新製品レビュー

OLYMPUS STYLUS SH-1

普段使いに最適。クラシックな佇まいの24倍ズーム機

 オリンパスが発売した「STYLUS SH-1」(以下SH-1)は、24倍の高倍率ズームレンズを搭載したコンパクトデジタルカメラだ。携帯電話やスマートフォンのカメラ機能が日常の写真撮影を代替しつつあるいま、新しく登場したコンパクトデジタルカメラが、どのような形でカメラとしての価値を訴求していくのか気になるところである。

 カラーバリエーションはシルバー、ホワイト、ブラックの3色。シルバーは先行して4月18日の発売となったが、ホワイトとブラックはやや遅れて4月25日に発売された。本稿執筆時点の実勢価格は税込4万2,420円程度となっている。

  同社のラインナップには、同じく1/2.3型の撮像素子と高倍率ズームレンズを搭載した「STYLUS SH-60」(2013年10月発売、以下SH-60)が存在しているが、本機はその兄弟機、あるいは上位機といった位置づけになるのだろう。その辺りも踏まえて、SH-1を詳しく見ていきたい。

PENスタイルのコンパクトデジタルカメラ

 スモールセンサーに高倍率ズームレンズを搭載したSH-1、一番の見どころはそのボディデザインにある。前面に貼られた質感のよいシンセティックレザー(合成皮革)と上・底面の金属外観が織り成すコントラストは、まさにPENシリーズの最上位機種である「PEN E-P5」(以下E-P5)のエッセンスを受け継いでいる。

 同社ではこのデザインを「PENスタイルのプレミアムデザイン」としており、事実、細部まで丹念に仕上げられたPENシリーズの上質感からくる独特の世界観を、コンパクトデジタルカメラにおいても共有できるようにしたものだ。

 ただ、先行する兄弟機ともいえるSH-60にしても、PENシリーズに通じる形状や質感は十分に受け継いでおり、コンパクトデジタルカメラとして十分以上に上質といえる個性を備えているのも事実である。SH-1はSH-60よりも、さらにPEN風味を加速させて“身に着けて嬉しいプレミアム感”をもたせた機種といえるだろう。

SH-1(右)はSH-60(左)の兄弟機、あるいは上位機といった位置づけだ。どちらも丁寧な仕上げの上質感をもつが、SH-1はPEN E-P5に通じるデザインであるところが特徴。
SH-1とSH-60では、細部の仕上げや、ボタンの配列、モードダイヤルの機能など、比べると随所に変更点を見ることができる。
シンセティックレザー(合成皮革)で上下に分けられたツートンカラーが、PENスタイルをもつSH-1のデザイン上の特徴。グリップの形状や質感もよく、望遠撮影時でも安定してカメラを構えることができる。
シャッターボタンまわり。モードダイヤルやズームレバー、電源ボタンなどが並ぶ。
ポップアップ式の内蔵フラッシュを搭載する。撮影可能範囲はレンズのワイド端で0.3m〜8.3m(ISO3200時)、テレ端で0.4m〜3.6m(ISO3200時)となっている。
内蔵フラッシュはモードダイヤルの後ろにあるフラッシュスイッチを押して、手動でポップアップさせる。
背面のボタン配列。SH-60からボタンが1つ増え、よりPENシリーズに近いものとなって操作性は向上した。「MENU」ボタンは内蔵Wi-Fiのスタートボタンを兼ねている。

 モードダイヤルのエッジの仕上げや、ボタン類の配置、操作感触などはコンパクトデジタルカメラの域を超えて、間違いなくPENの上質感に達している。

 ボディサイズは108.8mm(幅)×63.2mm(高さ)×42.4mm(奥行き)、重さはバッテリーとメモリーカードを含めて271gとなっている。SH-60が112.1mm(幅)×63.5mm(高さ)×42.4mm(奥行き)、269gであり、手にもって使う分にはほとんど違いを感じることはない。

インターフェース部。上が専用マルチコネクタ(USB2.0)、下がHDMIマイクロコネクタ(タイプD)。
バッテリー及び記録メディア室。SDXC/SDHC/SDカードの他、Eye-Fiカードにも対応する。バッテリーはLI-92Bが1個付属する。
付属のUSB充電ケーブルとUSB-ACアダプタを接続して充電する。
SH-1はタッチパネルを搭載し、タッチAFやタッチシャッターを操作することができる。指で操作することが難しい場合は付属のタッチペンを利用する。

光学式5軸手ブレ補正の24倍ズームレンズ

 搭載する撮像素子は、有効1,600万画素の裏面照射型CMOSセンサー。1/2.3型のセンサーサイズは、携帯性重視のコンパクトデジタルカメラにおいて現状一般的なスペックだといえる。

 レンズは35mm判換算で25-600mm相当となる24倍の高倍率ズーム。絞り値はF3.0-6.9と高倍率ズームとしては比較的一般的なスペックで、同社製コンパクトデジタルカメラの上位クラスにあたる「XZシリーズ」や「STYLUS 1」のように、高い描写性能を誇る「i.ZUIKO DIGITAL」のブランドは冠してはいない。

