【新製品レビュー】ペンタックスK-r

〜クラスを超えた性能のエントリーデジタル一眼レフ
Reported by 中村文夫

 ペンタックスK-rは、K-m、K-xに続く、普及タイプのデジタル一眼レフカメラだ。シリーズ共通のコンセプトは小型軽量&多機能。新製品のK-rは、ISO25600の超高感度撮影機能の搭載、カスタムイメージに「銀残し」と「リバーサルフィルム」の追加、クロスプロセス機能の充実など、上級機のKー5に迫る進化を遂げた。さらに全部で120通りのカラーバージョンを用意するなど、遊び心にあふれたカメラでもある。

 発売は10月。レギュラーカラーモデルの実勢価格は、レンズキットが7万4,800円、ダブルズームキットが9万4,700円。


AF周りが一新。合焦スピードが高速化

 外観は前モデルのK-xにそっくりだが、よく見るとK-rのペンタプリズムは角型になっている。明らかにK-5など上級機を意識したデザインである。さらに従来グリップ側だけに貼られていたラバーを反対側にも追加。特にカラーボディだとツートンカラーが強調され、よりクラシックカメラっぽく見える。

 K-rのフォーカシングスクリーンは、新開発のクリアブライトマット4。ミラープリズム式とは思えないほど視野は明るくクリア。ピントの山もつかみやすくボケ味も自然だ。ただ普及機という位置づけのため、視野率と倍率は低く抑えられている。

 AFセンサーシステムは「SAFOX IX」に一新。合焦スピードが速く、低輝度時でも迷わない。特にライブビュー時のAFスピードは格段に速く、これまで筆者が使ってきたK-7やK20Dなどに比べると、頭ひとつリードした印象である。光学ファインダーには、これまで上級機にしか採用されていなかったスーパーインポーズを追加、とても使いやすくなった。

 K-rの画像処理エンジンは645Dと同じPRIMEIIだ。処理能力の向上により諸機能がアップ。その筆頭に上げられるのが超高感度撮影だろう。常用範囲はISO200〜12800だが、拡張設定すればISO100〜25600が利用可能。高感度や長時間露光時のノイズも大幅に減り、低輝度時でも手持ち撮影が気軽に楽しめる。低輝度側がISO100になったことに加え、1/6,000秒の高速シャッターを搭載しているので、明るい条件下でも大口径レンズを開放で使うことができる。

 新CMOSセンサーは、高速読み出しが可能なタイプ。画像処理エンジンとの相乗効果で、最高約6コマ/秒(最大約25コマまで)の高速連続撮影を実現した。


カスタムイメージやカメラ内フィルターがさらに充実

 このほか、645Dで好評を博した「リバーサルフィルム」に加え、カスタムイメージに「銀残し」を追加。特に「銀残し」は彩度を下げると同時にコントラストを上げるペンタックス独自のもの。昔の総天然色映画を見るようなレトロな色合いが得られる。

 Kーxで初めて採用されたクロスプロセスも、いちだんと進化。従来は撮影結果が表示されるまで結果が分からない「シャッフル」のみだったが、あらかじめパラメーターが設定された「プリセット」、撮影済みの画像から好みのパラメーターが登録できる「お気に入り」を追加。任意の色調が選べるようになった

 露出を変えて撮影した複数の画像を合成しダイナミックレンジを拡大するHDRは最近のトレンドだ。すでにK-xで採用済みだが、三脚使用が前提のK-xに対し、K-rは自動位置調整機能により、手持ち撮影が可能。さらにK-rのHDRは「オート」、「標準」、「誇張(3段階)」の設定ができるほか、シーンモードで夜景HDを選べば、夜景撮影が手持ちでできる。

 RAW現像や多彩なデジタルフィルターなど、さまざまな画像処理がカメラ内でできることも、K-rの大きな特徴といえるだろう。特にRAW現像をパソコン上で行なうと、スペックによっては想像以上に処理時間がかかり、いらいらさせられることも多い。だがカメラ側で現像すれば短時間で処理が可能。特にカメラ内現像は、家に戻ってからハイビジョンテレビにカメラを接続し、大画面を見ながら作業すると快適だ。だがK-rのビデオ出力はアナログのみ。HDMI出力がないのが残念だ。

