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ソニーα55【第5回】

ボケ味にこだわる“プレミアムレンズ”で春を満喫

Reported by 伊達淳一


 αレンズはボケ味にこだわったレンズが多く、円形絞りにより、絞っても絞り羽根が非常に美しい形状を保っているのが特徴だが、とりわけボケの美しさを徹底的に追求しているのがミノルタ「STF 135/2.8[T4.5]」と同「AF SOFT FOCUS 100mm F2.8」。どちらも、ミノルタの誇る至高の銘玉だ。

ボケにこだわったミノルタ製「STF 135/2.8[T4.5]」(上)と同「AF SOFT FOCUS 100mm F2.8」(下)

 ボクもαユーザーとなったからには1度は使ってみたいと思っていたのだが、この春、ようやく念願が叶い、大好きなチューリップを撮影することができた。惜しむらくは、今年に入ってから寒い日が続いたためかチューリップの生育が遅れ、茎が短かったり花びらが傷ついているチューリップが多く、なおかつ、千葉の佐倉ふるさと広場や柏のあけぼの山公園にもスケジュールが合わず、撮影に行けなかったので、まだまだこれらのレンズにふさわしい描写を引き出せてはいなかったりするが、それでもほかのレンズとは違う「ボケ味」は十分に感じ取ってもらえるのではないかと思う。

“美しいボケ”とはなにか?

 と、その前に、ボケ味について一講釈。ボクは光学設計者ではないので、厳密には不正確な部分があるかもしれないが、収差の残し方と口径食がボケ味を左右する大きな要因だ(と思っている)。球面収差をしっかり補正すると、後ボケの輪郭に縁取りが出やすくなり、これが中途半端なボケ量になると、“二線ボケ”と呼ばれる非常にうるさいボケになる。そのため、一般に、後ボケを重視すると前ボケがうるさくなり、逆に前ボケを重視すると後ボケがうるさくなる。

 ところが、デジタルになってピクセル等倍鑑賞される時代になってからは、像面での収差をいかに抑えるかがポイントになってきて、絞り開放からシャープな像を結ぶことを期待されているので、球面収差をしっかりと補正することとなり、後ろの光点ボケの輪郭にクッキリと明るい縁取りが現れるレンズが多い。また、非球面レンズを使っていると、光点ボケに研削・研磨の跡が出たり、幾重もの同心円状のパターンが出たりするのも、個人的には大嫌いだ。いずれも、像面(ピントが合っている部分)での描写性能を重視した結果だ。

 一方、口径食とは、光点ボケの形が円ではなく、レモンや半月のように一部欠けたように写る現象で、レンズ径に余裕がなく、光束の一部が遮られてしまうことで発生する。英語では“vignetting”と呼ばれ、周辺光量低下と根は同じ。開放から2〜3段絞って撮影すると解消するが、今度は絞り羽根の形状がボケに反映されるので、絞ったときの絞り羽根の形状が角張っていたり、いびつだったりすると、その形状がそのまま光点ボケとなって現れる。つまり、絞り開放で口径食ができるだけ少ないことと、絞り羽根の形状が絞ったときに円形に近いきれいな多角形になっていることが、きれいな光点ボケを得るための必須条件だが、35mmフルサイズ用のレンズをAPS-Cサイズのカメラで使えば、口径食が起きている周辺部は写らないし、最近は円形絞りを採用するレンズも増えてきたので、ボケの形状については、フィルム時代よりは良くなっているように思う。

STF 135/2.8[T4.5](右)と同AF SOFT FOCUS 100mm F2.8(左)の大きさ比較。フィルター径はそれぞれ72mmと55mmだ

 とまあ、最近のレンズは、ピクセル等倍鑑賞を意識して無収差を目差した(あくまで目差しているだけであって実現しているわけではないが……)蒸留水的なレンズなのに対し、ミノルタ時代に設計されたSTF 135/2.8[T4.5]とAF SOFT FOCUS 100mm F2.8は、ボケの美しさを徹底的に追求したレンズで、それぞれ異なるアプローチで美しいボケを実現している。

ミノルタ「STF 135/2.8[T4.5]」

 STFとは、スムース・トランス・フォーカスの略で、「アポダイゼーション光学エレメント」という特殊効果フィルターにより、光点ボケがクッキリとした円ではなく、まるで球体のようになだらかなグラデーションのボケが得られるMFレンズだ。