搭載レンズは35mm判換算25-600mm相当の高倍率ズーム。コンパクトデジタルカメラの静止画撮影では世界初という光学式5軸手ブレ補正機構を搭載し、超望遠撮影やマクロ撮影時にも強力に作用する。

 しかし、高倍率ズームとして必要十分な光学性能と、進化した画像処理エンジンの連携によって、携帯電話やスマートフォンよりもランクの高い画質を提供してくれるのである。

SH-1とSH-60の描写比較サンプル

同一条件下で、SH-1とSH-60をワイド端とテレ端で撮り比べてみた。光学系は同じレンズを採用していると思われるが、SH-1は最新の画像処理エンジンとチューニングによって解像感やコントラストなどの画質が向上している。ただし、SH-60も1/2.3型センサー搭載機として十分に高画質であり、実用上、その差は極端に大きなものではない。

広角端

SH-1
SH-60

望遠端

SH-1
SH-60

望遠端(超解像ズーム)

超解像ズーム機能を使ってSH-1とSH-60を撮り比べてみた。超解像ズームは画質を損なわずに画像を拡大できるデジタル処理であるが、この機能でもSH-1の方がわずかながら解像感が高いことが見てとれる。

SH-1
SH-60

 SH-1の大きな特徴のひとつが、世界初という光学式5軸手ブレ補正の搭載である。5軸手ブレ補正とは、カメラ中心に対して前傾・後傾および左右に起こる角度ブレ(ピッチ・ヨー)と、レンズの光軸に対して右回り・左回りで起こる回転ブレに加え、マクロ撮影時に起こりやすい上下左右方向への並進ブレを補正してくれる機構である。

 5軸手ブレ補正は、同社製ミラーレスカメラの最上位機種である「OM-D E-M1」やE-P5にも搭載されている非常に強力なものだが、25mm相当の超広角から600mm相当の超望遠までを一台でこなしつつ、小さなボディで手持ち撮影をする機会の多いコンパクトデジタルカメラでは、特に有効で必要性の高い機能といえるだろう。

レンズ収納時、および電源オンでレンズを最小(ワイド端)と最大(テレ端)に伸縮した状態。電源オフ時にはレンズバリアで保護される。

 同じズーム域でほぼ同じ大きさ・重さのSH-60も5軸手ブレ補正を搭載しており、コンパクトデジタルカメラとして大変優秀な補正能力を有しているが、こちらは静止画撮影時に角度ブレと回転ブレの3軸に対する光学式補正が行われ、動画撮影時に並進ブレの2軸に対する電子式補正が加わるといった仕様だ。

 SH-1は5軸全ての手ブレに対してセンサーシフト式の補正を行っており、これは静止画撮影時でも動画撮影時でも有効だ。なお、動画撮影時は光学式5軸手ブレ補正に加え、さらに電子式にも5軸手ブレ補正を行う。そうしたSH-1の手ブレ補正能力を、オリンパスでは「コンパクトデジタルカメラ最強」と謳っている。

「TruePic VII」による高速駆動と高画質

 1/2.3型センサーを搭載していることもあって、本機の近接撮影能力は高く、通常時でもワイド端(25mm相当)で10cm、テレ端(600mm相当)で40cmの接写ができるため、グッと近づいて被写体を大きく写すことが可能だ。さらにSCENEモードの「スーパーマクロ」にすると、ズーム位置は固定になるが、レンズ先端から3cmの超近接で撮影することもできる。

「スーパーマクロ」機能はモードダイヤルの「SCENE」から呼び出す

 スーパーマクロもさることながら、テレ端600mm相当での近接撮影もかなり被写体を大きく写すことができ、高倍率+マクロ能力の相乗効果で、日常での撮影守備範囲は素晴らしく広い。前述の手ブレ補正機能の進歩も、ブレが発生しやすい近接撮影時には特にありがたいことである。

マクロ作例

「スーパーマクロ」ではレンズ先端から3cmの接写撮影が可能となる。ただしズーム位置は固定(換算66mm相当)。被写体がカメラの影にならないように気をつけよう。
通常のモードでもワイド端で10cm、テレ端で40cmの接写が可能。テレ端600mm相当ならレンズ先端から40cmの距離でも、マクロ撮影並みに大きく写せる。

 ズーミングやピントが合うまでの時間はもちろん、シーン認識や画像の合成処理も、とてもスムーズでキビキビとしている。24倍という広いズーム倍率をもったコンパクトデジタルカメラとして十分な高速駆動だといえるだろう。これは画像処理エンジン「TruePic VII」の能力によるところが大きい。超解像ズームや高感度撮影時のノイズ処理も好結果であり、スモールセンサーながらも一般的な撮影では全く問題のない、見栄えのする高画質を期待して大丈夫だ。

お馴染み「アートフィルター」が搭載

 モードダイヤルには新たに「アートフィルター」が新設された。その名の通り画像に特殊な効果を加えて撮影できるフィルター機能で、いまやミラーレスのPENとOM-Dに限らず、XZシリーズなどの上位コンパクトデジタルカメラにも積極的に搭載されている人気のモードである。SH-1は、機能的にもPENとの共通性をもたせたと言えるだろう。

