左がオリンパスのM.ZUIKO DIGITAL ED 9-18mm F4-5.6。ボディに装着しているレンズがパナソニックLUMIX G VARIO 7-14mm F4 ASPH. |
DMC-GH1とつきあい出して約1年半。極めて荒い使い方にも関わらず、手許のDMC-GH1は絶好調だ。ボタンのプリントがはげたり、グリップの塗装が擦れてたりと、見た目の劣化が目立ちはじめたものの、故障や不具合の類いは一切ない。仕事にプライベートにと大活躍している。
さて今回は、マイクロフォーサーズ用の超広角ズームレンズ2本を同時に使う機会を得たので、その所感を述べてみたい。パナソニックの「LUMIX G VARIO 7-14mm F4 ASPH.」(以下7-14mm F4)と、オリンパスの「M.ZUIKO DIGITAL ED 9-18mm F4-5.6」(以下9-18mm F4-5.6)だ。マイクロフォーサーズ専用の超広角ズームレンズはこれら2本しか存在しないので、どちらを手に入れるか迷っている人もいるだろう。
発売は7-14mm F4の方が早く、2009年4月24日に登場している。執筆時の実勢価格は9万4,000円前後と、マイクロフォーサーズ用レンズで最も高価。9-18mm F4-5.6が出るまでは、超広角域で唯一の存在だったこともあり、個人的にはいつかは入手しようと狙っていたものの、価格の高さから導入に踏み切れていない。どうしても超広角が必要なときは、フォーサーズ用の「ZUIKO DIGITAL ED 9-18mm F4-5.6」を使うこともあったし、あきらめて別のボディを持ち出すことが多い。
そこへ登場したのが、オリンパスの9-18mm F4-5.6だ。発売日は2010年4月23日。実勢価格は6万円前後。7-14mm F4より3万円以上安い。心情的にはパナソニック純正で高スペックな7-14mm F4が欲しいところだが、9-18mm F4-5.6の値段は魅力的だ。
また7-14mm F4は、パナソニック製なのにレンズ内手ブレ補正機構を搭載していない。ボディ内手ブレ補正機構がないDMC-GH1にとって、両レンズとも手ブレ補正機構が利用できない点では同じ。標準ズームレンズや高倍率ズームレンズの場合、フォーサーズ時代からパナソニック製は手ブレ補正付き、オリンパス製は手ブレ補正なし(オリンパスはボディ内で補正する)という暗黙の了解があった。しかし、超広角ズームレンズとパンケーキレンズについては、パナソニック製であってもレンズ内手ブレ補正機構がない。9-18mm F4-5.6を購入するのに、何のしがらみもないわけだ。
まずは外観から比較しよう。7-14mm F4は前玉が大きく湾曲した、いかにも高価な超広角ズームレンズ風。フォーサーズのZUIKO DIGITAL ED 7-14mm F4や、ニコンのAF-S NIKKOR 14-24mm F2.8 G EDをミニチュアにしたような見た目であり、巨大な超広角ズームレンズが小型化したその姿は、見ようによってはとてもかわいい。DMC-GH1との見た目のマッチングも良いし、全体的な造りの良さも感じられる。フードは一体型で、フロントキャップはかぶせ式だ。
左からLUMIX G VARIO 7-14mm F4 ASPH.、M.ZUIKO DIGITAL ED 9-18mm F4-5.6。9-18mm F4-5.6のフードは別売だ |
一方の9-18mm F4.-5.6は、鏡胴のローレットや角型フードの意匠により、幾分クラシカルな風貌をしている。E-P2やE-P1に似合いそうなスタイリングだが、DMC-GH1につけてもなかなか格好良い。ただしレンズを伸ばすと、ひょろっとした見た目が弱々しく感じられるかもしれない。超広角ズームレンズと思うとなおさらだ。レンズフードが別売というのも少し悲しい。
それにしても沈胴時の9-18mm F4-5.6は小さい。7-14mm F4も超広角ズームレンズとしては異様に小さいが、「撮影はほぼ標準ズーム、だけど念のため超広角ズームも持って行きたい」という私には、うってつけのレンズに感じられた。
LUMIX G VARIO 7-14mm F4 ASPH. |
M.ZUIKO DIGITAL ED 9-18mm F4-5.6(沈胴時) | M.ZUIKO DIGITAL ED 9-18mm F4-5.6(撮影時) |
