【 2016/05/27 】
【 2016/05/26 】
【 2016/05/25 】
【 2016/05/24 】
【 2016/05/23 】

リコーGXR【第7回】

GR DIGITAL IIIと28mm対決

Reported by 本誌:折本幸治


 2010年秋にGR LENS A12 28mm F2.5(以下A12 28mm)が出たことで、GXRはGR DIGITAL IIIと比較されることが多くなった。確かに両モデルとも、35mm判換算で焦点距離28mm相当という画角は同じ。リコー独特の操作性も似通っている。

 しかし両機種における最大の違いは、撮像素子の大きさだ。具体的には、A12 28mmがAPS-Cサイズ相当、GR DIGITAL IIIは1/1.7型CCDであり、ご存知の通り撮像素子の大きさは、本体サイズをはじめ、様々な面でデジタルカメラの性格を規定する。画角が同じならば、なおさらその差がはっきりすることだろう。

 そこで今回、A12 28mmとGR DIGITAL IIIを同時に使う機会を得たので、両者を比べた印象を記しておきたい。

 まず本体サイズを比べてみる。当然、GXR+A12 28mmの方が大きく、それなりに重量感を覚える。撮影時の総重量は、公式には約410gとなっている。手に持つとコンパクトデジタルカメラとは違う本格的な撮影の気構えを強いられる感じで、個人的な感覚としては、マイクロフォーサーズなどのミラーレス機を持ち歩くときに近い。

 グリップも握り込めるしっかりした大きさがあり、手にもってぶら下げていても安心感がある。右手の小指が微妙に余らない(持ち方によっては余る人もいる)点も秀逸だし、背面には右手親指を置く場所がしっかり確保されているのもありがたい。コンパクトデジタルカメラを長時間使ったときに感じる疲れや狭苦しさがないのは、GXRのもっと注目されてよい部分だと思う。

左がGXR+GR LENS A12 28mm F2.5、右がGR DIGITAL III(以下同)

 対するGR DIGITAL IIIは、見ての通り軽量かつコンパクト。奥行きが薄く、衣服のポケットにもすっぽりと入る。ハードな外見にもかかわらず、ちょっとした外出でも持ち出す際のハードルが少ない。あまたあるコンパクトデジタルカメラとは一線を画するものの、GXR+A12 28mmに比べると、少しは気軽な雰囲気をたたえているのが特徴だ。ファンが多い理由のひとつだろう。

 ただしグリップは握るというより、つまむ感じになる。ボタン類の小ささからくる扱いづらさも弱点だろう。もっとも、ボタンの問題は、GR DIGITAL IIIだけを使っている分にはあまり気にならない。

 液晶モニターは、3型92万ドットのGXRが広くて高精細。液晶表示のフレームレートもGXR+A12 28mmの方が滑らかだ。EVFが用意されているのはGXRだけだが、個人的には広角単焦点レンズのGR DIGITAL IIIには、光学ファインダーの方が似合うと思う。

 次にF5.6まで絞り、近景から遠景までをパンフォーカス気味に収めた画像を比較してみた。ついでに画像設定を変えて同一シーンを撮影してみたが、両モデルで絵作りの性格は見事なまでに同じ。強いていえば、スタンダード設定でGR DIGITAL IIIの方が、わずかに鮮やかでコントラストが高いようだ。

  • 作例のサムネイルをクリックすると、RAW、またはJPEGで撮影したリサイズなし・補正なしの画像をダウンロード後、800×600ピクセル前後の縮小画像を表示します。その後、クリックした箇所をピクセル等倍で表示します。
  • RAW現像はいずれもAperture 3で行ないました。現像時にパラメータを変化させていません。
ビビッド / GXR A12 / GR LENS A12 28mm F2.5 / JPEG / 約4.2MB / 4,288×2,848 / 1/1,740秒 / F5.6 / 0.0EV / ISO200 / WB:オート / 18.3mm ビビッド / GR DIGITAL III / JPEG / 約3.5MB / 3,648×2,736 / 1/440秒 / F5.6 / 0.0EV / ISO64 / WB:オート / 6mm
スタンダード / GXR A12 / GR LENS A12 28mm F2.5 / JPEG / 約4.2MB / 4,288×2,848 / 1/1,740秒 / F5.6 / 0.0EV / ISO200 / WB:オート / 18.3mm スタンダード / GR DIGITAL III / JPEG / 約3.5MB / 3,648×2,736 / 1/440秒 / F5.6 / 0.0EV / ISO64 / WB:オート / 6mm
白黒 / GXR A12 / GR LENS A12 28mm F2.5 / JPEG / 約3.9MB / 4,288×2,848 / 1/1,740秒 / F5.6 / 0.0EV / ISO200 / WB:オート / 18.3mm 白黒 / GR DIGITAL III / JPEG / 約3.4MB / 3,648×2,736 / 1/440秒 / F5.6 / 0.0EV / ISO64 / WB:オート / 6mm
セピア / GXR A12 / GR LENS A12 28mm F2.5 / JPEG / 約4.1MB / 4,288×2,848 / 1/1,740秒 / F5.6 / 0.0EV / ISO200 / WB:オート / 18.3mm セピア / GR DIGITAL III / JPEG / 約3.4MB / 3,648×2,736 / 1/440秒 / F5.6 / 0.0EV / ISO64 / WB:オート / 6mm

