交換レンズレビュー
FE 24-70mm F2.8 GM
高解像とボケが堪能できる、Eマウントの新標準ズーム
Reported by 永山昌克(2016/5/9 07:00)
ソニーから大口径の標準ズーム「FE 24-70mm F2.8 GM」が登場した。35mmフルサイズに対応したEマウント用の標準ズームといえば、これまでに「FE 28-70mm F3.5-5.6 OSS」や「Vario-Tessar T* FE 24-70mm F4 ZA OSS」が発売されているが、いよいよ真打ちともいうべきレンズのお出ましである。
製品名に含まれる「GM」は、同社レンズの新ブランド「G マスター」を意味している。既存「G レンズ」の上位に位置し、超高度非球面XA(extreme aspherical)レンズによって高解像でシャープな描写を実現しつつ、レンズの個性ともいえるボケの質にもこだわったプレミアムレンズシリーズとのことだ。
デザインと操作性
まずは外観を見てみよう。レンズの外形寸法は最大径87.6×長さ136mmで、質量は約886g。今回の使用カメラα7R IIに装着した場合、総重量は1.5kgを超え、ストラップが肩にくい込むようなずっしりとした重みがある。ただ、同クラスとなる他社の一眼レフ用大口径ズームと比較した場合は、サイズや重さは平均的といえる。
レンズ鏡胴は、金属を多用した高品位な作り。ズームリングなど可動部にがたつきはなく、手にするとしっかりとした剛性感が伝わってくる。各部にシーリングを施し、マウント部にはゴムリングを配置するなどして防塵防滴に対応することも、信頼性を高めるありがたいポイントだ。
ズームリングとフォーカスリングは、どちらもラバーを張り付けた手触りのいい仕上げとなる。ズームリングの操作感はやや重め。使用中に自重でズームが伸びることはなかったが、24mm位置で固定するためのズームロックスイッチも備えている。
フォーカスリングによるマニュアルフォーカスの操作は、軽めのトルクでスムーズに動く。ストロークが短いため、厳密なピント合わせは少々やりにくく感じた。また、ミラーレス用レンズでは一般的とはいえ、フォーカスリングに距離目盛りがないことは、高価なレンズとしてはもの足りない。
AFについては、「ダイレクトドライブSSM」(DDSSM)によって、ほぼ無音でスピーディに作動する。側面にフォーカスモードスイッチを備え、レンズ側の操作でAFとMFを素早く切り替えられる点も便利である。
遠景の描写は?
焦点距離24mm側の解像性能は良好で、高いシャープネスと十分なコントラストを確認できた。特に画像中央部の精細感は高く、開放F値でも被写体のディテールまでをくっきりと再現できる。周辺はやや画質が落ちるが、1~2段絞ると四隅まで切れ味鋭い写りが得られる。
- 作例のサムネイルをクリックすると、リサイズなし・補正なしの撮影画像をダウンロード後、800×600ピクセル前後の縮小画像を表示します。その後、クリックした箇所をピクセル等倍で表示します。
- 縦位置で撮影した写真のみ、無劣化での回転処理を施しています。
焦点距離70mm側は、24mm側に比べると開放値の描写はやや劣るが、それでも精細感は高いといえる。色収差や周辺減光については、ゼロではないが、気にならないレベルに低減されてる。歪曲収差は24mm側で樽型、70mm側で糸巻き型がそれぞれやや見られる。
ボケ味は?
ズームの24mm側を使って、長さ約18cmの木製プレートを最短撮影距離の38cmで撮影。ピントを合わせた部分から、その前後に向かって滑らかなボケが生じている。ボケ具合にうるさい印象はない。木漏れ日の部分は、きれいな玉ボケとなっている。
同じく24mm側の絞り開放を選択し、斜面を埋め尽くす芝桜の絨毯を捉えた。スムーズな前ボケによって、画面に奥行きを与えることができた。
次の2枚は、24mm側のF2.8とF4を比較したもの。当然ながら開放値のF2.8のほうが大きくぼけ、その分ピントを合わせたガラス瓶が画面内で引き立っている。合焦部分の精細感は開放値でも十分だろう。ボケによって主役を強調したいときは、開放値を積極的に使いたい。
続いて次の2枚は、70mm側までズームアップしてF2.8で撮影したもの。より大きなボケを表現できた。近接撮影ではハイライト周辺の光のにじみや色収差がやや目立つもののの、ボケのかたちは滑らかで美しく、ズームレンズのボケとしては悪くない。
逆光耐性は?
逆光には強く、通常の撮影では逆光によるコントラスト低下が気になることはほとんどなかった。下の写真では、わざと強い太陽光にレンズに向けているが、こうした極端な状況でない限り、ゴーストやフレアは生じない。同社独自の「ナノARコーティング」は効果十分といえる。
作品
空色が青くなる時間帯を選び、長時間露光によって夜の首都高を光跡として表現した。近景から遠景までがシャープに解像し、情報量の多い写真となった。
建造物の曲線美が際立つように、24mm側を使って下から見上げるアングルで切り取った。クリエイティブスタイルを「クリア」に設定して発色にメリハリを与え、立体感を強めている。
雨上がりの花壇にて、真上からクローズアップで迫った。特に接写に強いというほどではないが、チューリップくらいの花なら、こうして大写しにすることは可能だ。横からストロボ光を当てて背景を暗く落とした。
同じくチューリップの花壇をローポジションから狙った。なるべく多くの花をシャープに再現するため、絞りはF16に設定。一見するとHDR風の仕上がりだが、HDR機能ではなく日中シンクロによって発色と階調を高めている。
チューブ状の渡り廊下を24mm側で撮影。ベンチの反射を利用して画面をシンメトリーにすることで、吸い込まれるような奥行き感を際立たせた。
夕暮れどきの公園での1コマ。露出を切り詰めて、影絵のような雰囲気にまとめてみた。ホワイトバランスは日陰に設定したうえで、アンバー方向に微調整して赤みを強調している。
まとめ
今回の実写では、ズーム全域での切れ味のある描写と、開放値の滑らかなボケによって、立体的で深みのある写真を撮ることができた。使い勝手の面は、MFの操作にやや不満が残るが、AF中心で使う範囲では快適といえる。
約886gという重さについては、スナップ用に持ち歩くという気持ちにはあまりなれないだろう。ただ、いざ覚悟を決めて持ち出せば、その意気込みに応えてくれるほどの写りのポテンシャルは十分に感じられた。
FE 24-70mm F2.8 GMは、レンズの明るさと描写性能にこだわる人にとって、魅力的な製品に違いない。α7R IIなど高画素カメラの画質をきっちりと引き出すための標準ズームとして、現時点で最良の選択といってもいい。
※いずれの作例も横浜市の許可を得て撮影しています。