気になるデジカメ長期リアルタイムレポート
ニコンD7100【第7回】
連写でD7000とAF性能を比較
Reported by 吉森信哉(2013/11/21 08:00)
現在のニコンDXフォーマットのトップモデルである「D7100」は、これまで述べてきたように、有効約2,410万画素のCMOSセンサーと光学ローパスフィルターレス仕様による“鮮鋭度の高い描写”が大きな特長(魅力)である。――しかし、これらの点に関しては、最新の下位モデル「D5300」に並ばれてしまった。しかも、D5300にはノイズ低減性能などを大幅に向上させた新画像処理エンジン「EXPEED 4」が搭載されてたりする(D7100はEXPEED 3)。
だが、D7100が“DXフォーマットのトップモデル”である所以は、その他の機能や仕様のレベルが高い点にある。
ボディの剛性や信頼性の高さ(D7100のボディは軽量かつ堅牢なマグネシウム合金製で、防塵・防滴対応になっている)もそのひとつだし、光学ファインダーの構造や精度(D7100:ガラスペンタプリズム式、倍率約0.94倍、視野率約100%。D5300:ペンタミラー式、倍率約0.82倍、視野率約95%)も違う。
また、シャッター最高速や連続撮影速度(D7100:1/8,000秒、約6コマ/秒。D5300:1/4,000秒、約5コマ/秒)などを見ても、D7100とD5300とのランクの違いは明白である。
そして、今回チェックする“AF性能”に関しても然り。D7100には上位モデルのD4やD800シリーズと同等の「51点AFシステム」が採用されているのに対して、D5300にはワンランク(?)下の「39点AFシステム」が採用されている(D4やD800シリーズとD7100とでは、開放F5.6超レンズでの対応フォーカスポイントなどが違うが)。
また、D7100にはD4譲りの新アルゴリズムが採用されており、AF初動の高速化(被写体への食いつき)が格段に向上している、とのこと。そのあたりの実際の印象も踏まえながら、D7100の“動体に対するAF性能”を実写チェックしてみたい。そう、「39点AFシステム」を採用する従来モデルD7000も参考にしながら。
動体へのAF追従を考えるなら、レンズのAF性能(特に速度)も考慮する必要があるだろう。ボク個人は、汎用性の高さだけでなく望遠域の描写性能にも惹かれて高倍率ズームの「AF-S NIKKOR 28-300mm F3.5-5.6 G ED VR」を常用している(FXフォーマットのD800で使っても満足度は高い)。
だが、AF速度に関しては“特に優れている”という印象はない。――ということで、今回の実写チェックでは“クラス最高レベルのAF速度”を謳う新タイプの80-400mm「AF-S NIKKOR 80-400mm F4.5-5.6 G ED VR」をメーカーから借用して使用する。なお、フォーカス制限切り換えスイッチは、ピント合わせの時間が短縮できる「∞-6m」のポジションに設定した。
◇ ◇
まずは、動物園のプール内のアシカを狙ってみた。この被写体は、泳いでいる時だけでなく、岩場に上がっている時も結構動いているので(まあ、個体にもよるが)、フォーカスポイントの選択に迷ってしまう。というか、特定(1点)のフォーカスポイントで捕捉するのは難しい。そこで、動く被写体に対応できるAFエリアモードの「オートエリアAF」か「3D-トラッキング」に設定することを検討する。
3D-トラッキングは、51点すべてのフォーカスポイントを使って被写体を追従するモードである。選んだフォーカスポイントで被写体にピントを合わせると、シャッターボタン半押し中は被写体の動きに合わせてフォーカスポイントが自動的に切り換わってくれる。ただし、うまく切り換わらない(追従しない)場合には、再度選んだフォーカスポイントに被写体を合わせてシャッター半押しを行なう必要がある。
目まぐるしく動く被写体を狙うには、この一連の操作はけっこう面倒だ。そこで、このケースでは「オートエリアAF」に設定することにした。こういう被写体&状況だと、まず構図決定に苦労させられるから、フォーカスポイントの選択は“カメラまかせ”のオートエリアAFにした方がベターかもしれない。
