ニコンD600【第2回】

しばらく使って気づいたことを挙げてみる。

Reported by 北村智史



今回は手もとにあるレンズのチェックの意味合いで、AF-S 50mm F1.8 Gのほか、AF-S VR Zoom Nikkor ED 24-120mm F3.5-5.6 G(IF)、AF-S VR Zoom Nikkor ED 70-300mm F4.5-5.6 G(IF)とトキナーのAT-X 17mm F3.5プロを使ってみた。なので、本文と作例とで関連性はなしである。

 昔から小さいことが気になって仕方がないたちで、この仕事をはじめてからも、重箱の隅をつつくどころか大仰な発掘調査をやってるみたいだといわれたこともある。そんなわけで、D600を買ってからも、ついつい細かいところをチェックしてしまう。ニコンのカメラは設計者がきまじめなのだろう、細かい部分の作り込みや、いい意味でのこだわりが感じられておもしろい。

 例えば、左手側側面の端子カバー。普通はゴムや軟質プラスティックで作られているが、それだと勝手に戻ってくるので、指でカバーを押さえながらケーブルの端子を差し込まないといけない。ところが、D600の端子カバーはヒンジ式になっていて、開けたら開きっぱなしになってくれる(D800も同じ仕様である)。なので、端子の抜き差しがとてもやりやすいのだ。こういう細かい部分にまでコストをかけてしまうのがニコンの悪いところでもいいところでもあって、だからなかなか軽いカメラが作れないんだろうなぁとかも思ってしまう。


端子カバーがヒンジ式になってる。こういう細かいところが好きってのもある。

 筆者個人としては、露出ディレーモードの秒数が選べるようになったのもうれしい点。この機能は、シャッターボタン全押し後にシャッターが切れるタイミングをずらすもので、ミラーショックによる微細なブレを防ぎたいときに利用する。ようはミラーアップ付きのセルフタイマーなのだが、D700では遅延時間が1秒で固定されていた(D7000もこの仕様だ)。


1秒で固定だった「露出ディレーモード」が、「1秒」「2秒」「3秒」の選択式になった。これもうれしい。

 たいていの場合は1秒でも問題はなさそうだし、実際、D700を使っていて問題になったことはなかったけれど、1秒だとミラーショックによるブレだけでなく、シャッターボタンを押したときの揺れが残っていそうで不安だったから、安心感を得るために2秒のセルフタイマーを併用していた。ペンタックスなんかは2秒のセルフタイマーにはもれなくミラーアップが付いてくるので設定も楽ちんだが、D700だとメニューを開いて露出ディレーモードの設定をやって、さらにドライブモードの変更もやらないといけないから手数も多い。

 もちろん、手間としてはたいしたことないし、何度もやっていれば多少のことには慣れる。ニコンのカメラはこういうもんなんだと思って使ってきたわけだが、D4から「1秒」「2秒」「3秒」の選択式に変更された。おかげで、スローシャッターを切るときの操作がひとつですむようになった。って、まあ、とっても小さいことなんですけどね。

 それから、ライブビューの画面に露出補正が反映されるようになったこともあげていいと思う。プログラム、シャッター優先、絞り優先の各AEモード時は、露出補正に応じて画面が明るくなったり暗くなったりしてくれる。露出レベルなんて知ったこっちゃないね仕様だったD700に比べれば、とても大きな改善なのだ。


ライブビューの画面に露出補正が反映されるようになったのはすごくうれしい改善点。

 ただし、マニュアル露出のときはちょっとややこしい。AEモードと違って、絞りやシャッター速度を変えても画面の明るさは変化しない。これはたぶん、ストロボ撮影のことを考えてのことだろうと思う。というのは、ストロボ撮影時は、定常光だけで考えると露出不足になりやすいため、露出レベルを反映すると画面が真っ暗になってしまう。だから、意図的にマニュアル露出だけは違う仕様にしているのだろう。

 それはそれで納得できる使い分けだから文句はない。ただ、マニュアル露出で露出補正をすると、やはり画面の明るさが変化する。もちろん、マニュアル露出なので、露出補正をしても写る画の明るさは変化しない。なので、適正露出を得るための目安にはなってくれないし、むしろ補正した分だけ露出インジケーターの目がずれるので、メータードマニュアルで露出を合わせようとすると、かえってへんてこなことになる。もっとも、マニュアル露出で露出補正をすることはまずないから混乱する心配はないだろうけど。


