新製品レビュー

富士フイルムFinePix S1

50倍ズームにして防塵防滴。1,200mm相当の世界を手軽に体験

 一眼レフ風のボディに、35mm判換算24-1,200mm相当の光学50倍という超高倍率ズームを搭載。このクラスでは初となる防塵・防滴構造を採用しているほか、5軸手ブレ補正や92万ドットのEVF、フルHD・60p動画、アート系エフェクト機能のアドバンストフィルターなどを備えている。

 富士フイルムの直販サイト「フジフイルムモール」での販売価格は、税込4万9,352円。別売でバヨネット式の花形フード「LH-S1」が用意されている。こちらは税込3,066円だ。

手ブレ補正が効果的。マクロも楽しめる

 いわゆる「ネオ一眼」にカテゴライズされるモデルで、ボディサイズはエントリークラスの一眼レフに近い。重さは680gと、少々ずっしりめの数字。見た目・手に持った印象ともにコンパクトカメラとは思えない。

 撮像素子は、1/2.3型の有効1,640万画素裏面照射型CMOSセンサー。ISO感度の設定範囲は、ISO100からISO12800までだが、フル画素での最高感度はISO3200。ISO6400は記録画素数がMサイズ(3,264×2,448ピクセル)以下、ISO12800はSサイズ(2,304×1,728ピクセル)以下に制限される。

 レンズは、4.3-215mmの光学50倍ズームで、35mm判フルサイズに換算すると24-1,200mmに相当する。開放F値はF2.8-5.6。おそらくリアルタイムでのデジタル補正を行なっているのだろう、ライブビュー映像を見るかぎり、歪曲収差は非常によく補正されている。AFは、広角側では比較的スピードも速く、快適にピントが合うが、ズーム倍率が上がるにつれてピント合わせで迷う動作が出はじめ、40倍を超えるとコントラストが低めの被写体でピント合わせに失敗するケースが多くなる。

搭載レンズは24-1,200mm相当という常識を超えた超高倍率ズーム。開放F値はF2.8-5.6。

 手ブレ補正は、ヨーとピッチを受け持つ光学(レンズシフト)式と、上下左右シフトとロールを受け持つ電子式を併用するタイプで、セットアップメニューの「ブレ防止モードと「電子式手ブレ補正」で両者を個別にオンオフできるようになっている。CIPA基準の補正効果は約3段。ライブビュー映像の安定感はかなりよく、1,200mm相当の望遠端でも画面がゆらゆらしないのは好印象だ。

 最短撮影距離は広角端で40cm、望遠端で150cm。マクロモードでは広角端5cm、望遠端130cmとなる(いずれもレンズ先端からの距離)。おおざっぱにチェックしてみたところ、広角端、望遠端ともに8×6cm程度の大きさのものを画面いっぱいに写せた。また、レンズ前1cmまで寄れるスーパーマクロモードも備えており、4×3cm程度の大きさのものを画面いっぱいに写すことができる。マクロカメラとしても楽しめるスペックだ。

広角端では、電源オフの状態よりも少しだけ鏡胴が伸びる。
こちらは望遠端。電源オフの状態から6cmほど伸びる。

 EVFは0.2型のカラー液晶パネルを採用したもので、解像度は約92万ドット。数字的にはやや物足りないものの、液晶のドットが気になるようなことはないし、ピントの合否もわかりやすい。スペック表にはファインダー倍率の記載はないが、手もとのソニーα6000(フルサイズ換算で0.7倍相当)と比べると2/3ぐらいの大きさであるように感じた。タイムラグは若干あるが、コンパクト機としては悪くない部類だと思う。

 EVFで気になったのは、素早くカメラを振ったときなどにカラーブレイクのような色のちらつきを感じることがあったのと、コントラストが低めに感じられること、暗部のトーンがややつぶれがちな点。ただし、そういうクセがあることを把握してしまえばあまり大きな問題ではないと思う。

 液晶モニターは、3型で92万ドット。横に開いて前後に回転するバリアングル式。残念ながら、アイセンサーは備えておらず、背面右手側にあるEVF/LCDボタン押しでの手動切り替えとなる。防塵・防滴処理の関係か、モニターユニットの厚みは少々目立つ。反面、その分だけ畳んだ状態から起こすときには指がかかりやすいので使い勝手はいい。

