新製品レビュー

ソニーサイバーショットDSC-HX90V

胸ポケットにおさまる30倍ズーム。EVFも搭載

シャツの胸ポケットにおさまるスリムなボディに光学30倍ズームとポップアップ式EVFを搭載したハイパフォーマンスモデル。2014年3月に発売されたサイバーショットDSC-HX60Vの後継となる。

先代に装備されていたアクセサリーシュー、露出補正ダイヤルは省略されたが、その代わりに、チルト式の液晶モニターやレンズ基部のコントロールリングが追加された。ボディカラーはブラックのみ。発売は6月5日。実勢価格は税込5万9,270円前後。

ポケットサイズに30倍ズーム。EVFも内蔵

ボディの大きさは幅102×高さ58.1×奥行き35.5mm、重さは245g(バッテリーとメモリーカード含む)。ひとつ前モデルのHX60Vに比べると、幅、高さ、奥行きともに小さく、そして軽くなっている。サイズ感としては、高級タイプのコンパクト機と大差なく、シャツの胸ポケットにもすんなり収納できる。

搭載レンズは新開発のバリオ・ゾナーT*4.1-123mm F3.5-6.4。フルサイズ換算で24-720mmに相当する光学30倍ズームだ。HX60VはGレンズだったから、ワンクラスアップといえる。同社のウェブサイトのスペック表には「光学式手ブレ補正」とあるが、レンズシフト式かセンサーシフト式かは記載されていない。2倍の全画素超解像ズーム(最大1,440mm相当)、4倍のデジタルズーム(最大2,880mm相当)も装備している。

搭載レンズは10群11枚構成のバリオ・ゾナーT*。24-720mm相当F3.5-6.4。最短撮影距離は、広角端で5cm、望遠端では250cmとなる。
ズームの広角端。
こちらは望遠端。30倍ズームとしてはあまり大きくならない。
光学30倍ズームに加えて、2倍の全画素超解像ズーム、4倍のデジタルズームも設定できる。

レンズ基部にコントロールリングを新設。絞りやシャッタースピード、露出補正、ステップズームなどの操作が行なえる。

撮像センサーは1/2.3型の裏面照射型CMOSセンサーで、有効画素数は1,820万画素。画像処理エンジンは、同社の一眼カメラにも搭載されているBIONZ Xだ。ISO感度の設定範囲は、ISO80からISO3200まで。マルチショットNR(ノイズリダクション)時は最高ISO12800までとなる。

ISO感度の設定範囲は、ISO80からISO3200まで。

電源は、容量1,240mAhのリチウムイオン充電池。CIPA基準の撮影可能枚数は、モニター撮影で390枚、EVF撮影だと360枚。コンパクトカメラとしてはまずまずの数字といえる。ストロボ撮影なし、動画記録少々で420枚ほど撮ったが、バッテリーの残量表示はひと目盛り減っただけだった。

記録メディアは1スロットでメモリースティックデュオ/PROデュオなど、またはSDXC/SDHC/SDメモリーカード(UHS-I対応)の使用が可能。実写でのファイルサイズは、Lサイズ、ファイン画質で約7.1MB程度だった。

レンズ基部に新しくコントロールリングが装備された。
ボタンなどの機能を変更できるカスタムメニューの「カスタムキー設定」の画面。
コントロールリングには、露出補正意、ISO感度、ズームなどが割り当てられる。
コントロールリングにズーム機能を割り当てた際の動作を選択する「リングのズーム機能」の画面。「クイック」にすると、素早く画角を変えられる。
コントロールリングに露出補正を割り当てたときの操作画面。
ステップズームの操作時の画面。24、28、35、50、70、85、100、135、200、300、400、500、600、720mmの14ステップで停止する。
初期設定(十字キーの下キーで露出補正を行なう)の状態で露出補正を行なう際の画面。上下の黒い帯と画面中央に大きな時と目盛りが表示されるのが邪魔っ気。

小型ボディにEVFを内蔵

内蔵EVFは、左手側側面にあるファインダーポップアップスイッチを押し下げることでポップアップする。接眼部を引き出す必要があるのはちょっと面倒だが、それほどたいした手間でもない。電源オフの状態でEVFをポップアップすると、自動的に電源がオンとなる。セットアップメニューの「ファインダー収納時の機能」で、EVFを押し下げたときに電源を自動的にオフにするかどうかを選択できるようになったのは便利な点だ。