マニュアル露出のときも露出補正をすると明るさが変わる。露出インジケーター見ると分かるけど、撮ったらアンダーである。

 ライブビューの拡大表示もよくなっている。D700のはデータ量の少ない映像をピクセル等倍以上に拡大したみたいな感じでピントの山がつかみづらかったが、D600のはちゃんとピントが見える。夜景などで位相差AFがちょっと頼りなくなる条件でピントをしっかり合わせたいときのイライラがぐっと軽くなるのがうれしいのである。

 


D700はもう手放しちゃったので比べられないが、ライブビューの拡大表示の映像はぐっと精細になった。おかげでピント合わせがやりやすい。

 その一方、ここは改良して欲しいよなぁと思えるところもある。D700やD800には、再生時にマルチセレクターの中央ボタンを押すことで拡大表示ができるカスタムメニュー項目があって、撮ってすぐに拡大してピントやブレのチェックができる。もちろん、ファインダーから目を離さないといけないが、カメラを持ち直す必要はないので、ミス即撮り直しが可能だ。

 が、D600の場合、画像を拡大/縮小するには液晶モニターの左側にある拡大ボタンと縮小ボタンを押さないといけなくて、そのためには、レンズを支える左手を持ち替えないといけない。なので、拡大して画像をチェックしてブレてるっぽいからもう1枚、なんてときに少しだけ面倒くさい。

 ちなみに、D600のマルチセレクターの中央にはOKボタンがあって、撮影時の機能はカスタマイズが可能だが、再生時に押すと画像編集メニューが開く。でも、冷静に考えれば、液晶モニターの左側のボタンで画像編集メニューを呼び出すことができるのだから、OKボタンにも同じ機能を割り付ける必要はない。だったら、再生時のOKボタンの機能のカスタマイズができたほうがいいし、コマンドダイヤルでズーム操作ができるとかでもいいと思う。ニコンさんにはそのへんをちょこっとよろしくお願いしたい。


背面のマルチセレクターの中央には「OK」ボタンがある。D700、D800はここが中央ボタンで、「OK」ボタンは別にある。

メニュー画面にもあるとおり、撮影モード時の機能だけがカスタマイズ対象だ。再生時に「OK」ボタンを押すと、画像編集メニューが開く。個人的にはそれよりも拡大表示機能を付けて欲しい。

 あと、ISO感度の設定ステップが「1/3段」と「1/2段」しかないのもちょっぴり残念な点。筆者は「1段」派なので、「1/3段」と「1/2段」しかないのはつまらないんである。D700でもD800でも「1段」が選べるのだ。3択にするとコストが高くなるからダメといわれればあきらめるしかないが、それはあまり考えられない。もしそうだとしても、露出設定ステップを1/3段にしておいて、ISO感度の設定ステップだけ1/2段にしたい人(もしくはその逆の人)がたくさんいるとも思えないのだから「露出設定ステップと同じにする」と「1段」の2択にすればいいのではないかと思う。

 


ISO感度の設定ステップはカスタマイズが可能だけど、なぜか「1/3段」と1/2段」だけ。「1段」派っていないの?

 それはそれとして、D600は、フルサイズ機としてはお値段も安い。それだけに、あちこちに残念な部分があってもおかしくはない。ファインダーが角窓なのもそうだし、底面にゴムが貼られていないのもそうだ(といっても、だいたいは我慢できる範囲だけど)。もちろん、上のクラスのD800を選んでいれば不満はずっと少なかっただろうけれど、筆者的にはD600の持つ軽さという性能がとても大事だったわけで、その点ではものすごく満足しているのである。


視野率が100%になったのはうれしいけど、角窓になったのは残念な点。眼鏡だとケラレが出やすいからね。D700は底面にゴムが貼られていたが、D600はゴムなし。縦位置での三脚撮影で重めのレンズをつけてると滑っちゃったりする。
  • 作例のサムネイルをクリックすると、リサイズなし・補正なしの撮影画像をダウンロード後、800×600ピクセル前後の縮小画像を表示します。その後、クリックした箇所をピクセル等倍で表示します。
  • 縦位置で撮影した写真のみ、無劣化での回転処理を施しています。

