、セルフタイマーなどの設定もスマートフォンのアプリ画面上からできる。さらにフォーカス位置の調整もでき、ユーザーも被写体として画面のなかに入る記念写真の撮影のほか、野生動物など本格的な撮影も楽しめる。

NFCペアリングにも対応しており、対応するAndroid端末ならカメラとタッチするだけでアプリが起動し接続可能なのも便利なところ。また、写真と動画を管理・閲覧・共有できる「Connect Station CS100」との接続も、このNFCで手間がかからない。

写真の「ワンタッチスマホボタン」を押し、スマートフォンの専用アプリ「Camera Connect」を起動させるだけで接続が完了する。ストラップ取り付け部は左右両端にあるので、両吊りも可能。

USB充電に対応したのは新しい部分だ。パソコンのUSB端子やUSBアダプターからの充電を可能とする。コンパクトな本機をノートパソコンとともにバッグに忍ばせておくようなことも少なくないと思われるが、バッテリーの残量に不安を感じるときにはそのままパソコンからチャージできる。なお、単体のバッテリーチャージャー(CB-2HL)が付属するのはメーカーのうれしい配慮といえるだろう。

側面のインターフェースは上からUSB(Micro-B)、HDMIコネクターDタイプを搭載。
バッテリーはNB-13Lを採用。フル充電からの撮影可能枚数は、液晶モニター表示時220枚、エコモード時335枚とする。

変わらぬコンセプトを垣間見た

デジタルカメラの操作の要、十字キーを廃したUIが印象に残るG9 X。カメラ本体のより一層の小型化、液晶モニターのさらなる拡大を考えとき、このUIはとても効果的に思える。ほとんどの操作を液晶モニターのタッチ操作で行うデジタルカメラもあるが、物理的操作による部分を要所要所に残すことで、操作にメリハリと安心感をもたらすからだ。実によく考えられていると思う。

マニアックな注目ポイント。レンズの光軸上に三脚ネジ穴があった。これも細かなこだわりに感じられる。

今回は操作にようやく慣れはじめたときに試用機材を返却しなければならなかったが、使い込むとよく手に馴染みそうである。近年のハイエンドコンパクト人気の先駆けともいえる「PowerShot S90」(2009年発売)の開発コンセプトに、“暗い居酒屋でも美しい写真が撮れるカメラ”というのがあった。その血統を受け継ぐ本モデルも、1型センサーによる優れた高感度特性や強力な手ブレ補正機構、ワイド端が明るい開放F値のレンズなどによって、それに違わぬカメラに仕上がっている。

次回は実写編として、その画質について作例を交えて紹介する。

大浦タケシ

(おおうら・たけし)1965年宮崎県生まれ。日本大学芸術学部写真学科卒業後、二輪雑誌編集部、デザイン企画会社を経てフリーに。コマーシャル撮影の現場でデジタルカメラに接した経験を活かし主に写真雑誌等の記事を執筆する。プライベートでは写真を見ることも好きでギャラリー巡りは大切な日課となっている。カメラグランプリ選考委員。