【新製品レビュー】富士フイルムFinePix F80EXR
FinePix F80EXR。ボディカラーは写真のシルバーのほか、ピンク、レッド、ブラックがある |
スーパーCCDハニカムEXRを搭載した10倍ズームのコンパクト機「FinePix F80EXR」(4月17日発売)を採り上げたい。2009年8月に発売した「FinePix F70EXR」の後継モデルだ。画素数向上をはじめ、「ペット検出」や「ピクチャーサーチ」といった機能を新搭載している。
外観は前モデルを踏襲したデザインを採用。モードダイヤルも備える。実勢価格は3万6,800円前後だ。
■「ダイナミックレンジ優先」が好結果に
金色の“EXRエンブレム”が誇らしげだ |
本機の特徴は、なんといっても独自の撮像素子「スーパーCCDハニカムEXR」だろう。これは2009年2月に発売した「FinePix F200EXR」で初めて採用した撮像素子で、独自のカラーフィルター配列により1つのセンサーで、高解像度、ワイドダイナミックレンジ、高感度・低ノイズの3つを実現したとする。富士フイルムでは、“人間の眼に近い究極のCCD”と謳っている。本機は、前モデルから200万画素アップした1/2型で有効1,200万画素のタイプを搭載している。
スーパーCCDハニカムEXRセンサーの真価を味わうためには「EXRモード」で撮影する必要がある。一応、EXRモードのおさらいをしておこう。EXRモードは、「高解像度優先(HR)」、「高感度低ノイズ優先(SN)」、「ダイナミックレンジ優先(DR)」と、左記の3つからシーンに応じて自動的にカメラが選択してくれる「EXRオート」から成る。
高感度低ノイズ優先は、画素混合を活用することで、高感度でのノイズを低減する。一般的なベイヤー配列のセンサーで画素混合を行なった場合、同色の画素同士に距離があるため、細かい部分では偽色が発生していた。スーパーCCDハニカムEXRでは、同色の画素を斜めに隣り合わせ手入るため、偽色が抑制できる仕組みだ。
一方ダイナミックレンジ優先では、1回のシャッターで高感度と低感度の2つの画像データをセンサーから抽出する技術を用いる。この2つのデータを合成することで、広いダイナミックレンジの画像を生成するものだ。
高解像度優先は、画素混合を行なわずにすべての画素を使用して撮影するモード。高感度低ノイズ優先とダイナミックレンジ優先は記録素数が600万画素相当になるが、高解像度優先は1,200万画素のフル画素で記録できる。
高解像度優先 | 高感度低ノイズ優先 |
ダイナミックレンジ優先 | ダイナミックレンジ優先では、最大800%までダイナミックレンジを拡大できる |
普段はEXRオートにしておけば使いやすい |
EXRの3つのモードは、任意に選ぶことができるため上級者は好みに応じて選んでも良い。このカメラには、通常のオートモードもあり、さほどカメラに詳しくないユーザーならEXRオートに設定して使うのがよいだろう。
なお本機には絞り優先AEモードやマニュアル露出モードも付いているが、設定できる絞り値は広角端でF3.3かF9、望遠端でF5.6かF16という2段階式に留まる。マニュアル露出時は8秒までの長秒露出が可能なのがうれしい。ただし、プログラムモードなどではシャッター速度の下限は1/4秒までだ。
なお各モードの画質については実写サンプルを参照して欲しい。ダイナミックレンジ優先モードにおける白トビの低減具合は想像以上の好結果だった。
高感度低ノイズ優先とダイナミックレンジ優先は画素数が半分になってしまうので損な気もするが、こうしたクラスのカメラで1,000万オーバーの画素数を活かす機会(大伸ばしプリント)はそう多くはないのではないだろうか。もちろんトリミング耐性などでは画素数が多いほどよいのは間違いない。ただ、Lサイズや2Lサイズ程度のプリントであれば600万画素相当でも十分だ。そう考えると、解像度を犠牲にしても画素補間を積極的に活用してノイズ低減やダイナミックレンジ改善を図ったスーパーCCDハニカムEXRのようなセンサーはデジタルカメラ進化の方向性の1つになっていくのかもしれない。
操作系は前モデルを継承。モードダイヤルも搭載 | HDMI端子も備える |
