交換レンズレビュー

SIGMA 24-35mm F2 DG HSM|Art

単焦点レンズに匹敵する大口径ズームレンズ

今回はEOS 5D Mark IIIで試用した。発売はキヤノンおよびシグマ用が7月30日、ニコン用が8月21日。実勢価格は税込12万9,600円前後

SIGMA 24-35mm F2 DG HSM | Artは、35mm判フルサイズセンサーに対応した焦点距離24mmから35mmをカバーする広角ズームレンズである。開放F値はF2でズームレンズとしては驚きの明るさだ。同社が展開する高品位レンズシリーズ「Artライン」に属している。

レンズ構成は特殊低分散ガラスであるSLDガラス7枚、FLDガラス1枚を含む13群18枚。これにより球面収差、軸上収差、像面歪曲などの発生を最小限に抑えたという。最少絞りはF16。9枚の絞り羽根による円形絞りを採用した。

デザインと操作性

外観デザインはシグマのArtラインシリーズに共通したものだ。マットのブラック塗装と艶のあるブラックヘアライン塗装を組み合わせており高級感がある。ズームリングおよびフォーカスリングは幅広のゴムパターンだ。

単焦点レンズ並みの太いピントリングは程よい重さの回転トルクでありMFでも操作しやすい。AF駆動には超音波モーターHSM(Hyper Sonic Motor)が採用されており高速でありながら静粛なフォーカスが可能だ。

またAF時でもフォーカスリングを回転させる事でMFに切り替えることができる新フルタイムマニュアル機構を搭載。別売りのSIGMA USB DOCKを使用することで挙動を任意に変更することもできる。

幅広のリングで使いやすい

ズームは焦点距離を変えても鏡筒の長さが変わらないインナータイプ。カメラを構えて右回転で望遠側、左回転で広角側となる。

Artラインシリーズに共通のデザインを採用

Artラインに共通したデザインの大きめなフードが付属。取り外し時の滑り止めも兼ねた細かいパターンとラバーリングが特徴的。

レンズ鏡筒にはAF/MF切り替えスイッチのみがある。なおこのレンズに手ブレ補正機構は搭載されていない

レンズの最大径は87.6mm、全長は122.7mm、フィルターサイズは82mm。同じくシグマの24-105mm F4 DG OS HSM | Artのサイズ感に比較的近い。ただし質量は940gとズッシリと重い。13群18枚というレンズ枚数によるものだろう。今回はキヤノンEOS 5D MarkIIIに装着して使用したが、フルサイズ機のおおきなカメラボディであってもレンズの存在感は強烈だ。

花形フードが付属する
女性の手なので全体的に大きく見えてしまうが、それを考慮しても存在感のあるレンズだ

遠景の描写は?

広角端、望遠端いずれの画像においても高い解像感が画面から伝わってくることに驚く。さらに等倍まで拡大して細部を確認することで精細な解像力を持ったレンズであることが解る。また絞り込むことによる小絞りの回折現象も影響も非常に小さい。

広角端の中心部は、開放絞りから1段絞ったF2.8から解像力が高まりF4〜5.6でピークに、F8ですこし輪郭にエッジが立つような描写となる。F11〜16となると若干だが回折の影響を受けるがそれでも十分な解像力をキープしている。

同じく広角端の周辺部を見ると、開放F2では周辺光量落ちが若干目立つとともに少し緩さも見受けられるが、F4〜F8において解像力がグンと上がる。F11〜16における回折の影響も最小限だ。

  • 作例のサムネイルをクリックすると、リサイズなし・補正なしの撮影画像をダウンロード後、800×600ピクセル前後の縮小画像を表示します。その後、クリックした箇所をピクセル等倍で表示します。
  • 縦位置で撮影した写真のみ、無劣化での回転処理を施しています。
広角端―中央部
以下のサムネイルは四角の部分を等倍で切り出したものです。※共通設定:EOS 5D Mark III / 0EV / ISO100 / マニュアル露出 / 24mm
F2
F2.8
F4
F5.6
F8
F11
F16
広角端―周辺部
以下のサムネイルは四角の部分を等倍で切り出したものです。※共通設定:EOS 5D Mark III / 0EV / ISO100 / マニュアル露出 / 24mm
F2
F2.8
F4
F5.6
F8
F11
F16