ミノルタ「STF 135/2.8[T4.5]」

 アポダイゼーション光学エレメントとは、周辺部ほどND効果が高くなるフィルターで、レンズの周辺にいくほど通る光の量が少なくなる。像面での周辺光量低下は起こさず、ボケに対してのみ周辺光量を落とすことで、丸みを帯びた光点ボケや溶け込むような美しいボケ味を実現している。アポダイゼーション光学エレメントにより、通常のレンズよりも総光量は少なくなるので、レンズ口径と焦点距離で算出されるFナンバーとしては“F2.8”というスペックながら、実質的な光量はF4.5相当。「T4.5」というのは、この実質的な光量を示すTナンバーだ。

 また、絞り設定リングが備わっていて、T4.5-6.7までの範囲は10枚羽根構成の手動絞りで撮影できるので、9枚羽根構成の自動絞り(もちろん円形絞りだ)よりもさらに円形に近い美しい形状の光点ボケを得ることができる。ただ、当然、絞り込んだ状態になるので、光学ファインダーだと像が暗くなり、ピントの山も確認しづらくなるが、「α55」は常時ライブビュー表示なので、絞ってもファインダー像は暗くならないのが快適。拡大表示を併用すれば、MFとはいえ、ピントの山を確実に掴むことができる。35mmフルサイズの「α900」で撮影しないと、STF 135/2.8[T4.5]本来の描写の凄さはわからないのかもしれないが、撮影の容易さという点ではα55のほうが敷居が低い。

ミノルタSTF 135/2.8[T4.5]の手動絞り(手前)と自動絞り(奧)。手動絞りはT6.7まで絞り込んだときにもっとも美しい形状となる。写真はF5.6付近の絞り形状。奥に見えるのが自動絞りで、絞りリングを[A]にセットしたときに、自動絞りが動作する

 このレンズを使うときに注意したいのは、輝度差の大きな輪郭にパープルフリンジが出現しやすいこと。絞り開放ほどパープルフリンジが出やすいが、ライブビューの拡大表示を使えば、パープルフリンジの有無は一目瞭然なので、パープルフリンジが目立つ場合は少し絞り込んで撮影したい。また、最短撮影距離は0.87mで、焦点距離135mmのレンズとしては寄れるほうだが、花などの撮影ではもっと寄りたいと思うケースも多いので、薄めの中間リングもぜひ用意しておくといいだろう。

 ちなみに、このレンズはソニーにも受け継がれ、現在も「135mm F2.8[T4.5]STF」(SAL135F28)として新品で入手が可能だ。外観デザインは多少異なるが、光学系は同じ。個人的にはミノルタ銘にこだわりたかったので、状態のいい中古で手に入れたのだが、後々のメンテナンスを考えると、現行製品のソニー版を購入したほうが安心かも……(現在、ミノルタ製品のメンテナンスはケンコーが担当しているので、現時点ではメンテナンスは可能だが、いつまでメンテナンスを継続してくれるかは不明)。

ミノルタ「AF SOFT FOCUS 100mm F2.8」

 いわゆる球面収差を利用したソフトフォーカスレンズで、ソフトフォーカスをかけた状態でもAF撮影が可能。0〜3まで無段階にソフトフォーカスレベル(強度)を可変できる。残念ながらソニーには引き継がれず、絶版となってしまったレンズだ。

ミノルタ「AF SOFT FOCUS 100mm F2.8」

 ソフトフォーカスの強度を変えると、フローティング機構によりレンズ全長が変化する。ソフトフォーカス効果がまったくない[0]の位置がもっともレンズが繰り出された状態となり、ソフトフォーカスを強めに設定するほどレンズ全長が短くなっていく。また、ソフトフォーカスの強度を変えると、画角やピント位置も変わるので、ソフトフォーカスリングを動かしたら、必ずピントを合わせ直す必要がある。

 最近はデジタルフィルターで簡単にソフトフォーカス効果が得られるので、もはやソフトフォーカスレンズなんて不要と思われるかもしれないが、やはり光学的なソフトフォーカスは、デジタル処理によるソフトフォーカスとはひと味違う。

 それに、このAF SOFT FOCUS 100mm F2.8は、なんと口径食が発生しないという特徴を持っている。35mmフルサイズのα900でまったく口径食が発生しないかどうかは自分の目で確かめていないが、少なくともAPS-Cサイズのα55では、絞り開放からほぼ完璧な円を保った玉ボケが得られた。正直、これほど素直で美しいボケは、これまでに見たことがないほど。ソフトフォーカスを無理に使わなくても、十分、このレンズを持ち出す価値があると思う。