左手側側面のレバーを下に押し下げるとEVFがポップアップする。ファインダー倍率はフルサイズ換算で0.5倍相当。
EVFはポップアップさせてから接眼部を引き出してやる必要がある。
セットアップメニューの「ファインダー収納時の機能」の設定画面。EVFを押し下げても電源がオフにならないようにできる。

0.2型のOLED(有機EL)パネルを採用しており、解像度は63.84万ドット。ファインダー倍率は0.5倍相当となっている。スペックとしてはやや小粒だが、これだけ小さなボディに詰め込んでいるのだから、あまり多くは望めないだろう。むしろ、価格帯から考えれば、十分に満足できるスペックだと思う。EVFとモニターの切り替えは、アイセンサーによる自動。切り替えのタイムラグはやや長めの印象だ。

ファインダー像は、くっきりとハイコントラスト。シーンによってはドットが目に付くこともあるが、液晶モニターが見づらくなりがちな日中の野外では助けになるし、望遠撮影時に安定した構えができるメリットは大きい(ただまあ、コンパクトサイズな分、窮屈ではあるが)。

参考:ファインダー内を撮影したもの。コントラストが高めでくっきりした映像が見られる。

液晶モニターは3.0型、92.16万ドット。タッチパネルはない。上向き180度まで動かせるチルト式で(下方向には動かせない)、自分撮り時には自動的に3秒のセルフタイマーに切り替わるといった配慮もある。

液晶モニターは3.0型、92.16万ドット。上向き180度まで向きを変えられる。
上向き180度に開いたときに「自分撮りセルフタイマー」を使用するかどうかを選択できる。「入」にすると3秒のセルフタイマー撮影となる。
EVFと内蔵ストロボをポップアップさせた状態。
上面の操作部。上級者向けのP、A、S、Mモードも備える。
背面の操作部。十字キーの左右下キー、消去ボタンは機能の変更が可能。Fnボタンを押すとファンクションメニューが表示される。
撮影時の画面。パナソニックもそうだが、画面中央に水準器が表示されるのは絶妙に邪魔である。
選択した測距点の周囲の測距点も使ってピント合わせを行なう拡張フレキシブルスポットAFも新しい機能のひとつだ。
Fnボタン押しで表示されるファンクションメニュー。十字キーで項目を選んで、ホイールを回して機能の変更が可能だ。
ファンクションメニューは自由にカスタマイズが可能。このあたりは一眼カメラのαシリーズと共通だ。
再生時の画面。
ヒストグラム付きの詳細表示。
インデックス表示の画面。
カレンダー表示も可能だ。

まとめ

本機のいちばんの魅力は、シャツの胸ポケットに入れても苦にならない小ささと軽さで30倍ズームを搭載しているところだ。高倍率ズームといえば、一眼レフっぽいスタイルの大柄なカメラが当たり前で、だから、本機のような気軽に持ち歩ける高倍率機は、それだけで価値がある。しかも、このサイズなのにEVFまで内蔵しているのもすごい。

1/2.3型センサーとあって、ピクセル等倍で見ると、ちょっとなぁ、と感じる部分はあるものの、発色は良好だし、露出も安定している。NFC対応のWi-Fi機能やGPSといったトレンド機能も装備しており、撮ることを楽しみたい人にはいい選択肢だと思う。

実写サンプル

画角変化

搭載レンズはツァイス バリオ・ゾナーT*24-720mm相当の光学30倍ズーム。広角端の周辺部が少し流れていること以外はまずまずの描写といえる。リアルタイムで電子的な補正を行なっているらしく、歪曲収差や色収差は見られない。

全画素超解像ズームは、多少解像感は落ちるものの、まずまずの画質。あまり大きくプリントしないのであれば、それなりに使えそうな印象だ。デジタルズームは画質的にも、画角的にもあまり実用的とは思えない。

24mm相当
28mm相当
35mm相当
50mm相当
70mm相当
85mm相当
100mm相当
135mm相当
200mm相当
300mm相当
400mm相当
500mm相当
600mm相当
720mm相当
全画素調超解像ズーム(1,440mm相当)
デジタルズーム(2,880mm相当)