画角はもちろん7-14mm F4の方が広い。一方、望遠端は9-18m F4-5.6が有利だ。必要な画角は撮影者それぞれで異なるものだが、私にとって広角側は35mm判換算で20-24mm程度あれば問題なく、むしろ36mm相当までレンズ交換なしでズームできる9-18mm F4-5.6の方が魅力的に感じる。もっとも、7-14mm F4を使っていて14mm以上の画角が欲しい場合は、標準ズームレンズや高倍率ズームレンズに付け替えればすむ話だ。レンズ交換をいとわないのなら、7-14mm F4の方が自由度が高くなる。
カメラ内での補正がかかっているとはいえ、画質はどちらも良好。周辺まで乱れがなく、とてもシャープだ。歪曲収差も少なく、10万円を切る超広角ズームレンズなのが信じられないくらい。あえていえば、7-14mm F4の方が好みだが、両者とも私ごときがケチをつけるほどのアラは見当たらなかった。
加えて9-18mm F4-5.6は、52mm径のレンズフィルターを装着できる。7-14mm F4は前玉が突き出ているため無理。ここまで広角になると、PLフィルターやNDフィルターを使う機会があまりなさそうだが、プロテクトフィルターを常用したい人には重要かもしれない。
コンパクトで軽量。画質も良く、焦点域も好み。価格も廉価でフィルターもつく……となると、9-18mm F4-5.6に心が動くのは当然の流れだ。
しかし、造りの良さと操作性を考えると、7-14m F4にも気持が傾く。9-18mm F4-5.6は、撮影時に鏡胴を回してロックを外すないと撮影できないし、ズームリングやフォーカスリングの滑らかさも7-14mm F4が優れている。2mmの短焦点や全域F4の明るさ以上に、造りの良さと操作性で価格差をしっかり感じた。
なおAF速度は、7-14mm F4の方が少しだけ高速だ。ただし私の場合、マイクロフォーサーズで動きものを撮ることがないため、どちらであっても問題にならないはずだ。
というわけで、どちらが優れているかを総合的に判断するのは無理だろう。それぞれに良さがあり、撮影スタイルや嗜好に合わせて選ぶしかない。ケチをつけてしまった7-14mm F4の本体サイズにしても、超広角ズームレンズとしては十分すぎるほど小さい。突き出た前玉に気を遣いそうだが、F値固定タイプということもあり、室内での取材用として、いずれは手に入れたいレンズだと感じた。両方買えればそれにこしたことはないのだが……
それにしても、マイクロフォーサーズの超広角ズームレンズはコンパクトかつ高画質だ。今秋にはパナソニックから14mm F2.5がお目見えしそうだが、24mm相当の12mmや、20mm相当の10mmなど、ぜひ超広角単焦点レンズのラインナップを充実させてほしいと感じた。
- 作例のサムネイルをクリックすると、リサイズなし・補正なしの撮影画像をダウンロード後、別ウィンドウで800×600ピクセル前後の縮小画像を表示します。その後、クリックした箇所をピクセル等倍で表示します。
・画角
広角端の差を確認しようとして撮ったカット。RAW+JPEGのJPEGを掲載。7-14mm F4だけに合わせて作った構図なので、9-18mm F4-5.6の作例が不自然に感じられる。私の配慮のなさの現れである。
個人的に7mmが必要なケースはほとんどないが、あれば楽しいだろうし、広すぎるならズームさせれば良いだけのこと。広角側の画角(とF値固定の利便性)だけで考えると、7-14mm F4に軍配が上がるだろう。
・絞り別
JPEGで撮影。どちらも開放からシャープで驚いた。7-14mm F4は、開放で周辺落ちが軽く出るが、F5.6でわからなくなる。色収差もほとんどないし、周辺にボケや乱れもない。
9-18mm F4-5.6は、画面端で色収差が認められるものの、超広角ズームレンズとして考えるとわずかなレベルだろう。開放でのシャープさではこちらも負けていない。
・最短距離
最短撮影距離はともに0.25m。最大撮影倍率は、7-14mm F4が0.08倍、9-18mm F4-5.6が0.1倍。
どちらも広角端で撮影した。実際にはもう少し寄れる状態にある。このケースでは、7-14mm F4のAFが合いづらかった。JPEGで撮影。
・逆光
どちらかといえば、7-14mm F4の方がゴーストが出やすいようだ。といっても、ゴースト自体はとても小さい。作例は昼過ぎに強い光を放つ太陽を画面に入れ、無理矢理目立たせたケース。かなり無理がある構図だ。それでも9-18mm F4-5.6はびくともしていない。JPEGで撮影。
【2010年9月16日】「9-14mm」との誤記を「7-14mm」に正しました。
2010/9/16 00:00