4月から始まった本レポートだが、今回が最終回となる。最終回は海外で締めくくりたい。個人的に初めて訪れるマレーシアだ。渡航の主な目的は、Car Watchに掲載されたSUPER GT第4戦の取材だが、1日早く現地入りしクアラルンプールの街を撮ることにした。
成田、関空からはマレーシア航空の直行便があるが、中部国際空港(セントレア)は直行便がなく、キャセイパシフィックを利用し香港で乗り継いでマレーシアに向かう計画だ。ということで、最終回はセントレアからスタートしよう。
前回、知多半島の撮影の際にセントレアをパスしたのは、滑走路が西側にあり午前中が順光になるからだ。そのときは午後に訪れたため、撮影を断念した。
渡航の当日、8時前に搭乗手続きを済ませ、滑走路の見えるスカイデッキで撮影を始めた。最初は駐まっている機体。それからスイングパノラマ。空港全体の雰囲気を撮るには便利だが、相変わらずスイングパノラマは解像感が薄い。
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セントレア。最初の撮影は国内線から DSC-HX5V / 約3.6MB / 3,648×2,736 / 1/400秒 / F9 / -0.3EV / ISO125 / WB:オート / 7.2mm |
次は国際線側をスイングパノラマ DSC-HX5V / 約2.4MB / 4912x1080 / 1/400秒 / F8 / 0EV / ISO125 / WB:オート / 4.2mm |
スカイデッキの先端まで移動すると離着陸する機体が撮影できる。着陸する機体は望遠端の250mm(35mm換算)では豆粒の様にしか写らないので、離陸する機体を狙う。スカイデッキは滑走路長のセンター付近なので、大半の機体が浮き上がった時は斜め後ろからの絵となる。
着陸する機体は動画で撮影をして終了。久しぶりにセントレアで撮影をしてみたが、名古屋空港(小牧)の頃の様に近くで撮ることはできず、今ひとつ楽しめなかった。海上空港なので仕方ないだろう。
通過して浮き始める DSC-HX5V / 約3.7MB / 3,648×2,736 / 1/1,250秒 / F5 / 0EV / ISO125 / WB:オート / 33.9mm | 左の写真とは別の機体 DSC-HX5V / 約3.7MB / 3,648×2,736 / 1/1,250秒 / F5.5 / 0EV / ISO125 / WB:オート / 42.5mm |
【動画】着陸する機体を動画で撮影 1,920×1,080 / 73.1MB / .mts / AVCHD |
香港を経由してマレーシアのクアラルンプール国際空港に着いたのは夜7時頃。1時間の時差があるので、筆者がセントレアに入ってから約12時間、やっと着いたといった感じだ。ちなみにクアラルンプール国際空港は敷地面積が世界2位、成田空港の約10倍の広さの空港で、香港国際空港と同じく、空港内を無料の電車で移動する広大な空港だ。
空港からクアラルンプール市内までは直通の特急(KLIAエクスプレス)で30分弱で移動、ホテルにチェックインし夜の街に繰り出した。ホテルの場所はクアラルンプールの中心街ブキッ・ビンタン(Bukit Bintang)駅から徒歩10分弱だったので、駅周辺を散策することにした。マレーシアはほぼ赤道直下にあり、筆者がいた間は昼はもちろん、夜でも歩き回ると汗が噴き出す暑さだった。ちなみに、クアラルンプール市内で撮影した画像の位置情報を見ると北緯3度となっている。
目抜き通りから少し入ったアロー通りは有名な屋台街だ。屋台と言っても、日本風の移動式や仮設屋台ではなく、厨房などの施設は常設の建物にあり、食事をするテーブルが通りに並べられている。
オートで撮ったらISO2000。その割には低ノイズ DSC-HX5V / 約3.7MB / 3,648×2,736 / 1/250秒 / F3.5 / 0EV / ISO2000 / WB:オート / 4.2mm | ISO125に設定して撮影 DSC-HX5V / 約4.1MB / 2,736×3,648 / 1/15秒 / F3.5 / -0.3EV / ISO125 / WB:オート / 4.2mm |
屋台街の撮影を終え、ホテルに戻る途中で日本のお椀を重ねたような噴水を見つけたので手持ち夜景に設定して撮影。シャッター速度1/15秒なので、水の流れる雰囲気もまずまずだ。到着初日の晩はここまで。
