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OLYMPUS OM-D E-M1【第3回】

フォーサーズレンズのAF速度を検証

 OLYMPUS OM-D E-M1は、同社のミラーレスカメラ「OM-D」シリーズとデジタル一眼レフカメラを統合する「Eシステム」シリーズのフラグシップ機と位置づけられているカメラです。その理由の1つとして、現在オリンパスから発売されている交換レンズの全てにおいて本来の能力のまま使用できる点が挙げられています。

 オリンパスから発売されているレンズには、現在2つのラインがあります。マイクロフォーサーズ用の交換レンズ「M.ZUIKO DIGITAL」レンズとフォーサーズ用である「ZUIKO DIGITAL」レンズです。

 ZUIKO DIGITALレンズはフォーサーズ用のレンズですので本来はマイクロフォーサーズカメラでは使用できません。しかし、マイクロフォーサーズマウントへと変換するフォーサーズアダプターが用意されているので、これを使用することでマイクロフォーサーズカメラでも使用できるのです。

 これまでに発売されているPENシリーズやOM-Dシリーズのマイクロフォーサーズカメラは、E-M1以外でもこのフォーサーズアダプターを装着したZUIKO DIGITALレンズが使用可能です。

 しかし、本来一眼レフカメラ用に設計されたZUIKO DIGITALレンズは、位相差AFによって最適なAFスピードが得られるように作られているため、コントラストAFによってのみフォーカス作動させるマイクロフォーサーズカメラではピントが合うまでの動作がどうしても遅くなってしまいます。

 そこでE-M1にはコントラストAFと像面位相差AFの両方を備えた「DUAL FAST AF」を搭載することによって、ZUIKO DIGITALレンズさえもフォーサーズ機「E-5」と同等のAFスピードで使用できるようになったということです。

 ◇           ◇

 そこで今回は、ZUIKO DIGITALレンズ4本をE-M1に装着してAFスピードを検証してみました。E-M5とE-5も比較対象としてテストに加えました。

左からE-M1、E-M5、E-5

 検証方法としてカメラから3m離れた位置にフォーカスターゲットを立てて、三脚に据え付けたカメラに装着したリモートケーブルのレリーズボタン半押しでAFをスタートさせ合焦させます。レンズのフォーカスを最短距離に合わせた状態からのAFスタートを2回、無限遠に合わせた状態からを2回、各レンズで広角端、望遠端にてそれぞれ行ないました。

 なお、E-M1およびE-M5は背面モニターを、E-5はファインダー内を撮影しています。マウントアダプターは「MMF-3」を使用しました。

ZUIKO DIGITAL ED 12-60mm F2.8-4 SWD

広角端ではE-M1、E-5、E-M5いずれもスピードに大きな差はありません。しかし、望遠端ではE-M5に比べE-M1は圧倒的に速くなっており、E-5と同等のスピードと言ってよいでしょう。
広角端
望遠端

ZUIKO DIGITAL ED 14-35mm F2 SWD

広角端、望遠端いずれもE-M5にくらべE-M1の方が1テンポ速く合焦するように感じます。E-5とも同等のスピードです。
広角端
望遠端

ZUIKO DIGITAL ED 50-200mm F2.8-3.5 SWD

広角端、望遠端ともにE-M1の俊敏さが目立ちます。E-M5ではコントラストAF特有の合焦点前後の行き来が大きいようです。E-M1とE-5ではそれがほぼありません。
広角端
望遠端

ZUIKO DIGITAL ED 7-14mm F4

広角端では超広角の影響かE-M5では合焦できませんでした。E-M1とE-5は同等スピードで合焦しました。望遠端ではいずれも合焦しましたが、やはりE-M5が1テンポ遅れるようです。
広角端
望遠端

 今回テストした4本のZUIKO DIGITALレンズにおいては、コントラストAFでのフォーカスとなるE-M5に比べて、像面位相差AFを搭載したE-M1のフォーカスの速さが際立つ結果となりました。

 また位相差AFでのフォーカスとなるE-5と比較してもほぼ同等の速さでフォーカスが働くこともわかりました。今回のテストでは固定されたターゲットを狙ったものなので動きのある被写体では結果が異なる場合もあるかもしれません。ただフォーサーズレンズでの撮影でも、E-M1での使用ならば十分に実使用が可能なレベルといえるでしょう。