 また、デジタルフィルターに、「トゥインクル」、「デッサン」、「ポスタリゼーション」、「色抽出(2色)」の新たな効果を追加。フィルターは全部で18種類になった。さらにデジタルフィルターの重ねがけだけでなく、その内容を記録し、再現することもできる。またデジタルフィルターはHD動画撮影時も使用可能。PVのような凝った動画も手軽に制作できる。

23.6×15.8mmのいわゆるAPS-Cサイズ相当のCMOSセンサーを搭載。有効画素数は約1,240万モードダイヤル周り。グリーンボタンは健在
背面右手側操作部SDHC/SDメモリーカードに対応する
内蔵ストロボはガイドナンバー12(ISO100・m)側面にPC/AV端子を装備。その上は赤外線ポートになる

まとめ

 特定の色味を強調するCTEをはじめとする多彩なホワイトバランス、ハイライト補正とシャドー補正、3型約92.1万ドットの大型・高精細モニター。とにかくK-rは上級機顔負けの機能を備えた多才なカメラだ。さらにペンタックスの一眼レフカメラとして初めて赤外線通信機能を搭載。フォトプリンター、パソコン、テレビ、携帯電話、デジタルフォトフレームにデータを送信できる。今回は使用する機会がなかったが、同じ機種どうしで、対戦ゲームができる機能も備えている。

 このほか地味なスペックだが、K-rは単3型電池が利用可能だ。コストパフォーマンスに優れ、外出先でも容易に手に入る電池が使えることは特筆に値する。K-rは専用リチウムイオン電池が標準仕様のため、別売りの単三バッテリーパックが必要だが、ペンタックス普及機の伝統であるこの機能が新製品に引き継がれたことで、安堵したペンタックスファンも多いのではないか。

 カラーバリエーションをアピールする店頭プロモーションが目立つので、機能面での評価が後回しになりがちなだが、実用機としてのK-rの能力は非常に高い。初心者はもとより、上級者のサブ機の役割も立派に果たす、完成度の高い製品といえるだろう。

標準で付属するのは充電式リチウムイオンバッテリーD-LI109。電池寿命はストロボ発光なしで約560枚
オプションの単3バッテリーホルダーを用意すれば、単3電池4本で使用できる
同時発表のDA 35mm F2.4 ALは、鏡筒とマウントはプラスチック製で、リミテッドレンズを思わせるデザイン。コストパフォーマンスを重視した単焦点レンズだが、光学系のベースは、写りの良さで定評のあるFA 35mm F2 AL。普及タイプと思えないほど画質が高い
DA 35mm F2.4 ALは、レギュラーのブラックのほか、全部で12色のバリエーションがある。写真はホワイトのK-rボディに、オーダーカラーのDA 35mm F2.4 AL(イエロー)を組み合わせたもの

実写サンプル

  • 作例のサムネイルをクリックすると、リサイズなし・補正なしの撮影画像をダウンロード後、別ウィンドウで800×600ピクセル前後の縮小画像を表示します。その後、クリックした箇所をピクセル等倍で表示します。

・感度

 暗い場所でストロボなしで手持ち撮影ができるほか、室内で高速シャッターを切ったり、絞り込んで被写界深度を深くしたい場合など高感度の出番は意外と多い。さすがに最高感度のISO25600だとノイズが目立つが、このノイズを活かすと面白い作品が撮れる。またISO3200〜6400程度なら思ったほどノイズが出ず、十分実用になる(以下、高感度ノイズリダクションはすべてオート)。