低速シャッターで雰囲気もOK DSC-HX5V / 約3.6MB / 2,736×3,648 / 1/15秒 / F3.5 / 0EV / ISO400 / WB:オート / 4.2mm |
次の日、金曜は終日クアラルンプール市内の撮影だ。残念ながら天気は曇り時々雨。それでも気温と湿度は高い。最初に向かったのは、クアラルンプールの象徴的存在でもあるペトロナスツインタワーだ。
ペトロナスツインタワーは、高さ452m、88階建で、完成した1998年には世界一高いビルだった。現在でもツインタワーとしては世界一だ。その名の通り、マレーシアの国営石油会社「ペトロナス」の本社ビルで、モータースポーツファンならF1のメルセデスGP、日本のトムスのメインスポンサーなので馴染みがあるはずだ。
基本的にオフィスビルなので、最上階に展望施設などはない。観光客が上がれるのは41〜42階にある2つのビルをつなぐスカイブリッジだけだ。スカイブリッジへは朝8時半から配られる整理券を持った人だけが上がることができる。ガイドブックには10時前に行かないと整理券がなくなると書かれてあったので、仕事のメール作業を9時(日本時間10時)に済ませ、タクシーで向かったが、9時半前にすでに整理券の配布は終了していた……ガッカリ。
ツインタワーの足元は高級ブランドや伊勢丹などが入るショッピングセンター(Suria KLCC)になっていて、中央は大きな吹き抜けになっている。横位置で縦方向にスイングパノラマで撮るとデフォルメされて高さが感じられない。カメラを縦位置にしてスイングパノラマで撮ると、少し高さが感じられるが、横方向の画角が狭くなってしまう。
横方向にWIDEでスイングパノラマ。シャネルやグッチが見える。3枚のパノラマから雰囲気が想像……できますか DSC-HX5V / 約3.1MB / 7,152×1,080 / 1/40秒 / F3.5 / 0EV / ISO500 / WB:オート / 4.2mm |
広角端ではこれくらいしか写らない DSC-HX5V / 約4.0MB / 2,736×3,648 / 1/25秒 / F3.5 / -0.3EV / ISO125 / WB:オート / 4.2mm |
ショッピングセンターを抜けた先は巨大な公園になっている。今にも雨が降り出しそうな天気だが、公園を半周して、いろいろなところからツインタワーを撮ってみた。公園内には多くの観光客がいたが、巨大なタワーがカメラのフレームに収まらなくて苦戦している様だった。広角端が24〜28mmくらいでないと、この距離から全体を撮るのは難しいだろう。
公園の人工池にツインタワーが反射していたので、ここでもスイングパノラマを使ってみた。普通に下から撮ると池に露出が合いタワーは露出オーバー、逆に上から撮ると空の影響で池は真っ暗になってしまう。伊勢丹のビルでシャッターボタンを半押しして露出を固定しスイングすればそこそこバランスした写真となる。タワーの中間が歪んでいるのはスイングのブレが合成時に歪みになったのだろう。
くじら? の像と反射するタワーを撮影 DSC-HX5V / 約4.1MB / 2,736×3,648 / 1/400秒 / F3.5 / -0.7EV / ISO125 / WB:オート / 4.2mm |
池に架かる橋の上は観光客の記念撮影大会となっていた。白人、黒人、東洋人が互いに自分のカメラを渡してツインタワーをバックに記念撮影している。筆者が渡されたカメラは、少し古いIXY DIGITALで広角端は35mm程度。家族全員とタワーの天辺までフレームに入れるために地面に寝転がっての撮影となった。逆にDSC-HX5Vで撮ってもらったときは、しゃがんだ姿勢で撮ってもフレーム内に収まっていた。やはり広角25mmは便利だ。
次に向かったのは水族館。ショッピングセンターから地下通路でつながったところにアクアリアKLCCがある。ここの目玉は90mの水中トンネルだ。水族館はデジカメで撮るには厳しい環境で、過去に何度も失敗している。その経験で得たのは、静止画よりも動画で雰囲気を撮るのが無難ということだ。ただし、この水族館は爬虫類が多かったので、ジッとしているところを静止画で撮影できた。
水族館で動かないものと言えば爬虫類 DSC-HX5V / 約3.4MB / 2,736×3,648 / 1/13秒 / F3.5 / 0EV / ISO400 / WB:オート / 4.2mm |
