交換レンズレビュー

Loxia 2/35

開放で柔らか、絞るとくっきりのフルサイズEマウントレンズ

カールツァイスLoxia 2/50に続きLoxia 2/35が開始された。本レンズシリーズは、ソニー製のカールツァイスレンズとは異なり、カールツァイスが独自に開発および設計を行ったフルサイズ対応のEマウントレンズだ。

今回はソニーα7で試用した。発売は12月12日。実勢価格は税込13万9,850円前後

MFオンリーとするのはLoxia 2/50と同じだが、レンズ構成はプラナータイプではなく、より贅沢な6群9枚のビオゴンタイプ。先般掲載したLoxia 2/50のレビューでは、その圧倒的な描写に驚かされた。となれば本レンズも期待せずにはいられない。

デザインと操作性

鏡筒のデザインはLoxia 2/50と同じだ。金属製のフォーカスリングおよび絞りリングとも工作精度の高さを感じさせる美しいローレット加工が施され、鏡筒には距離目盛りや被写界深度目盛りなど往年のMFレンズ同様丁寧に刻まれる。

レンズ名はLoxia 2/35であるが、レンズ前面飾り枠にはBiogonの名前が。ビオゴンはバックフォーカスが短いため、距離計連動用の交換レンズに用いられることが多いが、同様にミラーレスにも適している

ローレットはホコリなど入りやすいが、ブロアやブラシを使えば簡単に掃き出せるためメンテンス性はラバーにくらべ良好だ。レンズ着脱用の指標やマウント部外周のラバーリングはカールツァイスブルーとしており、デザイン上のポイントになっている。カールツァイスの四角いロゴは、鏡筒ではなく同梱される金属製レンズフードに貼り付けられる。

Loxia 2/50のレビューでは官能的と例えたフォーカスリングの操作感についても本レンズは踏襲している。重過ぎることも軽過ぎることもないトルク感は、どこまでも滑らか。フォーカシングの途中で不意にトルク感が変化してしまうようなことなどない。動き出しもスムースで、さらに思った位置に正確に静止する。こちらも工作精度の高さを感じさせるもので、フォーカシングが実に楽しい。

レンズフードはLoxia 2/50と同様金属製。内側は植毛が施される。カールツァイスの青いバッジは、このレンズフードをレンズに装着したときの左右両脇に付く

さらに絞りリングもLoxia 2/50同様で、1/3段ステップとするクリック感は心地よい。ただし、Loxia 2/50のレビューでも指摘したが、絞りは常時設定した絞り値まで絞り込まれた状態となっている。ピント合わせのことを考えると開放絞りと設定した絞り値に瞬時に切り換えられる絞り開放レバーがあればより一層使いやすいように思えてならない。

なお、絞りリングのクリックを解除するデクリック機能を備えているので、動画撮影のときなど重宝することだろう。

レンズ装着指標と防塵防滴用のスカートはカールツァイスのブランドカラーであるブルーで統一。マウント面にあるマイナスネジ(写真では右上)は、絞りリングのクリックを外すデクリック機能のスイッチ

遠景の描写は?

このところのカールツァイスレンズは開放から鋭いキレを持つが、残念ながら本レンズの絞り開放での描写は想像以上に緩めだ。ところが1段絞るだけで、沸き立つように解像感が増してくる。その描写の違いは、とても同じレンズだとは思えないほどである。

これをレンズの欠点とみなすか、味とみなすかはそれぞれのご判断に任せたいと思うが、そのことを理解しておくのがこのレンズの作法といえる。キレの高さは絞りF8まで続き、それよりも絞り込むと回折現象が現れるようになる。

画面周辺部の描写に関しては、安定するのは絞りF5.6から。それよりも明るい絞りの場合解像感は不足気味であるが、色のにじみについては良好に補正されている。

さらにビオゴンタイプらしくディストーションについてもよく補正され、画面の上下左右端に水平線、垂直線があっても気になることはない。

  • 作例のサムネイルをクリックすると、リサイズなし・補正なしの撮影画像をダウンロード後、800×600ピクセル前後の縮小画像を表示します。その後、クリックした箇所をピクセル等倍で表示します。
  • 縦位置で撮影した写真のみ、無劣化での回転処理を施しています。
中央部
以下のサムネイルは四角の部分を等倍で切り出したものです。共通設定:α7 / -0.7EV / ISO100 / 絞り優先AE / 35mm
F2
F2.8
F4
F5.6
F8
F11
F16
周辺部
以下のサムネイルは四角の部分を等倍で切り出したものです。共通設定:α7 / 0EV / ISO100 / 絞り優先AE / 35mm
F2
F2.8
F4
F5.6
F8
F11
F16

ボケ味は?