内蔵EVFは92万ドット相当。モニターとの自動切り替えはなく、接眼部の右側にある「EVF/LCD」ボタンで切り替える。
液晶モニターはバリアングル式で、縦位置でもロー/ハイアングルに対応できる。
ファインダー内のようす。肉眼で見る分にはもっとクリアでシャープ。液晶のドットが目立つようなことはないし、ピントもちゃんと見える。

 電源は、容量1,700mAhのリチウムイオン充電池。CIPA基準の撮影可能枚数は約350枚。実写では、ストロボ発光なしで500カットほど撮影したところで、電池残量マークが1目盛り減った表示となった。筆者の感覚ではかなり持ちがよさそうに思えた。

底面にSDカードスロットと電池室がある。カバーの内側には、防塵・防滴のためのパッキンがある。

 記録メディアはSDXC/SDHC/SDメモリーカードのほか、約37MBの内蔵メモリーを持つ。RAW(RAF形式)での撮影も可能で、SILKYPIXの専用バージョン「RAW File Converter powered by SILKYPIX」が付属している。実写でのJPEG画像(Lサイズ、ファイン画質)のファイルサイズは平均で約5.9MBだった。

「超解像ズーム」をオンにすると、画質劣化を抑えて2,400mm相当の超々望遠撮影が楽しめる。
手ブレ補正はレンズシフトとデジタルのハイブリッドで、それぞれを個別にオンオフできる。光学式はシャッターを切った瞬間だけ作動させることもできる。
光学式の補正は2軸で、デジタルの手ブレ補正が3軸。合計で5軸補正としている。補正効果はCIPA基準で3段。
ISO感度の設定範囲は、フル画素で使えるのがISO100からISO3200まで。
ISO6400とISO12800は、記録画素数が少なくなる。感度オートは、制御上限の違う4種類から選択する。
撮影メニューの「フォーカスモード」から「エリア選択」を選ぶと、測距点の位置を変えられる(7×7の49点から選択する)。操作の手数が多いのは気になるところだ。
三脚撮影時など、フレーミングを決めてからピント合わせを行ないたいときには、測距点の位置を変えられると便利がいい。
撮影メニューの「画質モード」の画面。コンパクト機ながらRAWに対応。もちろん、RAW+JPEG同時記録も可能だ。
モードダイヤルには、上級者向けの「P」「S」「A」「M」の各モードも用意されている。今回はほとんどを「P」モードで撮影した。
右手親指の位置にコマンド(電子)ダイヤルを装備。絞りやシャッター速度、露出補正などの設定に利用する。
背面の操作部。動画撮影、再生、Wi-Fiボタンは、誤操作を避けるためだろう、ボタンの出っ張りがない。
セレクターボタン(十字キー)の上ボタンは、カスタマイズが可能なファンクションボタンになっていて、ISO感度などの機能を割り当てることができる。
撮影時の画面。文字が大きめで老眼世代にはありがたい。

超望遠のフレーミングに配慮した「ズームアウトボタン」

 通常は、シャッターボタン外周のズームレバーでズーム操作を行なうが、レンズ部側面にある「サイドレバー」も利用できる。おもしろいのは、サイドレバーでのズームスピードを2段階に変えられるところ。セットアップメニューの「サイドレバー設定」で、「高速ズーム」と「低速ズーム」から選択でき、前者はズームレバーと同じスピード、後者は作動音が気になりにくいスピードになる。動画撮影中は、ズームレバーでのズームスピードは「低速ズーム」と同じぐらいになり、サイドレバーの「低速ズーム」はそれよりも少し遅めになる。つまり、速くズームしたいときはズームレバー、ゆっくりズームしたいときはサイドレバー、というふうに、用途などに合わせて使い分けられるのがおもしろい。

シャッターボタン外周のズームレバー。そばに露出補正ボタンと連写ボタンがある。
セットアップメニューの「サイドレバー設定」の画面。ここでズームのスピードを選択できる。通常は「低速ズーム」を選ぶ。

 サイドレバーの上に「ズームアウトボタン」があって、これを押すと半分ほどのズーム倍率になる(9.0倍なら4.5倍になる)。ズームアウトするのはボタンを押しているあいだだけで、指を離すとすぐにもとの倍率に戻る。超望遠域では、見つけた被写体を画面内におさめるのも大変なので、少しズームアウトして画面に入れて、それからズームインしなおすという操作をやることがあるが、その操作をボタンのワンプッシュですませられるわけだ。野鳥などの撮影では重宝するのではないかと思う。