ISO感度

撮像センサーは1/2.3型、有効1,820万画素の裏面照射型CMOSセンサー。画像処理エンジンにはBIONZ Xを搭載する。撮像センサーの小ささが影響しているのか、薄暗いシーンでの解像感はもうひとつの印象。ピクセル等倍で見ると、ベース感度のISO80でも塗り絵っぽい描写が目に付くし、ISO200でも木肌のディテールなどはつぶれがちとなる。2Lサイズ程度までのプリントや、縮小してブログなどに使うのであれば、ISO400までは実用できそうに思う。

以下のサムネイルは青枠部分の等倍切り出しです
ISO80
ISO100
ISO200
ISO400
ISO800
ISO1600
ISO3200

DRO/HDR

レンズ交換式カメラと同じく、暗部補正などを行なうDRO(Dレンジオプティマイザー)と、連写合成によるオートHDRを搭載する。DROは補正のレベルをAUTO、またはLv 1〜Lv 5の範囲で、オートHDRは露出差をAUTO、または1.0EV〜6.0EVの範囲で設定できる。この作例のケースでは、DROの効果はほとんどあらわれなかった。

通常撮影
DRO:AUTO
オートHDR:AUTO

クリエイティブスタイル/ピクチャーエフェクト

画像の色調などを選ぶクリエイティブスタイルは7種類、アート系のフィルター効果が楽しめるピクチャーエフェクトはパラメーター違いも含めて27種類を搭載する。

スタンダード
ビビッド
ポートレート
風景
夕景
白黒
セピア
トイカメラ:ノーマル
トイカメラ:クール
トイカメラ:ウォーム
トイカメラ:グリーン
トイカメラ:マゼンタ
ポップカラー
ポスタリゼーション:カラー
ポスタリゼーション:白黒
レトロフォト
ソフトハイキー
パートカラー:レッド
パートカラー:グリーン
パートカラー:ブルー
パートカラー:イエロー
ハイコントラストモノクロ
ソフトフォーカス:弱
ソフトフォーカス:中
ソフトフォーカス:強
絵画調HDR:弱
絵画調HDR:中
絵画調HDR:強
リッチトーンモノクロ
ミニチュア:オート
水彩画調
イラスト調:弱
イラスト調:中
イラスト調:強

動画

動画の記録方式は、XAVC S HD、AVCHD、MP4の3種類が選択可能。いずれも1,920×1,080ピクセルで60pとなる。ただし、XAVC S HDはClass 10以上のSDXCメモリーカードが必須となる。

その他の作例

50%縮小で見る分にはISO400でもあまり不満を感じない画質。色のノリやコントラストがいいので、気軽に望遠撮影を楽しむにはいい選択肢だと思う。ISO400 / F6.3 / 1/125秒 / 62.5mm(366mm相当)
720mm相当の望遠端での撮影。高倍率ズーム機ではありがちだが、色の黒い動物だとAFが迷うことがちょくちょくあった。ISO400 / F6.4 / 1/125秒 / 123mm(720mm相当)
開放F値が暗めなこともあって、曇っているとISO400でもあまり速いシャッターが切れないが、手ブレ補正の利きがいいので失敗は少なめ。ISO400 / F6.3 / 1/250秒 / 102.4mm(600mm相当)
強い逆光だったが、シャドウがしっかり粘ってくれているのが好印象だった。ISO80 / F4 / 1/2000秒 / 4mm(24mm相当)
こういう極端なシーンではマイナス2EV補正とかもあるが、だいたいは±0.7EVぐらいの補正で良好な露出となる。ISO80 / F4 / 1/500秒 / 7mm(41mm相当)
広角端の四隅で少し像が流れるとはいえ、30倍ズームの広角端であることを考えれば文句はない。ISO80 / F3.5 / 1/1250秒 / 4mm(24mm相当)
望遠端の最短撮影距離付近。撮像センサーが小さいのと開放F値が明るくないので、背景はあまりボケてくれない。ISO80 / F6.4 / 1/320秒 / 123mm(720mm相当)
プログラムAEだとほぼ絞り開放となるため、こういうシーンでは周辺光量の低下がやや目立つ。ISO80 / F6.3 / 1/500秒 / 37.3mm(219mm相当)

北村智史

北村智史(きたむら さとし)1962年、滋賀県生まれ。国立某大学中退後、上京。某カメラ量販店に勤めるもバブル崩壊でリストラ。道端で途方に暮れているところを某カメラ誌の編集長に拾われ、編集業と並行してメカ記事等の執筆に携わる。1997年からはライター専業。2011年、東京の夏の暑さに負けて涼しい地方に移住。地味に再開したブログはこちら