ISO400
K-r / DA 40mm F2.8 Limited / 約6.0MB / 4,288×2,848 / 1/40秒 / F2.8 / 0.0EV / WB:オート / 40mm
ISO800
K-r / DA 40mm F2.8 Limited / 約5.5MB / 4,288×2,848 / 1/80秒 / F2.8 / 0.0EV / WB:オート / 40mm
ISO1600
K-r / DA 40mm F2.8 Limited / 約4.7MB / 4,288×2,848 / 1/100秒 / F2.8 / 0.0EV / WB:オート / 40mm
ISO3200
K-r / DA 40mm F2.8 Limited / 約5.8MB / 4,288×2,848 / 1/320秒 / F2.8 / 0.0EV / WB:オート / 40mm
ISO6400
K-r / DA 40mm F2.8 Limited / 約5.6MB / 4,288×2,848 / 1/640秒 / F2.8 / 0.0EV / WB:オート / 40mm
ISO12800
K-r / DA 40mm F2.8 Limited / 約5.0MB / 4,288×2,848 / 1/1,250秒 / F2.8 / 0.0EV / WB:オート / 40mm
ISO25600
K-r / DA 40mm F2.8 Limited / 約5.5MB / 4,288×2,848 / 1/2,500秒 / F2.8 / 0.0EV / WB:オート / 40mm
ISO25600
K-r / DA 18-55mm F3.5-5.6 AL / 約5.1MB / 4,288×2,848 / 1/50秒 / F4.5 / 0.0EV / WB:オート / 37.5mm
ISO25600
K-r / DA 18-55mm F3.5-5.6 AL / 約5.4MB / 2,848×4,288 / 1/40秒 / F4.5 / 0.0EV / WB:オート / 32.5mm
ISO25600
K-r / DA 18-55mm F3.5-5.6 AL / 約5.6MB / 4,288×2,848 / 1/320秒 / F5 / 0.0EV / WB:オート / 18mm
ISO6400
K-r / DA 18-55mm F3.5-5.6 AL / 約5.3MB / 2,848×4,288 / 1/80秒 / F29 / 0.0EV / WB:オート / 37.5mm

・画像仕上げ

「銀残し」と「リバーサルフィルム」が加わり、画像仕上げは全部で9種類になった。「銀残し」の撮影情報を、カメラ付属の専用ブラウザーで見ると、キーを下げると同時にコントラストを強調。さらに「調色(銀残し)]という項目が、「グリーン」になっている。

画像仕上げ:鮮やか
K-r / DA 35mm F2.4 AL / 約5.5MB / 2,848×4,288 / 1/80秒 / F8 / 0.0EV / ISO400 / WB:オート / 35mm
画像仕上げ:ナチュラル
K-r / DA 35mm F2.4 AL / 約4.7MB / 2,848×4,288 / 1/80秒 / F8 / 0.0EV / ISO400 / WB:オート / 35mm
画像仕上げ:人物
K-r / DA 35mm F2.4 AL / 約5.2MB / 2,848×4,288 / 1/80秒 / F8 / 0.0EV / ISO400 / WB:オート / 35mm
画像仕上げ:風景
K-r / DA 35mm F2.4 AL / 約5.6MB / 2,848×4,288 / 1/80秒 / F8 / 0.0EV / ISO400 / WB:オート / 35mm
画像仕上げ:雅
K-r / DA 35mm F2.4 AL / 約5.2MB / 2,848×4,288 / 1/80秒 / F8 / 0.0EV / ISO400 / WB:オート / 35mm
画像仕上げ:ほのか
K-r / DA 35mm F2.4 AL / 約4.7MB / 2,848×4,288 / 1/80秒 / F8 / 0.0EV / ISO400 / WB:オート / 35mm
画像仕上げ:銀残し
K-r / DA 35mm F2.4 AL / 約4.8MB / 2,848×4,288 / 1/80秒 / F8 / 0.0EV / ISO400 / WB:オート / 35mm
画像仕上げ:リバーサルフィルム
K-r / DA 35mm F2.4 AL / 約5.3MB / 2,848×4,288 / 1/80秒 / F8 / 0.0EV / ISO400 / WB:オート / 35mm
画像仕上げ:モノクロ
K-r / DA 35mm F2.4 AL / 約5.1MB / 2,848×4,288 / 1/80秒 / F8 / 0.0EV / ISO400 / WB:オート / 35mm