目玉の水中トンネルは動画で撮ることにした。ズドーンと90mのトンネルがあるのかと思ったら、クネクネと曲がりながら、Uターンして出口は入り口のすぐそばだった。
トンネル内の通路は半分が動く歩道で、残り半分は止まってゆっくり観賞することができる構造になっていた。動画の場合、画質が悪くてもそれなりに雰囲気が撮れるし、背景に聞こえるアナウンスや現地の人の会話で海外らしさが出るので好ましい。
【動画】トンネル内で動画撮影 1,920×1,080 / 59MB / .mts / AVCHD |
水族館を出て地下道で直結する地下鉄(LRT)に乗りマスジット・ジャメ(Masjid Jamek)まで移動した。マレーシアっぽい建物のひとつはモスクだ。駅を降りると目の前にあるのが、クアラルンプールに現存する最古のモスク、マスジット・ジャメだ。
事前に調べてこなかったのだが、金曜の昼は礼拝の時間で、大群衆がモスクの中に集まって礼拝を行なっていて入ることができなかった。ここはクアラルンプール発祥の地とされる場所で、歴史的建造物が多い。近くを散策しながらスナップ撮影、もうひとつの有名なモスク、マスジット・インディアに向かった。こちらはモスクへ通じる商店街の通りまで礼拝する人が溢れ通行禁止状態。筆者と同じような観光客も多く、普段目にすることのない光景を撮影していた。
駅に戻ると礼拝が終わり大群衆がモスクから通りに流れ出していた。少し待ってモスクに入ると「ムスリム?」と聞かれ「ノー」と答えると、まだ入れないとのことで諦めることにした。川の反対側からマスジット・ジャメをチラっと撮ってKLタワーにタクシーで向かった。
KLタワーは高さ421m、世界第4位の通信塔で展望台は276mのところにある。展望台に上がると日本語で解説を聞ける無料のイヤホンを貸してくれる。小高い丘の上に建っているのでペトロナスタワーが思った以上に低く見える。夜10時まで営業しているので夜景も楽しめそうだ。
年齢に加え暑さも厳しくもう疲労困憊。ブラブラしながらホテルに向かうことにした。モノレールの駅まで歩く途中でモノレールの橋脚に広告が掲載されているのを望遠端で撮影。世界的な企業の広告が並ぶ中、ブラザーの橋脚をメインに遠くにマクドナルドの看板が入るように撮ってみた。
ブラザーを選んだ理由は、筆者の自宅付近はブラザーの本社、工場、病院などが林立するブラザー村で、自宅の前には体育館がある。何となく地元応援ということでブラザーを撮ってみた。
モノレールの橋脚には著名企業の広告。筆者宅のご近所ということでブラザーを撮影 DSC-HX5V / 約3.8MB / 2,736×3,648 / 1/400秒 / F5.5 / +0.3EV / ISO400 / WB:オート / 42.5mm |
駅に着きホームに入ってくる車両を10枚連写で撮影。このカメラでたくさん名鉄を撮ったお陰で、一発勝負でも問題なく撮ることができた。1駅だけ乗車してホテルに戻り、夜の撮影に備えしばし休息。
駅名の看板も海外では撮る気になる DSC-HX5V / 約3.9MB / 2,736×3,648 / 1/25秒 / F3.5 / -0.3EV / ISO125 / WB:オート / 4.2mm | ホームに近付くモノレールを10枚連写で撮影 DSC-HX5V / 約3.9MB / 2,736×3,648 / 1/400秒 / F5 / 0EV / ISO400 / WB:オート / 19.9mm |
翌日から始まるSUPER GTのためにマレーシアに来たのだが、SUPER GTで今年話題のチームがエヴァンゲリオンレーシングだ。筆者はエヴァンゲリオンレーシングのスポンサーであるラナエンタテインメントの親会社の仕事もしており、夜はチームスタッフ、レースクイーンと一緒に食事に出かけた。
近所のショッピングモールの1階にはSUPER GTのマシンが展示されていた。最上階で食事をご馳走になり、全員でペトロナスタワーのライトアップを見に行くことになった。昼間は公園側から撮ったが、今回は逆側からの撮影だ。
パビリオンというモールの入り口に展示されたGTマシン DSC-HX5V / 約3.9MB / 3,648×2,736 / 1/30秒 / F3.5 / -0.7EV / ISO125 / WB:オート / 4.2mm |