 細部に目を移すと、A12 28mmの方がシャープで描写が細かい。画素数が多いというのもあるが、GR DIGITAL IIIはノイズ低減処理によるものか、ディテールが喪失しているように感じられる。この辺にも、APS-Cサイズ相当の撮像素子が持つ余裕が現れているようだ。

 ただしRAWになるとGR DIGITAL IIIもかなり健闘しており、JPEGよりもぐっとディテールがしっかりする。GXR+A12 28mmには適わないものの、最近のコンパクトデジタルカメラで良く見る溶けたようなJPEGの等倍表示からすると、ずいぶん細密な表現になっている。

 上記の印象は、絞りを1段ずつ変えながら撮った遠景の画像でも同じだった。両機種の色の出方は驚くほど似通っており、GXR+A12 28mmの方があきらかにシャープ。このサンプルでは階調性に大きな差は感じられないが、GXR+A12 28mmの方がわずかにシャドウ側の階調が深い。影に隠れた木の葉をより再現しているのは、GXR+A12 28mmの方だ。

  F1.9 / GR DIGITAL III / RAW / 約4.5MB / 2,732×3,656 / 1/32秒 / -1.0EV / ISO64 / WB:屋外 / 6mm
F2.5 / GXR A12 / GR LENS A12 28mm F2.5 / RAW / 約6.1MB / 2,846×4,288 / 1/68秒 / -1.0EV / ISO200 / WB:屋外 / 18.3mm  
F2.8 / GXR A12 / GR LENS A12 28mm F2.5 / RAW / 約6.1MB / 2,846×4,288 / 1/60秒 / -1.0EV / ISO200 / WB:屋外 / 18.3mm F2.8 / GR DIGITAL III / RAW / 約4.6MB / 2,732×3,656 / 1/18秒 / -1.0EV / ISO64 / WB:屋外 / 6mm
F4 / GXR A12 / GR LENS A12 28mm F2.5 / RAW / 約6.2MB / 2,846×4,288 / 1/28秒 / -1.0EV / ISO200 / WB:屋外 / 18.3mm F4 / GR DIGITAL III / RAW / 約4.7MB / 2,732×3,656 / 1/10秒 / -1.0EV / ISO64 / WB:屋外 / 6mm
F5.6 / GXR A12 / GR LENS A12 28mm F2.5 / RAW / 約6.2MB / 2,846×4,288 / 1/16秒 / -1.0EV / ISO200 / WB:屋外 / 18.3mm F5.6 / GR DIGITAL III / RAW / 約4.5MB / 2,732×3,656 / 1/5秒 / -1.0EV / ISO64 / WB:屋外 / 6mm
F8 / GXR A12 / GR LENS A12 28mm F2.5 / RAW / 約6.1MB / 2,846×4,288 / 1/8秒 / -1.0EV / ISO200 / WB:屋外 / 18.3mm F8 / GR DIGITAL III / RAW / 約4.2MB / 2,732×3,656 / 1/2秒 / -1.0EV / ISO64 / WB:屋外 / 6mm

※GXR+GR LENS A12 28mm F2.5のF11〜F22は省略

 とはいえ、GR DIGITAL IIIの画質も、正直いってかなりのものに感じる。GXR+A12 28mmと比べてしまうとさすがに見劣りを覚えるものの、これくらいシャープで階調が豊かなら用途は多い。改めて、コンパクトデジタルカメラの画像も馬鹿にできないと思った。

 高感度撮影では、一転して両機種で大きな差がついた。もちろんGXR+A12 28mmの方が高画質で、ほぼ2段くらいノイズが少ない。描写のくずれもISO1600まで感じられず、被写体によってはISO3200でも十分に使えそうだ。

