交換レンズレビュー

Sonnar T* FE 55mm F1.8 ZA

ツァイスの名に恥じないキリッとした描写

 現在、Eマウント単焦点レンズのなかで35mmフルサイズ対応とするものは2本ラインナップされる。いずれもカールツァイスのブランド名を冠するもので、1本は先般この交換レンズレビューで紹介した「Sonnar T* FE35mmF2.8 ZA」。

今回はα7Rで試用した。発売は2013年12月。実勢価格は税込8万5,390円前後

 そして、もう1本が今回の「Sonnar T* FE 55mm F1.8 ZA」だ。本レンズに関しては、明るい開放F値に汎用性の高い焦点距離でオールラウンドに活躍しそうに思える。また、α6000などAPS-Cサイズ機で使用した場合、フルサイズ判換算で82.5mm相当の中望遠レンズとなり、明るい開放値とともにポートレート撮影など重宝することだろう。レンズ構成は非球面レンズ3枚を含む5群7枚。最短撮影距離は0.5mとする。

デザインと操作性

 デザインテイストはこれまでのEマウントのカールツァイス単焦点レンズに準ずる。アルミニウムを素材とする鏡筒は凹凸を控えたシンプルなもの。青いカールツァイスのロゴが印象的だ。

開放値の明るいレンズだが、前玉はことのほか小振り。絞り羽根は9枚とちょっと贅沢な仕様だ

 もちろん、α7シリーズのカメラとよく似合う。フードに関しては、Sonnar T* FE 35mm F2.8 ZAのものとは異なり、大きく押しの強いものとする。いわゆる花型タイプといわれるもので、遮光効果は高く実用としても申し分ないものだ。

花型で深いレンズフードが付属。遮光効果はバッチリだ

 レンズ全長は70.5mm、最大径64.4m、質量は281g。AF駆動についても、Sonnar T* FE 35mm F2.8 ZAと同様のリニアモーターを採用。高速かつ静寂性の高いAFを実現する。MF時のフォーカスリングの動きも滑らかで、気持ちのよいピント合わせが可能だ。

いうまでもなくマウント部は金属製を採用。フレアカッターを搭載する

遠景の描写は?

 絞り値に関わらず文句の付けどころのない描写だ。開放絞りでは、決してキレキレではないものの、画面周辺部に至るまで描写の甘さは見受けられず、コントラストも十分。周辺減光についてもよく抑えられているほうといえる。

 さらに1段ほど絞ったF2.8となると解像感および立体感が増し、周辺部の描写もより締まったものに。隙を感じさせない優れた描写は、さすがカールツァイスと頷かせるには十分すぎるものである。

 作例を見るかぎり回折現象の発生はF8あたりから。そのため、描写のピークはF5.6と考えてよいだろう。ディストーションについては極弱いタル型。定規を置いて見るような意地の悪いことをしないかぎり、気になるようなものではない。

  • 作例のサムネイルをクリックすると、リサイズなし・補正なしの撮影画像をダウンロード後、800×600ピクセル前後の縮小画像を表示します。その後、クリックした箇所をピクセル等倍で表示します。
  • 縦位置で撮影した写真のみ、無劣化での回転処理を施しています。

【中央部】

以下のサムネイルは四角の部分を等倍で切り出したものです。
F1.8
F2
F2.8
F4
F5.6
F8
F11
F16

【周辺部】

以下のサムネイルは四角の部分を等倍で切り出したものです。
F1.8
F2
F2.8
F4
F5.6
F8
F11
F16

※共通設定:α7R / 0EV / ISO100 / 絞り優先AE / 55mm

ボケ味は?