 ◇           ◇

 フォーサーズ用レンズであるZUIKO DIGITALの最大の特徴は、ずばり高画質な描写にあります。筆者はEシステムの初代機であるE-1から、E-3、E-5と組み合せてZUIKO DIGITALを使い続けています。しかしEシリーズとOM-Dが統合された現在、ZUIKO DIGITALの性能を最大に引き出してくれるカメラはE-M1以外にありえません。

 最近は高画質なマイクロフォーサーズ用レンズもラインナップされて来ましたが、まだまだフルラインナップとは言えません。高画質なマイクロフォーサーズ用レンズが出揃うまでは高画質な描写力を持つZUIKO DIGITALレンズを活用していきたいと思っています。

 ◇           ◇

 今回はZUIKO DIGITALのHG(ハイグレード)クラスとSHG(スーパーハイグレード)クラスのなかから5本をセレクトして撮影しました。E-M1とZUIKO DIGITALの組み合せの妙をご堪能ください。

  • 作例のサムネイルをクリックすると、リサイズなし・補正なしの撮影画像をダウンロード後、800×600ピクセル前後の縮小画像を表示します。その後、クリックした箇所をピクセル等倍で表示します。
  • 縦位置で撮影した写真のみ、無劣化での回転処理を施しています。

ZUIKO DIGITAL ED 7-14mm F4

現在販売されているフォーサーズおよびマイクロフォーサーズレンズの中で、パナソニックの「LUMIX G VARIO 7-14mm F4 ASPH.」と並び、最も広い画角が撮れるSHGズームレンズ。35mm判換算で14-28mm相当の焦点域をカバーする。

レンズ前玉がドーム状に張り出すフォルムが特徴的。超広角レンズであるにも関わらず各収差も歪みもほとんど見られず解像力も驚く程に高い。E-M1との組み合せにおいてハイクオリティな描写を見せつけてくれる。
1/640秒 / F4 / 0EV / ISO200 / 絞り優先AE / WB:晴天 / 7mm
1/4秒 / F5.6 / 0EV / ISO800 / マニュアル露出 / WB:オート / 11mm
30秒 / F4 / 0EV / ISO3200 / マニュアル露出 / WB:電球 / 7mm

ZUIKO DIGITAL ED 12-60mm F2.8-4 SWD

35mm判換算で24-120mm相当となる扱いやすい焦点域をカバーするHG標準ズームレンズ。超音波駆動方式SWDを搭載しているのでフォーカスは非常にクイック。解像力が高いながらも輪郭描写は穏やかで日常的なスナップ撮影から風景、ポートレート撮影などさまざまな被写体に向く。
1/3,200秒 / F4 / +1EV / ISO200 / 絞り優先AE / WB:晴天 / 60mm
1/160秒 / F4 / 0EV / ISO200 / マニュアル露出 / WB:オート / 60mm
1/640秒 / F5.6 / +0.7EV / ISO200 / 絞り優先AE / WB:晴天 / 23mm
1/10秒 / F4 / 0EV / ISO200 / マニュアル露出 / WB:オート / 33mm
1/15秒 / F4 / 0EV / ISO800 / マニュアル露出 / WB:晴天 / 16mm
1/60秒 / F4 / 0EV / ISO800 / マニュアル露出 / WB:晴天 / 60mm

ZUIKO DIGITAL ED 14-35mm F2 SWD

ズーム全域で開放F2を誇る35mm判換28-70mm相当の大口径SHG標準ズームレンズ。浅い被写界深度によるボケを活かしたポートレート撮影に最適。

解像力も目を見張る程高く、E-M1と組み合わせることでこれまでに無い程の高い画質を発揮できる。しかし大口径だけに標準ズームとしては大きくて重いのが難点。
1/800秒 / F2 / +1EV / ISO200 / 絞り優先AE / WB:オート / 35mm
1/800秒 / F2 / +1EV / ISO200 / 絞り優先AE / WB:オート / 35mm
1/80秒 / F2 / +1.3EV / ISO200 / 絞り優先AE / WB:晴天 / 24mm
1/500秒 / F2 / -0.3EV / ISO200 / 絞り優先AE / WB:晴天 / 35mm
1/50秒 / F2 / 0EV / ISO800 / マニュアル露出 / WB:オート / 26mm
1/60秒 / F2 / 0EV / ISO800 / マニュアル露出 / WB:オート / 35mm
1/50秒 / F2 / +0.3EV / ISO800 / 絞り優先AE / WB:オート / 25mm