鏡胴の側面にサイドレバーとズームアウトボタンがある。

 アート系エフェクト機能の「アドバンストフィルター」は10種類。モードダイヤルを「Adv.(アドバンストモード)」にセットして、MENU/OKボタン押しで、モード(「アドバンストフィルター」「連写重ね撮り」「HDR」「高感度2枚撮り」「ズームアップ3枚撮り」がある)からアドバンストフィルターを選択。MENU/OKを押すとフィルターを選択できる画面に切り替わる。文字で書くとちょっと辛気くさいが、操作自体はややこしくはない。

 フィルターの種類は、トイカメラ、ミニチュア、ポップカラー、クロススクリーン、ハイキー、ローキー、ダイナミックトーン、ソフトフォーカス、魚眼、パートカラー。ミニチュアとクロススクリーン以外は動画でも利用できる。また、この2種類以外は画面で効果を確認しながら撮影できる。富士フイルム独自の項目は特にないが、撮影を楽しめる機能が増えたことは歓迎できる。

 そのほか、アドバンストモードには、1回のシャッターで倍率の異なる3枚(デジタルズーム併用)が撮れる「ズームアップ3枚撮り」、連写合成でノイズの少ない高感度撮影を可能にする「連写重ね撮り」、ストロボなしとありとを撮りわけられる「高感度2枚撮り」などが用意されている。

モードダイヤルを「Adv.」にセットしたときの画面。ほかのアドバンストモードに切り替えるときはMENU/OKボタンを押す。
アドバンストモードで撮影メニューの「Adv.モード」を選択したときの画面。ここでモードの切り替えを行なう。
アート系エフェクト機能の「アドバンストフィルター」は10種類を搭載する。
こちらは「ズームアップ3枚撮り」モード時の撮影画面。1回のシャッターで青枠の範囲の画像も記録できる。
MF時のアシスト表示の設定画面。「スタンダード」は中央部を拡大して表示するモード、拡大+エッジ強調表示の「フォーカスピーキング」も選べる。
動画はフルHD・60p(メニューの表記は60fpsだが)。速い動きも滑らかに表示できる。最大約15分まで連続で録画できる。
スマートフォンやタブレット端末などと連携できるWi-Fi機能も搭載している。
こちらは再生時の画面。ヒストグラムやさまざまな撮影情報が見られる再生情報表示も選べる。
インデックス表示は、4コマ、9コマ、100コマが選べる。

超望遠の魅力を手軽に味わえる1台

 本機のいちばんの魅力は、標準ズーム付きのエントリー一眼レフ並の大きさと重さで、1,200mm相当の超望遠撮影が楽しめるところ。一眼レフ用レンズなら、800mm(APS-Cサイズ機に装着すると1,200mm相当になる)は200万円前後するうえに、カメラ込みで5kg以上の重さになる。それが本機なら、5万円弱で手に入れられる。しかも、中級一眼レフのボディ単体と同じ程度の重さで、アウトドアに嬉しい防塵防滴仕様としながら、である。

 もちろん、動きの速い被写体を撮るにはタイムラグのない光学ファインダーのほうが有利だし、本機のAFが、特に望遠端付近で迷いやすい傾向があることも差し引いて考えなくてはならない。画質にしても、1/2.3型センサーに多くを期待することはできないこともある。が、10コマ/秒連写や、動きが滑らかなフルHD・60p動画など、動体撮影向けのスペックも備えていることもあり、動物や野鳥などの撮影にチャレンジしてみたい方にとって、選択肢に入れて欲しい1台だ。

実写サンプル

  • ・作例のサムネイルをクリックすると、リサイズなし・補正なしの撮影画像をダウンロード後、800×600ピクセル前後の縮小画像を表示します。その後、クリックした箇所をピクセル等倍で表示します。
  • ・縦位置で撮影した写真のみ、無劣化での回転処理を施しています。

・画角変化
 画面を見ながらズームしたときの画角の変化は驚異的としかいいようがない。動物園での撮影にはばっちりだ。なお、倍率の数字は画面上に表示されたもの。

1.0倍(24mm相当)
2.0倍(49mm相当)
4.0倍(98mm相当)
8.3倍(201mm相当)
16.2倍(391mm相当)
32.3倍(721mm相当)
50倍(1,200mm相当)