ミノルタAF SOFT FOCUS 100mm F2.8。ソフトフォーカス目盛りを[0]にしたときに、もっとも鏡筒が長くなる

 ただ、STF 135/2.8[T4.5]と同様、絞り開放では、輝度差の大きな輪郭部分にパープルフリンジが出やすいので、金属の反射や白い被写体がピント面に含まれる場合は注意が必要。最短撮影距離は0.8mで、花などの撮影ではやはり中間リングを用意しておきたい。また、ソフトフォーカス効果を使うと、球面収差が増えて、ピントが合った部分がソフトな描写になり、後ボケもやわらかくなるが、前ボケは二線ボケが強くなるので、中途半端な前ボケは禁物だ。

 前述したように、現在は絶版となってしまったレンズで、中古でたまにみかけても、当時の新品以上のプレミア価格で販売されているケースも多い。もし、実売6万円以内の良品を見かけたら、後先考えず確保しておくのが賢明。できることなら、ソニーからの復刻を望みたいレンズだ。

とことんボケにこだわった銘レンズで写真を楽しんではいかがだろうか

実写サンプル

  • 作例のサムネイルをクリックすると、リサイズなし補正なしの撮影画像をダウンロード後、長辺800ピクセル前後の縮小画像を表示します。その後、クリックした箇所をピクセル等倍で表示します。
  • 縦位置の画像は、非破壊で回転させています。

・ミノルタ「STF 135/2.8[T4.5]」

α55 / STF 135/2.8[T4.5] / 4,912×3,264 / 1/250秒 / F4.5 / +0.7EV / ISO250 / 絞り優先AE / WB:オート / 135mm α55 / STF 135/2.8[T4.5] / 4,912×3,264 / 1/250秒 / F4.5 / +0.7EV / ISO200 / 絞り優先AE / WB:オート / 135mm
α55 / STF 135/2.8[T4.5] / 4,912×3,264 / 1/250秒 / F4.5 / +1EV / ISO100 / 絞り優先AE / WB:オート / 135mm α55 / STF 135/2.8[T4.5] / 4,912×3,264 / 1/500秒 / F4.5 / +0.3EV / ISO100 / 絞り優先AE / WB:オート / 135mm
α55 / STF 135/2.8[T4.5] / 4,912×3,264 / 1/500秒 / F4.5 / +0.3EV / ISO400 / 絞り優先AE / WB:オート / 135mm α55 / STF 135/2.8[T4.5] / 4,912×3,264 / 1/60秒 / F4.5 / +0.3EV / ISO100 / 絞り優先AE / WB:オート / 135mm
α55 / STF 135/2.8[T4.5] / 4,912×3,264 / 1/200秒 / F4.5 / +0.7EV / ISO200 / 絞り優先AE / WB:オート / 135mm α55 / STF 135/2.8[T4.5] / 4,912×3,264 / 1/160秒 / F4.5 / +0.3EV / ISO200 / 絞り優先AE / WB:オート / 135mm
α55 / STF 135/2.8[T4.5] / 4,912×3,264 / 1/500秒 / F4.5 / +0.3EV / ISO200 / 絞り優先AE / WB:オート / 135mm α55 / STF 135/2.8[T4.5] / 3,264×4,912 / 1/250秒 / F4.5 / +0.7EV / ISO200 / 絞り優先AE / WB:オート / 135mm
α55 / STF 135/2.8[T4.5] / 3,264×4,912 / 1/250秒 / F5.6 / +0.3EV / ISO125 / 絞り優先AE / WB:オート / 135mm α55 / STF 135/2.8[T4.5] / 3,264×4,912 / 1/250秒 / F4.5 / +0.7EV / ISO200 / 絞り優先AE / WB:オート / 135mm
α55 / STF 135/2.8[T4.5] / 3,264×4,912 / 1/640秒 / F4.5 / +0.3EV / ISO200 / 絞り優先AE / WB:オート / 135mm α55 / STF 135/2.8[T4.5] / 3,264×4,912 / 1/640秒 / F4.5 / +0.7EV / ISO200 / 絞り優先AE / WB:オート / 135mm
α55 / STF 135/2.8[T4.5] / 4,912×3,264 / 1/320秒 / F5 / 0EV / ISO100 / 絞り優先AE / WB:太陽光 / 135mm α55 / STF 135/2.8[T4.5] / 3,264×4,912 / 1/400秒 / F5.6 / 0EV / ISO100 / 絞り優先AE / WB:オート / 135mm
α55 / STF 135/2.8[T4.5] / 4,912×3,264 / 1/400秒 / F5 / +0.3EV / ISO100 / 絞り優先AE / WB:オート / 135mm α55 / STF 135/2.8[T4.5] / 4,912×3,264 / 1/250秒 / F5.6 / +0.3EV / ISO800 / 絞り優先AE / WB:オート / 135mm
α55 / STF 135/2.8[T4.5] / 3,264×4,912 / 1/320秒 / F4.5 / +0.3EV / ISO100 / 絞り優先AE / WB:太陽光 / 135mm α55 / STF 135/2.8[T4.5] / 3,264×4,912 / 1/250秒 / F4.5 / +0.3EV / ISO160 / 絞り優先AE / WB:太陽光 / 135mm