・クロスプロセス

 これまでのクロスプロセスは偶然の要素に支配されていたが、プリセットとお気に入りの追加で、好みの色が選べるようになった。

クロスプロセス:シャッフル
K-r / DA 18-55mm F3.5-5.6 AL / 約5.6MB / 2,848×4,288 / 1/40秒 / F5.6 / 0.0EV / ISO1600 / WB:オート / 50mm
クロスプロセス:プリセット1
K-r / DA 18-55mm F3.5-5.6 AL / 約5.5MB / 2,848×4,288 / 1/50秒 / F5.6 / 0.0EV / ISO1600 / WB:オート / 50mm
クロスプロセス:プリセット2
K-r / DA 18-55mm F3.5-5.6 AL / 約5.5MB / 2,848×4,288 / 1/40秒 / F5.6 / 0.0EV / ISO1600 / WB:オート / 50mm
クロスプロセス:プリセット3
K-r / DA 18-55mm F3.5-5.6 AL / 約5.3MB / 2,848×4,288 / 1/40秒 / F5.6 / 0.0EV / ISO1600 / WB:オート / 50mm

・デジタルフィルター

 4種類追加されたデジタルフィルターから、ポスタリゼーションを使用。

デジタルフィルター:オフK-r / DA 18-55mm F3.5-5.6 AL / 約5.6MB / 4,288×2,848 / 1/60秒 / F8 / 0.0EV / ISO200 / WB:オート / 55mmデジタルフィルター:ポスタリゼーション
K-r / DA 18-55mm F3.5-5.6 AL / 約4.8MB / 4,288×2,848 / 1/60秒 / F8 / 0.0EV / ISO200 / WB:オート / 55mm

作例

K-r / DA 18-55mm F3.5-5.6 AL / 約4.9MB / 2,848×4,288 / 1/160秒 / F11 / 0.0EV / ISO100 / WB:オート / 35mmK-r / DA 18-55mm F3.5-5.6 AL / 約5.4MB / 2,848×4,288 / 1/350秒 / F5.6 / 0.0EV / ISO400 / WB:オート / 55mm
K-r / DA 18-55mm F3.5-5.6 AL / 約4.9MB / 4,288×2,848 / 1/60秒 / F4 / 0.0EV / ISO160 / WB:オート / 28.1mmK-r / DA 18-55mm F3.5-5.6 AL / 約5.3MB / 2,848×4,288 / 1/100秒 / F5.6 / 0.0EV / ISO100 / WB:オート / 50mm(レンズ収差補正オン)
K-r / DA 18-55mm F3.5-5.6 AL / 約5.0MB / 4,288×2,848 / 1/15秒 / F7.1 / -0.7EV / ISO800 / WB:オート / 40mm / クロスプロセス:プリセット1
K-r / DA 35mm F2.4 AL / 約5.3MB / 4,288×2,848 / 1/125秒 / F3.5 / 0.0EV / ISO100 / WB:オート / 35mmK-r / DA 35mm F2.4 AL / 約4.9MB / 4,288×2,848 / 1/100秒 / F2.4 / 0.0EV / ISO100 / WB:オート / 35mm
K-r / DA 35mm F2.4 AL / 約5.1MB / 4,288×2,848 / 1/50秒 / F2.4 / 0.0EV / ISO400 / WB:オート / 35mmK-r / DA 35mm F2.4 AL / 約5.0MB / 2,848×4,288 / 1/50秒 / F2.4 / 0.0EV / ISO200 / WB:オート / 35mm

【2010年12月2日】レンズキットの実勢価格を「4万9,800円」としていた誤記を「7万4,800円」に修正しました。



中村文夫
(なかむら ふみお)1959年生まれ。学習院大学法学部卒業。カメラメーカー勤務を経て1996年にフォトグラファーとして独立。カメラ専門誌のハウツーやメカニズム記事の執筆を中心に、写真教室など、幅広い分野で活躍中。クラシックカメラに関する造詣も深く、所有するカメラは300台を超える。

2010/12/2 12:00