バッテリーおよびSDHC/SDメモリーカードスロット | 付属の充電器とバッテリー |
■目的の写真を探しやすい「ピクチャーサーチ」
さて、機能面で新しいのはペット検出とピクチャーサーチだ。ペット検出は、今春のコンパクトデジタルカメラから各社が採用開始した機能で、今後の大きなトレンドになりそうだ。
富士フイルムでは本機のほかに、「FinePix Z700EXR」も同様のペット検出機能を搭載している。実際の検出の様子は先般掲載した「春モデル3機種の『ペット検出機能』を試す」の中で動画で見ることができる。
ペット検出モードは、猫または犬の正面の顔をカメラが検出してペットの顔にピントが合った写真が撮影できる機能だ。なお、ペット検出モードでは猫または犬の顔を検出すると自動的にシャッターが切れる「ペットオートシャッター」が利用できる。
もう1つの新機能であるピクチャーサーチは、再生時にさまざまな条件で画像を検索できるもの。日付、顔、撮影シーン、画像タイプ(静止画、動画)で画像を絞り込むことが可能。探したい写真がある場合、例えば撮影日がわかっていればそこから絞り込めるので探しやすい。また、動画だけを見たい(見せたい)といった場合などに便利だろう。
さまざまな条件で検索できる「ピクチャーサーチ」を新搭載 | 日付で絞り込んだところ |
ピクチャーサーチでは、顔、撮影シーン、動画または静止画などで絞り込むことができる |
My FinePix Studio |
ところで、これまで富士フイルムのデジタルカメラに同梱していた画像ソフト「FinePix Viewer」がこの春モデルから「My FinePix Studio」というソフトにリニューアルした。
画像に「人物」、「イベント」、「場所」、「キーワード」、「評価」のタグを付与でき、検索性が高まっている。また、YouTubeやFacebookといったサイトに写真や動画をワンクリックでアップロードできるようになった。画像加工も可能で、モノクロ、セピア、ウォーター、油絵、ズーム、レンズ、スピンといったエフェクトも施せる。
4枚を連写して合成し、ノイズを低減する「連写重ね撮り」も引き続き搭載。被写体が動いていなければ、手持ちでも撮影可能 |
■まとめ
ボディの厚みは28.4mmで、スタイリッシュというにはやや厚みがあるものの、広角27mm相当からの10倍ズームを搭載していることを考えると十分コンパクトだ。望遠端は270mm相当とあって、10倍ズーム機ならではのダイナミックな写真が楽しめる。EXRモードもオートのみならず、任意に各モードを選べるのでカメラに詳しいユーザーの要求にも応えられると思う。一方、カメラ初心者であってもEXRオートにしておけばほとんど迷うことなく撮影できるはずだ。
35mm判換算で焦点距離27~270mm相当、F3.3~5.6の光学10倍ズームを搭載 | 10倍ズームという点を考慮すると、さほど厚みも気にならない |
液晶モニターは約23万ドットの3型。設定により表示フレームレートを上げることができる同社の伝統も継承している。見やすさは問題ないが、46万ドットクラスの液晶パネルを採用すると高フレームレートと併せてより見やすくなるのではないだろうか。
動画は1,280×720ピクセルのAVI(Motion JPEG)形式。フレームレートは24fpsとやや少ないのが気になった。ただ、動画撮影中の光学ズームが可能な点が評価できる。
本機は、EXRモードというひと味違った写真を楽しめる10倍ズームの1,200万画素機といえる。また、数少ない赤外線通信(IrSimple、IrSS)対応モデルなので、そのあたりも選択のポイントになってくるだろう。
ボディ側面に赤外線通信ポートを装備 | 付属のストラップは中間に締める部分が付いており、手からスルリと抜けるのを防ぐ |
■実写サンプル
※作例のサムネイルをクリックすると、リサイズなし・補正なしの撮影画像を別ウィンドウで表示します。特記無きサンプルのダイナミックレンジは100%
●画角
【プログラム】
広角端 FinePix F80EXR / 4,000×3,000 / 1/280秒 / F9 / 0EV / ISO100 / プログラム / WB:オート / 5mm | 望遠端 FinePix F80EXR / 4,000×3,000 / 1/640秒 / F5.6 / 0EV / ISO100 / プログラム / WB:オート / 50mm |