一方、望遠端の中心部は開放F2から非常に解像力が高く、そこから絞っていくとF4〜5.6で解像力のピークとなる。更にF8〜16と絞り込むと少しずつ回折の影響が見えてくるが、最小絞りF16でも十分な解像感を得られる。

望遠端の周辺部は、開放F2では周辺光量落ちがあるため若干解像感が下がって見えるが、木で組まれた塀なども細かく描写されている。F2.8から絞り込むと共に解像力があがり、F5.6〜F8でピークに、F11〜16まで絞り込んでも回折の影響は非常に少ない。

望遠端―中央部
以下のサムネイルは四角の部分を等倍で切り出したものです。※共通設定:EOS 5D Mark III / 0EV / ISO100 / マニュアル露出 / 35mm
F2
F2.8
F4
F5.6
F8
F11
F16
望遠端―周辺部
以下のサムネイルは四角の部分を等倍で切り出したものです。※共通設定:EOS 5D Mark III / 0EV / ISO100 / マニュアル露出 / 35mm
F2
F2.8
F4
F5.6
F8
F11
F16

ボケ味は?

全焦点距離においてF2という明るい最小絞りとなるこのレンズは、24〜35mmという広角焦点距離域であるが、使い方次第ではピントの合った前後をボカした表現も可能だ。また28cmという短い最短撮影距離を活かしてワイドマクロ撮影といった独特な撮影方法をとることも可能。

広角端

通常24mmといった広角レンズでは被写界深度は深くなりボケを活かした表現は難しくなる。しかしこのレンズはF2というズームレンズとしては特異ともいえる明るい開放絞り値を持っていることで、極端な浅い被写界深度を活かした表現も可能だ。

ただ広角であるがゆえ、背景のボケはあまり大きくはならない。すこし引きめでボケ味を味わう方が自然だろう。もちろん絞りこみ、引きの構図とすることで手前から奥までピントの合う範囲を深めた撮影もできる。個人的には奥までしっかりとピントが合ったこのレンズの描写が好みだ。

絞り開放・最短撮影距離(約28cm)で撮影。EOS 5D Mark III / 1/800秒 / F2 / +0.3EV / ISO100 / 絞り優先AE / 24mm
絞り開放・距離数mで撮影。EOS 5D Mark III / 1/200秒 / F2 / 0EV / ISO100 / 絞り優先AE / 24mm
絞りF2.8・距離数mで撮影。EOS 5D Mark III / 1/100秒 / F2.8 / +0.3EV / ISO100 / 絞り優先AE / 24mm
絞りF4・距離数mで撮影。EOS 5D Mark III / 1/25秒 / F4 / 0EV / ISO100 / マニュアル露出 / 24mm

望遠端

広角レンズと標準レンズの中間とも言える35mmに、開放F2の浅い被写界深度を組み合わせることで、ワイド感を活かしながらも被写体を浮き立たせる撮影を行うことができる。

最短撮影距離は広角端と同じ28cmなので、被写体に近づき遠近感を誇張した撮影を行うことも可能だ。

絞り開放・最短撮影距離(約28cm)で撮影。EOS 5D Mark III / 1/25秒 / F2 / +2EV / ISO100 / 絞り優先AE / 35mm
絞り開放・距離数mで撮影。EOS 5D Mark III / 1/160秒 / F2 / +0.7EV / ISO100 / 絞り優先AE / 35mm
絞りF2.8・距離数mで撮影。EOS 5D Mark III / 1/100秒 / F2.8 / 0EV / ISO400 / マニュアル露出 / 35mm
絞りF4・距離数mで撮影。EOS 5D Mark III / 1/60秒 / F4 / +0.3EV / ISO100 / 絞り優先AE / 35mm

逆光耐性は?

