今回のテーマは、明るい屋外でも絞りを開けるべく、A12 ユニットにNDフィルターをつけて撮影してみた、という内容だ。
写真奥はGR LENS A12 50mm F2.5 MACROを装着したGXR(左)とGR LENS A12 28mm F2.5(右)。手前左からケンコー「40.5mm PRO ND2」、ケンコー「40.5mm PRO ND4」、マルミ光機「DHGスーパーサーキュラーPLD」(40.5mm) |
APS-Cサイズ相当の撮像素子を搭載する2つのカメラユニット、「GR LENS A12 28mm F2.5」(以下A12 28mm)と「GR LENS A12 50mm F2.5 MACRO」(以下A12 50mm)は、撮像素子が大き目で、さらにレンズの開放F値が明るい。そのため、ボケ表現をとりいれた撮影が可能だ。28mm相当のA12 28mmユニットでさえ条件があえば、コンパクトデジタルカメラでは得られない大きなボケが得られる。この点を評価してGXRを手にした人も多いだろう。
ただしA12 28mm、A12 50mmとも、明るい場所で絞りを開けて撮影するのが苦手なことはあまり知られていない。まず、最低感度がISO200であり、この時点でISO100スタートの他機種よりもすでに不利。加えて最高シャッター速度が、絞りを開けるほど低下するのが痛い。
スペック上の最高シャッター速度は、A12 28mm、A12 50mmとも1/3,200秒だが、例えば開放絞りのF2.5だと1/1,000秒に落ちてしまう。絞りがシャッターを兼ねるレンズシャッター機構を採用しているためで、シャッターを閉じる=絞りを閉めるという動作から、絞りを開けているときほど、シャッターを速く閉じられない=最高シャッター速度が遅くなる、というわけ。
例えば、ライトバンクの発光面にA12 50mmのレンズを近接させて実験したところ、絞り優先モードでの最高シャッター速度は次のようになった(絞り自動シフトはOFF)。
・絞り値別の最高シャッター速度- F2.5:1/1,000秒、F2.8:1/1,250秒、F3.2:1/1,600秒、F3.5:1/1,600秒、F4.0:1/2,000秒、F5.0:1/2,500秒、F5.6:1/2,500秒、F7.1:1/3,000秒
絞りを開けるほど最高シャッター速度が遅くなるので、露出オーバーを防ぐため、結局絞らざるを得ない。ではNDフィルターを使ってレンズに入る光量を落としてやれば、明るい光源下でも絞り開放が可能なのでは、と考えたわけだ。
A12 28mm、A12 50mmとも、フィルター径は40.5mm。ミラーレス機の充実で小径フィルターの種類も増えており、売場ではあっさり40.5mm径のND2とND4を見つけることができた。ついでの40.5mm径のPLフィルターも一緒に購入してみた。都内のカメラ系量販店での購入価格は下記の通り。一眼レフカメラ用の77mm径用などと比べると、驚くほど安い。
- ケンコー「40.5mm PRO ND2」:1,260円
- ケンコー「40.5mm PRO ND4」:1,260円
- マルミ光機「DHGスーパーサーキュラーPLD」(40.5mm):5,670円
ケンコー「40.5mm PRO ND2」装着例 | ケンコー「40.5mm PRO ND4」装着例 |
マルミ光機「DHGスーパーサーキュラーPLD」(40.5mm)装着例 |
さらに、小径フィルター専用を謳うフィルターケースも発見したので買ってみた。ケンコーのDFC-GSという製品で、46mm径より小径のフィルターを4枚収納できる。形状は、記録メディアケースでよく見られる3つ折タイプ。収納ポケットの大きさがCFにもジャストサイズだったため、もともとはCF用ケースとして作られた製品をアレンジして転用している製品なのかもしれない。販売価格は882円だった。
一緒に買った小径フィルター用ケース。46mm径までのフィルター4枚を収納できる。色んなフィルターをひとまとめにできるのでお気に入り |
結果としては当たり前だけど、NDフィルターは予想通りの効果を発揮した。これまで絞りを開けられなかった明るいシーンでも、絞りをある程度開けられるようになる。何でもボカせば良いわけではないのはわかるが、とにかくフォーカルプレーンシャッター搭載のデジタル一眼レフカメラに近い使い勝手がGXRで実現するのがうれしい。
実写サンプルは、自動絞りシフトをオンにして撮影した。NDフィルターの減光効果が高まるにつれ、絞りが明るくなり、被写界深度が浅くなっているのがわかる。
また、改めてフィルターがコンパクトで持ち運びやすい点に感心した。さらに、一眼レフカメラ用の77mm径などに比べると、価格が安いのも利点だろう。特にPLフィルターは、他のフィルターより価格が高く、経年劣化を伴うので買い替えも必要。メジャーなフィルターなので活用法は知られているものの、手を出さずにいた人もいるだろう。それが40.5mmなら気軽に試せるわけだ。
実は動画もNDフィルターをつけたり外したりして撮影してみた。GXRの動画はマニュアル露出に対応していないので、ボケをコントロールできない。NDフィルターを使うことでボカせるのではと期待したが、今回の条件ではほとんど変化なかった。
【動画】フィルターなし / GXR / GR LENS A12 50mm F2.5 MACRO / 約33.9MB / 1,280×720 / 24fps / Motion JPEG |
【動画】ND2 / GXR / GR LENS A12 50mm F2.5 MACRO / 約41.8MB / 1,280×720 / 24fps / Motion JPEG |
【動画】ND4 / GXR / GR LENS A12 50mm F2.5 MACRO / 約49.5MB / 1,280×720 / 24fps / Motion JPEG |
【動画】ND2+ND4 / GXR / GR LENS A12 50mm F2.5 MACRO / 約45.5MB / 1,280×720 / 24fps / Motion JPEG |
ともあれこの夏は、GXRとともにNDフィルターも旅行に持って行こうと決心。同時に買ったPLフィルターも夏場に活躍しそうなアイテムだし、第9回で紹介した40.5mm径のクローズアップレンズも旅先で役立ちそうだ。コンパクトなGXRシステムに加えて小さなフィルターたちも連れて出かけたいと思う。
2011/7/29 00:00