 ボケの美しさはこのレンズの売りのひとつだ。合焦面直後からナチュラルに始まり、デフォーカスになるまで不自然に感じるようなところはまったくない。しかもデフォーカスに至る部分の被写体同士は滑らかに溶け合い、たいへん美しく感じられる。ボケのエッジが濁るようなことも、ボケ味の乱れのようなものも皆無だ。

 前ボケに関しても同様で、本来、後ボケの美しさを優先させると前ボケは乱れることも少なくないが、本レンズでは概ね良好なボケ味といって差し支えない。絞り羽根枚数は9枚としている。

絞り開放・最短撮影距離(約50cm)で撮影。α7R / 1/800秒 / F1.8 / -0.3EV / ISO100 / 絞り優先AE / 55mm
絞り開放・距離数mで撮影。α7R / 1/2,500秒 / F1.8 / 0EV / ISO125 / 絞り優先AE / 55mm
絞りF4・距離数mで撮影。α7R / 1/2,500秒 / F4 / +0.3EV / ISO200 / 絞り優先AE / 55mm
絞りF4・距離数mで撮影。α7R / 1/2,500秒 / F4 / 0EV / ISO200 / 絞り優先AE / 55mm

逆光耐性は?

 太陽が画面内に入る作例では、その対角線上にゴーストの発生が確認できる。よく見ないと分からない極薄いものであるが、被写体によっては気になることもあるように思える。

 ただし、強い光源にも関わらず、このレベルの発生で済んでいるのは褒めてよいだろう。同じような条件の場合、盛大にゴーストの発生するレンズはいくらでもあるからだ。フレアの発生については、わずかに見受けられるものの気にならないレベル。逆光でも良好な描写特性を誇るレンズである。

太陽が画面内に入る逆光で撮影。α7R / 1/1,600秒 / F8 / 0EV / ISO125 / 絞り優先AE / 55mm
太陽が画面外にある逆光で撮影。α7R / 1/500秒 / F8 / 0EV / ISO125 / 絞り優先AE / 55mm

作品

絞りはF8。画面全体キリッと締まった描写だ。画面の隅にある鉄鋼に打たれたボルトなども鮮明に描き出す。見ていて気持ちのよい描写である。α7R / 1/1.2秒 / F8 / 0EV / ISO100 / 絞り優先AE / 55mm
絞りは開放F1.8。作例を見るかぎりピントの合った部分のキレはよく、コントラストも上々だ。後ボケは自然な感じだが、前ボケも乱れのようなものは少なく極めて素直な印象だ。α7R / 1/3,200秒 / F1.8 / +0.7EV / ISO100 / 絞り優先AE / 55mm
開放から1/3段ほど絞ったF2で撮影。ピント面からなだらかにボケが大きくなっていくのがよくわかる。画面左端の中央近くに、いくつかの色が溶け合っている部分があるが、美しく感じられる。α7R / 1/6,400秒 / F2 / 0EV / ISO100 / 絞り優先AE / 55mm
絞りはF2.2。デフォーカスとなった部分にある被写体のエッジが緩やかに消失し、柔らかいボケ味としている。ピントの合った部分の解像感は高く、より背景から被写体が浮き立っているかのように見えるα7R / 1/60秒 / F2.2 / -0.7EV / ISO200 / 絞り優先AE / 55mm

まとめ

 このところ、カメラも含めいたずらにカリカリとした描写を求める向きも少なくないが、本レンズは絵心のわかる大人のためのものとして、必要にして十分なキレのよさを持つ。

 さらに画面の隅々まで配慮の行き届く描写は、カールツァイスの名に恥じないものである。それは、パソコンの画像を拡大することが楽しくなるほど、といえばご理解いただけるかと思う。先頃α7sが加わったα7シリーズは、今やソニーを代表するカメラ、いやプロダクツになった。本レンズはそんなカメラに相応しい単焦点標準レンズである。

大浦タケシ

(おおうら・たけし)1965年宮崎県生まれ。日本大学芸術学部写真学科卒業後、二輪雑誌編集部、デザイン企画会社を経てフリーに。コマーシャル撮影の現場でデジタルカメラに接した経験を活かし主に写真雑誌等の記事を執筆する。プライベートでは写真を見ることも好きでギャラリー巡りは大切な日課となっている。カメラグランプリ選考委員。