広角端24mm、望遠端35mmのそれぞれで画面内に太陽を直接入れて撮影した。撮影条件としては非常に厳しいものだが、コントラストの低下もなく、ハレーションも最小限に抑えられており非常に高い逆光耐性を持つと言える。

広角端

太陽が画面内に入る逆光で撮影。EOS 5D Mark III / 1/8,000秒 / F2 / 0EV / ISO100 / マニュアル露出 / 24mm
太陽が画面外にある逆光で撮影。EOS 5D Mark III / 1/5,000秒 / F2 / 0EV / ISO100 / マニュアル露出 / 24mm

望遠端

太陽が画面内に入る逆光で撮影。EOS 5D Mark III / 1/4,000秒 / F2 / 0EV / ISO100 / マニュアル露出 / 35mm
太陽が画面外にある逆光で撮影。EOS 5D Mark III / 1/2,500秒 / F2 / 0EV / ISO100 / マニュアル露出 / 35mm

作品集

傾いた太陽の光に輝く稲。強烈な逆光だがレンズの高い逆光耐性のおかげで稲の葉1枚1枚までくっきりと描写されている。強い生命力を写真で表現できる解像力だ。

EOS 5D Mark III / 1/1,000秒 / F5.6 / 0EV / ISO100 / マニュアル露出 / 24mm

ズームを35mmに合わせ最短撮影距離で撮影。F2.8まで絞ることで被写体のボケ具合を調整した。肉厚なエアプラントの質感を余すところ無く描写してくれるレンズだ。

EOS 5D Mark III / 1/125秒 / F2.8 / 0EV / ISO100 / マニュアル露出 / 35mm

人物を28mmで撮影。この付かず離れずの距離感が撮る者と撮られる者の絶妙な間合いとなる。F4まで絞ることで人肌や髪の質感を忠実に表現し、リアルな存在感を引き出す。

EOS 5D Mark III / 1/125秒 / F4 / 0EV / ISO100 / 絞り優先AE / 28mm

カメラを三脚に据え付け、F11まで絞り込みカフェの店内の隅々にまでピントを合わせた。驚く程に歪みが少ないレンズならではのまっすぐな描写が心地よい。

EOS 5D Mark III / 2秒 / F11 / 0EV / ISO100 / マニュアル露出 / 35mm

夏の夜空に輝くの天の川を15秒間の固定撮影で捉える。諸収差を最小限に抑えたレンズのおかげで、画面周辺にいたるまで星々を点として捉えることができた。銀河中心部の淡い光を捉えるためにもF2という明るさはとても有効だ。

EOS 5D Mark III / 15秒 / F2 / 0EV / ISO2500 / マニュアル露出 / 24mm

まとめ

フルサイズ対応でありながらズーム全域でF2という、これまでにはなかった明るいズームレンズは、同じくシグマから発売されているAPS-C専用ズームレンズ18-35mm F1.8 DC HSM | Artが登場したときと同様の驚きを我々にもたらしてくれた。しかし実際に使用してみると決して単に明るいだけのレンズではないことがわかる。Artラインの単焦点レンズに匹敵するほどの高い描写力を持つズームレンズなのだ。

ともすれば自社製品との競合にさえなりかねないこのレンズをシグマが出して来たということは、ズームレンズを使用するフルサイズデジタル一眼レフカメラでのムービー撮影までも想定しているということだろう。

高画質とボケによる表現、そしてズームレンズという利便性。これらを兼ね備えた次世代のレンズの誕生である。ついにシグマが新たな戦略に踏み込んできた。そうおもわずにはいられないレンズだ。

(モデル:夏弥、撮影協力:Cae GROVE

礒村浩一

(いそむらこういち)1967年福岡県生まれ。東京写真専門学校(現 東京ビジュアルアーツ)卒。女性ポートレートから風景、建築、舞台、商品など幅広く撮影。全国で作品展を開催するとともに撮影に関するセミナーおよび撮影ツアーの講師を担当。デジタルカメラに関する書籍やWeb誌にも数多く寄稿している。近著「オリンパスOM-Dの撮り方教室 OM-Dで写真表現と仲良くなる」(朝日新聞出版社)、「マイクロフォーサーズレンズ完全ガイド」(玄光社)「今すぐ使えるかんたんmini オリンパスOM-D E-M10基本&応用撮影ガイド(技術評論社)」など。

Webサイトはisopy.jp Twitter ID:k_isopy