最終回で初めて人物を入れた写真を掲載しよう。なんとレースクイーン2人。しかも普段着での登場だ。
最終回で初の人物写真。左が千葉悠凪さん、右が水谷望愛さん DSC-HX5V / 約4.2MB / 2,736×3,648 / 1/5秒 / F3.5 / -0.3EV / ISO200 / WB:オート / 4.2mm |
撮影場所に段差があり、下から撮ると巨大なタワーと人物がバランスよく撮れるポイントだ。三脚を使用し、ISO125に設定、スローシンクロでテスト撮影をしてみたが、ストロボの光量が少し足りない。ISO200に変更して背景との明るさのバランスをとって撮影した。全体的にはいい感じだが、等倍で見ると画質的には物足りない。他のスタッフも交代して記念撮影、最後は筆者も加わり全員で撮って終了。
最後にツインタワーだけをISO125(三脚使用)と手持ち夜景で撮影した。手持ち夜景はISO400に設定されたが、ISO125の画像と比べても遜色ない画質だ。
三脚を使用しISO125で撮影 DSC-HX5V / 約4.2MB / 2,736×3,648 / 1/5秒 / F3.5 / -0.7EV / ISO125 / WB:オート / 4.2mm | 手持ち夜景で撮影 DSC-HX5V / 約4.1MB / 2,736×3,648 / 1/10秒 / F3.5 / 0EV / ISO400 / WB:オート / 4.2mm |
土曜日からいよいよSUPER GTセパンラウンドの開幕だ。セパンサーキットへ向かう途中の高速道路で、側道を自転車が走るのに驚き、タクシーの窓を開けて撮影。タクシーの運転手はエクササイズだと言っていたが、確かにママチャリは走っていなかった。全く土地勘のない場所だが、この画像もGPSのお陰で撮影場所を後から特定することができた。サーキットの撮影は一眼レフカメラが主役なので、DSC-HX5Vはメモ用の撮影のみ。
高速を自転車が、走っていいんです DSC-HX5V / 約3.8MB / 3,648×2,736 / 1/320秒 / F3.5 / -0.3EV / ISO125 / WB:オート / 4.2mm |
サーキットの取材はかなり忙しい。フリー走行、予選1回目、予選スーパーラップといったセッションに加え、ピットウォーク、キッズウォークがあり、グランドスタンド裏ではステージなども行なわれる。晴れると肘から汗がポタポタと落ちるほどの暑さもありヘトヘトだ。
日曜日の少し空いた時間にコスチューム姿のレースクイーンも撮らせてもらった。場所はチームのスタッフルームで、室内だから光量は少なめ、背景が窓で逆光という難しい条件だ。せっかくの人物撮影なのでシーンセレクションのポートレート用のモードであるソフトスナップに設定、AFも顔検出を使用した。
露出補正を変更しながら何枚か撮影し、アスカ・ラングレー役の千葉悠凪さんはストロボを発光、綾波レイ役の水谷望愛さんはストロボなしで撮った画像だ。室内が暗かったため自動的にISO400に設定されてる。ISO感度が高かったせいか、ソフトスナップの絵作りのせいか、等倍で見ると画質は今ひとつパッとしない。屋外で普通に撮れば問題なかったのかもしれないが、これならISO125で露出補正をして撮った方がよかったかもしれない。
この撮影の後、最終回の最初の扉用写真を撮るためにDSC-HX5Vを手に持ってもらい一眼レフで撮影。「あゆになった気分」(メーカーが違う……)と笑顔で撮影に応じてくれた……感謝。
成田、関空へはレース最終日の深夜に直行便があるが、セントレアへは翌朝の便しかないので、レース後クアラルンプールへ。サーキットから少し走ったところにモスクが見えたので、運転手さんにお願いして立ち寄って撮影。やはりGPSの効果は絶大で、帰国してから撮影場所を確認することができた。
月曜は朝6時にホテルをチェックアウト。クアラルンプールの空港でソニーのブースを見つけてスナップ撮影。DSC-HX5Vは現地価格でRM1,599(約4万8,000円)と少々お高めだった。ちなみに免税店のタバコの価格も日本並みに高かった。
乗り継ぎで再び香港国際空港へ。元々3時間待ちだったのが、出発の遅延で4時間半ほど空港に滞在。天気もそこそこだったので、空港内や窓越しに旅客機を撮って時間を潰した。窓際でGPSの測位を試みたがアンテナが立つことはなかった。香港から名古屋へ向かう便では、南アフリカから帰国する乗客の手荷物にブブゼラが目立っていた。