・マクロ
 マクロモードでは広角端でレンズ前5cm、望遠端で130cmまで寄れる。スーパーマクロモードでは広角端固定でレンズ前1cmのクローズアップが楽しめる。

マクロモード:広角端
マクロモード:望遠端
スーパーマクロモード

・感度
 1/2.3型センサーのコンパクト機とあって、ベース感度のISO100でもディテール再現の弱さが目に付いてしまうが、ISO400までならあまり画質劣化を気にせず使えそうだし、ISO800でも大きな崩れはない。ISO1600になると、空の部分の色ムラが気になりはじめ、ISO3200ではノイズ処理の影響で細かい部分の再現が悪くなる。記録画素数が少なくなるISO6400以上はオマケと考えたほうがいいだろう。

以下のサムネイルは、青枠付近の240×180ピクセルを等倍で切り出しています。
ISO100
ISO200
ISO400
ISO800
ISO1600
ISO3200
ISO6400(画像サイズ:M)
ISO12800(画像サイズ:S)

・アドバンストフィルター
 アドバンストフィルターは10種類(パートカラーをばらばらで数えると15種類)。富士フイルム独自の目新しいものはないが、あつかいが難しそうな項目はない。なお、パートカラーのパープルは、被写体に対応する色がなかったため、普通のモノクロになってしまっている。

トイカメラ
ミニチュア
ポップカラー
ハイキー
ローキー
ダイナミックトーン
魚眼
ソフトフォーカス
クロススクリーン
パートカラー(レッド)
パートカラー(オレンジ)
パートカラー(イエロー)
パートカラー(グリーン)
パートカラー(ブルー)
パートカラー(パープル)

・ズームアップ3枚撮り
 アドバンストモードに含まれる機能で、1回のシャッターで、ズーム倍率の異なる3コマを記録できる。といっても、画像サイズが変わっているのを見れば分かるとおりのトリミングズームである(2コマ目はわずかに縮小されていて、その分、若干だが画質が落ちている)。

1段目
2段目
3段目

・作例

遠くからでは気づかなかったが、ズームアップしてみたら、お腹の袋から子カンガルーが顔を出していた。ISO100 / F5.6 / 1/140秒
屋内の動物を1,000mm相当で。ISO800、手ブレ補正ありとはいえ、一眼レフでは撮ろうとさえ思わないシーンだ。ISO800 / F7 / 1/70秒
こちらは900mm相当ぐらい。寄りたい放題である。動物園好きにはたまらないスペックなのではないかと思う。ISO200 / F7 / 1/640秒
ノートリミングでここまで寄れるというのはほんとにすごい。ISO400 / F5.6 / 1/170秒
アップで撮ると、意外に目つきが怖いのがフラミンゴである。1,200mm相当の画角を手持ちで1/42秒で撮れてしまうのがすごい。ISO400 / F5.6 / 1/42秒
これで550mm相当ぐらい。これでも十分に超望遠である。ISO400 / F9 / 1/850秒
こちらは望遠端の1,200mm相当。画質はやっぱりコンパクト機のものだが、苦もなく持ち歩ける超望遠というのは楽しい。ISO400 / F7 / 1/640秒
屋内展示のカメレオンの背中。水滴がびっしりついていてきれいだった。ISO200 / F4.4 / 1/38秒
爬虫類や両生類は、じっとしているのがほとんどなのだが、この蛇はめずらしく活動的だった。ISO200 / F3 / 1/20秒
ピクセル等倍ではがさっとした描写だが、50%縮小で見ると立体感もあるし、羽毛の再現も悪くない。ISO100 / F5.6 / 1/160秒
夕日を浴びたビルの外壁を400mm相当で。ISO100 / F6.4 / 1/640秒
定番なので、つい。光学ズームのめいっぱい。ISO100 / F5.6 / 1/170秒
こちらは「超解像ズーム」をオンにして、2,400mm相当。画質は多少落ちるが、迫力は間違いなくアップする。ISO100 / F5.6 / 1/140秒

・動画
 フルHD解像度で60p。動き物を撮るにはいい。(サムネイルをクリックすると元ファイルをダウンロードします)。

北村智史

北村智史(きたむら さとし)1962年、滋賀県生まれ。国立某大学中退後、上京。某カメラ量販店に勤めるもバブル崩壊でリストラ。道端で途方に暮れているところを某カメラ誌の編集長に拾われ、編集業と並行してメカ記事等の執筆に携わる。1997年からはライター専業。2011年、東京の夏の暑さに負けて涼しい地方に移住。地味に再開したブログはこちら