新製品レビュー
ソニーRX100 V
成熟を見せる1型コンパクトの実力を検証
2016年11月25日 00:00
1型センサーを搭載したソニーのコンパクトデジタルカメラ、RX100シリーズの5代目、RX100 V(DSC-RX100M5)が登場した。
ボディデザインは、3代目のRX100 IIIや4代目のRX100 IVを踏襲。3世代続けて同じデザインというのは、RX100シリーズの形がひとつの完成形に達しているのを感じる。
ブラックのボディは質感が高く、高級コンパクトらしい佇まい。しかも大きさは手のひらサイズ。コンパクトデジタルとしては大きな1型センサーを搭載しながら、携帯性は抜群だ。
内部は大きく進化
撮像素子はRX100 IVで話題になった、メモリー一体1.0型積層型Exmor RS CMOSセンサーを採用。RX100 IIIに搭載されたCMOSセンサーと比べ、5倍以上の高速読み出しを実現している。4K動画をはじめ、1/32,000秒の高速シャッターやローリングシャッター現象が起きにくいアンチディストーションシャッター、スーパースローモーションなどを可能にしている。
RX100 Vでは、撮像素子に位相差検出方式AFセンサーを追加。RX100シリーズで初めてコントラストAFと位相差AFによるファストハイブリッドAFが搭載された。これにより、AF速度は0.05秒という高速を実現。
さらに像面エリア65%をカバーする315点の像面位相差AFを搭載。これは1型センサーの機種としては世界最多となる。これにより動体や小さな被写体も高精度で高速な測距が可能になった。さらに連写は、AE、AF追従で最高24コマ/秒。バッファメモリーも大容量化し、ファイン画質で150枚連続撮影が可能だ。
実感できるAF高速化
手にした感触は、RX100 IVとほぼ同じ。電源を入れるまでは新鮮さは感じないものの、シャッターボタンを半押しすると、AFが高速化され、測距エリアが広がったのはすぐわかる。迷うことなく一気にピントが合うのは気持ちがいい。
レンズが35mm判換算で24-70mm相当なので、スポーツや乗り物は得意とはいえないが、動き回る子どもやペット、一瞬を狙うスナップにはありがたい。また近接撮影で絞り開放にしても、スピーディーで高い精度の測距ができ、快適な撮影が行えた。315点のAFエリアにより、構図の自由度も広がった。
背面の液晶モニターは、RX100シリーズお馴染みのチルト式。上方180度、下方45度まで動き、ローアングルやハイアングル、さらに自分撮りもできる。不安定な姿勢になりやすいが、そうした場合にも高速で高精度なAFと、広いAFエリアは頼りになった。
液晶モニターは日中の屋外でも視認性は高いものの、強い光線状態はポップアップ式のEVFが活躍する。このEVFには235万ドットの有機ELを採用。さらにT*コーティングも施している。ファインダー倍率は約0.59倍(35mm判換算)。とても見やすく、決してオマケ程度のファインダーではない。覗くとカメラをしっかりホールドでき、被写体にも集中できるので、積極的に使いたくなる。
なお電源オンの状態でEVFを格納するとデフォルトの設定では電源オフになるが、電源がオフにならない設定も可能となっている。
解像力
有効2,010万画素や画像処理エンジンBIONZ XはRX100 IVと同じ。またF1.8-2.8の明るさを持つ、24-70mm相当のZEISS Vario-Sonnar T*レンズもRX100 IVを受け継いでいる。
画質だが、絞り開放から高精細な描写が得られ、階調も豊富。Exmor RS CMOSセンサーとBIONZ Xの高画質が感じられる。しかも絞り開放でも周辺光量低下がほとんど見られない。F2.8に絞ると鮮鋭度はさらに増し、画面周辺まで均一な写りになる。F8以降は回折現象の影響か、わずかに解像力が低下する。ただし、よほど拡大しなければ気にならないレベルだ。
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ワイド側24mm相当。遠近感を誇張したダイナミックな写真が撮れる。絞りはF4.5。画面周辺部まで高い解像力だ。Dレンジオプティマイザーはオートに設定。ハイライトからシャドーまで豊かな階調が得られ、肉眼にも近い仕上がりが得られた。
テレ側70mm相当。スポーツや野鳥などの撮影は難しいものの、街のスナップで見た光景を切り取るのに適している。絞りはF4.5。画面中心部はとてもシャープ。また画面周辺部でも甘さが少ない。ズーム全域で安心して使える。
高感度
感度は、ベース感度がISO125。最高感度はISO12500だ。また拡張でISO80とISO100が設定できる。高感度はISO400までは、ほとんどISO125と変わらない。ISO800からは拡大すると高感度らしさが感じられるが、気にはならない。ISO3200までは十分常用できる画質だ。