モードダイヤルに「アートフィルター」が新設された。JPEG撮影のみとなるが、PENシリーズと同様、オリンパス独自のアート効果を画像に適用できる。

 SH-1には「ポップアート」や「ラフモノクローム」、「ドラマチックトーン」といった、おなじみのアートフィルターが全7種類用意されている。ただし、PENシリーズなどとは異なり、RAWで撮影しておいて、現像ソフトで後からフィルター効果を適用することはできない。保存形式はJPEGのみで、撮影時にフィルター効果を適用する必要があるためこれは気をつけたい。

アートフィルター作例

デイドリーム
ジオラマ
ドラマチック
ファンタジック
ラフモノクローム
ポップアート
トイフォト

 また、やはりPENシリーズなどと同等の機能として、色味や色調などの仕上がりを設定できる「ピクチャーモード」も新たに搭載された。SH-60でモードダイヤルに搭載されていた「マジックフィルター」はこちらに移動して、「ビビッド」や「ナチュラル」、「i-Finish」などとともに選択するようになった。

PENシリーズやOM-Dシリーズなど、レンズ交換式デジタルカメラでおなじみの「ピクチャーモード」も新たに搭載された。SH-60で「マジックフィルター」に分類されていた「フィッシュアイ」「クリスタル」「ミラー」「ランダムタイル」などの効果はここで選択するようになった。

マジックフィルター作例

フィッシュアイ
クリスタル
ミラー
ランダムタイル

楽しめる内蔵Wi-Fi

 SH-1にはスマートフォンと連携できるWi-Fi機能が内蔵されており、「OLYMPUS Image Share」アプリと連携することで、撮影画像をスマートフォンに転送して、更なる編集やTwitterやFacebookといったSNSへのアップロードを簡単に行える。

 スマートフォンのカメラでは難しい超望遠やマクロといったダイナミックな写真を即シェアできるのは、本機のような多機能なコンパクトデジタルでこその楽しさだろう。

内蔵のWi-Fi機能は「撮影メニュー1」の「Wi-Fiスタート」で起動する。カメラ背面のWi-Fiボタンを長押ししても同様に起動可能だ。

 もちろん、Wi-Fiを内蔵した他のオリンパス製カメラと同様、スマートフォンをリモコン代わりにして、ライブビューを見ながらシャッターを切ったりカメラ設定を操作することも可能だ。

カメラとスマートフォンの接続は簡単。スマートフォンにインストールしたアプリ「OLYMPUS Image Share」を使って、液晶モニターに表示されるQRコードを読みとるだけでよい。この動作は最初の接続時だけ行う必要がある。
スマートフォンからリモートでカメラをコントロールできる。ズームや、撮影モード、ホワイトバランスなどさまざまな設定を操作可能。ライブビューをみながらシャッターを切ることができる。
カメラ内の画像をスマートフォンで閲覧、選択した画像を素早く転送できる。「シェア予約」機能を使えば、ワンタッチで選択した画像だけをすばやくスマホに取り込める。
シェアした画像を好みで加工して、TwitterやFacebookなどのSNSにアップロードするといった楽しみ方もできる。

 SH-1は、Wi-Fi機能、近接撮影に優れた高倍率ズーム、アートフィルターなど、携帯電話やスマートフォンのカメラ機能では届かない最新のカメラ機能を得ながら、クラシカルでお洒落なデザインに仕上げ、手にしていても嬉しい。デジタル一眼レフやミラーレスカメラに負けない、普段使いの“カメラ”として最高に楽しめる1台だと思わせてくれた。

感度サンプル

以下のサムネイルは青枠部分の等倍切り出しです
ISO125
ISO200
ISO400
ISO800
ISO1600
ISO3200
ISO6400

作例

ISO125 / F3 / 1/160秒 / 25mm相当
ISO250 / F6.7 / 1/250秒 / 332mm相当
ISO125 / F14.9 / 1/320秒 / 128mm相当
ISO125 / F4.4 / 1/640秒 / 66mm相当
ISO800 / F6 / 1/100秒 / 225mm相当
ISO500 / F3 / 1/30秒 / 25mm相当
ISO320 / F5 / 1/100秒 / 106mm相当
ISO800 / F6.5 / 1/250秒 / 302mm相当
ISO125 / F3.3 / 1/40秒 / 30mm相当
ISO125 / F4 / 1/320秒 / 49mm相当
ISO125 / F3.7 / 1/80秒 / 40mm相当
ISO125 / F5.7 / 1/40秒 / 169mm相当
ISO125 / F8.7 / 1/320秒 / 25mm相当

【2014年5月7日】記事初出時、スーパーマクロは「ワイド端でのみ利用可能」としていましたが、Exif情報から焦点距離11.9mm(換算66mm相当)での固定と判明したため、該当部分を修正しました。

曽根原昇

(そねはら のぼる)信州大学大学院修了後に映像制作会社を経てフォトグラファーとして独立。2010年に関東に活動の場を移し雑誌・情報誌などの撮影を中心にカメラ誌等で執筆もしている。写真展に「エイレホンメ 白夜に過ぐ」(リコーイメージングスクエア新宿)など。