ZUIKO DIGITAL ED 50-200mm F2.8-3.5 SWD

35mm判換算で100-400mm相当と中望遠から超望遠域までを1本でカバーするHG望遠ズームレンズ。全焦点域において最短撮影距離が1.2mと短く、人物のクローズアップ撮影なども撮りやすい。

解像力も非常に高く、クリアかつ立体感溢れる描写が特徴。超音波駆動方式SWD搭載。2014年発売予定のオリンパス「M.ZUIKO DIGITAL ED 40-150mm F2.8 PRO」が登場するまではE-M1に相応しい唯一の高性能望遠ズームレンズといえる。
1/100秒 / F4.5 / 0EV / ISO200 / 絞り優先AE / WB:晴天 / 50mm
1/500秒 / F4 / +0.3EV / ISO200 / 絞り優先AE / WB:晴天 / 92mm
1/800秒 / F6.3 / +0.3EV / ISO200 / プログラム / WB:晴天 / 83mm

ZUIKO DIGITAL ED 50mm F2 Macro

現在、マイクロフォーサーズ機で使えるマクロレンズは少ない。マイクロフォーサーズで3本(安原製作所NANOHAx5を含む)、フォーサーズレンズで2本となる。

そのなかでF2と最も開放絞り値の明るい大口径レンズとなるこのレンズは、35mm判換算100mmのHG中望遠レンズとなり、マクロ撮影においても程よいワーキングディスタンスを得る事ができる。

ボケを活かした印象的なクローズアップ撮影や、中望遠ポートレート撮影にも最適。E-M1との組み合せにおいて非常にクリアな描写となる。ただしAFは迷いやすいのでMFでのピント合わせがお勧め。
1/125秒 / F2.8 / 0EV / ISO200 / マニュアル露出 / WB:晴天 / 50mm
1/125秒 / F2.5 / 0EV / ISO200 / マニュアル露出 / WB:晴天 / 50mm
1/100秒 / F2 / +1EV / ISO800 / 絞り優先AE / WB:オート / 50mm

 フォーサーズ用のZUIKO DIGITALレンズはデジタル一眼レフカメラ用として作られているために、マイクロフォーサーズ用レンズと比べると大きく重いのが難点といえます。しかしその高い画質はマイクロフォーサーズ機で使用するうえでも十分に力を発揮してくれます。

 またE-M1は防塵防滴性能を持つカメラですが、現時点では防塵防滴に対応したM.ZUIKO DIGITALレンズは「M.ZUIKO DIGITAL ED 12-50mm F3.5-6.3 EZ」、「M.ZUIKO DIGITAL ED 12-40mm F2.8 PRO」、「M.ZUIKO DIGITAL ED 60mm F2.8 Macro」の3本と多くありません。一方、今回撮影に使用したレンズをはじめ、SHGおよびHGクラスのZUIKO DIGITALレンズは、同じく防塵防滴性能を持つ「フォーサーズアダプターMMF-3」を使用してE-M1と組み合せることで、雨に濡れるような状況でも問題なく撮影できます。

 このようにフォーサーズ用のZUIKO DIGITALレンズは、さまざまな撮影シーンにおいてまだまだ高い存在価値を持っています。今後も撮影シーンや被写体に応じて、積極的にZUIKO DIGITALレンズを使用していくつもりです。

(モデル:夏弥

礒村浩一

(いそむらこういち)1967年福岡県生まれ。東京写真専門学校(現ビジュアルアーツ)卒。広告プロダクションを経たのちに独立。人物ポートレートから商品、建築、舞台、風景など幅広く撮影。撮影に関するセミナーやワークショップの講師としても全国に赴く。近著「マイクロフォーサーズレンズ完全ガイド(玄光社)」「今すぐ使えるかんたんmini オリンパスOM-D E-M10基本&応用撮影ガイド(技術評論社)」Webサイトはisopy.jp Twitter ID:k_isopy