一方、ISO6400とISO12800は、さすがに超高感度らしい写り。細かいディテールも解像していない。しかし、Webサイトなどで小さく使う程度なら実用になる。色調もほとんど崩れないので、暗所でも自然な雰囲気の写真が撮れた。なお拡張のISO80とISO100は、わずかにダイナミックレンジが狭くなる。しかしISO125と極端な差はなかったので、明るい場所でスローシャッターを切りたいときに活躍するだろう。
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ISO6400で撮影。拡大すると高感度らしい写りだ。ノイズリダクションによるディテールの損失も感じられる。しかし拡大しなければ目立たない。また電灯の強い光が入っているが、フレアやゴーストが出ていないことにも注目。
最高感度のISO12800に設定。さすがにシャドー部は黒つぶれしていて、やや立体感に欠ける描写だ。とはいえ小さなプリントやWeb用なら実用になるレベル。1型の撮像素子であることを考えると、高感度は十分強いと言えるだろう。
連写
疾走する電車を歩道橋から狙った。AF-Cモードにして高速連写に設定。24コマ/秒といえば、映画のコマ数と同じだ。連写中はブラックアウトしないため、動体もしっかり追える。連写しているときは、動画を撮っているような感覚になり、RX100 Vの進化を感じた。しかもアンチディストーションシャッターにより、ローリングシャッター現象による歪みもない。
※共通設定:1/800秒 / F2.8 / 0EV / ISO400 / マニュアル / 15.1mm
ハイスピード動画
動画は4Kに対応し、ファストハイブリッドAFにより、動体への追従性がアップした。動く被写体でも快適な撮影が行える。さらに960fpsのハイフレームレート(HFR、スーパースローモーション)は、撮影可能時間が従来モデルの2倍になった。肉眼では見られないような動きの一瞬が捉えられる。
モードダイヤルをHFRに設定し、ライターの着火を960fpsのスーパースローモーションで撮影した。ほんの数秒のことだが、スーパースローモーションにすると火花が散る様子や、ガスが上がる様子がよくわかる。肉眼を超えた世界が楽しめる機能だ。
4K動画切り出し
4K動画で撮影すると、再生メニューから静止画切り出しができる。ここでは飛び回るトビを4K動画で撮影し、木とトビのバランスが最もいいところで切り出した。アスペクト比は16:9に限られるが、800万画素相当の写真になる。
作品
車のボンネットやフロントガラスに映った空が綺麗でカメラを向けた。車体の滑らかな質感がよく再現されている。またピントを合わせたヘッドライトの解像力も申し分ない。コンパクトカメラとしては大きな1型センサーとツァイスレンズの高画質が感じられる。
ワイド側の最短撮影距離は約5cm。小さなアクセサリーをほぼ最短でクローズアップした。マクロモード等に切り替える必要がないので、スムーズに撮影できる。絞りを開放にして、大きなボケを狙った。また、ややローポジションになるため、背面モニターをチルトしている。
逆光で自転車を押して歩く人の伸びる影が魅力的だった。315点のファストハイブリッドAFは、撮りたいと思った瞬間にすぐ反応してくれた。スポーツのような速い動きではなく、街のスナップでも、高速AFと広いAFエリアは頼りになる。
積層型CMOSセンサーで可能になったEV19への対応。絞りF1.8、1/32,000で撮影した。太陽がまるで月のような不思議な写真になった。しかも厳しい光線状態ながら、フレアやゴーストは出ず、クリアな描写だ。またAFも迷うことなく、瞬時に合焦した。
ピンクの壁に電柱の影が映った光景を見つけた。携帯性の高いコンパクトデジタルカメラは、撮りたいと思ったときにすぐ構えられる。RX100 Vは、いつでも高画質の作品が撮れるカメラだ。デジタル一眼レフやミラーレス機にはない機動力を持っている。
夕暮れの浜辺。強い光のため液晶モニターがやや見づらく、EVFを使用した。T*コーティングを採用し、視認性に優れたEVFは、快適な撮影が行える。またハイライトからシャドーまでの階調も豊かで、夕暮れの雰囲気が見事に再現された。
まとめ
RX100 IVのデザインと操作性、そして画質を受け継ぎながら、ファストハイブリッドAFと315点測距によるワイドAFを搭載し、よりスピーディーな撮影に対応できるようになったカメラだ。またファストハイブリッドAFは4K動画にも有効で、ハイフレームレートも強化された。
バッグや上着のポケットに入る小型カメラで、動く被写体を高画質な写真と動画で撮りたい人におすすめしたい。デジタル一眼レフやミラーレス機のサブにはもちろん、いつも持ち歩いて、日常を作品にしたい人にも注目だ。