ボケ味は素直、といってよいだろう。合焦面からデフォーカスとなるまで不自然さはなく、柔らかく溶け合っていく。目障りな濁りや極端な二線ボケは感じられず、焦点距離35mmのボケ味としては文句のないものといえる。

前ボケについても特別気になるような乱れもなく、上々の結果。画角からスナップをはじめパンフォーカス撮影に用いられることの多いレンズといってよいが、ボケを活かした撮影を積極的に楽しんでみるのもありだろう。

絞り開放・最短撮影距離(約30cm)で撮影。α7 / 1/1,000秒 / F2 / +0.7EV / ISO100 / 絞り優先AE / 35mm
絞り開放・距離数mで撮影。α7 / 1/6,400秒 / F2 / +1EV / ISO100 / 絞り優先AE / 35mm
絞りF4・距離数mで撮影。α7 / 1/500秒 / F4 / +1.3EV / ISO100 / 絞り優先AE / 35mm
絞りF5.6・距離数mで撮影。α7 / 1/250秒 / F5.6 / +1.3EV / ISO100 / 絞り優先AE / 35mm

逆光耐性は?

画面のなかに太陽が入るような条件でも、太陽を被写体で隠してしまうような条件でも掲載した作例を見る限りフレアやゴーストの発生は見当たらない。内面反射をよく抑えていることが分かる。

 ただし、条件によっては意外と簡単に現れることも。下に掲載した自由作例を見てもらえば分かるが、思いのほか派手目に現れる。点光源が画面に入ったとしても必ずしも発生するわけではないが、被写体の状態によっては注意しておいたほうがよさそうである。

太陽が画面内に入る逆光で撮影。α7 / 1/4,000秒 / F5.6 / 0EV / ISO100 / 絞り優先AE / 35mm

作品

絞りは開放F2。コントラストの高い被写体の場合、絞り開放時の解像感の緩さはさほど気にならない。焦点距離から思ったほど大きなボケとならないことがわかる。周辺減光も気にならないレベル。

α7 / 1/2,500秒 / F2 / 0EV / ISO100 / 絞り優先AE / 35mm

こちらは絞りF5.6。このレンズの描写特性のピークといってよいだろう。鋭いキレであることは当然だが、ヌケもよくコントラストも高い。立体感のある描写だ。

α7 / 1/500秒 / F5.6 / -0.3EV / ISO100 / 絞り優先AE / 35mm

ピントの合った部分の線は細く、キレのよい描写だ。また合焦面からデフォーカスまではナチュラルにボケは変化し、クセのないものである。絞りはF2.8。クリアでコントラストの高い描写である。

α7 / 1/2,000秒 / F2.8 / 0EV / ISO100 / 絞り優先AE / 35mm

開放で撮影したつもりであったが、設定ミスにより絞りF2.5としている。解像感はこのあたりから増し始め、F5.6あたりがピークとなる。遠くに写る飛行機の姿も捉えている。

α7 / 1/4,000秒 / F2.5 / 0EV / ISO100 / 絞り優先AE / 35mm

この作例では、ゴーストが思った以上に派手に現れている。ちなみ反射しているのは、木でできた改札。塗料の光沢によって太陽の光を反射している。このような撮影条件では注意が必要だ。

α7 / 1/80秒 / F5 / -0.3EV / ISO100 / 絞り優先AE / 35mm

ビオゴンタイプのレンズは歪曲収差の少なさが描写の特徴だ。作例でも目立つような歪曲収差はほとんど感じられない。水平、垂直のある被写体の撮影では心強い味方といえるだろう。

α7 / 1/250秒 / F5.6 / 0EV / ISO100 / 絞り優先AE / 35mm

まとめ

先に発売されたLoxia 2/50と同様、たいへん魅力的なレンズだ。フォーカスリングの操作感は、AFレンズのそれに慣れた身には新鮮であるとともに、フォーカシングする喜びを与えてくれる。何より肝心の描写特性は素晴らしく、このレンズで写真を撮り続けていきたいと思わせるほどである。

現在は本レンズと50mmの2本がラインナップされるのみだが、85mmや20mm前後のレンズが登場すると今後一層注目されそうに思える。

大浦タケシ

(おおうら・たけし)1965年宮崎県生まれ。日本大学芸術学部写真学科卒業後、二輪雑誌編集部、デザイン企画会社を経てフリーに。コマーシャル撮影の現場でデジタルカメラに接した経験を活かし主に写真雑誌等の記事を執筆する。プライベートでは写真を見ることも好きでギャラリー巡りは大切な日課となっている。カメラグランプリ選考委員。