・ミノルタ「AF SOFT FOCUS 100mm F2.8」

α55 / AF SOFT FOCUS 100mm F2.8 / 4,912×3,264 / 1/250秒 / F3.5 / +0.7EV / ISO100 / 絞り優先AE / WB:太陽光 / 100mm α55 / AF SOFT FOCUS 100mm F2.8 / 4,912×3,264 / 1/640秒 / F3.5 / +0.7EV / ISO100 / 絞り優先AE / WB:太陽光 / 100mm
α55 / AF SOFT FOCUS 100mm F2.8 / 3,264×4,912 / 1/640秒 / F2.8 / +1EV / ISO100 / 絞り優先AE / WB:オート / 100mm α55 / AF SOFT FOCUS 100mm F2.8 / 4,912×3,264 / 1/640秒 / F3.2 / +0.3EV / ISO100 / 絞り優先AE / WB:オート / 100mm
α55 / AF SOFT FOCUS 100mm F2.8 / 4,912×3,264 / 1/320秒 / F4 / 0EV / ISO100 / 絞り優先AE / WB:オート / 100mm α55 / AF SOFT FOCUS 100mm F2.8 / 4,912×3,264 / 1/1250秒 / F2.8 / 0EV / ISO100 / 絞り優先AE / WB:オート / 100mm
α55 / AF SOFT FOCUS 100mm F2.8 / 4,912×3,264 / 1/640秒 / F3.2 / -0.3EV / ISO200 / 絞り優先AE / WB:オート / 100mm α55 / AF SOFT FOCUS 100mm F2.8 / 4,912×3,264 / 1/500秒 / F3.2 / 0EV / ISO100 / 絞り優先AE / WB:オート / 100mm
α55 / AF SOFT FOCUS 100mm F2.8 / 4,912×3,264 / 1/640秒 / F3.2 / 0EV / ISO200 / 絞り優先AE / WB:オート / 100mm α55 / AF SOFT FOCUS 100mm F2.8 / 4,912×3,264 / 1/500秒 / F3.2 / +1EV / ISO200 / 絞り優先AE / WB:オート / 100mm
α55 / AF SOFT FOCUS 100mm F2.8 / 4,912×3,264 / 1/500秒 / F3.2 / +1EV / ISO200 / 絞り優先AE / WB:オート / 100mm α55 / AF SOFT FOCUS 100mm F2.8 / 4,912×3,264 / 1/500秒 / F3.2 / +1EV / ISO200 / 絞り優先AE / WB:オート / 100mm
α55 / AF SOFT FOCUS 100mm F2.8 / 3,264×4,912 / 1/320秒 / F3.2 / +0.3EV / ISO200 / 絞り優先AE / WB:オート / 100mm α55 / AF SOFT FOCUS 100mm F2.8 / 4,912×3,264 / 1/500秒 / F3.2 / 0EV / ISO100 / 絞り優先AE / WB:オート / 100mm
α55 / AF SOFT FOCUS 100mm F2.8 / 4,912×3,264 / 1/160秒 / F3.2 / +0.7EV / ISO125 / 絞り優先AE / WB:オート / 100mm





伊達淳一
1962年生まれ。千葉大学工学部画像工学科卒業。写真、ビデオカメラ、パソコン誌でカメラマンとして活動する一方、その専門知識を活かし、ライターとしても活躍。黎明期からデジタルカメラを専門にし、カメラマンよりもライター業が多くなる。自らも身銭を切ってデジカメを数多く購入しているヒトバシラーだ。ただし、鳥撮りに関してはまだ半年。飛びモノが撮れるように日々精進中なり。

2011/5/25 00:00