ワールドカップ開催中だったので南アフリカ航空の機体を撮影 DSC-HX5V / 約3.8MB / 3648x2056 / 1/320秒 / F5 / -0.7EV / ISO125 / WB:オート / 22.8mm | 空港内の様子 DSC-HX5V / 約3.9MB / 2,736×3,648 / 1/40秒 / F5 / -0.3EV / ISO125 / WB:オート / 22.8mm |
離陸中の旅客機をガラス越しに撮影 DSC-HX5V / 約3.6MB / 3,648×2,736 / 1/250秒 / F5.5 / -0.7EV / ISO200 / WB:オート / 42.5mm |
帰国後に気付いたのだが、GPSによる自動時刻設定で時差の修正はしてくれないようだ。取扱説明書には「本機の起動中にGPSを利用して時刻情報を取得し、正確な時刻を維持できます」とあるが、エリア設定のページには「本機を使用する場所に適した時刻に合わせることができます……訪問先のエリアを設定します」とも書かれており、エリアを設定しなかったので時差の修正は行なわれなかった。
今回もPanoramioに画像をアップした。記事中で掲載した画像はExifデータも撮影時のものだが、Panoramioにアップした画像の一部は位置情報を修正している。香港の写真がマレーシアに貼られるのは相応しくないとの判断だ。
さて最終回なので、DSC-HX5Vを数カ月使用した感想をまとめておこう。
まずはHD動画。これに関しては満足度は高い。細かな点を言えば、広角側で樽型の収差があるなど完璧というわけではないが、価格とコンパクトさを考慮すれば高く評価できる。
機能面で満足できたのは高速10枚連写と手持ち夜景。高速10枚連写は一眼レフと比べれば、使い勝手の難しさはあるが、さまざまなシーンで使用することができた。純粋に動く被写体を連写するケースもあったが、手ブレが心配なシーンで保険を掛けて複数枚撮るときにも便利な機能だ。
手持ち夜景もノイズリダクションの効果は高く、利用価値の高い機能だ。強いて言えば、DSC-HX5Vの手ブレ補正は効きがよく、広角端ならシャッター速度は1/4秒でも撮れてしまうことがあった。もし手ブレ補正がなければ、手持ち夜景は最も利用価値の高い機能になっただろう。
GPS機能に関しては絶対必要な機能とは思わないが、知らない土地を撮り歩くときは便利な機能だ。撮影スタイルは人それぞれで、海外旅行に頻繁に出掛ける方には価値が高いだろう。
マニュアル撮影も目立たぬ機能だが、使用頻度は高かった。マニュアル撮影といっても、絞りはNDフィルターで、被写界深度をコントロールすることはできないが、シャッター速度を落とすことができるので、動きを表現したいときには積極的に使用できる。DSC-HX5Vは望遠側でオートで撮ろうとすると、なぜか絞り(NDフィルター)がF値の高い側に設定され、手ブレ警告が頻繁に表示される。その様なケースでもマニュアル撮影で絞りを開け、シャッター速度を上げて撮影することは多かった。
スイングパノラマは便利な機能だが、お手軽なだけに画質がもう一歩といったところだ。現状は、画質だけなら複数枚撮ってパノラマソフトで合成した方がはるかに高画質な写真にすることができる。このあたりは次機種に期待したい。
不満を感じた点も書いておこう。最も不満だったのは静止画の画質。多くのシーンで解像感の低い絵になることが多かった。裏面照射型CMOSセンサー「Exmor R」のせいなのか、レンズ、画像処理エンジンのせいなのかは分からないが、個人的に静止画の画質がよければトータルの満足度は大いに向上しただろう。
操作系ではモードダイヤルを回転させたときに、液晶モニターの表示が遅く、モニターを見ながらダイヤルを止めると、実際のダイヤルはもう1つ先へ進んでいることが多かった。操作系全体も4方向ボタンへの割付が筆者の好みとは違い、露出補正など設定頻度の高い機能がメニュー画面に入らないと変更できないのは煩わしく感じた。ある設定を行なうと、他の設定の選択肢は少なくなるなど、少々癖を感じることも多かった。
利便性が高く、機能面でも斬新な面白さを持つデジタルカメラだが、静止画の画質が筆者の満足度をわずかに下げているのが現状だ。考えようによっては改善が期待できる部分なので、次機種に期待したい。
2010/7/29 00:00