  ISO64 / GR DIGITAL III / RAW / 約1.8MB / 3,656×2,732 / 1/2秒 / F2.8 / 0.0EV / WB:屋外 / 6mm
  F2.8 / GR DIGITAL III / RAW / 約2.0MB / 3,656×2,732 / 1/3秒 / 0.0EV / ISO100 / WB:屋外 / 6mm
ISO200 / GXR A12 / GR LENS A12 28mm F2.5 / RAW / 約2.4MB / 4,288×2,846 / 1/6秒 / 0.0EV / WB:屋外 / 18.3mm ISO200 / GR DIGITAL III / RAW / 約1.7MB / 3,648×2,736 / 1/6秒 / F2.8 / 0.0EV / WB:屋外 / 6mm
ISO400 / GXR A12 / GR LENS A12 28mm F2.5 / RAW / 約2.9MB / 4,288×2,846 / 1/12秒 / F2.8 / 0.0EV / WB:屋外 / 18.3mm ISO400 / GR DIGITAL III / RAW / 約2.7MB / 3,656×2,732 / 1/13秒 / F2.8 / 0.0EV / WB:屋外 / 6mm
ISO800 / GXR A12 / GR LENS A12 28mm F2.5 / RAW / 約2.9MB / 4,288×2,848 / 1/23秒 / F2.8 / 0.0EV / WB:屋外 / 18.3mm ISO800 / GR DIGITAL III / RAW / 約3.3MB / 3,656×2,732 / 1/24秒 / F2.8 / 0.0EV / WB:屋外 / 6mm
ISO1600 / GXR A12 / GR LENS A12 28mm F2.5 / RAW / 約4.4MB / 4,288×2,846 / 1/45秒 / F2.8 / 0.0EV / WB:屋外 / 18.3mm ISO1600 / GR DIGITAL III / RAW / 約4.1MB / 3,656×2,732 / 1/48秒 / F2.8 / 0.0EV / WB:屋外 / 6mm
ISO3200 / GXR A12 / GR LENS A12 28mm F2.5 / RAW / 約5.6MB / 4,288×2,846 / 1/90秒 / F2.8 / 0.0EV / WB:屋外 / 18.3mm  

 両機種とも同じ28mm相当であり、パンフォーカスによる目測撮影をはじめ、いわゆるスナップ撮影での使い勝手はあまり変わりない。GR DIGITAL IIIの方が少ない絞りでパンフォーカスになるぐらいだろう。

 ただし明らかに違うのが、最短撮影距離とボケ。ボケはさすがにAPS-Cサイズ相当の撮像素子を搭載するA12 28mmが有利。作画意図にあわせて被写界深度を変えながら撮影できるのは表現の幅が広がることにつながるし、GR DIGITAL IIIでは得られないボケを作り出せるのは単純に面白い。GR DIGITAL IIIの開放F値はF1.9なので、コンパクトデジタルカメラの28mm相当としてはボケを調整できる方だが、それでもA12 28mmには適わない。F22まで絞れる点も、スローシャッター表現の上でA12 28mm F2.8の方が有利だ。

最短撮影距離 / GXR A12 / GR LENS A12 28mm F2.5 / RAW / 約2.4MB / 4,288×2,846 / 1/55秒 / F2.5 / +1.0EV / ISO200 / WB:屋外 / 18.3mm 最短撮影距離 / GR DIGITAL III / RAW / 約1.6MB / 3,656×2,732 / 1/68秒 / F1.9 / +0.7EV / ISO64 / WB:屋外 / 6mm

 マクロ域での使い勝手も異なる。最短撮影距離は、A12 28mmの約20cmに対し、GR DIGITAL IIIが約1cm(マクロモード)。普段、コンパクトデジタルカメラの広角マクロ撮影に慣れている人ほど、A12 28mmを使ったときの「寄り切れない」感覚は気になるだろう。私もつい、料理などの被写体にぐっと近づけてしまう。メモ的な用途では、最短撮影距離の制限が緩く、構図の自由度が高いGR DIGITALの方が使いやすいだろう。

 ほかにも違いはいくつかあるが、「クロスプロセス」と「ハイコントラスト白黒」がGR DIGITALにのみ備わっている点も見逃せない。個人的にはGR DIGITAL IIIやCXシリーズのクロスプロセスが大好きで、これがGXRにないのが悔しい。GXRのストイックな性格を物語る仕様といえば納得するしかない。

クロスプロセス / GR DIGITAL III / JPEG / 約3.7MB / 3,648×2,736 / 1/68秒 / F1.9 / -0.7EV / ISO64 / WB:オート / 6mm

 あとは動画性能が異なる。GR DIGITAL IIIは、いまどき珍しい640×480ピクセル。一方A12 28mmは1,280×720ピクセルで、いわゆるHD画質を一応キープしている。ただ、どちらの機種もMotion JPEGであり、A12 28mmの画質も特別良いわけではない。ともに動画をメインとするカメラではないことだけは間違いないだろう。

 以上、駆け足でGR DIGITAL IIIとの違いを見てきたが、率直に言って両者は別の性格を持つカメラであり、同列に語るのはかなり乱暴な行為だ。GR DIGITAL IIIは軽快さとハードなイメージが同居する、コンパクトデジカメとしては特異な存在であり、日常を共にして快適な相棒的なカメラ。一方GXR+A12 28mmは、さらにストイックな撮影姿勢を強いられる雰囲気を持ち、相棒というより、大げさに言えば自分と常に対峙している挑戦的な存在という印象。

 どちらにしても、両方を同時に持ち歩くのはあまり意味がなく、その日の予定や撮影目的に合わせて、どちらを持ち出すか悩むのが一番楽しいところかもしれない。



本誌:折本幸治

2011/2/22 00:00