ところどころ色づきはじめた葉もあるが、ほとんどはまだ夏色のまま。D600 / AF-S 50mm F1.8 G / 6,016×4,016 / 1/400秒 / F5.6 / -1.3EV / ISO100 / WB:オート / 50mmこの50mmはポイントでもらったようなものだけど、最新レンズだけあって安心して使える画質。D600 / AF-S 50mm F1.8 G / 6,016×4,016 / 1/400秒 / F5.6 / -0.7EV / ISO100 / WB:オート / 50mm
絞り開放付近は少しアマさが出るけれど、ちゃんとピントはある。D600 / AF-S 50mm F1.8 G / 6,016×4,016 / 1/250秒 / F2.2 / 0.3EV / ISO100 / WB:オート / 50mm24-120mm F3.5-5.6は設計が古いだけあって、特に望遠端は絞ってもけっこうつらい。D600 / AF-S VR Zoom Nikkor ED 24-120mm F3.5-5.6 G(IF) / 6,016×4,016 / 1/40秒 / F11 / -2.0EV / ISO100 / WB:晴天 / 120mm
きれいに色が変わっている枝を見つけたので、望遠で切り取ってみた。D600 / AF-S VR Zoom Nikkor ED 70-300mm F4.5-5.6 G(IF) / 6,016×4,016 / 1/160秒 / F11 / 0.3EV / ISO100 / WB:晴天 / 220mmこちらの枝は黄葉。というか、オレンジ色っぽい。D600 / AF-S VR Zoom Nikkor ED 70-300mm F4.5-5.6 G(IF) / 6,016×4,016 / 1/20秒 / F11 / 0.3EV / ISO100 / WB:晴天 / 260mm
手もとにあるレンズのうちでは2番目に発売時期が古い。F11ぐらいまで絞ればなんとかという感じではあるけれど。D600 / トキナーAT-X 17mm F3.5プロ / 6,016×4,016 / 1/80秒 / F11 / 0.3EV / ISO100 / WB:晴天 / 17mmこのカットは24-120mm F3.5-5.6で撮った中ではよく見えるほう。画素数が増えるとレンズのアラが出やすくなるから大変だ。D600 / AF-S VR Zoom Nikkor ED 24-120mm F3.5-5.6 G(IF) / 6,016×4,016 / 1/40秒 / F8 / 0.3EV / ISO100 / WB:晴天 / 120mm
夕方になるにつれて雲が増えてきた。その雲の隙間から青がのぞける空を超広角で。D600 / トキナーAT-X 17mm F3.5プロ / 6,016×4,016 / 1/160秒 / F11 / 0.3EV / ISO100 / WB:晴天 / 17mm四隅までピントが欲しかったのでF16まで絞ったけれど、ほんとはちょっと絞りすぎなのだ。D600 / トキナーAT-X 17mm F3.5プロ / 6,016×4,016 / 1/10秒 / F16 / 0.3EV / ISO100 / WB:晴天 / 17mm
24-120mm F3.5-5.6は広角端はわりとまだいい。絞り開放付近の周辺部はかなりいただけないけれど。D600 / AF-S VR Zoom Nikkor ED 24-120mm F3.5-5.6 G(IF) / 6,016×4,016 / 1/125秒 / F8 / 0.3EV / ISO100 / WB:晴天 / 24mmあの雲の下は、いやな感じだろうなぁと思いながら撮って、しばらくしたら雨になってた。D600 / AF-S VR Zoom Nikkor ED 24-120mm F3.5-5.6 G(IF) / 6,016×4,016 / 1/500秒 / F8 / -1.0EV / ISO100 / WB:晴天 / 78mm
70-300mm VRの望遠端。D700との組み合わせではわりと使えるレンズという印象だったが、D600が相手だとちょっと物足りない感がある。D600 / AF-S VR Zoom Nikkor ED 70-300mm F4.5-5.6 G(IF) / 6,016×4,016 / 1/30秒 / F11 / -1.7EV / ISO100 / WB:晴天 / 300mm調子に乗ってキヤノンEOS Mも買っちゃったものだから、レンズに割ける予算がない。のだけれど、なんとかしなきゃなぁ。D600 / AF-S VR Zoom Nikkor ED 70-300mm F4.5-5.6 G(IF) / 6,016×4,016 / 1/100秒 / F11 / -1.0EV / ISO100 / WB:晴天 / 70mm





北村智史
北村智史(きたむら さとし)1962年、滋賀県生まれ。国立某大学中退後、上京。某カメラ量販店に勤めるもバブル崩壊でリストラ。道端で途方に暮れているところを某カメラ誌の編集長に拾われ、編集業と並行してメカ記事等の執筆に携わる。1997年からはライター専業。2011年、東京の夏の暑さに負けて涼しい地方に移住。地味に再開したブログはこちら

2012/10/16 13:42