【高解像度優先】
広角端 FinePix F80EXR / 4,000×3,000 / 1/250秒 / F9 / 0EV / ISO100 / EXR:高解像度優先 / WB:オート / 5mm | 望遠端 FinePix F80EXR / 4,000×3,000 / 1/480秒 / F5.6 / 0EV / ISO100 / EXR:高解像度優先 / WB:オート / 50mm |
【高感度低ノイズ優先】
広角端 FinePix F80EXR / 2,816×2,112 / 1/250秒 / F9 / 0EV / ISO100 / EXR:高感度低ノイズ優先 / WB:オート / 5mm | 望遠端 FinePix F80EXR / 2,816×2,112 / 1/480秒 / F5.6 / 0EV / ISO100 / EXR:高感度低ノイズ優先 / WB:オート / 50mm |
【ダイナミックレンジ優先】
広角端 FinePix F80EXR / 2,816×2,112 / 1/250秒 / F9 / 0EV / ISO100 / EXR:ダイナミックレンジ優先 / WB:オート / 5mm | 望遠端 FinePix F80EXR / 2,816×2,112 / 1/480秒 / F5.6 / 0EV / ISO100 / EXR:ダイナミックレンジ優先 / WB:オート / 50mm |
●ISO感度
※プログラムモードのISO3200は2,816×2,112ピクセルが、同ISO6400と12800は2,048×1,536が最大記録解像度になる
ISO100 |
ISO200 |
ISO400 |
ISO800 |
ISO1600 |
ISO3200 |
ISO6400 |
ISO12800 |
●ダイナミックレンジ
【ダイナミックレンジ優先】
DR:100% / 2,816×2,112 / ISO100 | DR:200% / 2,816×2,112 / ISO100 |
DR:400% / 2,816×2,112 / ISO100 | DR:800% / 2,816×2,112 / ISO200 |
【高解像度優先】
※ダイナミックレンジ優先と比較しやすいように、2,816×2,112で撮影している
DR:100% / 2,816×2,112 / ISO100 |
●歪曲
広角端 FinePix F80EXR / 4,000×3,000 / 1/20秒 / F3.3 / 0EV / ISO100 / プログラム / WB:オート / 5mm | 望遠端 FinePix F80EXR / 4,000×3,000 / 1/9秒 / F5.6 / 0EV / ISO100 / プログラム / WB:オート / 50mm |
●マクロ
広角端 FinePix F80EXR / 4,000×3,000 / 1/280秒 / F9 / 0EV / ISO100 / EXR:高解像度優先 / WB:オート / 5mm | 望遠端 FinePix F80EXR / 4,000×3,000 / 1/320秒 / F5.6 / 0EV / ISO100 / EXR:高解像度優先 / WB:オート / 50mm |
●連写重ね撮り
連写重ね撮り FinePix F80EXR / 2,816×2,112 / 1/300秒 / F5.6 / 0EV / ISO1600 / 連写重ね撮り / WB:オート / 50mm | 高感度低ノイズ優先 FinePix F80EXR / 2,816×2,112 / 1/320秒 / F5.6 / 0EV / ISO1600 / EXR:高感度低ノイズ優先 / WB:オート / 50mm |
プログラム FinePix F80EXR / 4,000×3,000 / 1/320秒 / F5.6 / 0EV / ISO1600 / プログラム / WB:オート / 50mm |
●動画
FinePix F80EXR / 1,280×720 / 24fps / AVI(Motion JPEG) / 40MB |
2010/4/19 12:49