- 作例のサムネイルをクリックすると、リサイズなし・補正なしの撮影画像をダウンロード後、800×600ピクセル前後の縮小画像を表示します。その後、クリックした箇所をピクセル等倍で表示します。
まあ、レンズ画角を超望遠から中望遠くらいにすれば容易になるが、それだとAF追従チェックとしてはアマい気がする。――というわけで、超望遠400mm(35mm判換算で600mm相当)の画角にこだわりつつ、岩場の上で動き回るアシカを見つけて無理矢理アップで狙ってみた(苦笑)。
「高速連続撮影+オートエリアAF+AF-C」の設定で、いくつかのシーンを連続的に撮影してみたが、狙った被写体の手前に邪魔なモノが被らない限りは、ほぼ思い通りのピント合わせがおこなわれた。また、このシーンでは、寝ころぶ親アシカを連続撮影している最中に画面左側から子アシカが入り込んできて、途中からその子アシカの方にピントが合っている。
もちろん、これが単なる“邪魔なモノ”だと失敗になるが、この子アシカの場合だと、結果的に好ましいフォーカス制御になっている。
◇ ◇
ところでボクの場合、「動体に対するAF性能をチェック」と言って真っ先に連想するのが“向かってくる列車”である(お決まりで申し訳ないが)。そこでの“AF初動の被写体への食いつき”はどうか? また、高速連続撮影(6コマ/秒)でどこまで追従してくれるのか? 次は、そういった点をチェックしてみたい。
アシカの撮影では、被写体の動きが読みにくいので、AFエリアモードを「オートエリアAF」に設定した。しかし、向かってくる列車の動きはある程度は読めるし、構図決定も比較的やりやすい(動き回る動物に比べると)。
そこで、ここではAFエリアモードを「ダイナミックAF・21点」に設定した。このダイナミックAFは、基本的にはシングルポイントAFと同じように使用する。つまり、まずピントを合わせたい被写体の“画面の位置”に重なるフォーカスポイント(1点)を選択するのである。
だが、選択したフォーカスポイントから被写体が一時的に外れた場合には、周辺のフォーカスポイントのピント情報を利用してピントを合わせが行なわれる。これが「ダイナミックAF」の特徴である。なお、ここで使用するフォーカスポイントの数(選択したフォーカスポイントも含めて)は「9点、21点、51点」の中から選択する。
D7100
そして、接近した列車の前面が画面中央から外れる直前の「計21コマ」のAF追従状態をチェックしてみた。まず、ニコンの画像管理ソフト「ViewNX 2」を使用して、そのコマがAF追従しているか否かをチェックする(カメラ再生でもチェック可能)。
AF追従していなかった(再生画面上にフォーカスポイントが表示されない)のは、1コマ目、6コマ目、そして19コマ目と20コマ目の計4コマ。ただし、等倍の状態でワイパーの根元(ピントの状態が確認しやすい部分。最後のコマでは写ってないけど)をチェックすると、フォーカスを外しているのは最後の方の19コマ目と20コマ目くらいで、その他は1コマ目から安定して追従しているように見える。
まあ、最初から5コマ目くらいまでは、選択した画面中央のフォーカスポイントが列車前面より少し奥まった運転席内を捉えているせい(?)で、わずかにピントがアマい感じもするが(D7000よりも高画素なので、そのあたりも目立つ)。
D7000
◇ ◇
結論から言うと、今回の“動体に対するAF性能”の実写チェックでは、D7100の特長として謳われている“AF初動の被写体への食いつきの良さ”を実感することはできなかった。
まあ、D7100の1コマ目がAF追従していなかった(再生画面上にフォーカスポイントが表示されない)のは、この手の被写体だと避けられない“撮影毎の状況のバラツキ”が影響している可能性が大きいだろう。
それに、得られた結果に関しても、悪かったという意味ではなく、D7000との差が出なくて“どちらも好結果”という意味である。もっとシビアな条件(被写体の移動速度が速い、さらに望遠、明るい絞り値など)だと、その差が出るのかもしれない。いずれにせよ、AF追従性能の良好さは感じることができた。